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2006年5月9日 声 明我々のおそれていたことが現実となった。神戸刑務所において、5月5日、50代の受刑者の男性が同じ独居房に収容されていたやはり50代の男性受刑者から暴行を受けた後、死亡したという。 同刑務所は定員1800人のところ、現在約2180人が収容されており、定員を21パーセントもオーバーしていた。そのため、一人用の独居房に二人の受刑者を収容したり、定員6人の共同室に9人を収容していたという。 この事件は、5月3日午後11時50分頃、独居房に二人を収容していた房内で発生した。刑務官は男性が暴行を受け、顔や唇に傷のあることを確認したが、「医師に見せる必要はない」として医療を受けさせることなく、就寝させた。ところが、翌日朝には、受刑者は瞳孔が開き意識のない状態で発見され、その後病院に運ばれたが、同日午後7時50分に死亡が確認されたという。 司法解剖の結果、死因は急性硬膜下血腫とされている。けんかの原因や詳細な死因は今後徹底した調査によって究明され、公表されなければならないが、報道によって明らかにされている内容だけからも次の重大な事実を指摘できる。 第一に、本件の背景には慢性的な過剰収容の問題があり、非常に狭い独居房の中に二人の受刑者を収容しなければならないという、極めて非人道的な環境の中で発生したと言うことである。本件は、この過剰収容状況がなければ発生していないことが明らかな事件であり、まさに受刑者の死の直接的な原因が過剰収容の状況にあるといってよい。 第二に、夜間の医療体制が貧弱であり、また刑務官が専門的な問診もできないまま、けんかによって頭を打撲している疑いのある者に対して、何の検査も実施ないで、放置していたことが明らかとなった。このような刑務所の医療体制と刑務官の措置にも大きな疑問が残る。 以上の通りであって、監獄人権センターは、同種の事案の再発を防止するため、緊急に次の点の改善を求める。 1 過剰収容対策を緊急に取り組まなければならない。緊急に足りない施設の新たな建設が必要であり、これに法務省が取り組んできたことを否定はしない。しかし、過剰収容の解決策として刑務所建設を促進するハード面での対策が根本的な解決とならないことは刑務所を増設し続けても問題が解決しなかったアメリカの実情からも明らかである。 むしろ、仮釈放を促進すること、裁判所において長期刑の言い渡しを慎重にすべきこと、そのために検察官の厳罰を求める求刑に歯止めをかけるべきこと、また長期的には中間処遇制度の導入などソフト面での施策が重要である。 また、新たな施設の整備や新たな法制度は過剰収容の緊急事態に間に合っておらず、日増しに高まる過剰収容のストレスで多くの受刑者は神経をすり減らしている。このような環境においては、如何にすばらしい行刑プログラムを策定しても、それは絵に描いた餅となってしまうであろう。 法務省は既存の対策を見直し、さらに、緊急かつ抜本的な過剰収容の解消策を提示するべきであり、政府はそのための予算措置を講ずるべきである。また、仮釈放の運用条件を緩和し、また検察官の求刑基準の見直しなど、予算のほとんどかからないソフト面での刑務所人口の削減策にこそ本腰を入れるべきである。 2 今回の場合、本人が頭部に負傷していたことは争いがない。専門の医師が問診し、頭を打った事実があるかどうかを確認していれば、頭部を殴打されたことの情報が本人から得られ、脳外科の緊急医療を受けることができ、救命できた可能性がある。傷害事件の発生を確認しながら、医学知識のない看守だけの判断で事件直後に医療を受けさせなかったことが死亡と関連している。受刑者が負傷している場合には、看守だけで判断するのではなく、負傷した受刑者のその健康状況を把握するため、医師に必ず診断を求めるべきことを矯正局の責任において各刑事施設に徹底するべきである。
特定非営利活動法人 監獄人権センター |