代表のぼやき

2011.02

「美しい都市」とは…?

21世紀に入るとともに、にわかに「美しい都市」が人々の口にのぼり始めた。1996年に出版された五十嵐敬喜ほか著の『美の条例:いきづく町をつくる』(学芸出版社)がきっかけだろうか。きっかけはともかく、都市化の時代と言われる20世紀がつくり出した風景があまりにもみすぼらしかったことが背景にあることは間違いない。しかし「美しい都市」とはどのような都市を言うのか。これまで主観的で議論にのりにくいと避けられてきた「美しい」を、勇気をもって言ってみたものの、いまひとつ言い当てられないもどかしさがつきまとっていた。私も含め、『美の条例』の著者たちが依拠していたのは、C. アレキサンダーのパタン・ランゲージだった。パタン・ランゲージは、確かに生き生きとした空間や都市をつくり出すぐれたシステムである。しかし、美しい都市をつくり出す仕組み(遺伝子にたとえられる)を説明しているが、必ずしも美しさそのものを言い当てていない。そのような限界を感じていたところに、アレキサンダー自身によるひとつの解答が示された。美しい空間に備わる「15の属性」である。2002年に出版された『秩序の本質The Nature of Order』の第一巻『生きているという現象The Phenomenon of Life』に論文が載っている。あえて、英語のまま列記しておこう:
1. LEVELS OF SCALE, 2. STRONG CENTERS, 3. BOUNDARIES, 4. ALTERNATING REPETITION, 5. POSITIVE SPACE, 6. GOOD SHAPE, 7. LOCAL SYMMETRIES, 8. DEEP INTERLOCK AND AMBIGUITY, 9. CONTRAST, 10. GRADIENTS, 11. ROUGHNESS, 12. ECHOS, 13. THE VOID, 14. SIMPLICITY AND INNER CALM, 15. NOT SEPARATENESS.
何のこっちゃと言われそうだが、さっと見るだけでも何か臭いませんか。今年の修士論文で、野口美穂さんがこれに挑戦した。集落の空間構成を読み解き、美しさを生み出している構造を明らかにするという作業だ。集落の空間を構成するパタンを読み取り、それらが15の属性の成立にどのように寄与しているかを明らかにしていった。対象としたのは、長浜を中心都市として、条理遺構の遺る水田地帯に今なお美しい集落が点在する滋賀県湖北地方。美しさの構造がクリアに描き出された。
実は、「15の属性」については、昨年12月の千葉名物“露天風呂”で説明しようとした。だけど、ほかにも話したいことがあって時間が短く、ほとんどの人の記憶には残っていないだろう。再挑戦して皆さんと共有したい。きっとよく暖まる。

千葉まちづくりサポートセンター代表・福川 裕一


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