376 花崎皋平さんが詩集『おたるとみおか 偶感詩片』を上梓。(05/01/14掲載)

 小樽在住の哲学者、花崎皋平さん(元札幌ベ平連代表)が、このほど、詩集『おたるとみおか 偶感詩片』を私家版として発行されました。小樽の富岡で、あるいは世界各地を旅しながら詠 まれた48編の詩が掲載されています。優しく、暖かく、厳しく、判りやすい詩が並んでいまふす。ここでは、この詩集の中から、ベ平連に関係あるものとして、二つを転載、ご紹介します。 

    冬の海 鶴見良行の思い出に

雪が海に浸み 黒線色に染まって消える
チカが釣れるというが 釣り人はいない
錆びたロシア船が停泊中
船員たちは、アーケード街を歩いているだろう

あなたはこの町に住みたいと言っていた
観光客の来ない 古びた小さな飲み屋で
ガルショーチェクやユクのさしみやマグロの頭のトロで
ウォッカを一緒に飲みたかった
きっと話が弾んだでしょう
料理の上手なマスターとも
わたしはおトミさんとつれだつて
よく町を歩いています
古い蔵を改造し
網元の底光りのする調度を据えたそば屋さん
朽ちかけた軒の下で
味のいい大福を一日分ずつ作って売っている餅屋さん
きっと あなたも千代子さんも気に入ったでしょう

町は歩いて用が足せる広さ
行きつけのすし屋は 極上の味
幽霊でもいい 遊びに来ませんか

 (ガルショーチェクはロシア語で土鍋。スープを入れ、パイ皮で蓋をしてオーブンで焼いた料理を指す。
 ユクはアイヌ語で鹿のこと。)

      循環聖

三里塚東峰の小泉英政さん 美代さん
二人で循環農場を興した
多品種少量生産の元気な野菜たちを
ワンパックで産地直送する
肥料は木の葉と米ぬかだけ
種も自家採種する
ビニールなど石油化学製品は一切使わない
空港建設に反対した大木よねばあちゃんの遺志を継ぎ
用地内に建てた粗末な小屋で暮らして 三十年
英政さんはロマンスグレイ
美代さんは まえよりキラキラ光る黒い瞳
生き方としての農業に磨かれた
おだやかな物腰
日々の暮らしが彫り上げた
作品としての二人像

昔風に名づけて
循環聖

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