Sand in the Wheels  
  N° 169 - Wednesday 02 April 2003         

今すぐ公正を!
JUSTICE NOW!

サンドインザホイール日本語版2003年第11号2003年4月2日(通巻169号)

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 目次
1.学生レイバー・アクション・プロジェクト(Student Labor Action Project)
3月31日〜4月4日、学生と労働者はセサール・エストラーダ・チャベス(全米農業労働者連合の創設者)とマルチン・ルーサー・キングを称えて、キャンパスとコミュニティーで「労働者のための公正」を訴える(1038)

2.金属労働者が、IMFの政策の各国経済への破滅的影響を非難(Steelworkers Assail IMF Role in Damaging Economies)
3月初めにプラハで開催されたIMF(国際金属労連)の第9回世界鉄鋼労働者会議で、全米鉄鋼労組(USWA)のレオ・W・ジェラルド会長は、「米国財務省が強力な発言権を持つ IMF(国際通貨基金)は発展途上国に対して、労働者の搾取を奨励するような財政政策を押し付けている。発展途上国は、工業諸国が歴史的にたどった発展の道筋と異なり、国内経済の多様化よりも輸出を優先させる政策をIMFによって強制されている」と述べた(1365)

3.ブラジルNGOの国際活動(The international activity of Brazilian NGOs)
かつて人権と環境保護の分野で目覚しい活躍をした「北」のNGOは、今日では、メディアによって、新しい、微妙かつ重要な活動分野に焦点を当てている団体として描かれており、国際的(あるいはグローバルな)な課題とローカルな活動の接点を見つけ出そうとする仲介者として機能することにこれまで以上の意欲を示している。しかし、動員の成功にも関わらず、市民社会の中に期待された変化をもたらすほどの国内的・国際的プロセスは実現できていない。言い換えれば、他の要素(多国籍企業、メディア、国内企業、政府)におけるグローバリゼーションの方が広範であり、国際機関や各国政府に対してより大きな影響力を持っており、したがって政策に影響を及ぼし、政策を実現する能力に優っている。市民社会の活動の重要性が増しているとはいえ、市民社会の介入は一般的には(政策や資本の動きに対する)反応として起こっており、政府や企業の利害によって操作されるケースや、ほとんど効果がないケースもある(5233)

.GATSに抗し、GATSを超えて(Against  GATS, beyond GATS)
・・・要約すると、GATSは市場原理に基づいてサービスを提供することが可能なあらゆる分野に適用可能であるため、ほとんどのサービスが適用対象となる。社会福祉関連のサービスも含めてである。GATSが意図しているさらなる自由化は、自由市場に向けたさらなる市場開放の誘因になるだろう。これはある種の自己増殖のプロセスである(3423)

 


学生レイバー・アクション・プロジェクト
Student Labor Action Project
「ジョブ・ウィズ・ジャスティス」JwJ

昨年44日、学生レイバー・アクション・プロジェクト(SLAP)[労働運動に連帯する学生グループ]が呼びかけた第3回全国学生レイバー・アクション・デーに、学生と労働者による100余の行動が行われた。

SLAPは今年はアクション・デーをアクション・ウィークに拡大し、331日(全米農業労働者連合の創設者、セサール・エストラーダ・チャベスの記念日)から44日(マルチン・ルーサー・キング暗殺35周年)に一連の行動を行った。SLAPは「ジョブ・ウィズ・ジャスティス」と米国学生連盟の共同プロジェクトである。

この数年間、学生は全国で企業の強欲に抵抗する力強い運動を築いてきた。今年のアクション・ウィークにはSLAPのほか、「全米スウェットショップ反対学生連合」、AFL-CIO、トランスアフリカ、アストラン・チカーノ(チカーナ)全国学生運動(MEChA)、「農業労働者と連帯する学生アクション・グループ」、Not With Our Money(「われわれの税金で戦争をするな」連合)などが参加した。

今年の行動では、次のような課題が掲げられた。
・9・11以降の労働者と移民に対する攻撃を止めよ
・「生活賃金」と団結権をキャンパスで、地域で、全世界で
・スウェットショップをなくせ!
人々は売り物ではない!

 


金属労働者が、IMFの政策の各国経済への破滅的影響を非難
Steelworkers Assail IMF Role in Damaging Economies
全米鉄鋼労組

3月初めにプラハで開催されたIMF(国際金属労連)の第9回世界鉄鋼労働者会議で、全米鉄鋼労組(USWA)のレオ・W・ジェラルド会長は、米国財務省が途上国の労働者を搾取する一方で、米国の貿易赤字を拡大し、米国労働者の就業機会を奪うようなIMF(国際通貨基金)の対途上国財政支援計画を支持していることを非難した。彼は「米国財務省が強力な発言権を持つ IMFは発展途上国に対して、労働者の搾取を奨励するような財政政策を押し付けている。発展途上国は、工業諸国が歴史的にたどった発展の道筋と異なり、国内経済の多様化よりも輸出を優先させる政策をIMFによって強制されている」と述べた

同氏はさらにIMFの政策はアジア金融危機の加害者であり、ロシア・南米の金融危機を併発させたと指摘。さらに米国鉄鋼業界の37社を倒産に追い込み、85,000人の職を奪い、退職者約20万人の医療保障を一掃したと述べた。

同氏はさらに「グローバリゼーションの爆発的発展は、労働者や生産者の利益を無視して進んでおり、一次金属の価格と企業の収益を押し下げている」と述べ、「昨年の米国政府による関税導入は鉄の価格低下に一定の歯止めになったが、組合員と退職者が依然として貿易政策の犠牲になっている」と主張した。

410-15日のワシントンDCでのデモに関する情報
410-15日、ワシントンDCで米国の軍事的・経済的介入に反対する多くの集まりが計画されている。ラテンアメリカ連帯連合は、13日に全国会議と集会・デモを計画している。インターナショナルANSWERは4月12日にデモを計画している。このほか多くのグループが反戦デモを計画している。

◆ラテンアメリカ連帯連合の全国会議の最新情報
南米と米国からの発言者リスト:
−Vernon Bellacourt アメリカ・インディアン運動の・ムーブメントの代表。1972年のインディアン局の占拠や1992RedskinSuperbowlデモなど一連の行動のリーダー。
−Graciela Monteaguado (アルゼンチン)「パンと指人形劇場」の代表で人権活動家であり地域の芸術家。
Victor Quintana (メキシコ)元国会議員、社会コミュニケーション学の教授。
−Guadalupe Sequeira (ニカラグア)人権教育・女性の権利を訴えてきた活動家。

 


ブラジルNGOの国際活動
The international activity of Brazilian NGOs
Aurelio Vianna Jr. (社会学者)

[討論のための文書]
ブラジルと他のラテンアメリカ諸国のNGOの国際活動に関する考察。

背景として

ここ数年間、全世界でNGOは多国籍企業に対する監視と直接行動を増加させた。
これらの活動は、市民の国際的な結集の自由と、普遍的人権の擁護という二つの原則に立って行われた。

1.世界的な市民社会−グローバリゼーションのもう一つの結果−は新たな課題を取り入れ守備範囲を確実に広げメディアにも広めてきた。

この間の運動としては、途上国の債務(ジュビリー2000)、WTO支配の変革(シアトル)、IMFと世銀への批判(ワシントン)などが、メディアでも取り上げられた。
かつて人権と環境保護の分野で目覚しい活躍をした「北」のNGOは、今日では、メディアによって、新しい、微妙かつ重要な活動分野に焦点を当てている団体として描かれており、国際的(あるいはグローバルな)な課題とローカルな活動の接点を見つけ出そうとする仲介者として機能することにこれまで以上の意欲を示している。しかし、動員の成功にも関わらず、市民社会の中に期待された変化をもたらすほどの国内的・国際的プロセスは実現できていない。言い換えれば、他の要素(多国籍企業、メディア、国内企業、政府)におけるグローバリゼーションの方が広範であり、国際機関や各国政府に対してより大きな影響力を持っており、したがって政策に影響を及ぼし、政策を実現する能力に優っている。市民社会の活動の重要性が増しているとはいえ、市民社会の介入は一般的には(政策や資本の動きに対する)反応として起こっており、政府や企業の利害によって操作されるケースや、ほとんど効果がないケースもある
国連の場で、社会開発(コペンハーゲン)、環境と発展(リオ)、女性問題(北京)の会議が持たれても、国内の運動が国際課題に遅れを見せた。

例えば多国間投資協定(MAI)にしても、社会経済研究機関(INESC)、ORA(食品信頼市民権)、CBPJ(ブラジル公正平和委員会)、OAB(ブラジル弁護士会)、ABI(ブラジル報道協会)、CNBB(ブラジル宗教者会議)などが対抗するパンフレットなどで反対を訴えても、ブラジル政府によるMAI提案が国内議会を通過してしまうという状況がある。

2.グローバリゼーションのプロセスは、NGOと協力機関に新たな課題をもたらした。これまでは各国で、人権の運動の中での各団体の役割を定義するのは容易だったが、今では相互協力の前提として国内課題を明確にし、多角的な協力に向けて介入することが求められる。

これは、異なる原則から出発する国際協力の行動に適用される。政府、協力機関、教会、多国籍の開発銀行、国連機関、「北」のNGOが「南」のNGOとパートナーシップを結ぶことが可能になる。

3. 国際キャンペーンと国際ネットワークの多国籍化は、様々な課題で数百あるいは数千の市民社会組織を巻き込み、IMFWTOなどに関心を集中させている。

これらは国際キャンペーンの結果である。しかし、「南」からの参加者は、行動の第一の矛先をIMF・世銀の主要株主である「北」の政府に置いている。
この視点に立って、米国を中心とする金持国が政治的に重視され、途上国の市民社会に優先してキャンペーンが行われる。
国際協力を通じた広範な結集は、「北」のNGO・基金・協力機関から財務支援を受けたNGOを通じて、「南」の国の社会に参加する。
世銀とUNO も、この点で重要な投資家になってくる。
「南」のNGOの国際行動の議題は、世銀やIDBを含む北側の財務支援に左右されるという点も否定できない。

4. 「北」のNGOが「南」の国で活動している多国籍機関と関係を築くことは困難ではない。「南」の国における多国籍機関は今日、「北」のNGOや政府系協力機関との間で、かつてない緊密なコンセンサスの下で活動している。

5.「南」のNGOはしばしば、国際的な行動を再生産し、国内でもイニシアチブを握る。

「南」のNGOは、分野だけなくプロフェッショナリズムの度合いや、外的資源の導入においても多種多様である。

6.国際協力は、異なる国で異なった方法でNGOと関係を維持しなくてはならない。

開発機関と教会の国際協力は、第一に「南」の国でそれぞれの発展の仕事を支援し、次に「南」の機関の国際的多国籍的活動を支援する。
「南」あるいは「北」におけるNGOは、実践の成功だけでなく、持続可能な民主的政治的プロセスにより多くの焦点を当てなくてはならない。
「南」の国の市民社会を充実させるため、それらの国の政府の民主化を推進するには、自国政府に対する活動をさらに活発化させるしかない。

 


GATS
に抗し、GATSを超えて

Against  GATS, beyond GATS
By Alessandro  Santoro. Milan-Bicocca University

GATS(サービス貿易一般協定)は、いわゆるウルグアイラウンド交渉中で、現在WTOに加盟している諸国の間で合意がなされた1995年に導入された。GATSの目的は、以下の分野を含む;

. 国際貿易を秩序付ける信用と信頼に基づくシステムを創造する。
2.無差別の原則に基づき参加国に公正で平等なシステムを保障する
3. 経済を活性化する
4.サービス市場の漸進的自由化を通じて貿易と発展を刺激する

しかし、これらの問題に立ち入る前にGATSがなぜグローバリゼーションの前線にいるのかを検討したい。
基本的な点はWTOが指摘した通り「サービスは世界の雇用人口60%をようするに関わらず、貿易全体の5分の1しか占めない」ということだ。
 GATSは、ほとんど世界経済を包括する約140カ国に適用され、すべての種類のサービスを対象にする。

年金・医療・教育も除外対象とはならず、社会的な警鐘が鳴らされている。
年金については、多くの国が金融市場に直結した民間の年金ファンドを補足している。
教育においても自由化がさかんでヨーロッパではほとんどすべての国で私企業が大学経営に参加している。
米国でも2000年の自由化案が導入され、「不公正税制」や「不透明」な補助金は障壁として撤廃の対象とされた。

ヨーロッパでは公的部門が強い保険の分野でも、私営化が増大している。
GATS の加盟国は、次の3つの原則に従わなければならない。

1. 最恵国待遇(MFN)
2. 市場アクセス
3. ナショナル・トリートメント

第一原則は、加盟国は他の諸国に認めている最も有利な条件をすべてのサービス供給国に対して即時、無条件で認めなければならないという原則である。これまで、特に旧植民地の途上国に適用された待遇が、あらゆる国に拡大されるということである。

市場アクセスとナショナルトリートメントは、外国サービス供給業者に対する障壁を撤廃するもの。

新古典派経済学は福祉経済を提唱した。一定の条件の下で、完全競争は最大限の効果をもたらすとして、経済の各分野の相違を考慮しなかった。これが、一律自由化を謳うGATSを正当化する根拠となる。しかし、理論が有効であるための必要条件と効果の意味を吟味する必要がある。
第一に、完全競争の条件である選択の自由とはデータを評価できるエリートに限られ、大多数の人々にとってはスローガンに過ぎない。
第二に、最大効果という点も、例えば生産の結果の環境汚染等、市場取引に直接参加していない人々に対する考慮がない。
第三に、資源の浪費を招くことから、オファーの選択肢を増やす完全競争が最も効果的であるとは考えられない。

私たちはなぜ自由化と私営化に反対するのか?
これらは大きな問題でここですべてに答えることは難しい。
しかし考えられる要素を挙げて見よう。

私が考える「新公共経済」の一つは、雇用を拡大し市場では満たせないニーズに応えるものだ。

Giorgio Lunghini 氏が明らかにした通り、現代社会は市場が応えきれない様々な要求を抱えている。ケアや個人的サポートに対する需要、環境・自然や芸術的遺産の保護の要求、移民の文化的ニーズ、実質的な社会的に有用な仕事へのニーズなど市場が提供できず、国家が沈黙している様々な需要がある。
新公共経済は、これらの社会的要求に応えるべくものだ。

新公共経済は、長期的な持続可能性を持つ生産の水準と分野を決める目的がある。エネルギーと交通の分野が戦略的自由化の対象とされているが、最近の研究によると、市場は価格メカニズムを通じて、環境の有限性を反映できず、環境の持続可能性を維持させることができないことが明らかとなっている。
市場は価格という指標で単純化することができるが、実際の人間生活や経済体制と環境の関係などは複雑で、単純にはかることができない。
環境の持続性に対する解決策は、最高度の公共政策、進歩的な開発政策、研究政策、資源利用の研究など、すべて自由化策に還元できない手段が求められる。
これらの目的を可能にするため新公共経済は、財源策として、課税対象を労働から資本に移転しなくてはならない。

しかし、これらはすべてGATSを止めた後に考えることがらである。