Sand in the Wheels
N° 172 - Wednesday 23 April 2003 3

今、何をするべきか
AND NOW

サンドインザホイール日本語版2003年第14号4月23日号(通巻172号)

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目次

1. 今、何をするべきか? 平和運動の課題What We Do Now ? A Peace Agenda
この半年間、私たちは世界的な反戦運動を目撃してきた。それは非常に大規模だったため、もう少しで米国の戦争計画を阻止できると思えたほどだ。しかし、国連決議もなしに戦争がはじまった今、反戦運動は岐路に立っている。以下は「ザ・ネーション」紙4月21日号に掲載された紙上フォーラムである。David Cortright の問題提起の後に、3人が意見を寄せている(3520)

2. イラク以後:米国の権力と世界の貧困Beyond Iraq: US power and global poverty
ドナルド・ラムズフェルドの中東における武勇伝は、サダム・フセインを歴史の記録へと追いやったが、勝利の配当は、米国の通商政策と軍事および金融上の利害とを一致させるために使われるだろう(1710)

3. スロバキアで銀行融資の条件に鉄道路線の廃止Regional railways detroyed for a bank loan
ヨーロッパ投資銀行(EIB)がスロバキアの鉄道再建のための融資を行ったとき、奇妙な「秘密の」条件が付いていたことに気づいた人はほとんどいなかった。この条件の1つは、運行中の32の路線を廃止することが。これは地方の利用者にとって非常に困ったことである。EIBの資金の多くは税金であるが、ヨーロッパの大部分の市民は自分たちの税金を使って行われている害悪について知らされていない(883)

4. WTOをめぐる動きWTO Tidbits
NGOと市民社会は農業問題に関する WTO 委員会の提案を拒否; バングラデシュ、自由化の否定的な影響の証拠を示す; G7 諸国が米国の財政赤字に懸念; 交渉に進展なし(貿易も、紛争処理手続きの改革も); サービス委員会で、「要求」と「オファー」の手続きが遅延; スパチャイ、イラク戦争の通商交渉への影響に懸念を表明; エジプトがカンクン会議前の会議を主催へ; EU貿易委員のラミーがインドを訪問; ロシアのWTO加盟が進展せず; 米国・オーストラリア間で農業をめぐる困難な交渉が始まる(2104)



今、何をするべきか?
平和運動の課題
What We Do Now ? A Peace Agenda
By David Cortright

ブッシュ政権が不法で不当なイラク侵略を続けている中、私たちはこれからの困難な時期に立ち向う決意を固めなければならない。平和への取り組みはまだ始まったばかりだ。

私たちはブッシュの戦争を批判する事について、決して及び腰にならず、脅しに屈したり沈黙したりしないようにしなければならない。今回の戦争は全く必要のない戦争である。イラクは平和的外交手段で武装解除される途上であった。今回米国が引き起こした、国連決議に拠らない、正当な理由に基づかない戦争は国連憲章と米国の法律や国際法に違反する、これは決して正当化できる戦争でない。

この戦争の勃発によって、私たちの活動はますます重要で、必要なものとなった。私たちはこの戦争の原因と行く末について熟考し、今後このような正当な根拠に基づかない戦争が起こらない為に幅広い運動をしていかなければならないのだ。

この数ヶ月間、歴史上類を見ない大規模で広範な平和運動が行われた。地球のあちこちで何百万に及ぶ人々がこれらの平和運動に参加した。しかし、今回の運動で見られた戦争回避の努力が実らなかったのは決して平和運動が力不足だったからではなく、米国の民主主義の欠陥と深く根付いている強いミリタリズムによるものである。

私たちの短期的目標は戦争の展開によってかわってくる。それが短期的軍事攻撃で成功するか、それとも断続的な狙撃攻撃やゲリラ攻撃により長期化するのか。私たちの短期的目標は以下の要求や問題を含む。

・罪のない人々を保護すること。 米国はイラクとその地域で生活するその他の人々に対し多大な人道支援と経済援助を行うべきである。そして、この援助はペンタゴンではなく民間機関が中心となり運営されるべきである。

・兵士に対する支援。私たちは戦場に派遣された兵士の家族と予備軍兵士に対する特別の支援を求め、兵役によって起こりうる医療問題について多大な努力をするように訴える。

・兵士の帰還。私たちは米国兵士の即刻イラク撤退を求め、イラクに長期または永続的に米軍基地を作る事に反対する。

・イランに対しての戦争または軍事脅迫に反対。イランに対しての軍事攻撃等の脅迫に反対する。米国政府やイスラエルの過激派の中に、‘テロとの闘い’の 次の段階として、イランに対する軍事攻撃を支援するものがいるのは明らかである。

・石油戦争反対。米国がイラクの石油をコントロールする事またイラクの石油による収益から利益を要求する事に反対する。イラクの石油の権益はイラクの人々に属する。この資源はイラクの経済や社会の再建の為にイラクの人々によって使われるべきである。

・中東の平和。米国はイスラエルとパレスチナの真の和平を実現させる為積極的に援助をしていくべきである。イスラエルとパレスチナの双方が暴力を捨て二つの主権を持つ持続可能な国家を作るため和平解決策を受け入れるよう圧力をかけていくべきである。

・地域武装解除の支援。1991年の湾岸戦争停戦決議はイラクの武装解除が中東を大量破壊兵器のない地域にする為の第一歩であると謳っている。イラクから大量破壊兵器をなくす事は中東全体からそれを取り除く事につながらなければならない。

イラクにおける戦争と軍事支配に対する米国の安全保障政策に対して長期的な代替案が必要である。私たちの対案は、テロリズムと脅威の拡散について深刻に取り上げるが、より安全で、コストが低く、これらの危険に対してより有効な解決策でなければならない。

私たちは、イラクや北朝鮮、またその他の、国際社会が脅威を拡散しているとみなす国の武装解除に賛成である。そして、それを実行する為には武装解除を確かめる為の手段として国連の活発な兵器に対する査察が必要となるだろう。そして、それに従わない国などに対しては国連を通じて的を絞った制裁を加える事が必要である。また一方で、遵守する国に対しては制裁を解き支援をする事が必要である。

また、武装解除は究極的に万国共通のものとならなければならない。イラクの武装解除は地域全体の武装解除に結びつかなければならないし、最終的には地球全体に及んでの武装解除につながらなければならないのだ。核兵器に対しても同様で、核に対する唯一の安全政策は全ての核兵器を禁止にする事である。また、大量破壊兵器に関しても地球規模で禁止する事が、テロリストがそれらを使用する危険を防ぐ一番良い方法である。全ての核兵器、生物化学兵器、そして長距離ミサイルは全ての地域、国家で禁止させるべきである。それが将来をより安全なものにする為の道標となるだろう。そして武装解除を進めるために、既存の監視や強制力をはるかに強化する必要がある。

一切の武力行使を否定する事が平和主義者のビジョンではない。力による強制が重要な役割を果たす場合もある。しかし武力行使は全ての平和的外交手段が全てなくなった、最後の砦として安全保障委員会やその他の地域安全機構の明白な決定の上で行われるべきなのである。米国やその他の国は政府を転覆させる為に武装解除というもっともらしい理由で、軍による侵略を行い、他の政府を転覆させる権利はないのである。

最終的に、将来、武力による悲劇を招かない為にはブッシュ政権を潰し、国際的に共同歩調を取り平和を築き上げていける、新しい政治的リーダーを選ばなければならい。そのためにも私たちはまず体制作りから始めなければならない。この目的を果たす為には選挙制度に手を加える必要があるだろう。そして、どの政府であろうと、国家の安全保障制度の中で、それを操っている影の存在をなくしていくと言う、この挑戦の重要性を認識する必要がある。そして、世界における米国の役割を根っこから変える、長期的な挑戦に取り組んでいける、強大な市民運動に支えられてこそこの難題を成し遂げられるのである。

意見 1公正についての議論
By Phyllis Bennis & John Cavanagh

David Cortrightは米国の平和運動が戦争を阻止するための緊急の活動から、運動を継続的に拡大していくための活動へと進む上でのいくつかの課題を提起した。私たちも、全世界的な平和運動を広げ、同時にその中での米国の運動の役割を拡大する観点からいくつかの点を付け加えたい。

まず、米国内の課題として、Cortrightの提起に‘公正の課題’を付け加えたい。ここで二つの重要課題がある。市民の自由を守る事、特に今回の事で攻撃の対象となるアラブ人やその他の移民、そして憲法のもとで保障されている全ての権利に対する広範な侵害をなくす事。そして、国益を軍事的なものから、国内ニーズに転換する事である。

また、世界的な平和と公正の運動の広がりに反映した課題を広げていく事も必要である。他の国際的な運動と結びつく事は、自国の政府を含め既存の危機拡散国家などの‘帝国’に反対する運動を強める事に役立つだろう。

また、米国以上に、フランス、ドイツ、イタリア、ブラジル、フィリピン、その他の国々で平和運動の大部分は企業主導のグローバル化に反対する運動、または世界的な公正を要求する運動から形成されている。また、世界的規模の武装解除を達成させる為に次の事も必要となるだろう。

まず、国際主義を強化し国連主導の枠組みを作る。それは、国連を世界平和推進の中心におきアメリカ帝国の代わりにルールにのっとった強制力を持たせる。イラクにおいて人道援助の中心的役割を担うのはペンタゴンではなく国連でなければならない。そして、新しい世界を築きあがる為に地球規模で平和と公正の運動の推進に尽力しなければならないのである。

意見 2今日はイラク、明日は…?
By Bill Fletcher Jr.

Cortrightの意見は慎重すぎるだろう。私たちは戦争を終わらせる為、圧力をかけ続ける必要がある。そして、この戦争に反対しているものは米国軍に反対しているのではなく、その逆であると言うことを訴えなければならない。彼らの即座の帰還を望んでいるのである。

米国の反戦運動は以下のプログラムを進める必要がある。

・敵対行為の即時中止 アングロ・アメリカンの侵略を止めさせ、平和を生み出していく母体として国連に権威を戻す。

・帝国国家建設に反対し民主的な外交政策を行うために闘う 反戦運動は、ブッシュ政権の安全保障政策を直接受けたものにしなければならない。米国が世界と関わっていく上での代替政策を進める。安全とかコストが低くなると言うだけでなく公正と言う観点からも必要である。

・中東地域の大量破壊兵器を取り除く Cortrightが「武装解除は最終的に世界的に行わなければならない。」と言うのは正しい。しかし、WMDを保有している事を隠しているイスラエルの事について明確な言及がない。

・パレスチナにおける意思の自主決定を支援する パレスチナの人々の権利と安全が保障されることなく中東の平和は実現しない。イスラエル政府がパレスチナ支配を許されつづけ、パレスチナ運動を抑圧しつづける限り、テロの芽は刈り取られず、より不安定な地域を生み出す事となるだろう。

・反戦運動を広げつづける イラク戦争とテロに対する戦争は極右を先導する事に利用されている。反労働者とも言える経済政策は民間部門、民間サービスを窒息させる事に使われ、一方で軍が強化されアラブ人、イスラム信者、中央アジアの人々の民主化はあたりまえのように行われている。反戦運動はこれらの問題にも突っ込んでいかなくてはならない。そしてまた、同時に米国でのさまざまな社会運動に反映していくように運動を拡大していかなければならないのである。

意見 3グローバルな運動を目指して
By Medea Benjamin

David Cortright の呼びかけは役には立つが、限定的すぎるだろう。反戦計画にとってそれが地球規模に達していく事が何よりも刺激となる。企業主導のグローバル化に反対する運動の中で私たちは海外と草の根運動家達と固い結びつきが出来ているが、反戦計画は地理的に拡大していく為の機会を与えてくれる。

もっと世界社会フォーラムを計画していこう。次の戦争を起こさない為に、人間の楯を送るのではなく、草の根の団体を世界の紛争地域、問題地域に送り、地域と協力するのである。また、国連の民主化を進める世界規模のキャンペーンを行い、安全保障理事会からGeneral Assemblyに権力を委譲させるのである。それから、米国が国際司法裁判所や京都議定書などの国際条約や制度に調印させる草の根のキャンペーンを地球規模で行う。そして、米国軍が駐留している地域と協力して「Bring All the Troops Home」運動を行い米国軍基地の拡大を止めさせ、既存の数百に及ぶ海外にある米国軍基地を解体していくのだ。

また、国内では反戦協力体制が間近にある危機が終わる事のよって崩れてしまわないようにすることが最重要課題となるだろう。そのためには、差し迫った国内の問題を反戦と結びつる事が必要になるだろう。

Cortright が言うように2004年にブッシュ政権を取り除く為の計画を進めなければいけない。二大政党政治ではやっていけないという事に気づかなければいけないときである。また、民主党のリーダーはこの戦争で自らの手に血を塗ったと言う事、そして民主主義を根付かせる為に多政党体制を構築していかなければならないということを考えるべきだろう。

 


「イラク以後」:米国の権力と世界の貧困

Beyond Iraq: US power and global poverty
Marc Lopatin(「War on Want(貧困との闘い)」の広報担当)

国連が対イラク戦争ではベンチを暖め、多国間貿易交渉が手詰まりに入っている中で、米国の外交、軍事、貿易の全領域における(国際協調でなく)二国間協議の破壊的な展開の舞台が整えられた。米国国防総省の高官は最近、「米国の貿易政策が米国の友好国に報酬を与え、米国を支持しない国に痛みを与えるのは当然だ」と語った。

◆金の力

・・・知的所有権、輸出補助金、輸入関税、そして資本移動の神聖な権利をめぐる世俗的な協議に対して数百万人のデモが起こることはないが、しかし、ここに戦争の世界経済に対する影響が本当に反映されるということは否定できない。2001年の米国のGDP10兆ドル越え、第2位の日本の2倍である。米国は世界最大の商品及びサービスの輸入国であり輸出国である。非金融企業で海外の資産所有ランキング上位100社の内24社が米国に本社を置いている。右翼のシンクタンクである「ヘリテージ財団」は2002年4月に発表した政策提言の中で、「米国は貿易の拡大を必要としている。世界の消費者の96%は米国の外にいるのだから、米国は国際貿易に多くを依存している」と述べている。

◆分裂◆

もし、このような力の指標の維持・拡大が帝国にとって負担になれば、世界は新しい米国の二国間協議を通じた支配の時代に直面するだろう。9月にメキシコ・カンクンで行われるWTO閣僚会議に先立ち、331日までに農業交渉について同意するというスケジュールが守れず、多国間協議が行き詰まっていることによって、その可能性は一段と大きくなった。
また、数週間前にWTOは、米国が昨年鉄の輸入に対し、30%に及ぶ関税をかけた事をうけて、国際貿易のルールを犯していると言う裁定を下した。米国は、そのような決定に関し気にもとめていないようであるが、EUは今40億ドルの制裁を米国に課すと脅迫する権利がある。

◆敗北◆

ブッシュ政権は米国が技術、電気、バイオテクノロジーと薬品などの部門で力を失っていると言う事はよく分かっている。London School of EconomicsRobert Wade 教授はイラク戦争が二国間協議を強める触媒になるだろうという。

その典型が知的所有権の問題である。1990年、米国、日本、西ヨーロッパなどの先進国は産業時代に見切りをつけ、知的財産ベースの経済に転換した。企業はソフト、エンターテイメント、バイオテクノロジー、薬品など幅広く手を広げ21世紀の商業の旗を振っている。かわりに、これらの企業は調査や開発に何十億ドルもかかる自分達の知的所有権を保護させる要求をした。

過去20年で知的所有権を含む商品のコストが急激に上った一方で、開発のペースはこれまでにないほど早くなっている。最近この事が重大な問題を生み出してきた。たとえば、薬の特許を独占する巨大医薬品会社の権利と、国民をエイズなどの病気から助ける為に必要な安価な特許医薬品のコピー商品を製造する途上国の権利との争いである。

Wade教授は、米国がWTOの規定を超えてチリなどの国との二国間協議で知的所有権条項を加える方法を指摘する。米国はWTOの協定を最低基準に利用し、米国の特許所有者に対する、保護の強化を図っている。米国・コロンビア大学のJagdish Bhagwati教授はもっと皮肉な通商問題が起こっている事を指摘する。知的所有権の強力保護にくわえ、米国の交渉者は通商相手に厳しい金融条件を課していると言うのである。Bhagawati教授によれば、最近結ばれたチリとの協定とシンガポールとの第二協定では、資本に対する規制が禁止されたのだ。

◆資本移動の神聖な権利◆

もし、二国間通商協議で資本規制が禁止されると、国内経済を保護するために資本の活動を規制した国が米国の資本家に賠償金を支払わなければならなくなる。Bhagwati教授は、「The Wall Street-Treasury Complexは特許保護と通商相手の経済的自由化を見返りに、米国への市場アクセスを取引している。これはすべて米国企業のためのロイヤリティー集めとウォール街の資本流動を安定させる為であって、まったく貿易とは関係ないものだ」と指摘する。

◆超大国の支配◆

世界一安定した通貨としてのドルの需要はその価値を跳ね上がらせ米国消費者に世界中から湯水のごとく安価な輸入をさせている。一方輸出者は彼らのメインバンクにお金を何十億ドルと言うお金を蓄え通貨の暴落を防いでいる。これらはだいたい長期国債に替えられ、23パーセントの金利が払われている。
もし反米感情が強くなり世界の資本化が貯蓄をユーロに替え、それらの政府が米国の長期国債を換金すると言う事が起きればいったいどうなるだろうか?もちろん誰も金融破綻が引き起こる事を望んでいない。しかし、その脅威は常軌を逸した帝国をひざまずかせる事になるかもしれない。

 


スロバキアで銀行融資の条件に鉄道路線の廃止

Regional railways detroyed for a bank loan
By CEE Bankwatch Network

スロバキア共和国史上最大のストライキは商品輸送を鉄道に頼る企業や、初めてストライキを経験する市民に多大な影響を及ぼした。早朝地方の村から電車で通勤する人々は電車の中で、仮眠を取っていたが、いまでは満員のバスに押し込まれて、ストライキの現実を目の当たりにする事となった。

国中で、この最悪の状況を誰が作り出したのかと非難の声が聞こえてくる。しかし、ヨーロッパ投資銀行がしてきた事について触れるものはいない。EUの銀行が絡んでいるのである。1999年を振り返ってみれば、スロバキアはEIBから鉄道債権の為の融資を受けていた。そこに特異な条件がつけられていたことを報道した海外のメディアはすくない。それは、2002年までに32の鉄道路線を廃止するか民営化するという条件だった。スロバキアで民営化することは廃止する事と同じことである。これらの条件はスロバキアの市民だけでなく、EIBもスロバキア政府も議論をしなかった。当時の政府とスロバキア鉄道は、EIBからの即刻融資をちらつかされ、この条件の返答に2週間の猶予を与えられたが、鉄道は、Vladimir Meciar元首相とギャングによって作られた巨大債務を抱えていたので、現Mikulas Dzurinda首相がそれを受け入れるのにそんなに時間はかからなかった。

200110に「環境政策提言センター」(Center of Environmental Public Advocacy)、「地球の友・スロバキア」、「銀行監視ネットワーク」(CEE Bankwatch NetworkEIBスロバキア鉄道・郵政・通信省に対して、スロバキア鉄道への融資条件の情報開示を求めた。しかし、都合よく守秘義務条項が融資契約に含まれていると言う理由で回答してもらえなかったのだ。

ある公的機関から別の公的機関へ融資がなされており、しかもスロバキア政府の承認もある。このような融資契約の情報を公開しないという事が許されるはずもなく、言い訳の余地もない。また逆に、公的機関同士の契約が結ばれるなら、契約が結ばれる前に、公正な議論を行うためにも全ての情報開示をその都度行うのが一般的な慣習だろう。

200011EIB2年間の準備の後、新しい情報政策を打ち出した。残念ながら、改定された政策は問題の解決にはなっていない。銀行は公的融資に対し民主的に選ばれた政府に情報を開示する事を盛り込まれていないのである。代わりに、情報公開義務をあいまいなフレーズでかくしている。いつでも可能な時に公開すれば言いと言う中身のないものだ。

「環境政策提言センター」は正式の鉄道融資契約書の入手に力をそそいでいる。それが、公になることを望んでいる。もし必要であれば、NGOがこのEIBの融資に関して、一般が情報を得る権利を強制させるための法的行使をするつもりである。まずは、スロバキア裁判所、そしてそれが失敗だった場合、EUのオンブズマンにこのケースを持ち込むのだ。

 


WTO
をめぐる動き

WTO Tidbits
By the Attac work group on International Treaties, Marseilles

1) NGOが農業委員会の提案を拒否
50NGO団体がジュネーブに集まり、農業委員会の提案を拒否することを宣言した。
さらに、フランスのシラク大統領は、パリで行われたアフリカ52カ国首脳会議で、交渉期間中、アフリカに対する農作物輸出への助成を凍結することを提案してオブザーバーたちを驚かせた。彼は次のG8フランスサミットでこの問題に関しイニシアチブを取ると言っているが、アフリカの農作物に対しヨーロッパの市場を公開する提案などはなされていない。情報筋によると、シラクの提案は現在進行中のWTO協議でアフリカ各国に受け入れられていない。なぜならそのような提案はUS AGOAの下での特恵通商条件を失う恐れがあるからだ。

2)バングラディッシュが、自由化の産業発展への悪影響を指摘
市場アクセス交渉グループの会議で、バングラディッシュは過去25年に及ぶ自由化政策が産業発展と、貿易そして経済にどのようなマイナス影響を与えてきたかを示した。ケニアはアフリカにおける苦い経験を考慮する事を訴えて、これからの自由化はそれぞれの国が決める事だと主張した。

3)G7の財務大臣、米国の経済状況に懸念
22122の両日の会議でG7の財務大臣達はイラクの状況だけでなく、米国の減税政策と財政赤字についての懸念を表明した。そして、数ヶ月の間に世界経済が深刻な問題を抱えた場合、共通の立場を取る事で一致した。

4)交渉委員会 (34-5)は、進展なし
スパチャイ議長は、交渉が分裂の危機にあると再度警告した。貿易と開発委員会において途上国に与えられた特別差別待遇で立場が二極化し、ドーハマンデートのこの分野に関する解釈の違いが生じている。

5)エジプトがカンクン会議の前に行われる会議を主催
この会議は628日から73日の間Charm El Sheikhで開かれ、カンクンで行われる第5回閣僚会議の予備会議となる。シドニーと東京会議で招待されている閣僚が集まる予定である。エジプトはさらにアラブやアフリカ各国の参加に勤めている。

6)サービス委員会での「要求」プロセスが遅延
3月初旬、要求を提出した加盟国は30に過ぎなかった。331日の期限までに多くの「オファー」が提出されることはなさそうだ。それは次の2点に原因がある。
まず、サービス分野の協議で進展があったにもかかわらず、他の重要な部門の失敗により、さまざまな国々で期限にあわせるための士気が薄れた事。そして、多くの途上国が協議期間に譲歩が得られるよう要望を慎重に検討していると言う点である。
「要求」を提出した国の多くは第三世界諸国である(チリ、中国、香港、インド、中米共同市場諸国、そしてメキシコ、パナマ、パキスタン、タイ)。

要求は4つに大別できる。

・水平的制限(居住、資産等による制限)の撤廃

・情報技術と関連サービスに対する制限の縮小・撤廃

・モード4(人の移動)のための特別待遇と、このモードの一層の自由化

ILOの国際職業分類基準による「専門サービス」の定義の拡大

7)ロシアのWTO加盟について進展なし
ロシアのWTOの加盟協議が10年経ってなお、ロシアは農業、エネルギー、透明性の分野でその資格を得るための変革が必要である。最近の牛肉、豚肉そして鶏肉の輸入制限の決定は米国、カナダ、日本、そしてオーストラリアで激しい批判を受けている。ロシアはゆっくりと通信、金融サービス、そして保険の分野で関税を引き下げている。

8)紛争処理手続きの改革、進展なし
ドーハ宣言のparagraph 30によれば、この手続き上の改革は531日までにまとめられなければならない。しかし、代表者達は互いの評価の違いが広がるにつれ悲観的な態度を示している。代表者たちは特別セッションの議長に提案の再考を求めている。

9) ラミー、インド訪問で農業問題について協議
EU貿易委員のラミーは31314日にインドを訪問し、自由化は漸進的に行われるべきであり、各国全ての関税撤廃は無理であると言う考えを示した。EUが市場開放努力をするべきであるといったことを認める一方で、彼は、ヨーロッパはインドと同様に、農業が特別なケースであると考えていると述べた。彼は、インドに公衆衛生と植物防疫をヨーロッパの規範に近づける努力をする事を求めた。インドの貿易相は巨額の助成金の恩恵を受ける国との競争にインドのどれだけの農民が耐えられるだろうかと批判した。ラミーはインドによる反ダンピング法の行使がEUとインドの貿易関係に問題をもたらすと強調した。一方、インドはEUによる一般特恵制度の基準に社会権、環境保護、麻薬問題を含めることに反対しいている。

10)イラクに対する戦争が多国間通商交渉により大きなダメージを与えかねない
WTOスパチャイ事務局長317日ジュネーブの国際関係学高等研究所(Higher Institute for International Studies)でのスピーチで戦争が多国間通商協議にマイナスの影響を与えかねないと警告した。他の出席者からは米国と、フランス、イタリアの格差の拡大が貿易関係に影響を及ぼすだろうと言う意見があった。米国とEUではすでに遺伝子組み替え食品の分野で隔たりが出来ている。スパチャイは戦争によってメンバーの関心が軍事問題に捕われ、貿易協議の重要な期限を決める事から目が離れてしまうのではないかと危惧している。また、彼は多国間協議を停止させる地域または二国間協議の広がりについて関心を集めている。これらの協定は2年後には300に上るだろう。

11)米国とオーストラリアの間の難航協議
難題は農業分野である。オーストラリアはこの分野で巨大輸出国の一つである。そして、米国の牛肉、砂糖、乳製品割り当て制限による不利益に不満を表明している。オーストラリアの目標は農業製品分野での関税の完全撤廃である。

12)GATS作業グループの議長が決裂を懸念
問題はサービス分野の緊急サーフガード(輸入制限措置)に関して起こっている。ASEAN各国はこれらの処置を求めている、しかしEUなどの国はそれに反対している。グループの議長は期限前の解決を求めている。