代表のぼやき

2007.1


今年の重大ニュース
007年はどんな年になるだろうか。私は、社会に積もりつもった矛盾が大規模な地震を起こす年と読んだ。矛盾は世の常とは言え、ときどきエネルギーを発散しないと社会がもたない。今年、まずそのいくつかが爆発するのである。

世界最大の小売業・Wマートが倒産!
 世界で6000店舗以上を展開し、3124億ドル(約37兆円)の売り上げを誇る世界最大の小売業Wマートが倒産した。このところの石油の高騰で、多くの消費者が自動車で郊外のマーケットへ乗りつけることを控えたため、売り上げが激減、資金繰りのめどがたたなくなった。「エブリデイ・ロウプライス」を合言葉に快進撃を続け、全米小売り高の8%を占めるに至ったWマートだが、ここへ来て急速に売り上げを落としていた。石油の高騰が引き金になったが、そもそもはWマートの構造問題だという。アナリストは次のように分析している。「Wマートの主要な顧客層は郊外のあまり裕福でない人たちだ。いっぽうエブリデイ・ロウプライスを実現する低価格は従業員の人件費を切り詰めて実現されたものだ。従業員と顧客層は重なっている。そしてWマートの低賃金は地域全体の所得も引き下げていた。小売業は価格競争が必要だったし、卸業や製造業者も値引きを迫られていたからね。要するに消費者側に金がなくなったのだよ。デフレスパイラルというやつさ。」

参院選、自民党総崩れ!
 第21回参院選で、安倍首相率いる自民党が惨敗した。安倍首相は、首相就任直後の造反組復党問題などで失点を重ねながらも、迫力を欠く民主党に支えられ、教育基本法改正や防衛庁の省昇格など着々と「成果」をあげてきた。にもかかわらずこの参院選で敗退したのは、選挙直前に行われ、テレビ中継された党首討論の結果が響いたからだ。この討論会で、野党党首は首相の持論である「美しい国づくり」をとりあげ、実際に進めている政策との矛盾を追求、首相が絶句したあげくついに本音を語る場面が全国に流れた。日本ではテレビ討論の影響は、アメリカの大統領選ほどはないと言われてきたが、大きく様変わりした。
[テレビ討論]首相絶句の場面は次の通り(要約)。
野党 首相、あなたは小泉首相の改革路線を継承するとおっしゃった。あなたのいう「小泉首相の改革路線」とはひとことで言うと何か?
首相 小さく効率的な政府の推進だ。民間活力をフルに活用する。そのために規制緩和をいっそう進める。民間の自律と公的援助への依存体質からの脱却を進める。「成長なくして日本の未来なし」「成長なくして財政再建なし」ということだ。
野党 市場原理主義だ。あなたはそう言って、企業減税を進め、福祉よりも経済成長を優先してきた。双子の赤字と不景気を招いたレーガノミックスそっくりだ。一方あなたは「美しい国、日本」とするため全力を尽くすとおっしゃる。しかしあなたが受け継ぐと言った小泉改革路線のもとで、都市の郊外や農村部にはどこも同じようなショッピングセンターが続々と生まれ、中心市街地を衰退させてしまった。「美しい日本」は破壊され、地域社会はズタズタ。アイデンティティーを失った若者の問題が顕在化している。
首相 そのために、野党の皆さんのご協力を得て、景観法をつくり、街づくり三法の改正を行った。若者へは教育改革を進める。私は自由には規律が伴うものと認識している。
野党 なるほど、しかしあなたが政府税調の会長に据えたのは、街づくり三法に猛反対した人物だ。あなたの教育再生で検討されている教育バウチャー制度導入もコミュニティを破壊する。「市場原理主義」と「美しい国」がどう両立するのか、説明して欲しい。
首相 両立?・・・(絶句)・・・。いや、私が言っているのは、「美しい都市」ではなく「美しい国」だ。地域も大事だが、国民が自分の国を歴史や伝統をもつ「美しい国」と認識して、「強い日本、頼れる日本」にすることが目標だ。教育改革で「国と郷土を愛する」態度をやしない、「市場主義」で強いものを選別していく。両者は矛盾していない。
野党 「美しい国」は実体というより概念ということか。あなたは、地域を破壊し、よりどころを失った人々に「美しい国」へのナショナリズムを煽っている。国家主義への戦略としては見事だ。しかし、それでは「美しい国」はできない。民主主義を支える市民も生まれない。

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 目覚めると今日は2007年1月1日。初夢に期待をしたけれど「果報は寝て待て」とはいかないようで。皆さん、今年もがんばりましょう。

 

千葉まちづくりサポートセンター代表・福川 裕一

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