フランス大統領選第1回投票結果の教訓
ATTACフランス運営評議会の宣言
2002年4月23日、パリ


極右勢力の代表の第2回投票への進出と棄権票の記録的な多さというフランス大統領選挙第1回投票の結果は、すべての民主主義者、そしてとりわけATTACの会員を愕然(がくぜん)とさせるものでしかなかった。この結果を生み出した原因は、昨日、今日の問題ではなく前々からあった。選挙宣伝上の思いつき的発想が本質的論争よりも優位を占めた選挙戦では、四半世紀以来続いてきた自由主義的グローバリゼーションやそのさまざまな形態やヨーロッパとフランスへの悲惨な影響が主要候補者によって覆い隠されてしまった。選挙結果にそうした影響が再び表現されたからといって、それは果たして本当に驚くべきことなのだろうか。ATTACは、論争のこのような圧殺を、最も貧しい人々の要求に対してまったく自らを閉ざすこの姿勢を公然と断罪してきた。しかし、その声に主要候補は誰も耳を傾けなかったのである。

この二〇年以上にわたって歴代政府が行なってきた多くの政策が、今度はヨーロッパの「至上命令」という名の下に前政府によって追求されてきた。類を見ない規模での民営化、公営企業の「自由化」、社会的最低生活水準を大幅に引き上げることの拒否、高額所得層への課税の引下げ、ストックオプションへの優遇税制、株価のための人員整理の承認、さらにはその正当化、遺伝子組み換え食品への好意的姿勢などがそれである。「現代性」という主張で自由主義的ドグマへの屈服を覆い隠そうとしているのだが、これはうまくいってはいない。これらの政策において、民衆は、あらゆる排除の形態と闘う上で必要な手段−−そしてこのような闘う手段は実際に存在している−−を駆使しつつ、よりいっそう公正で、連帯的で、持続可能で、配慮が厚く、金融の強制と決別した社会を目指したいと考えている。政府の以上のような政策は民衆のこの願望と真っ向から対立するものである。

来るべき時期に向けて発表された決定、とりわけ、バルセロナのEU理事会で首相と大統領が共同で行なった約束(公共サービスの解体計画、年金基金の創設、定年退職開始年齢の5年延長など)について言えば、カタロニアの首都(バルセロナ)で40万人の参加者がデモ行進していた、まさにそのときになされた以上、これらの決定はほとんど挑発に等しいものであった。

「市場」は最終審における決定権者とみなされている。以上すべてのことが明らかにしているように、「市場」への肯定的な「兆し」が優先される中で人民の主権は消え去っていくに違いない。金融のために自ら身を引き、経済的、社会的不安定を自身で組織した政府の政治機関と与党は、登録有権者の3分の1の票しか得られなかった。実際、なぜ与党に投票すべきなのか、と多くの人々が考えた。なぜなら、これらの与党は、その大半が自由主義的グローバリゼーションの単なる代弁にすぎないヨーロッパ・レベルの政策の束縛から外れては行動できないと主張しているからである。

治安悪化問題の出現をめぐるマスコミ機関の連日の報道に強迫観念の政治的利用という点で決定的責任があるのであって、そうした報道は選挙選における論争を決定的に歪めてしまった。この治安悪化について、その原因とその対策は明確に述べられなかったし、治安悪化問題が抑止されることもなおさらなかった。この問題は、ジョージ・ブッシュの「テロリズムに対する闘い」が国際レベルで果たしたのと同じ役割をこの国において果たしたのだった。真剣な分析を妨げ、強権的政策を実施するという役割がそれである。最後に、この掛け金をかっさらっていったのはファシスト的極右の候補者であった。その無制限なデマゴギーによってこの候補者はまた、四半世紀の間に行われてきた自由主義的政策によって脅かされたり、この世界で無用者の地位や排除された人々の地位に追いやられると感じている数多くの人々の票を引き寄せることができた。

ATTACにとって、失われたり、放棄されたりした場を民主主義によって奪還することは、フランスだけでなくヨーロッパのそれ以外の地域でも、選挙での投票の場と街頭においてファシスト的極右のテーゼと影響力に反対する思想の面での決定的な闘いを通じてなされる。

ATTACは、思想面においてまず第一に、とりわけ民族主義的、排外主義的、人種差別的、性差別的な愚かしい論議で有名なそのル・ペン派の「綱領」が、MEDEF(フランス企業運動)の最もすばらしい夢のよりはるか先を行っているのだという点を訴えていく。だが、この闘いはとりわけ、新自由主義の論理との根本的な決別を必要とする。この論理は、ヨーロッパの他の諸国と同様にフランスを次のような情況に陥れてきた。すなわち、まず第一に、最も貧しく社会の一番片隅に追いやられた市民が公共の介入を諦め、民主主義の最悪の敵に有利になるように自らの反乱をそらしてしまうような情況に陥れてきたのである。当面の選挙目当てという目的でこれらの政策をちょっと手直したり、応急措置をほどこすだけでは、誰をもだますことができないだろうし、ただ政治的代議制の危機をよりいっそう激化させるだけだろう。

選挙の場を放棄することはできない。ファシスト的極右を破産させるために、大統領選挙の第2回投票でその得票数を最小限にすることが重要である。このことはまた、明日の力関係を建設するための必要条件でもある。

街頭は、市民が自らの声をあげなければならないもうひとつの場である。この点で、ATTACは青年との連帯をはっきりと表明する。青年たちは、選挙戦の間、攻撃対象となって烙印を押されたことに対して自らの憤激を、毎日、何万人もの規模のデモの形で、自然発展的に表明するとともに、ル・ペン派の提案に対する自らの嫌悪とそれに対して闘うその意志を示している。

ATTACは、永続的で開かれた表現と大衆動員の場を創設するために、社会運動の他の勢力との連絡を倍加する。公的空間と市民の論争を取り戻すことが重要である。この欠如が第1回投票の結果に重くのしかかったのである。すでに、ATTACは来るべき数日のうちに予定されている統一的なデモ、そしてとりわけ4月27日(土)のフランスの主要都市におけるデモに参加するよう呼びかけている。5月1日のデモ隊列は、極右に反対し、新自由主義にとって代わる政策を目指す社会運動のこれらの大衆動員の集約点をなすだろう。なぜなら、たとえ困難であろうとも、現在の情勢は、もうひとつの世界ともうひとつのグローバリゼーションを建設するための勢力が存在しており、それが動きはじめていることを明らかにしているからである。