−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<ATTACニュースレター日本語版2002年第9号/転載歓迎>
%━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━%
ATTACニュースレター「サンド・イン・ザ・ホイール」(週刊)
     2002年3月6日号(通巻第118号)
 ---------------------------------------------------------
          Sand in the wheel
 Weekly newsletter - n°118- Wednesday 06 March 2002.
PROVIDING CREATING HELPING
(資金を提供し、管理機構を確立し、安定を支援する)
%━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━%

《 も く じ 》

1−WTO関連緊急行動要請(WTO−Action Alert before March 11) 「技術支援とキャパシティビルディング」(TACB)問題が、ドーハ以後のWTOをめぐる議論で極めて重要になってきた。ムーアWTO事務局長は来年のメキシコ第5回WTO閣僚会合でTACBが鍵を握るだろうとジュネーブその他で説いて回っている。WTO事務局が配付した技術支援計画案は、その目的および成果に関して重大な懸念を引き起こしている(1091語)。

2−頓挫した国際貨幣金融システム

(The international monetary and financial system has lost its way)

 今日の世界の特徴は、金融面の不安定と途上国産原料価格の急激な下落である。富裕国と貧困国との格差、各国間の格差、そして国内における富裕層と大多数の国民との格差が拡大している。これはずっと前に世界の経済大国――特に、G7諸国――が決定し、1980年代以後何回も繰り返し確認されてきたことの結果である(2758語)。

3−世銀債ボイコット運動‐ウィスコンシン・フェアトレードキャンペーン(World Bank Bonds Boycott Campaign-Wisconsin Fair Trade Campaign) 世銀の政策と事業が及ぼす影響について市民代表や専門家の証言を聞いたあと、ミルウォーキー市の財政委員会は今後世銀債の購入を禁止する決議案を5対0で支持した(679語)。

4−スペイン国会議員のトービン税検討グループ

(In Spain a Parliamentarian Group on Tobin Tax)

 2月6日、トービン税の問題とタックスヘイブン(税金回避地)の廃止について検討協議するための超党派国会議員グループが正式に結成された。各国会議員は個人の資格でこのグループに参加するが、指摘すべきは国会に議席を有する全党派が参加していることである(451語)。

5−新自由主義グローバリゼーションという巨大マシーンの車輪に

我々の撒いた砂

(Our sand in the wheels of mega-machine of neolibelal

globalisasion)

 最近のモンブラン・トンネルの再開をめぐる議論は、国際運輸システムに関する対立とみなければならない。新自由主義的グローバリゼーションの過程で説かれてきたドグマの1つが、世界規模の分業による物資の自由な流通である。労働力が安価で労働者の権利が尊重されていない南の国々で物資が生産される度合いがこれまで以上に大きくなっている。しかし、南で生産された物は売るために北に輸送しなければならず、それ故、環境上および社会上の重大問題を引き起こすのである(911語)。

6−100ヶ国から5万人が世界社会フォーラムに参加

(50,000People From 100 Countries Hold 'World Social Forum')

 世界社会フォーラムは30年の実績を有する世界経済フォーラムに対抗することを目的とする。裕福な企業幹部や政治家たちが非公開で会議をしたのと違って、世界社会フォーラムは、開かれた、世界各地からの進歩的な人々の集まりであり、利潤を上げる新たな方法ではなく、公正で持続可能な国際社会を達成するためのアイデアを探究するのである(622語)。

7−世界各地のATTAC会合(省略)


《 要 約 版 》

●WTOに関する緊急行動要請

WTO−Action Alert before March 11

 By Shefali Sharma Trade Information Project(TIP) and

Institute for Agriculture and Trade Policy(IATP) Geneva

 「技術支援とキャパシティビルディング」(TACB)問題が、ドーハ以後のWTOをめぐる議論で極めて重要になってきた。[訳注:キャパシティビルディング(能力の確立)とは、貿易の円滑化のために途上国における電子化、人材育成等を支援することを指し、日本政府の「貿易円滑化のための提案」の中にも含まれている、参照:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/jk_11.html]

 ムーアWTO事務局長は来年のメキシコ第5回WTO閣僚会合でTACBが鍵を握るだろうとジュネーブその他で説いて回っている。WTO事務局が配布した技術支援計画案は、その目的および成果に関して重大な懸念を引き起こしている。他方TACB問題は、ブレトンウッズ体制推進者が貿易推進者と手を結ぶ絶好の機会でもある。

 WTOの各国代表団の多くは、技術支援のアイデアを歓迎する一方で、この事務局案が、各国政府がWTOへの意味のある参加を果たすための実質的な提案というよりも、新たな政治的提案ではないかと疑っている。

 以下はブレトンウッズ・プロジェクトとIATP(英国農業・貿易政策研究所)が作成した声明文である。緊急の賛同署名をtradestatement@brettonwoodsproject.orgまで。

-------------------------------------------------------------

[声明]市民社会はWTOの「キャパシティビルディング」論議を憂慮する - 2002年3月11日の「ドナー会議」に向けて

ドーハ閣僚宣言において、発展の最も遅れた、ないし発展途上の国々にとっての重要課題として技術支援とキャパシティビルディングが登場しました。「適切な対象に対する、財政的に持続可能な支援」に大臣方は賛成し、「技術支援とキャパシティビルディングが現在の発展局面の中心的要素」だということを認めています。

 全WTOメンバー諸国が、それぞれ最も国益に適うよう貿易政策を定め、それに従って行動するキャパシティを築くという目的は広く共有されていますが、誰がどうやってそのキャパシティビルディングを行うかという重大な問題が残っています。この2月14日、政府の代表たちがWTO技術支援計画案に関する重大問題を指摘し、メンバー諸国政府の意見を入れ修正するよう求めました。市民社会もこの機会に技術支援計画の修正案に関する懸念を表明しておくと共に、それが3月11日の「ドーハ発展アジェンダ信託基金」のドナー会議で真剣に取り上げられることを望みます。

 市民社会が懸念する問題として次ぎのようなものがあります。まず、技術支援計画はこれまで、その受入希望国というより主にWTO事務局が考案してきましたが、昨年7月のザンジバル宣言に述べられている技術支援に関するLDC諸国の提案がもっと配慮されるよう我々は要求します。

 技術支援計画の内容自体にも問題があります。計画の大半の部分に、LDC諸国に対する貿易関連技術支援のための総合的枠組み(IF)が適用されていますが、IFは既に試みられて失敗したプログラムです。IFは、IMF、ITC、UNCTAD、UNDP、世銀、そしてWTOで構成されていますが、IFを改訂したこの度の計画においても責任の分担が偏っており、とりわけ世銀に主要な役割があてがわれていることが懸念の理由です。

 この諸機関共同の支援は、大きな議論を呼んだ「シンガポール問題」(投資、競争、政府調達などが含まれている)を優先しているように見えますが、ドーハ・マンデートはこれらの問題に優先権を与えてはおらず、取り分け、投資や競争などの問題の「影響につきよりよい評価を行う」ためにTACBが行われることを命じています。

 WTO事務局主催のセミナーとワークショップは一般的過ぎて効果がないことが広く認められており、これは新たな技術支援計画を承認する際には、過去のTACBに対するWTO事務局の努力に関して、独立した評価を行う必要性を示すものです。ドーハ・マンデートを実施するための地域銀行との戦略的パートナーシップについては特に判然としません。既に事務局は地域銀行との覚書(MOU)の草稿作成にとりかかっていますが、この覚書に関しては極めて限られた情報しか公開されておらず、代表団の間でさえも共有されていません。

 ドナー諸国がWTO加盟国および市民社会ともっと密接に協力してキャパシティビルディング計画を策定することを我々は要求します。その評価を独立して行うメカニズムを設けることが重要で、WTO事務局のもう1つの出先が行うという現在の計画では不充分です。

●頓挫した国際貨幣金融システム

The international monetary and financial system has lost its

way

 By ATTAC Quebec

 今日の世界の特徴は、金融面の不安定と途上国産原料価格の急激な下落である。富裕国と貧困国との格差、各国間の格差、そして国内における富裕層と大多数の国民との格差が拡大している。これはずっと前に世界の経済大国――特に、G7諸国――が決定し、1980年代以後何回も繰り返し確認されてきた政策の結果である。

 国際金融機関(IMFと世銀)に対する我々の批判は次ぎのように三重である。第一に、この2つのブレトンウッズ機関は次第に当初の目的から外れて、国際金融市場の処方箋―構造調整―を従属的債務国に押しつける手段と化してしまった。第二に、この両機関は、「1ドル、1票」の原則とは異なる、より民主的な運営を意図した国連機関、UNCTADやUNDPなどからその役割と中身とを奪い取るのに使われてきた。第三に、債務返済その他資本のニーズを優先したために、この両機関は真の発展ニーズに反する政策を押し付けてきたが、それは再三の危機と社会的不平等を含めて重大な問題をもたらした。従って我々は、国際金融機関の根本改革を提案する。

 国際金融機関に求められる主な機能として次のものがある。?対 外債務帳消しが不可欠で、それを望んでいる国に対して債務帳消しを行うために努めること。?資金援助が必要な国に対し、持続可能な発展を支援するような仕方で資金を提供すること、?投機資本から身を守ろうとする国に対して、危機防止と管理機構の確立と技術支援を行うこと、?各国が金融の不安定と原料価格の変動からそれぞれの輸出を保護するための機構を確立(または再確立)するのを支援すること。

 また、国際金融機関に焦点を当てているけれども、WTOなど別の国際機関についても批判的分析を加えなければならない。UNCTAD、UNDP、ILO、FAO、WHOなどがなぜ格下げされたのか、検討しなければならない。

 更に詳しい情報は:http://attac.org/quebec@attac.org

●世銀債ボイコット運動‐ウィスコンシン・フェアトレードキャンペーン

World Bank Bonds Boycott Campaign-Wisconsin Fair Trade Campaign

By Neil Watkins

 世銀の政策と事業が及ぼす影響について市民代表や専門家の証言を聞いたあと、ミルウォーキー市の財政委員会は今後世銀債の購入を禁止する決議案を5対0で支持した。またこの決議案は、3500万ドルの世銀債を現在保有しているウィスコンシン州投資委員会に対し、今後そのような債券を購入しないことを求めている。

 このミルウォーキーの取り組みは(ウィスコンシン・フェアトレードキャンペーンが先導している)、国際的な世銀債ボイコット運動の一環であり、市や機関投資家が世銀債を購入するのを止めさせ、世銀に政治経済的圧力をかけてその根本的な改革を求めようとするものである。既に、米国の5つの市、10の投資会社、そして多数の組合や教会が世銀債のボイコットを決めているが、この運動は、1980年代に反アパルアトヘイトの運動の中で呼びかけられた投資引き上げ運動(南アフリカに投資している企業や公企業体に投資引き上げを求める運動)をモデルにしている 。

 世銀債ボイコット運動は、疲弊した諸国の世銀グループに対する負債を100%帳消しにすること、破壊的な構造調整その他の政策を中止すること、そして石油、ガス、鉱山、ダム建設への融資を全て取り止めることを要求している。

 ミルウォーキーでは、世銀債ボイコット決議案の市議会での一般審議が3月5日に予定されている。

●スペイン国会議員のトービン税検討グループ

In Spain a Parliamentarian Group on Tobin Tax

By Comision Tasa Tobin y paraisos fiscales(Commission on the Tobin Tax and Tax Havens) ATTAC−スペイン

 2月6日、トービン税の問題とタックスヘイブンの廃止について検討協議するための超党派国会議員グループが正式に結成された。各国会議員は個人の資格でこのグループに参加するが、指摘すべきは国会に議席を有する全党派が参加していることである。

 唯一、与党の国民党議員の参加が解決すべき問題である。国民党がトービン税タイプの税にはっきりと反対しているために、彼らは準備会議には参加したものの、正式グループに加わるかどうか明らかにしていない。

 この国会議員グループの結成は多くの議員の個人的努力とATTACスペインが協力の賜物である。

●新自由主義グローバリゼーションという巨大マシーンの車輪に我々の撒いた砂

Our sand in the wheels of mega-machine of neolibelal globalisasion

By Giorgio Caniglia ,ATTAC Valle d'Aosta

 国際山岳年(2002年)の年に、イタリアとフランス政府は危険で自殺行為的な運輸政策を推し進めようとしている。つまり、1999年にはモンブラン・トンネルで、2000にはオーストリアのタウリ・トンネルで、2001年にはスイスのゴッタルドで起きた死亡事故だけでは、アルプス山脈を横断する物資の輸送を道路から鉄道に転換するのに不充分だというのである。こうした不幸な事故とは別に、大型トラックによる物資の輸送はアルプスの環境を汚染する。

 水などの基本的な資源は言うに及ばず、農業や観光や職人業に基づく地元経済を救い、守ることに、地元住民、公的機関、政党その他が過去何年にも亘って取り組んできた。最近では、国際的なデモも行われており、2001年10月にはATTACイタリア暫定代表がモリエンヌまで同行してくれたが、2002年1月にはクールメイユールでも行われ、3月には再びクールメイユールでトンネル事故の3周年記念行事が行われる。

 アルプス道路を利用して輸送される商品の30%は食料その他の農産品であり、モンブラン・トンネル事故に巻き込まれた大型トラックはベルギーからイタリアまでマーガリンと小麦粉を輸送する途中だった。

ヨーロッパのどこでも生産できる物資を数千キロも輸送させようとするシステムに対して、もうたくさんだ、という時がきた。今日、モンブラン・トンネルに大型トラックが戻ることに反対することは、世界的に多様な運輸システム―従って、世界的に多様な生産システム―を目指すことである。モンブラン・トンネルを通る大型車輛を削減する戦いは、新自由主義グローバリゼーションという巨大マシンに我々が撒いた砂となるだろう。

●100ヶ国から5万人が世界社会フォーラムに参加

50,000People From 100 Countries Hold 'World Social Forum'

By Emily LaBarbera-Twarog, Organizer, Chicago Jobs with Justice

世界社会フォーラムは30年の実績を有する世界経済フォーラムに対抗することを目的とする。裕福な企業幹部や政治家たちが非公開で会議をしたのと違って、世界社会フォーラムは、開かれた、世界各地からの進歩的な人々の集まりであり、利潤を上げる新たな方法ではなく、公正で持続可能な国際社会を達成するためのアイデアを探究するのである。 昨年、世界社会フォーラムの事務局は、参加者2〜3千人を予想したが、実際には1万5千人が参加した。そして今年は、その3倍以上の規模となり、100ヶ国以上から5万人が参加した。米国からの参加者は、昨年はたった100程度であったが、今年は400人以上に上った。