<ATTACニュースレター日本語版2002年第20号/転載歓迎>
%━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━%
ATTACニュースレター「サンド・イン・ザ・ホイール」(週刊)
   2002年5月22日号(通巻第129号)
 ---------------------------------------------------------
          Sand in the wheel
 Weekly newsletter - n°129 - Wednesday 22 May 2002.
    TRADING DEVELOPMENT(貿易による開発)
%━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━%

《attac‐jインフォメーション》

◆関 西/能勢ダイオキシン問題からグローバリゼーションを考え

 る/6月8日(土)午後2時−5時/スペースAK(地下鉄・南

 森町、JR東西線・大阪天満宮より徒歩5分)/報告:子安鎮夫

(能勢町住民)さん

◆首都圏/第2回例会&学習(トービン税)/6月29日(土)午後

 6時〜/渋谷区勤労福祉会館(JR・地下鉄「渋谷駅」下車7分)

《 も く じ 》

1−共和党を支持することで裏切り者の民主党を教育できるか?

( An Exchange of Views: Will Endorsing Republicans Teach

Turncoat Dems the Right Lesson?)

 「独立した政治的アクション」は労働組合関係者が使ってきた表現

だ。これは労働組合が経営者寄りの政党への依存を減らし、労働者を

基礎にしたオルタナティブを行う試みを指す。しかし最近は、かつて

民主党と近かった活発な労働組合は共和党を支持することでその「独

立性」を示そうとしている(1067語)。

2−ウォルデン・ベロー氏の批判に答える:オックスファム

( Oxfam's Response to Walden Bello's Article on Make Trade Fair

:By Oxfam)

 この記事は、「フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス」のウォ

ルデン・ベロー氏がオックスファムの貿易キャンペーンに関して書い

た論文(「オクスファムの貿易拡大キャンペーンへの疑問」、本誌126

号を参照)に対する反論である(1610語)。

3−どんなに費用をかけようと輸出を:これがオックスファムの第三

世界用の自由貿易レシピ(Export at any Cost: Oxfam's Free

Trade Recipe for the Third World)

 オックスファム・インターナショナルの貿易、グローバリゼーショ

ン、貧困との闘いに関する報告書「不当なルールと二重基準」は、二

つのパラダイム(人々の民主主義と、貿易・商業・市場)を結合しよ

うという勇気ある試みである。しかし、二つのパラダイムが不釣合い

な場合、それは混乱した分析となる。今回のオックスファムの報告書

はそうなっている(2524語)。

4−WTOのこんな話(WTO Tidbits)

 フィリップモリス社が、カナダが「ライト」と「マイルド」の表現

を禁止していることについて、NAFTA(北米自由貿易協定)とTRIPS

(知的所有権の貿易の側面に関する協定)条項に訴えている/地域経

済パートナーシップがEU(欧州連合)とACP(注:第三世界の46カ国

から成る機構)加盟国の間で締結されようとしている。しかし取り残

される国があるのでは?/NGO等はドーハ会議が生物多様性条約を危

機に陥れるために利用されるのを恐れている/インドネシアが国内の

熱帯林を保護するために輸出のための伐採禁止を計画している/全米

市長会等が「ファーストトラック法」(通商交渉に関する大統領一括

承認権限)の修正を要求/世銀・IMFの10月総会はドバイで――またし

ても砂漠に頭を隠すつもり?(821語)。

5−人々による国際債務法廷――最終判決(The People's

International Debt Tribunal - Final Judgement)

 起訴者側の告発、目撃者の証言、陪審員の評決を聴き、自分達を擁

護することを求められた被告側の沈黙を考慮した後、私達「人々によ

る国際債務法廷」は、被告人を有罪とする(828語)。

6−世界のATTACの会合(Meeting ATTAC worldwide)

■付録:ミンダナオ「平和のための国際ミッション」の報告

《 要 約 版 》

●共和党を支持することで裏切り者の民主党を教育できるか?

An Exchange of Views: Will Endorsing Republicans Teach

Turncoat Dems the Right Lesson?

 By Steve Early(レイバー・ノート政策委員会メンバー)

 「独立した政治的アクション」は労働組合関係者が使ってきた表現

だ。これは労働組合が経営者寄りの政党への依存を減らし、労働者を

基礎にしたオルタナティブを行う試みを指す。しかし最近は、かつて

民主党と近かった活発な労働組合は今、共和党を支持することでその

「独立性」を示そうとしている。

<古い戦略>

 この戦略は古い。建設の労働組合、チームスター(全米トラック運

転手組合)、州の教師団体は、利益となる要求と引換えに長年共和党

を支持してきた。最近では、 AFL-CIO(労働総同盟産別会議)のロス

中央支部は共和党のリチャード・リョーダンを、ニューヨーク市中央

支部はルディ・ジュリアニを支持するか、中立を保った。1991年に改

革派の会長が出現するまで、同組合はニクソン、レーガン、ブッシュ

(父)大統領候補を支持してきた。

 2004年には、IBTが共和党候補をまた支持する可能性が高い。会長の

ジェームス・ホッファは北極国立野生動物保護区の石油採掘でブッシ

ュ現大統領と立場を同じくし、この政策に反対すればチームスターの

支持を失うとミシガンとニュージャージーからの民主党議員らを脅し

た。

<ご都合主義的な支持>

 チームスターのミシガン支部は労働者をサポートしたことがないピー

ター・ホークストラ共和党議員を支持した。しかし彼は裁判所による

労働組合の監視を止めることに取り組んでいる。これが実現すれば、

労働組合は彼を支持すると予想しているのだ。現在の労働組合と共和

党の「いちゃつき」には、ホッファよりリベラルな政策を持つと思わ

れる人々まで関わっている。AFL-CIOの政策代表は、民主党国立委員

会を主導していたが、今は秋の選挙で75人の共和党候補を支持しよう

としている。「より現実的な方法」として。SEIU会長もまた現実主義

で、SEIUがニューヨーク知事の再選挙で労働者をサポートしない共和

党のジョージ・パタキを支持すること、また無力なマサチューセッツ

現知事を抱き込むことを予言している。一方でHEREも共和党候補に

HEREの連邦政治的アクション用の資金の20%を使っている。しかしマ

サチューセッツでは、民営化推進者の共和党のウィリアム・ウェルド

がHEREローカル26と連合して、税金引き下げのためのキャンペーンを

行った。税金引き下げは、労働組合が組織した公共事業や、HEREに属

しているような低所得者や移住労働者に対する州のサービスに対して

大打撃を与える。

<ご機嫌取りが裏目に>

 マンハッタンでは最近、有権者が多くの労働組合幹部に支持された

共和党候補を否認し、それを受けて特別州選挙が行われた。民主党は

老練のコミュニティ活動家で進歩派のリズ・クレガーを立てた。チー

ムスター、建設の労働組合、中央労働協議会、 1199−SEIUは権力ブ

ローカーのジョー・ブルーノを支持した。ブルーノは59%対41%でク

レガーに敗れた。一部CWAなどの労働組合と州の新しい労働者家族党

によるキャンペーンのおかげで。

【詳細はhttp://www.progressiveparty.org/(バーモント)と

http://www.workingfamiliesparty.org/へ。

●ウォルデン・ベロー氏の批判に答える:オックスファム

Oxfam's Response to Walden Bello's Article on Make Trade Fair

(By Oxfam)

 この記事は、フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス(以下フォー

カス)のウォルデン・ベロー氏がオックスファムの貿易キャンペーン

に関して書いた記事に対する反論である(ベロー氏の論文は、ATTAC

ニュースレター126号でも紹介されている)。

 オックスファムはウォルデン・ベロー氏が取り組んできたことを高

く評価している。彼は同記事の中で、「私たちは、パートナー間、連

合間の討論と会話によってのみ、前進への確固たる道を形づくること

ができる」と述べている。この反論はその精神に基づいて書かれてい

る。

1.オックスファムキャンペーンの出発点

 私たちは貿易が貧困削減の強力な力となると信じている。その可能

性は、貿易ルールが富裕な層に利益を与え、貧しい層を社会的に無視

するよう作られているため、実現されていない。私たちはそのルール

を変更するための論拠を詳述している。この論拠は、力関係を変える

ことにより、国内市場や国際市場が貧しい層のために動くように設計

できる、という主張に基づいている。これは、国際レベルでは現在広

がっている IMF(国際通貨基金)、世界銀行(以下世銀)、WTO(世界

貿易機関)による処方箋への挑戦、国レベルでは現在取り組まれてい

る再分配のための改革を意味する。

 報告書のどこにも、私たちが新自由主義の輸出による途上国の成長

モデルを支持するとは議論していない。また輸出を伸ばすことが効果

的な貧困削減戦略の代わりとなるとも主張していない。しかし、私た

ちは輸出が貧困削減戦略をサポートする役割を担えると考える。雇用

を創出し、また経済成長のためのより広範な条件を作ることによって。

2. 市場アクセス

 フォーカスの批判の多くは同キャンペーンに対する誤解に基づいて

いる。ウォルデンは同キャンペーンが「北の国々での途上国製品に対

するアクセスを広げるための世界的キャンペーンだ」としているが、

これは間違いである。同キャンペーンは広い範囲での世界貿易ルール

に挑戦し、変えることを目的にしている。WTOのTRISPS協定を根本的

に改革することも求めている。オックスファムは、同協定の裏にある

企業権力と自己利益を追求する北の政府に対して、常に挑戦してきた。

またWTOを使って外国投資家に市場を開いたり、サービス市場を自由

化したり、多くのニュー・イシューを WTOアジェンダに盛り込むこと

に反対してきた。また国際商品市場について、価格をより有利なレベ

ルで安定させる国際メカニズムが重要だと主張している。また報告書

では、途上国への輸入自由化を強いる条件をつけたIMFと世銀の融資

を批判している。

 私たちは市場アクセス改善の重要性を加えたことを弁解しない。北

の保護主義は、繊維や農業という途上国や貧しい層が最も得ることが

できる分野において最も顕著だ。この分野での自由化は、産業国に向

けた国際貿易の利益となるよう歪められている。私たちは国際貿易シ

ステムがどれほど腐敗しているかの明らかな例として、北の保護主義

に焦点を当てることは重要だと考える。途上国の政府はこのアンバラ

ンスを是正するために貿易交渉の場を利用しており、私たちはこの努

力を支持する。同キャンペーンは二つの分野に高い優先順位を付けて

加えつづける。

3.輸出志向の農業

 フォーカスはフード・ファーストの同報告書に対する反応を引用し、

私たちが「輸出志向によるパラダイム」に賛成していると言う。これ

は輸出を行う独占的な農業関係者しか北の市場へのアクセスから利益

を得られない、という推測に基づいている。これは産業国がベトナム

の米、インドの紅茶、モザンビークの砂糖の輸入禁止を正当化するの

か?本当の問題は各国政府が独占構造の台頭を防ぐ政策を採るか否か

だろう。私たちは、途上国における現在の農業輸出の成長に対して、

フード・ファーストと共通の懸念を多く抱いている。しかし商業用作

物/食用作物や国内用/輸出用という単純な分類はしない。これは市

場への参加による利益の分配を形づくる政策での本当の問題から焦点

をそらすことになる。私たちが同意しないのは、現在のモデルは変え

ることができず、農業輸出は本質的に貧しい人々に不利なものだとい

う推測である。

4.ケアンズ・グループの擁護者?

 フォーカスは、オックスファムが今「市民社会のケアンズ・グルー

プ擁護者」だというが、これは間違いだ。私たちは同グループの市場

自由化へのアプローチに反対している。全ての途上国はその食料シス

テムを保護する権利がある。食料安全保障と貧困削減は彼らの権利で

あるし、世界市場は歪められているからだ。しかしフォーカスが指摘

する通り、途上国政府が市場アクセスの交渉に突入したら、途上国は

農業、銀行業務、サービス分野などの市場開放を強いられる結果とな

る危険性がある。しかし、ここでの本当の挑戦は、南の政府と市民社

会が共にWTOの範囲と権限を制限することだ。富裕な国のリーダーら

が偽善者で二重ディーラーであることを明らかにすることが助けにな

るだろう。

 私たちはこの2〜3週間で多くのコメントをいただいた。これを機

にした討論を歓迎する。私たちが対峙している権力は非常に強く、世

界で本当の変化をもたらす希望のためには私たちの立場と戦略を議論

していくしかない。この討論が社会的公正のためのより強固な運動を

作るのに役立つことを願う。

●どんなに費用をかけようと輸出を:これがオックスファムの第三

世界用の自由貿易レシピ

Export at any Cost: Oxfam's Free Trade Recipe for the Third World

 ヴァンダナ・シヴァ(Vandana Shiva)

 オックスファム・インターナショナルの貿易、グローバリゼーショ

ン、貧困に対する闘いに関する報告書「不当なルールと二重基準」は、

二つのパラダイムを結合しようという勇気ある試みである。しかし、

二つのパラダイムが不釣合いな場合、それは混乱した分析となる。そ

して今回のオックスファムの報告書はそうなっている。

 このグローバリゼーションに関するパラダイムの一つ目は、人々の

民主主義を優先するもの、二つ目は貿易、商業、市場を優先するもの

だ。前者は公正、民主主義、独立、持続可能性に基づくもので、反グ

ローバリゼーション運動により多元的に持たれている。後者はWTO、

世界銀行、IMFが進めるものだ。前者は人々の権利、民主的な参加、

環境の持続可能性という、より根本的な政策の文脈に貿易をはめ込ん

でいる。後者は民主主義、独立、持続可能性を「貿易の障壁」として

破壊し、貿易を他の政策より上に置く。貿易を社会と環境の文脈から

外すことで、社会を排除し生態系を分解し、安全保障の構造を破壊し

て貧困を生み出す。

 オックスファムの報告書の9割は反グローバリゼーション運動による

グローバリゼーションへの批判をあらためて展開している。オックス

ファムはまた、これら「不当なルール」に反対しているが、第4章の

「市場アクセスと農業貿易」に来ると貿易自由化と規制のない市場が

経済政策のすべてとなっている。この章はWTOと世銀のお決まりの仮説

と同様の文章で始まる。

 「貿易は経済成長と貧困削減のための力強いエンジンの役割を果た

しうる。そのエンジンが稼動するには、貧しい国々は富裕な国々の市

場へのアクセスを必要とする。市場アクセスは国の経済成長を加速さ

せるのに役立ち、貧しい人々に新しい機会をつくる。これは農業製品

と労働集中型の商品について言える。貧困ラインより下にいる多くの

人々がこの分野に集中しているからである」。

 しかし、市場アクセスは輸出志向と輸出独占の同義語である。オッ

クスファムは貧しい第三世界の輸出至上・輸出優先の農業政策による

経済、社会、環境コストを隠している。市場アクセスは富裕な国々に

犠牲を余儀なくすると見られているが、実際には貧しい国の貧しい人

々が本当の犠牲を強いられるのだ。農業輸出の拡大はまた、すでに地

球の資源の限度を超えて消費している国々の、さらなる消費の増加を

意味する。

 同報告書は、貧しい国々から富裕な国々への輸出の増加に基づく非

持続可能な消費に関して、まったく触れていない。また農業において、

富裕な国々での消費の増加は貧しい国々での基本的ニーズの消費の減

少とさらなる貧困を意味するという事実も無視している。また資源に

対するコントロールは小規模農民や漁民からアグリビジネス企業に移

り、非持続可能な使用で天然資源基礎を破壊し、その過程で小規模生

産者の生活を破壊して貧困を生み出す。

 このレシピは3つの点で失敗している。

 まず不足している土地・水資源を、地域の食料供給から輸出市場に

供給することにまわすため、最も影響を受けやすく社会的に無視され

た地域で空腹と飢饉の条件を創り出す。これは植民地下でも、グロー

バリゼーションによる再植民地化でも起きている。インドの有名なエ

コノミストのウトサ・パトナイク氏が示したように、イギリス占領下

でインドの一人当たり食料消費は1918年の200kgから1947年には

150kgに減少した。輸出用の飼料用穀物は食料用の穀物の10倍に増え

た。200万人を殺した大ベンガル飢饉がその結果だ。世界銀行による

構造調整プログラム下でも、サハラ以南アフリカの6カ国で、10年足

らずの間に穀物の一人当たりの生産が33%、一人当たりの全ての食物

合計が20%減少した。

 二つ目に、オックスファムが輸出国に入ると言う追加収入1000億ド

ルは、地域の生態系と生活が破壊される際のコストを隠している。推

奨される肉、生花、エビの分野では、企業の1ドルの輸出収入に対し

て10ドル分の環境破壊・生活破壊コストが残される。だからこそエビ

養殖場、生花ユニット、と殺場の建設に地域の人々は反対するのだ。

 この新しい貿易自由化レジュメの下で推進されているのが水産養殖

業、草花栽培、肉だが、エビ、花、肉のいずれも、インドで輸出用に

生産するのは効率的でも持続可能でもない。上述の理由の上に、

13.7億ルピー分の外貨を生花輸出のPRに費やしたのに対し、収入は

3.2億ルピーだったのだ。インドは育てられたはずの食料の量の4分の

1しか、この生花からの収入で購入できない。肉輸出では、インドは

1ドルを稼ぐ度に15ドル分の生態系機能を失う。有機肥料と再生可能

エネルギーの重要な資源である家畜がと殺されれば、化学肥料と化石

燃料の輸入を強いられ、外貨の流出と不安定な気候という結果をもた

らす。エビの場合、1ルピーを稼ぐ度に5ルピー分以上の水、生物多様

性、農業、漁業の環境破壊がなされる。産業エビ養殖は実際の養殖池

の200倍の大きさの地域を破壊する。地下水の塩処理、海岸の汚染、

農業とマングローブの破壊である。

 1人の雇用が創出される度、15人の生活が破壊される。その上収入

は富裕な産業界に行き、コストは貧しい人々が支払うのだ。

 最後に、輸出自由化は輸出そのものにも悪い。コショウの女王であ

ったインドは、ダンピングと価格低下の競争のために、もうコショウ

を輸出できない。その上ルピーの価値が下がったため、より多くを輸

出してより少ない収入を得るようになった。この交易条件の改善のた

めには反グローバリゼーション運動が求めているような世界経済の構

造変化が必要だ。この構造の変化で、貿易はもはや「成長のエンジン」

ではなくなる。

 西ベンガルでは貿易ではなく土地改革によって農業生産性の向上と

成長を遂げた。資源を人々の手に戻し、小規模生産者に地域の市場へ

のアクセスを確保することが、貧困をなくすのに最も確実で持続可能

で包括的な方法だ。強い地域経済と立ち直りの速い生態系を基に確立

された国際貿易は、建設的な役割を果たすだろう。人々の資源を遊離

させ、地域の生活、生態系、地域経済を破壊して確立された輸出志向

の経済は、社会レベルで貧困を生み出すだろう。

 これらがオックスファムが触れていない問題である。報告書には小

規模農民も小作農も出てこない。「生産者」だけである。オックスファ

ムの視野には持続可能な農業がなく市場アクセスだけがある。そして

これらが食と農業に関して世界的に展開されている討論の真髄である。

いたるところで農業を環境、文化、食、生活の基本的ニーズの文脈に

戻すことが求められている。運動は小規模農民を復活させるために働

き、小規模農民を擁護し地域の市場を強めている。貿易の公正が達成

されるのはこの試みにおいてである。世銀の政策の反復やオックスファ

ムが最近加わったゾーリックの「市場アクセス」の合唱においてでは

ない。ここでは「全てを包含するグローバリゼーション」が語られる

が、経済のグローバリゼーションプロジェクトは経済と政治の排除の

プロジェクトである。

 グジャラートでの民族せん滅も、フランスでのルペンの台頭も、生

活と雇用、資源と文化を破壊する経済のグローバリゼーションによっ

て形作られた政治の特色である。グローバリゼーションの支持者は、

強く弾力的な地域・国内の経済「孤立主義者」の形成を招いた。しか

しこれらは経済の安全保障の基礎だから、外国人嫌いと原理主義の唯

一の解毒剤なのだ。グローバリゼーションにより創られた不安定さは

ファシズム的な孤立主義が台頭する素地を作っている。つまりグロー

バリゼーションは孤立主義、排除、社会の分裂を促す。強い地域の経

済は、全体的な安全保障を創り出し包括的な文化を強化することで、

コミュニティを統合する。方程式は明確だ。グローバリゼーション=

不安定と排除。経済の民主主義と地域化=安全保障と包含。

 オックスファムは貿易システムを変えるための運動を強化するため

に、民衆の運動とともに歩く必要がある。オックスファムは選択をし

なければならない。平和、公正、持続可能の原則によって規定された

貿易のために立ち上がるのか、それとも弱く、取り込まれた、自由貿

易受益者の声となるか? 商業と貿易が先か平和と人々が先か?食料

が先か輸出が先か? 構造の変化と貿易ルール・自由貿易パラダイム

の変化のための闘いをするか?

【ヴァンダナ・シヴァは科学・技術・天然資源政策のための研究財

団の議長。 http://www.vshiva.net/】

●WTOのこんな話

WTO Tidbits

 By ATTAC work group on international treaties, Marseilles

1.フィリップモリス社がNAFTA協定とTRIPSに訴えカナダ政府に挑戦:

 フィリップモリス・インターナショナルが、カナダが「ライト」と

「マイルド」の表現を禁止していることについて、NAFTA(北米自由

貿易協定)とTRIPS(知的所有権の貿易の側面に関する協定)条項に

訴えている。同社は、NAFTA条約の第11章の1105条項(不公正な扱い)

と1110(取り上げられた適当な収益予想額と同等の措置)を、また

WTOのTRIPS協定20条項(特定の義務による、商標の使用に対する正当

化できない障害)と、2.2条項(貿易に不必要な障害をつくるもの、

最も貿易を制限しない方法を取らないものを統治する条項)を引用し

ている。同社は「ライト」が他のたばこより安全とは証明されていな

いという文をつけて使いつづけるとしている。(調査によると、3分

の1の喫煙者は健康を理由に「ライト」を選んでいる)。

2.ACP加盟国との地域経済パートナーシップの交渉における、欧州委

員会の指令:

 この指令は、EU(欧州連合)の相互協定交渉および、貿易自由化と

競争におけるWTOルールに基づいた経済政策協定のための戦略の一環

だが、これが欧州15加盟国の承認を受ける時期に来ている。欧州NGO

のいくつかは、ACP(注:第三世界の46カ国から成る機構)加盟国の

うち相互協定交渉をできる立場にない国々が、欧州市場へのアクセス

において他の国々より不利な立場に立たされる結果になることを懸念

している。

3.NGOらが生物多様性条約委員会第6回会合で保護を求める:

 NGO会議は同会に、生命に対する特許のすべてを糾弾した明白な声

明をつくるよう求めた。共同声明の中で NGOらは、「多国籍企業主導

のグローバリゼーションと彼らが強いるモデル」は、生物多様性の喪

失の基本的原因であることを強調し、WTOの役割が「企業による政府

のコントロールを許すこの経済モデルをけしかける扇動者」だと指摘

した。NGOらはドーハ会議の結果が生物多様性条約を危機に陥れるた

めに利用されることを恐れており、同会が「生物多様性条約をWTOと

企業主導のグローバリゼーションから保護するよう」求めた。

4.インドネシアが国内の森林からの木材輸出を禁止することを計画:

 インドネシアが国内の熱帯林保護のために、木材輸出を禁止しよう

としている。政府代表は昨年9月に施行され、今期限が来ている暫定

的禁止を延長することを発表した。同時に、現在同国がすべての分野

に関わる経済改革を条件にした50億ドルのローンを得るために話し合

っているIMFと、木材輸出禁止の永久的措置について話し合うとした。

既に 1980年に、インドネシアは禁止措置として、200%の輸出税をか

け、これにより地域の産業を守り、高い付加価値のついた林業製品の

輸出を促した。しかし、1998年の IMFとの協定により、この税は10%

に削減された。この措置は輸出用伐採を急増させるとして環境団体に

非難された。

5.全米市長会、弁護士協会、全米郡連合などの自治体関係者たちが

「ファーストトラック法」(通商交渉に関する大統領一括承認権限)の

修正を要求している:

 地方当局高官は、今後の通商交渉の中で、投資家VS州の紛争で州が

負け投資家が法外な補償を受け取る権利を獲得できるような協定が合

意されるのを防ぐために、同法を修正することを上院に求めた。3月

21日の上院多数派リーダーに対する手紙で、全米市長会は「投資家の

保護の条項3005は、あまりに広範で、米国の規定を超える投資家保護

を産業当局に許すものだ。また外国投資家に米国民を上回る権利を与

える」と述べている。

6.国際機関はまたしても砂漠に頭を隠すことに決めた:

 次回の世界銀行・IMFの合同年次総会は10月1〜2日にアラブ首長国

連邦のドバイで開催される。

●人々による国際債務法廷――最終判決

The People's International Debt Tribunal - Final Judgement

 起訴者側による告発、目撃者による証言、陪審員による評決を聴き、

自分達を擁護することを求められた被告側の沈黙を考慮した後、私達

「人々による国際債務法廷」は、被告人を以下の犯罪によって有罪と

する。

1.北の政府は長年に渡って…

A)…南が対外債務に依存する構造を作ることで、南の国の経済・環

境財産を北に移送するための非経済的、軍事的、政治的な方法を考案

してきた。B)…南から北の受益者に財産を移送するエージェントの

役割を担い、南の債務依存を維持する巨大金融機関や企業を作って維

持する過程をサポートするために、その経済的・軍事的権力を利用し

てきた。C)…資金の移送を調整し監督するため、また債務依存を維

持するために、新自由主義政策を強いる債務依存を利用できるよう、

世界銀行、IMF、WTOという多国籍機関をつくった。D)…南の政府が

不法な財産移送を促進するような政策を採用することを強いた。

2.国際銀行、国際金融制度、産業界・商業界は、財産移送の直接受

益者であり、この移送を自分たちとその協動者に都合の良いように確

保するためにこのメカニズムを利用した。

3.多国籍制度は、債務依存を促進し維持するためのエージェントと

して働き、債務とその他の資本のフローを調整し、南の国に南から北

への財産流出を促す条件をつくった。

4.独占的で、政府と共に権力の座につき、自分たちの利益を追求し

てきた腐敗した利害関係者らは、上記の被告人らと様々な形で協動し、

債務を使って上記のような財産の移送メカニズムを正当化し、促進し、

保護するために南の政府の権力を利用してきた。

陪審員の評決:

1.北に対して蓄積された南の債務はすべて不法で、何度も返済され

ている。

2.上述のメカニズムを通して被告人によりつくられた債務依存は、

経済的、社会的民族せん滅にまで達するような社会破壊を導く政治的

・経済的条件の原因となった。

3.以下のような現在確立されている国際法を犯している――世界人

権宣言/国際労働機関(ILO)の先住民の権利(契約条項169)/全て

の形の女性差別をなくす条約/世界的に認識されている人々が自己決

定する権利。

上記を考慮に入れて、人々による国際債務法廷は以下を宣言する。

1.不法で存在しない対外債務は、ただちに拒絶され帳消しにするこ

と。

2.南から北に不法に移送された財産の賠償として、南の国々は適当

な報酬を得ること。その支払いの量と方法の決定のために国際債務委

員会が創設されること。

3.その圧倒的な権力が大きすぎる規模と範囲に関係していることを考

慮に入れ、銀行、金融制度、産業界の企業、土地所有者の利害関係者、

その他これらの関係者に権力を与えてきた財産の統治者は、不法な債

務の成長の再発を防ぐために、分割されその権力を弱められること。

4.債務フローを調整し、監督し、保護してきたIMFや世界銀行などの

国際機関は、その権威を取り除かれ、残った役割はすべてより民主的

に運営される国際制度に移行されること。

5.北と南の政府にこれらの推奨を実行するよう求める社会運動に加え、

本法廷は人々に、ハーグの国際司法裁判所に対する署名などの方法を

使って、社会的権利・人権侵害の個々の事例を法の下に照らしたり、

また政府がこれらの推奨を取り入れるよう圧力をかけたりすることを

求めたい。2002年4月18日米ワシントンD.C.にて。

●世界のATTACの会合

Meeting ATTAC worldwide

 オーストリア、デンマーク、オランダ、スペイン、フランス、ノルウェー、ギリ

シャ、スイス、イタリア、ベルギー、フィンランド、イギリス、スウェーデンで

ATTACの集会が行われる。http://attac.org/indexen/にアクセスし、「ATTAC In the

World」→「Meeting ATTAC」をクリックされたい。

■付録

●戦争の論理に反対する

Contre les logique de guerre」

 ピエール・ルッセ(ATTACフランス・アジア地域活動グループ)

 Le Courriel d'information (No.326 2002/04/26)より抄訳

<フィリピン・・・米国のアジアにおける第二の前線>

 フィリピンに対する米国の介入については、パレスチナ、中東や、

ラテンアメリカのコロンビア、ヴェネズエラとはちがって、大部分の

人たちに見逃されているようだ。それでも、この3月末に米国特殊部

隊が派遣されたバジランに赴いた「平和のための国際ミッション」に

ついて報告したい。このミッションは10カ国から参加した16人で構成

され、筆者もその一人である(日本からは大橋成子さんが参加)。

<アブ・サヤフの向こう側>

 もともとイスラム急進派であったアブ・サヤフは、しだいに方向が

変わって、現在では山賊行為を働くようになり、とくに身代金めあて

の誘拐をするようになった。このアブ・サヤフ勢力の壊滅のため、フィ

リピン政府は米国と正式に連携することになった。フィリピン軍は米

軍よりもずっとジャングルでの戦闘に慣れているのに、である。さら

に、アブ・サヤフがアル・カイダと組織的になんの関係もないことは、

すでに周知のことである。アブ・サヤフは非常にローカルな運動組織

にすぎず、現在ではそのメンバーはもはや60人程度にまで減っている

ことも分かっている。にもかかわらず、対する政府軍(軍人および民

兵)の規模は延べ一万八千人なのだ!

 ここで提起されている問題が、昨年6月に(バジラン州)ラミタン

で起こった事件ではないことは明らかだ。誘拐犯たちは町の病院で包

囲されたが、残念ながら人質たちとともに逃走した。そこで多額の金

銭のやりとりがあった。われわれを教会に迎えたラミタンの住人たち

は(とくに誘拐事件の直接の被害者たちは)荒々しい怒りをぶちまけ

ていた。軍隊が腐敗していなかったなら、アブ・サヤフの脅威も片付

いていたはずなのだ。

 ここに米国が介入することが、表向きの理由によるものでないのも、

まったく明らかである。米国政府は、フィリピンというアジアのこの

地域では珍しいカトリックの国と特権的な関係を築きたがっていた。

かつて重要軍事基地が設置されていた(10年前に放棄せざるをえなか

った)ことも親近感が生まれる土壌である。今、反テロリストという

口実を用いて、ペンタゴンは、インドネシア諸島や中国の監視ができ

るかつての植民地にきびすを返した。そうして数千もの米兵たちが、

新たな国際的軍事「訓練」のためにフィリピン北部で待機することに

なった。

 さらに、この国の南部に在住する多くのイスラム教徒たちを「安心

させる」ことも重視されている。米国政府はモロ・イスラム解放戦線

(現在もイスラム国家建設を目指しミンダナオ島の分離・独立を主張

している)を標的にしているように思われる。もしそのような事態が

生じたら、おそらくミンダナオ島は再び戦乱の炎に包まれることにな

る。長い時間をかけて辛抱強く作りあげられてきた、モロ(イスラム

教徒になった土地の人々)・ルマド(土地の人々)・キリスト教徒の

あいだの連帯は、崩壊するかもしれない危機に晒されている。

<戦争地帯>

 われわれはバジランの戦争地帯を通過した。そこは、パレスチナの

ように誰もが弾丸や砲弾を入手できるような暴力的な戦闘の舞台が、

つまり前線というものがなかった。さまざまな作戦は、町の中心から

離れた狭い地域で展開されているのだが、それでも戦争の足音が近づ

いていることがはっきりと分かった。すなわち町のすみずみまで恐怖

が支配しているのである。とりわけモロの後背地では、ムスリムたち

は常に自分たちが脅かされ、侵害されていると感じている。恐怖はこ

の町だけでなく、さらに地方の中核都市イザベラまで及んでいる。

 われわれも、軍隊に護衛された輸送車でしか移動することはできな

かった。なにか危険なのか?誘拐がその答えである。それは必ずしも

アブ・サヤフ(指導者たちはおそらく海外に脱出したと思われる)に

よるとは限らなかった。

 そうしてわれわれは、地方の監獄を訪れた。公にはわれわれが立ち

入ることは禁じられていたが、拘束者たちと会話することができた。

彼らによれば、彼らはタバコの火による拷問や恣意的な逮捕の犠牲に

なっていて、中には妊婦もいるという。統治者自身も、無実の者が投

獄されていることを知っているという。

 報復を受ける危険があるため、ムスリムの女性たちの多くはわれわ

れの質問に対して答えようとしなかった。しかし、彼女たちの中で何

人かは勇気を出して証言してくれた。

 ここでの恐怖は明白で、日常的で、集団的である。モロ人権センター

のメンバーでイザベラに住む若い女性によれば「私たちが一番怖いの

は、密告者たちです。彼らは仮面をかぶり、町のいたるところにいて、

警備兵を連れてきて、活動家を指さして逮捕するように言うのです」

という。コロンビアからパレスチナ、そしてバジランまで、仮面をか

ぶった密告者たちは同じイメージで怖れられている。

<沈黙の壁を破る>

 アブ・サヤフが多くの犠牲者を出していることは周知のとおりだ。

しかしそれでも、それは軍隊や武装集団による犠牲者の比ではない。

この土地に到着したわれわれは、状況を把握し、警鐘を鳴らしたいと

思った。戦争地帯では人権にどれだけ敬意が払われているかを調べな

くてはならない、と呼びかけたいと思った。軍事化の深刻な危機に対

して注意を向けてもらい、沈黙の壁を破りたいと思った。

 第一の目的はかなり達成された。フィリピンでは、われわれの行動

は反響を呼び、メディア(新聞、テレビ、ラジオ)で取り上げられた。

それに対するあからさまな公的な反撃も起こった。政府特別顧問は、

扇動的な外国人がトラブルを起こさないように国境を閉鎖するように

主張した。アロヨ大統領は、「軍隊によって名誉が傷つけられること

はない」と確認するために壇上に上らざるをえなかった。そして、わ

れわれは単に「アブ・サヤフの恋人」、テロリストたちの親友にすぎ

ない、とされた。

 「米国の介入を支持しない者は、テロリストのキャンプにいる者と

同じである」「われわれの味方をしない者は、われわれの敵である」。

フィリピン大統領は「『悪の枢軸』に対する戦争」というブッシュと

同じ言葉を繰り返した。「悪の枢軸」という言葉は有名になったが、

「イスラムのテロリズム」との戦いは、かつての反共産主義の戦いと

同じ役割を果たしている。この言葉で最悪の抑圧を正当化しているの

だ。そのイデオロギー的なベールが包んでいるのは、米国の軍事組織

の帝国主義的・世界的な拡大なのである。

 アフガニスタンの後、ワシントンはアジアの第二戦線で活動を開始

した。バジランを入口に、アブ・サヤフを口実に。ミンダナオ島の他

の地域に戦闘が拡大する危険が非常に高まっている。四月半ばに、ア

ブ・サヤフに属していた者たちが別の地方を襲ったり、ジェネラル・

サントスの人々を襲ったりしている。もしそれが事実なら、この集団

はバジランからすでに脱出したと確認されるだろう。しかし、それは

また米国による介入と探索を正当化するための、血塗られた挑発かも

しれない。

 こうした状況でわれわれ平和ミッションのメンバーたちは、南フィ

リピンで起こっている非常に不安な状況を国際的機関(ヨーロッパ議

会、国連、アムネスティ・インターナショナル、ATTACのネットワー

ク、軍事的グローバル化へ抵抗する運動組織など)に知ってもらえる

よう、心から願っている。

[翻訳:村澤真保呂(ATTAC関西)]