32  ケーリとブッシュ(その1とその2) (現地時間 2004年07月24日 17:14:31発 日本時間 25日 03:14:31受信)

(1)
短く。
私の友人たちの判断が正しいのだとしたら、私はアメリカ人としては新米なので、大統領選挙のようなアメリカ的政治イベントに対する政治判断がうまくつかない、すでにブッシュに勝ち目はない。もし公正に選挙が行われたとすると、ブッシュの再選はないということ。
 ただしこれで万歳ということではない。
 ひとつ。このままブッシュが引き下がるかどうか分からない。
 一週間ほど前に、ブッシュが、もしテロリストとが大統領選挙を攻撃する可能性が高くなったら、大統領選挙を延期する、と言ったが、そうやって大統領に居座る、ということで、アメリカ政治史上、こういうことはない。テロの恐怖をかりたてて、大統領選挙を延期、自分は大統領のまま、いい条件をつくりだし、大統領選挙をおこない、再選をはたす。こうでもしなけば、再選のチャンスはない、という判断があるからだ。この右翼キリスト教政権、テキサス石油利益政権とネオコンの組み合わせ政権は、こういうようななりふり構わないクーデターをおこなうかもしれない。前回、彼らはそれをやった。何が起こるかわからない。
 ふたつ。ケリーとエドワードが政権をとって、それでどうやてイラク情勢・世界情勢、あるいはアメリカ国内でこの四年でブッシュが破壊したものを修復するのか。
 いまのところ、そんなことは分からない。とりあえず、ブッシュの再選を阻止する。
 そういうこと。
 立て続けに二本、ブッシュ政権をとりあつかったドキュメンタリーを見た。ひとつは、マイケル・ムアーの華氏911度。政治的プロパガンダと言うのは簡単すぎる。いいものだと思う。例のマイケル・ムアーのスタイルは、影をひそめている。短期間で、集団で作ったもの。
 彼の出身は、映画で隠さずにだしているが、アメリカのワーキングクラスで、画面に登場するときもそのスタイルだ。だから人々は、彼に対して抵抗しにくい。東部インテリではなく、西部リベラルではない。だがものすごく頭がいい。それをあのスタイルで、隠している。とんでもない人がでてきたものだ。ただ映画の完成度、彼のスタイルの完成という点においては、GMモータースをあつかった10年ほど前の「ロジャーと私」が一番いいと思う。日本では、公開されただろうか。レンタルビデオ屋にあったらごらんください。

(その2)

ぼくと同じようにカリフォルニアに住む友人にして、やはり新米アメリカ人のAさんから、即座に返事がきました。共有したいので、転送します。
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室さん
 私は、「ブッシュ負け」の風が吹いていると思うけれど、「ケリー勝ち」ではないのが、どうも居心地が悪い。だから、「ブッシュ勝ち」ではなくても「ブッシュ負けなし」があるかもという変な感じがしていた。今までのブッシュ支持が、恐怖心を煽られた結果で、その恐怖心を煽ることを小出しにして、ブッシュのたった一つの支持者獲得戦略が「テロの恐怖」なら、大統領の椅子に居座るための方策も、その線の可能性は大有りのように思う。
 映画「華氏 9/11」のすごさは、映画の中のほとんどの情報が、新しい情報ではなく、一般のアメリカ人が見聞きしたことのある情報だということ。そういうニュース情報が、目や耳に入っても、通常の人間の記憶には残り続けることもほとんどなく、結果的には総合的に論理的に考える思考方法ができない人がほとんどで、大きいものに呑み込まれ、長いものに巻かれることになってしまっている。この映画がなかったら、記憶の底に埋もれていた情報を思い出すこともなかっただろうと思う。
 例えば、ビンラディンの家族や親戚が、9/11の直後に国外退去したこと。その時「変だな!」と思ったけれど、時間が経ったら忘れていた。アメリカとサウジアラビアとの密接な関係だって、誰でも知っていることだと思うけれど、この映画のように見せられ考えたアメリカ人は少数だったろうと思う。
 ブッシュやチェイニーが関わった企業が、実際には何をしているのか、誰と密接な関係があるのか、誰が株主で出資しているのか、アメリカが認めたアフガニスタンやイラクのリーダーが、リーダーの座に付く前にアメリカで何をしていたのか、どういうアメリカ企業と関係があったのか、などは、個人でも調べれば調べられるのだろうけれど、わざわざ調べる人も非常に少なかっただろうと思う。この映画は、わざわざ調べなかった人たちにも、その事実を報道したことは、すごいインパクトがあったと思うし、これからもあるだろうと思う。
 ブッシュが、ブッシュ自身が代理業をしている陣営にとって、いかに「有能」であるかと同時に、一般の人々にとって、いかに「無能」であるかが非常に良く分かった映画でした。

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Kenji 室 謙二

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