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ノンを支持するフェミニスト共闘会議


2005年5月19日

 農民連盟女性委員会
 「平等」女性グループ
 SUD(連帯)系労組連合女性グループ
 attacの女性・ジェンダー・グローバリゼーション
 もうひとつのヨーロッパを目指すヨーロッパ・フェミニスト・イニシアチブ
 ペネロペイアたち
 「決別」のための女性ネットワーク


 
 2005年2月に組織された最初の会合の際に、いくつかの女性団体が、男女平等の名においてこの憲法に反対するすべての人々の声を伝えるために自分たちの努力を結集させることを提案した。われわれは来るべき5月29日にこの憲法に対して「ノン」の投票を訴えるが、今、このキャンペーンにおけるわれわれの誓いである以下の政綱を提案する。

 フランスにおいては至るところで、ほとんどの場合に統一的なやり方で、憲法をめぐる大々的な論争が組織されている。このキャンペーンの成功は明らかに、ますます多くの賃金労働者にとって、自分たちが受けている新自由主義路線の政策と欧州憲法にこれから確実に盛り込まれる予定の内容との間には実際につながりがあることを立証している。市場と自由な競争がこの憲法の中心的価値観であり、それ以外のすべてのことがこの価値観に従属させられているからである。市場と競争の支配は、ここ20年間にわたって失業と貧困と雇用の柔軟性を拡大してきた。女性はこの社会的後退の影響をとりわけ受けている。こうした情況の中で、女性の権利がヨーロッパではまったく優先されていないので、女性の要求はモラル的要求や無条件に民主的な要求であるとはますますみなされなくなっている。

 市場と競争の名において、公共サービスと社会保障の解体が始まっており、この解体に伴って、女性の生活条件、とりわけその庶民層の生活条件は周知のように悪影響を受けている。定年退職年齢が後退させられ、最低社会保障水準と失業手当が大幅に引き下げられた。この攻撃は貧困を激化させており、貧困の影響を受ける過半数の人々は女性なのであり、とりわけ移民女性なのである。

 欧州憲法は、女性の権利にとって、とても前進を表すとは言えないものであって、重大な退歩を招きかねない内容を含んでいる。それはとりわけ軍事予算の増大を計画している。この憲法は、新自由主義のドグマを唯一の基本原理としているので、社会的権利を競争の尊重に従属させ、家父長的支配の影響を強めている。実際:
 女性のための基本的権利はこの憲法には存在していない。「ウィ」(賛成)支持者の主張に反して、基本的権利に関する憲章の箇所はおよそ進歩を体現するものではない。それどころか、それは、以下のような数多くの不可欠な女性の権利をあえてますます棚上げにするようになっている。

・堕胎の権利、避妊の権利、自分の性的方向を選択する権利。ヨーロッパの多くの国(ポルトガル、アイルランド、ポーランド、マルタ、キプロス)では、女性は、われわれが譲渡できない既得権とみなしているこれらの権利をまだ享受できていない。
・暴力なく生活する権利。ヨーロッパでは、女性に対する男の暴力が、癌と交通事故に続く、死亡と障害の主要原因であるのに、この権利に対する関心のほぼ全面的な欠如は、家庭内暴力、強姦、強制結婚、性器切除を黙認することになるように思われる。

・離婚の権利。もし結婚し家庭を築く権利がU−69条で保障されているとすれば、離婚によって婚姻を終了する権利もはっきりと定められなければならない。

・売春目的の人間の売買の禁止。売春に関する評価についてそれを「仕事」であるとみなす曖昧な立場にとどまるなら、この活動の合法的承認がなされる可能性があるけれども、われわれにとって売春は近代の性的隷属制度に属するものである。多くの女性が貧困と失業のために売春の犠牲者となっている。奴隷制度と強制労働を禁じているU−65条は、売春目的の人間の取引と売買を明確に禁止していない。その代わり、憲法の条文は、売春で得られた資金のマネーロンダリングの場になっているタックスヘイブン(租税回避地帯)を制限することを禁じると規定しているのだ。

・代議制民主主義を定義する際に男女同数の代議制民主主義はもはや言及されていない。この原則の再導入によってヨーロッパにおける決定権限の男女間の均衡ある代表制の実現が可能になるだろう。

・EUの市民権の定義は、投票権、被選挙権、移動の権利について、住民にまで拡大されていない。移民の外国人女性は、余りにもしばしば自分の夫の地位に依存することになっている。これらの女性たちは、出身国の人法や人種差別主義にますます従わされるようになっている。

・亡命権。この数年来、ヨーロッパのフェミニスト団体は、性の選択やセクシュアリティー選択のせいで女性が受ける暴力、抑圧、迫害を根拠とした亡命権に関しても、拡大され、認められるべきだ、と要求してきた。

・社会的権利に関する憲章は、これらすべての権利を盛り込み、少なくとも非退行的条項を組み込み、権利全体の中のより高い水準に合わせるような道を取るべきであったのに、実際にはそうはされていない。


既得権と思われていた一部の権利が後退している

・宗教との分離の原則が保障されていない。T−52条は、宗教団体にまったく特別な地位を与えている。同条は宗教団体に対して「そのアイデンティティと特別な貢献」を認めているからである。EUは宗教団体と「開かれた、透明で、定期的な対話」を維持するというのである。これは女性が勝ち取ってきた自由にとって危険なものとなる。宗教は、より劣悪な情況のもとに女性をつなぎとめることによって家父長制を支え、打ち固める役割を余りにも長きにわたって果たしてきた。だからこそ、EUのすべての機関ならびに規則の宗教からの分離の原則を再確認すれば、公式宗教や宗教的原理主義やさまざまな地域共同体主義の圧力に抗して、女性の権利を保障することができるであろう。

・雇用の権利、最低所得を得る権利、年金と失業手当を受ける権利は、この憲法条約案ではもはや認められていない。すべての人に対して憲法条約は「働く権利」と「雇用を追求する自由」(U−75条)しか認めていない! ところが、失業手当を受けていない失業者や低賃金労働者層や最低社会保障受給者の中では、女性が多数派である。フランスでは、女性は貧しいブルーカラー労働者の80%を占めており、老齢年金最低保障以下の年金しか受け取っていない定年退職者のうちの83%が女性である。

男女平等の概念が新自由主義の論理に奉仕する手段となっている

 憲法条約第V部に盛り込まれているEUの政策は、現在の新自由主義的政策のよりいっそうの強化を計画するものである。雇用に関する指針を通じて憲法に盛り込まれているヨーロッパの雇用戦略(V−206条)は、男女平等概念を新自由主義的論理のための手段にしている。こうして、その戦略は、失業を減らすことを目指すのではなくて、労働市場に入っていない人々、とりわけ女性を労働市場に参入させることによって雇用可能対象者の範囲を広げることを目指しているのである。失業を高い水準のまま維持することは、実際、労働条件と給与の引下げに向けた圧力をかける上で好都合なのである!

 家庭と職業との「両立」の名のもとに、この戦略は、パートタイムや柔軟な勤務時間体制を正当化している。パートタイムがとりわけ企業にとって有利であり、賃金生活者にとって不利であるという事実を注意深く覆い隠しているのがまさにこの都合のよい提示の仕方にほかならない。それは、部分的給与(パートタイム給与)、部分的退職と同義語であり、しばしば押しつけられているのであって、部分的失業に等しいのである。同じく、労働時間の多様化も、労働者それぞれが自分の労働時間を「選択したい」という願望に対応するものとして提起されている! 憲法条約V−203条は、自己適応に応じることができる……労働力を推進する」ことについて語っている。ここで問題になっているのは、全面的な柔軟性に向かうということである! 雇用の質に関する規範が不在の中では、どのようなものであれ、ちょっとした半端仕事が拡大する危険性が大きいのである。

 以上すべての理由からして、われわれは、基本的権利の実現を女性に保障しなければ、ヨーロッパに未来はないと考えているのである。

 基本的権利と公共サービスが市場よりも優先されるヨーロッパだけが女性が闘いの中で勝ち取ってきた権利を保障し、両性間の平等を前進させ、諸権利全体の中の高い水準に合わせることができるだろう。連帯にもとづくフェミニスト的で平和なこのもうひとつのヨーロッパは可能だ。

2005年5月