306. 福島菊次郎さんの書き下ろし著書『写らなかった戦後 ヒロシマの嘘』刊行(03/07/09掲載)

 自衛隊や軍需産業の実態を明らかにした写真や、三里塚闘争、ベ平連運動などの写真をとりつづけ、多くの優れた写真集を刊行し、また、「写真で見る日本の戦後展」を全国で巡回開催してきた写真家、福島菊次郎さんが、このほど、写真集ではない書下ろしの文による著書を初めて出版されました。
 福島さんは、ベ平連関係の写真多数と、その使用権をすべて無料で旧ベ平連グループに寄贈されたあと、山口県の無人島に居を移し、1999年には山口県に常設の展示写真館も開設したのですが、その後、この写真館と連絡が取れなくなり、また、島に出した郵便物も戻ってきてしまって、気がかりになっていました。今回の著書によって、その後の福島さんの状況も明らかにされました。
 写真家が、写真集ではなく、文章による著書を出すにいたった事情も、この本に述べられています。福島さんの近況とこの本の出版にいたる福島さんの気持ちを記した、出版元の現代人文社編集部、木村暢恵さんからの手紙の一部を以下にご紹介します。

 ……福島さんは1982年に、日本の国とご自身の写真家としての前途に絶望して東京を捨 て、瀬戸内の無人島に入植し、自給自足の生活を始められました。その後、お体を壊さ れ、89年、病院のベッドでテレビを見ているときに昭和天皇の死と出合いました。天 皇が戦争責任を果たさないまま死へ「トンズラ」することへの怒りと、日本の戦争責任 を世に問うために再び写真の世界に戻り、10年がかりで「戦争責任展」「写真で見や 日本の戦後展」を全国520会場、行脚されました。その後、99年山口県下関市に、 2000年には同県柳井市に常設の写真館を開かれましたが、粁余曲折があって誠に残念 なことですが、いまはすでにどちらも閉館となっています。                                                         
 このように波乱万丈の人生を歩まれてきた福島さんが、「写真だけでは表現できなかっ た戦争の実態を知らせたい」との思いで執筆されたのが、今回の『写らなかった戦後 ヒロシマの嘘』です。原爆によって親子兄弟の関係が崩壊した家庭や、ケロイドによっ て女としての普通の幸せさえ奪われた女性たち、幾世代にもわたり襲いかかる放射能の 恐ろしさなど、40年という取材で見聞した内容と平和への願いが綴られています。……

 『写らなかった戦後 ヒロシマの嘘』は、現代人文社 2003年7月刊。 定価\1,900 + 税です。


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