代表のぼやき

2005.09


サウスショア銀行
「金融活動を通じで地域の再生を図る」。アメリカ・シカゴのサウスショア銀行のことは、町づくりに関心のある人びとの間ではもうよく知られた存在かもしれない。1985年、1994年と二度にわたり訪問し、その後も常に気になる存在であった。その最新情報を、大学院博士課程のプラフル君が調べてきて、論文にまとめあげようと奮闘中だ。最新情報と言ってもとくに目新しいことはない。1973年にグルジウィンスキーたちが買収したこの銀行は、今も営々と地域再生へ向けた業務にとりくんでいるということだ。
プラフル君はインドからの留学生である。インドのナグプールに住み、プランニングスクールの修士論文ではパウニという歴史的都市の再生をテーマにとりあげた。そして千葉大学では世界の興味深いケースを探し求めていた。そんな彼に、シカゴ大学タウブ教授の『コミュニティ・キャピタリズム』を貸したところ、一晩で読破。いたく興味を覚え、早速タウブ教授に連絡をとり、訪問へと及んだ。このフットワークの軽さには思わず脱帽(見習わなくては!)。彼はその後もう一度シカゴへ出かけ、じっくりと調査、なんとか論文に仕立て上げようとしているのである。
サウスショア銀行のある一帯はシカゴでももっとも荒廃した地区である。この銀行のユニークなところは、小さなフラット(集合住宅)のオーナーに融資し彼らがみずから住宅などの改善を進めることでコミュニティの再生を図っていく点にある。貸し付けは、クレジットカードをもっているか否かといった従来の基準にはよらず、あくまでも信頼に足る人物かどうかの判断に基づいて行う。いったん更地にしてしまう再開発にはよらず、まさに、住民一人ひとりの力を高めることでジワジワと地域の力を高めていこうというまさに王道を行く手法だ。資金は、高いリターンより社会的意義を重視する投資家から集める。地域で集めた資金を高いリターンを求めて世界で運用するというのが銀行の常道だから、これは逆であり、1977年のコミュニティ再投資法を先取りするものであった。この銀行業務を核に、社会活動を行うNPOとディベロパーを設立、連携して地域の再生を図る。
これまでふたつのプロジェクトが取り組まれている。ひとつはパークウエイという住宅地の再生。もっとも状態の悪い建物を買い取って修復するとともに、それ以外の建物の所有者に融資。再生を進めた。一定の地区を対象とすることで再生の効果を高め、他の銀行や政府からも資金を呼び込んだ。もうひとつは、銀行も面するメインストリート71番街の再生。商店街の再生は、住宅地に比べ困難を極める。これぞという商店を支援するがなかなか成功しない。それでも、ショッピングセンターをオープンさせ雇用を生み出した。スターバックスも出店し、雰囲気はだいぶ改善してきた。新しい地下鉄の駅も予定されている。それにしても商店街が難しいのは東西を問わない。

千葉まちづくりサポートセンター代表・福川 裕一


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