書籍紹介

「団地再生のすすめ」 −エコ団地をつくるオープンビルディング

団地再生研究会 編・著 (マルモ出版、 2002 年 11 月発行)


●紹介者:泉 宏佳 副代表

自分も一部を執筆している本を紹介するのは、手前味噌で気が引けるが、時宜にあった本と思うので取り上げる事とした。

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現在、日本の共同集合住宅は公営、公団などの公的賃貸住宅が約 300 万戸、そして民間を主とした分譲住宅が 400 万戸、合計 700 万戸あり、 6 、 7 世帯に 1 世帯は共同住宅に住んでいることになる。戦後 60 年の経験の中で完全に定着したと言っていいだろう。戦後公営住宅、公庫住宅そして公団住宅と役割を分担しながら進められてきた国の住宅政策も、 10 パーセントを超える住宅あまり現象のなかで、直接的な供給関与から間接的なコントロールに転換し、経済対策としての側面が強くなり、今日的な住宅対策上の問題としては高齢者対策が主要テーマとなるぐらいであるといえる。

ところが、こうした共同住宅が 30 年を経過するに及んでその管理状態と今後の活用の可能性が俄かに課題とされるようになってきた。というのも、これまでは共同住宅の位置づけが、仮の住宅と言った意識が強く腰の据わった住み方がされてこなかったし、また仮に不都合になっても右肩上がりの経済状況のときには、等価交換などの手法により建替えれば何とかなるという意識があったが、ここにきて経済の停滞と人口の減少などにより、住宅需要そのものが停滞・膠着するにおよんで一変してストックの現状に目が向けられる事になった。このため、マンションの管理を的確に行うための法律や立替を自立的、合理的に行うための法律等がバタバタと整備された (*) 。

しかし、ここにもう一つの課題が残っている。今ある住宅を如何に上手く使いこなすか、使い続けるかと言う課題である。今日的に言えば、

持続的団地再生と言う事になる。おりから環境に対する認識の深まりや資源の有効な利活用の観点から団地の見直しが始まっている。この本では、こうした団地再生の動きが世界の潮流となっている事、またその手法や事業の展開に様々な技法があることを実際に現地を視察し、写真などで紹介しながら報告している。

そこでは単純に現状維持か建替かといった二者択一ではなく、工夫を凝らしながら団地を時代に合わせて利活用しようという姿勢が見える。勿論そのプロセスでは住民意見の尊重や地域とのかかわり、行政の方針、助成等が大きな論点となる。長大住棟を分節化したり、中層住宅を低層化する。又住宅を店舗に切り替えたり、交流施設を建設したりと大胆な取り組みが展開される。アメリカ、ドイツ、オランダ、イギリス、フランスなど各国の取り組みは、国情が違うという言葉だけでは済まされない問題の深さと可能性を物語っている。建築後 20 から 30 年を経過した団地、マンション居住者には一読をお勧めしたい。

(*)「マンション管理適正化法」、「マンション建替え促進法」、「区分所有法」の改正 ( それぞれ略称 )

 

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