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ナイロビ・サミット(対人地雷全面禁止条約第一回検討会議)報告 |
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東京事務局
加藤美千代 |
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2004年12月 | |
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11月28日から12月3日まで、ケニアのナイロビで地雷禁止条約第一回見直し会議(ナイロビ・サミット)が開催されました。難民を助ける会からは、東京事務局の加藤美千代、アフガニスタン事務局の宮崎巧治とザビ・ナデクワンシィ、そしてアフガニスタンの不発弾の被害を受けたナデル・シャーくん(17歳)が青年大使としてナイロビ・サミットに参加しました。以下はその参加報告です。
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■ナイロビ・サミットとは? 対人地雷の使用、生産、移譲、貯蓄を禁止する国際条約「地雷禁止条約」が発効してから5年経ちました。 今回のサミットの目的は、地雷禁止条約に加入している政府(締約国)が、過去5年間の活動を振り返り(検討)、評価し、これから5年間(2004年から2009年)の行動計画を作ることでした。締約国143カ国のうち110ヶ国が参加しました。期間中にエチオピアが新たに条約に加入し、締約国の数は144カ国となりました。
ナイロビ・サミットについての詳細は、地雷廃絶日本キャンペーンホームページ(日本語)。または、地雷廃絶国際キャンペーン(英語)をご覧下さい。
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■難民を助ける会のナイロビ・サミットでの活動
難民を助ける会のメンバーはさまざまなイベントに参加しましたが、そのうちの一部を紹介します。
(1)サバイバー・サミット(地雷・不発弾被害者のサミット) (2)アフガニスタン地雷回避教育 映画イベント |
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(1)サバイバー・サミット(地雷・不発弾被害者のサミット) (11月28日 10:00‐12:30)
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サバイバーサミットの様子 |
壇上にあがるサバイバーたち | 世界31カ国から約42名のサバイバー(単なる「被害者」とは異なる。詳しい定義はこちら)
が参加しました。そのうちパネリストとして9名が壇上に上がり、6名の政府代表(オーストリア、ノルウェー、カナダ、アフガニスタン、ニカラグア、タイ)と対面して話をしました。42名ものサバイバーが集まり公式の場所で政府代表と話をかわしたのは過去には例がありません。
会場に集まったのは200名あまり。議長を務めたのは自分自身も地雷被害者でアメリカのNGO(ランドマイン・サバイバー・ネットワーク)の共同代表をしているケン・ルスゴード氏と地雷被害者であるチリの大使2名でした。
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政府代表を迎えるナデル君 |
ナデル君は、サミット期間中も終始活発に活動していました。 |
サバイバーと政府代表が向かい合うように席につきました。そして3日間にわたる事前準備の際に立候補したサバイバー9名が壇上にあがり、自身の経験を踏まえて、政府への要望や必要とすること9項目を力強く訴えました。9項目の中には、社会保険制度の整備や社会経済への統合、データ収集の改善、法律の整備などがありますが、共通して繰り返されたのは「参加」と「Inclusion」でした。 その象徴としてサバイバーたちは"私たちを抜きにして私たちのことを決めないで:Nothing
about Us Without Us"という言葉を何度も使用しました。
サバイバーの要望をうけて政府の各代表が意見を表明。アフガニスタン政府も被害者支援に力を入れていく旨を発表しました。そして、サバイバー自身がこれからの目標や自らのコミットメントを一人ずつ述べました。 |
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難民を助ける会と子どもサミットの紹介をしました |
プレゼンテーションを行う加藤(写真中央) |
質疑応答のあと、8月に新旭町で開催した「世界子どもサミット」について難民を助ける会の加藤が紹介し、採択された「青年サバイバー宣言」をナデル君が朗読すると同時にスクリーン上で紹介し、拍手をいただきました。
(ナデル君は、6歳の時に両手と右目を失いました。「地雷をなくそう全国こどもサミット」、「地雷をなくそう世界子どもサミット」、「対人地雷青年セミナー」などを通じて、難民を助ける会が支援している青年です)
ナデルくんは、宣言文を読んだり、サバイバーサミットに来場する政府代表や一般参加者を門で元気よく迎えたり、積極的に友人を作ったりと終始活発でした。宣言文を英語で読む練習も何度も何度も行いました。サバイバーサミットの後にはケニアのTVなどメディアにも注目されました。 |
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地雷被害者のマラソン大会 |
ナデル君(写真後列右2番目)も参加し見事10Kmを完走しました。 |
また、ランドマイン・サバイバー・ネットワークによる12月3日の障害者の日記念行事ではサッカーを披露し「僕たちは自分でできるんだ:We
can do
it!」というメッセージを多くの報道陣や参加者に伝えることができました。また、ナデルくんは27日の朝6時から行われたマラソンにも参加し、見事10Kmを完走しました。
またサミット期間中に、アフガニスタン政府の招聘により、NGOからの参加者(ナデルくん、ザビさん)を含むアフガニスタン人全員が会食を共にしたようです。今までナデルが難民を助ける会と共にした努力が実を結んだような気がしました。 |
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ナデル君が朗読した宣言文 |
ユース・サバイバーズ宣言文 |
Youth Survivor's Declaration |
もう私たちに流す涙は残っていません。泣きつくしたからです。 今、私たちがすべきことは、生きていくこと。そして世界に向かって、私たちは手足がなくても、同じ人間だと証明することです。 人間として、私たちには同じ心、同じ気持ちがあります。 だから私たちは生き続けます。私たちには世界の発展に貢献する力があるのですから。
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We shed all the tears we had to. Now what we have to
do is to live and show the world that although we have
fewer limbs, we are all the same. We have one heart, one
mind so we are all human beings. Therefore, we have to keep
on living because we can contribute to the development of
the world. | |
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●アフガニスタン地雷回避教育 映画イベント(12月2日 14:00〜15:00)
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映画イベントの様子 |
右側のスクリーンで映画を見ながら意見交換などを行いました。 | 難民を助ける会のアフガニスタン事務局では、アフガニスタンの人々が地雷や不発弾の被害にあわないようにする教育(地雷回避教育)を行っています。2004年夏にはアフガニスタンの有名な俳優や国際的に有名なアフガニスタンの女優・マリナさんの協力を得て、地雷の危険を伝える短編映画を製作しました。
ナイロビ・サミットは地雷廃絶活動をするNGOや国際団体が350人ほど集まるとても大きな会議です。この機会を利用して難民を助ける会は製作した映画を上映しました。映画を上映すると、観客30名あまりから拍手があがりました。
アフガニスタン駐在員の宮崎が映画の作成過程やアフガニスタンのプログラムについて説明し、その後、参加者から「映画の製作費用は?」「アフガニスタン人の映画に対する反応は?」「他のプログラムも行っているのか」など、活発な質問がだされました。ナデルくんは被害者の目から見た難民を助ける会の地雷回避教育やその必要性に関するスピーチを英語で行いました。 |
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映画イベントの様子 |
右側のスクリーンで映画を見ながら意見交換などを行いました。 | ●ナデル君スピーチ 「僕は4ヶ月まえに、難民を助ける会が製作していた地雷回避教育の映画を手伝いました。地雷や不発弾の危険性を多くの人に知ってもらいたかったからです。アフガニスタン人は映画を見るのが大好きなので、映画を使って危険を伝える方法は効果的だと思います。僕自身もアメリカやインドの映画をよく見ます。 僕は不発弾の被害にあいました。他の人たち、特に子どもたちには僕が体験したようなひどい経験をしてほしくありません。映画製作に関わろうと決心したのは、そんな願いがあったからです。
出来上がった映画を見て僕も地雷や不発弾の危険性についてたくさんのことを学びました。もし地雷や不発弾の教育をうけていたら、不発弾を触るなんていうことはしなかったと思います。僕の人生は不発弾を触ったことで180度変わってしまいました。自分が映画に出ているのを見るのはとても嬉しいです。映画を通して簡単に地雷や不発弾の危険性をみんなに伝えられるとわかったからです。
僕は不発弾の爆発で両腕と片目を失いました。僕の人生や生活はとても苦しいです。 もうアフガニスタンに戦争はいりません。世界のどこの場所でも戦争はいりません。 もう地雷や不発弾を作らないで下さい。地雷や不発弾を早く取り除いてください。 これが僕の、世界へ届けるメッセージです。」
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■地雷被害者への注目が高まったサミット 地雷・不発弾のサバイバーの存在がとても目立ったサミットであったと思います。期間中、サバイバーたちがずっと国連の会議場にいて、積極的に政府の代表と話をしていたのは印象的でした。なぜ地雷がゼロにならなくてはいけないのか、なぜ政府やNGOが地雷を廃止するために努力を続けているかというと、これ以上地雷の被害者をださないためです。今までは、地雷禁止といえば地雷を除去することだけが注目されがちでしたが、これをきっかけに地雷の被害者の声を反映した支援プロジェクトやそれに対する支援が多くなればと思いました。 |
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「サバイバーとは」 今までは地雷や不発弾の被害にあった人たちのことを「地雷・不発弾の被害者(Landmine
Victim)」と呼んできました。しかし、「地雷の被害」は身体的な被害にとどまらず、障害者になることで仕事を失ったりというような社会・経済的な被害も含まれます。なので、障害を持った人の家族も「地雷の被害者」に含まれます。この区別を明確するために、最近では、身体的に地雷・不発弾の被害にあった人をサバイバーと呼んでいます。 |
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