□ 事業報告(受託) 
○ 我孫子市
「我孫子市市民活動レベルアップセミナー」

委託事業応募の経緯

 ボーンセンターは、昨年10月から11月にかけての約1ヶ月間、我孫子市の委託事業として「市民活動レベルアップセミナー」を企画・運営した。「我孫子市市民活動レベルアップセミナー」とは、我孫子市で活躍する市民活動団体が、より効果的かつ有意義な活動できる団体として自立していくことを支援する目的で実施するもので、過去の2年間は、東京のNPO法人日本NPOセンターが随意契約で企画・運営を行ってきた。
我孫子市には、環境生活部に市民参画や市民と行政との協働を推進する市民活動支援課があり、自治基本条例の検討等も進んでいて、先進市のひとつといわれている。我孫子市は、昨年8月に今年度の「市民活動レベルアップセミナー」を企画・運営する団体の公募に踏み切った。
ボーンセンターの活動は千葉県内のまちづくり支援だが、我孫子市のいくつかの市民活動団体や市民活動支援課との多少の接点はあったものの、我孫子市で活動を行ったことはなかった。そこで、この公募に応じるか否かについては、ちょっとした決断が必要だった。我孫子市にとって地元のNPOでもないし、これまで我孫子市への貢献もなかったからである。セミナーの受講者をどのくらい集められるかの不安があった。
一方で、我孫子市はこうした市民活動支援事業を一般のNPOにも開くことで、新たな市民活動支援の段階に踏み込もうとしており、ボーンセンターとしてもこの公募事業は成功して欲しかった。公募事業は、締切日までどの程度の応募があるか分からないが、一定のレベルに達した応募者がないのではないかという懸念もあった。結論として、ボーンセンターは市民活動のレベルアップに必要と思われる企画を独自に提案し、その是非は我孫子市の判断に委ねることにした。結果、ボーンセンターの企画は、書面審査、プレゼンテーションを経て採択された。

 

企画・運営の内容

我孫子市の「市民活動レベルアップセミナー」は、オープンセミナー、連続セミナー(6回+意見交換会)、相談事業の3つで構成された。
(1)オープンセミナー
 オープンセミナーは、10月17日14:00〜16:50に我孫子市民プラザで開催した。開催の趣旨として以下の文を掲げた。「地方分権は自治体内分権・市民自治の充実を期待しており、これからの自治体運営には自立した市民の参加が不可欠といわれている。自治体には既に自治会・町内会などの地縁組織やボランティアグループ、NPOなどの民間非営利組織が活動しているが、それら個々の市民活動団体がそれぞれの特性や役割について相互に理解し、地域の課題解決や地域づくり・まちづくりのために連携していくことが地域力を高める。オープンセミナーは、市民活動団体の役割とネットワークについて改めて考える機会とする。」
基調講演者は、ボーンセンター前代表の延藤安弘さん。延藤さんは、例によって「幻燈とトーク」で全国各地の住民主体のまちづくりの事例を紹介し、誰もが集まりやすい「まちの縁側」の意味や市民がその場所を管理運営することの大切さを強調した。相変わらずの名調子で、参加者は楽しく多くの情報を得ることができたと思われる。
延藤さんは続いてのパネルディスカッションにも参加した。他のパネリスト3名は、我孫子市市民活動支援課に自治会活動、ボランティア活動、NPO活動のバランスに配慮して推薦してもらった。
一粒の麦代表の木田典子さんは、湖北台地区で家族や仲間の応援を得て、ひきこもりがちな高齢者のための食と語らいのミニディサービスと市民の活動と交流のサロン「一粒の麦」を一昨年に建設・オープンした人。林文昭さんは、会社勤務の傍ら自治会長、自治会連合会長、PTA会長を歴任し、湖北台地区の地縁組織を牽引してきた人で、現在は湖北台地区まちづくり協議会の会長として湖北台近隣センターを拠点に、コミュニティの構築や活性化を目的に頑張っている人。大木美鈴さんはNPO法人「あびこ子ども劇場」の事務局長として子どもたちを取り巻く文化環境を整えることに尽力し、湖北台地区社会福祉協議会運営委員や民生・主任児童委員をつとめている人。
コーディネータを務めた川本幸立ボーンセンター運営委員は、一般市民が地域自治に参加するきっかけや参加の課題を中心にパネルディスカッションを進めた。延藤さん以外のばねリストは、湖北台地区で活動しており、特定地域の市民活動の動向を集中的に知る機会になった。我孫子市には、地域づくり・まちづくりの拠点として、地域住民が管理する近隣センターがあり、また、木田さんの「一粒の麦」も地域のサロンということで、市民活動・地域活動にとって交流拠点が重要なことや、人の心を解き放つ交流の大切さが再認識され、終了後に「地域活動にもっと積極的に参加しようと思った」という参加者の感想もあった。


 

 

 

(2)連続セミナー
連続セミナーは、10月21日から11月15日にかけて、基礎講座3回、実務講座3回、振り返り・意見交換会1回の計7回、我孫子市役所分館大会議室で13:30〜16:30の一講座3時間枠で開催した。基礎講座は初級者向け、実務講座は中級・上級者向けと一応は分けたが、1回だけの参加も、基礎講座と実務講座の両方に参加することも自由とした。基礎講座と実務講座は、1回あたり800円の受講料を参加者から徴収した。
 連続講座は、早坂毅さん(税理士・NPOコンサルタント)と浜田忠久さん(NPO法人市民コンピュータコミュニケーション研究会[通称JCAFE]代表理事)の二人をゲスト講師に招き、川本および栗原のボーンセンター運営委員が担当した。早坂さんは、NPO会計の専門家であり、浜田さんは、現在の市民活動がコンピュータネットワークと切り離して語れない中で、日本のコンピュータコミュニケーションのリーダーの一人である。
毎回の講座は、講座全体の時間を前半と後半に分け、前半を講師の講義、後半はグループワークとし、その日の講座テーマに関連した課題を深めるとともに、課題解決について話し合った。
 基礎講座は、「市民活動の目的と組織(講義:栗原)」、「市民活動の運営管理(講義:早坂さん)」、
「市民活動のネットワーク(講義:浜田さん)」の一般的な3テーマで、市民活動の歴史や目的なども含めて基礎的な知識を提供した。実務講座は、「市民活動の資金調達(講義:早坂さん)、「市民活動のIT活用(講義:浜田さん)」、「市民活動の企画・政策提案(講義:川本)」の3テーマで、スキルアップを狙いとしたが、参加者の現在の市民活動に関する知識や経験にばらつきがあり、進め方の難しさを感じたが、後半のワークショップ形式のグループ討議は、参加者同士が互いの活動や市民活動への思いを知るきっかけになったこともあって満足度が高かった。


 

(3)相談事業
 連続セミナーの参加者は、セミナーの中で質問や相談を行っており、12月に一日相談日を開設したが、NPO法人取得に関する相談一件であった。

 



 

セミナー振り返り

 オープンセミナーの参加者は25名、連続セミナーの参加者は延べ65名と、人数的には物足りなかった。連続セミナーには、毎回出席する熱心な参加者が多く、幼児を抱いて参加するお母さんもいた。
彼女は熱心なボーンセンターのファンになってくれた。
 参加者が少なかった原因を分析すると、オープンセミナー、連続セミナーともに開催時間が平日の午後であったこと。特に、オープンセミナーは、多くの市民が集まりやすい時間帯でよかった。
 また、ボーンセンターに我孫子市の市民団体と十分なネットワークがなかったこともあり、応募企画の段階で受講対象者のニーズを把握しきれなかった。応募企画書は我孫子市の業務仕様書にのっとって作成し、連続セミナーの「ネットワーク」や「政策提案」などの斬新な企画を含んでいたが、市民活動の自立してほしいという主催者や企画者の思いが先行し、受講対象者のニーズに必ずしもマッチしていなかった可能性がある。セミナーの企画は、地元の中間支援の市民団体(あるいは協議会のような市民活動団体の連合体)が地域の市民活動団体の課題について検討しながら作成するか、ボーンセンターが作成するにしても、そうした地元の市民活動団体との話し合いを踏まえて作成したほうがよりよい企画になったと思われる。そうした事前準備は、その後のセミナー参加の呼びかけ(広報)、受講者数にも影響したであろう。受講者の満足度が高くても、如何に受講してもらうかが課題として残った。
 受講者の市民活動に関する知識・経験等にばらつきがあり、特に実務講座と銘打ってはいたものの「市民活動のIT活用」の講義などはパソコンを使いこなしている受講者には有意義でも、ITに慣れていない人には難しい講義となった。不特定多数の市民を対象にした場合のスキルアップセミナーは、どの水準のスキルを基点で企画するかの判断が難しい。
 連続セミナーの講義とワークショップの組み合わせは、おおむね好評だった。講義内容を確認できたことや講義内容の応用についてグループで話し合えたこと、受講者一人一人の発言の機会が多かったことで受講者同士の相互理解が促進されたことが高評価につながったと思われる。
 (文責:副代表 栗原裕治)

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