□ 事業報告(協力) 
千葉県環境づくりタウンミーティング総括大会の概要
(これは千葉県環境生活部自然保護課が発行のニュースレター「生物多様性ちばNo.3」に栗原裕治が寄稿したもの。)

開催の経緯及び趣旨
 昨年末の12月23日(土)、千葉県内の18市民グループの主催による各地の環境づくりタウンミーティングの締めくくりとして、環境づくりタウンミーティング総括大会が開催され、堂本知事、生物多様性ちば県戦略専門委員をはじめ関係者170人が千葉県立中央博物館 講堂に集まった。午後1時に始まったプログラムの最初から会場全体が熱気に包まれ、午後4時30分の終了予定が1時間も延長された。
 国主催のタウンミーティングが、やらせや形式偏重等、いろいろ問題視されている時期だったが、千葉県では短期間に40を超える環境団体がほぼ3ヶ月という短期間に結集し、千葉県環境基本計画、千葉県環境学習基本方針、ちば環境基本計画の見直し、及び生物多様性ちば県戦略の策定に向けて、自由かつユニークな内容のタウンミーティングが展開され、数多くの論点が提起された。それは、千葉県の環境団体のネットワークの広がりや底力を示すものであり、これからの地方自治体の運営に市民参加が不可欠であることを改めて感じさせた。
 この総括大会は、これまでの環境づくりタウンミーティングでの意見・提案が、言いっぱなし、聞きっぱなしにならないように、関係者が一堂に会して千葉県の環境づくりの課題・論点を整理し、それらを共通認識として共有することで今後の政策に的確に反映させていこうという趣旨で開催されたものである。

堂本知事の挨拶

堂本知事は、冒頭の挨拶で、まず、知事就任時に生物多様性の問題に取り組めなかったこと、時間がないところでタウンミーティングが行われるに至ったことを詫びた。また、生物多様性は、自分にとって1992年の地球サミットの以前から取り組んできたもので、一番大事に考えてきたと、続けた。そして、「時間がありませんが一緒につくっていきましょう。これまで、環境について皆さんが動いてきたことを集約して、計画としてつくり上げていきましょう。生物多様性の戦略を県レベルで持っているところはないので、他の県をリードできるような戦略になればと思います。今後全力投球していきます」と呼びかけた。



 

 

□各タウンミーティングの報告と論点整理
各タウンミーティングの主催グループを代表して、18人がそれぞれのタウンミーティングの報告を行った。各報告時間が3分間と短かったこともあり、事前にまとめ資料が配布された。
金親博榮さん、佐野郷美さん、手塚幸夫さんの3名が、各報告及び会場からの発言も含めて論点整理を行った。金親さんは、農家・地主の立場から里地・里山の問題に取り組んできており、佐野さんと手塚さんはいずれも県立高校の生物の先生で、それぞれ葛南地域、外房地域で環境の保全・再生の活動に関わってきている。
この論点整理では、生物多様性にとって一次産業や里山・谷津田の保全・再生が重要であること、ごみ問題の解決や無駄な開発行為を規制する必要があること、農業政策や都市政策の問題でもあり市町村とも連動した全庁・全県的な取り組みが必要なこと、点で考えるのではなく水や緑のネットワークが重要なことなどが指摘された。
最後に金親さんが、@ 一次産業をどうするのか(都市住民との協力、ボランティアの吸収)、A 都市の環境づくり(谷津田、コリドー、点から線・面へ)、B 行政部門の組み直し(コントロールセンターとしての環境部門の自立)、C 開発派・産業派と環境派の対話・交流(叩き合いでも逃げない覚悟と仕組み)、D 公的分野での官と民の分担、E 地球温暖化の視点、F 不法行為への対応(関係者や行政職員のコンプライアンス)、G 実践につなげる具体的な方策、H 県行政部門や市町村への浸透、I 子孫への問題、J 海から陸や都市を見る視点、以上11項目が重要であると整理した。


 

□パネルディスカッション
 論点整理を受けてパネルディスカッションが行われた。パネリストは、堂本知事、生物多様性ちば戦略専門委員会の大澤委員長と原副委員長、また、県民の立場で千葉市と四街道市で環境タウンミーティングを主催した小西由希子さんと任海正衛さんの5名。会場からの意見もあり、委員長・副委員長以外の生物多様性ちば件戦略専門委員5名の会場からの発言もあった。コーディネータは栗原が務めた。  パネリストや会場からの発言を要約すると、
@環境保全と農業が両立する、しかも生計が立てられるシステムが必要。地産地消も大切。
A都市住民と農家が協力できるようになるには、相互の理解と無責任にならないボランティアの仕組みが必要。行政に頼らない市民自治が大切で、NPOも自立して持続的な事業を展開する必要がある。
B生物多様性の保全は文化であり、生物と文化の多様性が重要。そのために関係部局を横断的に加えていく必要がある。あらゆる視点に環境を入れていくのがこれからの政策の基本。
C実態を把握するために基本調査を行い、マップ化する。生物多様性の基盤づくりの推進が大切で、そのために生物多様性センターが必要。また、センター機能とセットで、生態の区分や住民の分布・生活を照らし合わせ、地域の再編、再考しての拠点づくりが重要。今回のタウンミーティングで結集した市民の力が拠点づくりに生かせる。
D環境学習では、地域の人との実践も大切。県は文書が多すぎて職員がそれに忙殺されて、同じ予算、同じ事業の繰り返しが多い。市民も参加して県の事業をふり返ることを提案する。
Eつくり上げた計画を市民と行政とが協働で推進する。それには目標値と評価が必要。
F環境の地域通貨、ナショナルトラスト、水源税、環境コミュニティファンド、不法投棄の検査システムなど、検討すべき制度や仕組みは多い。
G猪などの害獣対策も重要。猪が増えていることで蛇やカエルが減ってきている。
H〔生命〕を守る仕組みを考え、提案していきたい。
I書き込みができ、みんなで見ることができる生物多様性サイトをつくる。
 短時間に詳細を詰めることはとても無理だが、どうやら千葉の環境づくりの方向性が見えてきたように思われる。



 

□以下は、コーディネータ(栗原)のまとめである。

 これまでの日本は、環境、人格権などを犠牲にして経済成長を遂げてきた。確かに便利になったが、人間はそれで本当に幸せなったか。昨今のいじめの 問題といい、無責任な大人の言動など、心の荒廃がすすんでいるように感じられる。
 これからは地方分権・地域主権の時代といわれている。住民を核に地域の主体が協力して、いろいろ決めていかなければならないのに、なかなか決められない現実がある。
 ずいぶん前から茶の間の中心にテレビが据えられていて、そこからは編集された情報が入ってくる。都市開発によって新住民といわれる人も増えた。そうした中で、住んでいる地域の歴史、地域の資源(お宝)、地域の課題を知らない、無関心な住民が増えている。問題意識を持っている人はいつも一握りで、あちらこちらで同じ人だけが集まっている。これでは地域ぐるみの合意形成や協働はとても難しい。
これまでの経済・産業社会を見直し、環境や人格権を重視した持続可能な社会を構築できるのは、経済力でも政治力でもなく、文化力であろう。日本の社会は、グローバルな産業文化が蔓延し、地域を知らない人、無関心な人の増加が、地域の文化力をますます衰退させている。それが環境破壊を招いているように感じられてならない。これからは地域を知り、地域の文化力を皆で高めていく取り組みが重要な時代ではないだろうか。

(ボーンセンター副代表・栗原裕治)

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