Dave Dellinger: From Yale to Jail

 

カバーにある解説

 

 本書の著者、デイヴィッド・デリンジャーは、ボストンの裕福な弁護士の家庭に生まれ、法曹界あるいは政界での輝かしい道を約束されていた。たが、1929年に始まった大不況のさ中のある日、彼は懐中に一文ももたず、すりきれた服を着たまま、名門イェール大学のキャンパスを後にした。貨物列車に乗って移動し、教会の貧民宿泊所に泊り、施しの食事の列に並ぶという道を彼は選んだのだった。デリンジャーが、「アッシジのフランチェスカ」の道を自分なりのやり方で歩みだそうと心に決めたのは、浮浪者の集る路上で暖をとる焚き火を囲んでいた時のことだった。デリンジャーは、ニュージャージー州ニューアークの貧しい人びとの中に居を定め、南部諸州での自由のための行進に幾度となく加わって時には襲われて血を流し、投獄された監獄の中では数知れぬハンスト抵抗の先頭にたった。ダンバリー監獄の独房では自らの死にも直面したが、最後までそなわっていた勇気が彼を生の世界に連れ戻した。彼はつねに、自分に敵対するものに友好の手を差し伸べ、共通の基盤を探りだすのだった。

 デリンジャーは、ベトナム反戦の街頭政治闘争にガンジーの非暴力抵抗の原理を導き入れ、彼の個性の力そのもので幅広い反戦のための大連合を組織した。1968年、マスコミの上で「シカゴ警察暴動」と報じられた事件では、彼は「全世界が見つめている」という有名な言葉で、事実全世界の注目をそこに引きつけた。彼の生涯を通じて変らぬ社会変革への献身は、いわゆる「シカゴの8人」と言われる裁判で、ジュリアス・ホフマン判事を前にした時に、最も輝かしい光輝を放った。デリンジャーと仲間の被告たちは、裁かれる場を政府を裁く場へと転換させたのである。こうした日々への彼の回顧は、1960年代の極めて危機的な出来事の多くに、今新しい光を投げかけ、疾風怒涛の時代のあのドラマに新たな生命を吹込んでくれる。60年代に起こった出来事について、とりわけあの10年間を彩ったマーチン・ルーサー・キング・Jr、アビー・ホフマン、ベイヤード・ラスティン、A・J・マスティ、ドロシー・デイ、ジェリー・ルービン、ジョーン・バエズをはじめとする数々の人物について、彼が初めて語る評価は、われわれの生きる現代の歴史の中で欠くことが出来ぬ一章である。

 何よりも、本書『イェールからジェイルへ』は、並外れた知性による心の旅路の感動的な記録であり、血を躍らせる物語であるとともに、深く胸に迫る一書である。

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 デイヴィッド・デリンジャーには、『ベトナム再訪』『知識よりも強い力を』『革命的非暴力』など6冊の著書がある。今は、ヴァーモント州に夫人とともに暮らし、各大学をはじめ、アメリカ各地での講演にたびたび招かれている。

 

カバーにある書評の一部

 

 本書をよむ以前から、私はデイブ・デリンジャーを知っていたし、大いに尊敬もしていた。いや、そう思っていた。だが、このすぐれた書物を読んだ後、私の尊敬は畏怖以上の何かへと変ってしまった。自らの人生を刻んで、人を真に鼓舞させるようなものを生みだせた人間は、世界にそう多くはいない。この自伝は、まさにそうした数少ないものの一つである。

ノーム・チョムスキー

 

 これは、私たちが耳にすることはしばしばあっても、なかなか巡り合えることのないアメリカ人、結果の如何を恐れず、真実を語ってそれを力に変える自立した魂の、深い感動を与える物語である。デイブ・デリンジャーは、「シカゴ共同謀議の8人」の中では最も年長の人物だったが、その8人の中で最も不屈の人物でもあったことも今や明らかである。本書は、その理由を私たちに語ってくれる。

スタッド・ターケル

 

 デイブ・デリンジャーの生涯は、さまざまなスパイスで味付けをしたアップル・パイそのものと言ってもいいほどアメリカ的なものだ。行動的で、弛むことなき創造的な平和活動家の、抵抗と、不屈の決意と、積極性に貫かれた生涯である。それは、歴史的な数々の場面の中心部に生きた人物の心躍らせる物語である。これこそ、なかなか掘出されることもなく長い間地中深く埋もれていたアメリカの伝統なのである。

グレース・ペイリー

 

 二〇世紀で最も偉大、最も勇敢な革命的非暴力主義者の一人による、力強く、感受性に富み、そして深く共感をそそられる回顧録。

マーチン・シーン

 

目次 謝辞

 プロローグ

 第1章 そもそもの始まり(第1〜10節)

 第2章 監獄(第11節〜17節)

 第3章 ベティとの出合い(第18〜19節)

 第4章 再度の監獄(第20〜30節)

 第5章 ベトナム(第31節〜43節)

 第6章 マーティン・ルーサー・キング(第44〜47節)

 第7章 抗議から抵抗へ(第48〜51節)

 第8章 シカゴ裁判(第52〜63節)

 第9章 政治の背後で(第64〜72節)

 付録  ○アメリカの共産主義者と平和運動

  ○破壊活動のある種の有効制と危険性

  ○1951年の「世界市民平和計画」の期間中にソ連軍兵士にまかれたリーフレット

  ○ベトナム民衆との共同平和宣言

  ○パールハーバーに関する証拠

  ○正義への渇望

索引

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