■「武力」より"Imagine"            2001.10


ひどいことがおこった。非道すぎるやないか。人の道に非らずの大量殺人。
ハリウッド的勧善懲悪劇のような同時多発テロが6,000人をはるかにこえる市民の生命を突然に奪った。
無垢な市民を巻き添えにすることは許せない。テロはどんな状況でもあってはならない。

しかし 「目には目を、歯には歯を、やつらの目をつぶせ、歯をたたき折れ」の報復戦争への態勢が着々と進められていることはテリブルな恐ろしい事態を招く、にちがいない。報復と報復の相互繰り返しは悪魔のシナリオ。20世紀の「パールハーバー奇襲」への報復が広島と長崎というこの上ない悲惨さを生んだように、21世紀の戦争は人間と自然の生存環境を根だやしにする。

世紀末ではなく新しい世紀の最初の年に私たちは人類の破滅か共存かの選択の瀬戸際にいる。
特定の国の「ひとり勝ち」のグローバリゼーションよりどの国もどの地域もひとりひとりが「よりよく生きる」 World Making、世界づくりをしていきたい。

地域・都市というヒト・モノ・コト・トキがからみあう有機的生命体を慈しむように育んでいきたい。そのためには貧しい国・地域・人々を手助けし人もまちも育ちあう過程をふくらませたい。マスコミ報道の政治的駆け引きにまどわされずに報復・戦争・破滅の世界つぶしを越えて対話・協働・共生の世界づくりに赴きたい。

イスラムは宗教や文化の異なる多様な人々が共生し相互に営みを分かちあう生き方を示してきた。研究室で学んでいたイスラム教徒の留学生の生きることへの敬虔な態度には深く感じるものがあった。
とりわけ彼女のまわり・他者への共感能力の高さはモスレムの人間性のしるし・象徴でもあった。自己と他者の間に自律的歓待の心をふくらませること、異なった立場・考えの自他とが創造的な対話によって自他ともによりよく生きる関係を育む。この対話と共生こそ21世紀の世界の地平をひらく。

テロリストたちの米欧対決主義を越えて近代主義者たちの欧米 vs. イスラムの二項対立主義を越えて複数の文明の対話の関係づくりを目指そう。それは滅茶苦茶にむづかしいことだがコンフリクト(葛藤)をコンパッション(共感)に変える、トラブルをエネルギーに変えるしなやかな心をひとりひとりの内面に育んでいこう。武力よりも知性によって困難な状況を変えていこう。

そのためのはじめのいっぽに、例えば
ジョン・レノンの「イマジン」を口ずさんでみるといい・・・


延藤安弘


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