N° 168 - Wednesday 26 March 2003

「サンドインザホイール」日本版2003年第10
2003年3月26日号(通巻第168号)

戦争
WAR 
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目次 

1. バグダッド訪問報告Our Days in Bagdad - Asian Peace Mission to Iraq)
市民社会のリーダーと国会議員から成る「アジア平和ミッション」が戦争前夜にイラクを訪問した。アジアの仲間たちへアジアからの連帯を表明するため、そしてイラクの人々の現実の状況と、戦争が人々に及ぼす影響を自分で見てくるためにである(4308)

2. 単なる決議ではなく:組合内で反戦勢力が反対の声を上げるBeyond Resolutions: Within Unions, Anti-War Forces Mobilize Opposition
2003 年3月までに、約 130 の組合支部、45 の地方評議会、26 の地域組織、11 の全国(国際)組織、そしてAFLCIO 執行評議会が、批判の程度に差はあるが、ブッシュ政権のイラクに対する政策を非難する決議を上げた(1406語)

3. G8反対の行動へAnti G8 Mobilization
・・・会議では、次のことが合意された。G8、つまり世界で最も金持ちの国家と政府を代表する8人の首脳が定期的に集まって地球上の問題について決定を行う会合は正当性がないこと、戦争に反対して闘争すること、北の諸国と南の諸国の関係を変える試みを支持すること(債務の帳消しなど)、不平等の拡大に反対すること、実質的で意味のある環境保護を実施すること・・・(2291)



バグダッド訪問報告Our Days in Bagdad
この戦争はフセインに対する戦争ではなく、子供たちに対する戦争だ
「アジア平和ミッション」のバグダッド報告(3・13-18) 

 アジア各国の市民運動家、国会議員による「アジア平和ミッション」が開戦直前の3月13-18日、バグダッドを訪問した。ミッションに参加したのは、ロレッタ・アン・ロサレス(フィリピン下院議員、アクバヤン所属、人権委員会委員長)、ウォルデン・ベロー(「フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス」代表)、ズルフィカール・アリ・ゴンダル(パキスタン国会議員)、ディタ・サリ(インドネシアの労働組合リーダー)、ジム・フシン・アミン(フィリピン下院議員、スル島選出)など8人。

 代表団は3月13日にシリアのダマスカスに到着し、14日夜にバグダッドに到着した。15日朝、イラク国会の議長を表敬訪問した後、アル・マンスールの小児科病院を訪問した。・・・

 サラくんは5歳だが、白血病のため、確実にやってくる死を待つだけだ。彼の命は、放射線治療によって救うことができたかも知れないが、そのために必要な化学物質が手に入らない。ムルタザンくんは3歳だが、リンパ腫に罹っている。治療が続けられれば、まだ生きられるかもしれない。しかし、医師のムルタダ・ハッサン氏によると、医薬品の不足は破滅的だ。この病院でも、毎週2人か3人の子供が死亡している。さまざまな癌や併発症によってである。病院の美術室には、すでに死亡した子供たちが遺した絵や工作が展示されていた。

 代表団は次にUNICEFを訪問し、UNICEF代表のカレル・デ・ルーイ氏からイラクの子供たちの状態についての説明を受けた。

 このあと、代表団は91年の爆撃の跡を訪れた。同年2月12日午前4時ごろ、アル・アミリヤのシェルターが爆撃された。デージーカッタ−爆弾は厚い壁を突き抜け、中にいた407人の人々の命を一瞬のうちに奪った。その大部分は女性と子供で、就寝中だった。このシェルターは今では、爆撃後の状態を保存する博物館となっており、407人の犠牲者の写真が並べられていた。壁は灰と煤煙で黒くなったままである。屋根と床を貫く大きな穴が、爆撃の凄まじさを物語っている。

 16日には、最初にイラク保健省を訪問し、ウマイド・ムバラク保健相と会見した。次に訪問したバグダッド大学では、戦争前夜にもかかわらず、いつもと同じように授業が行われており、グラウンドでは学生たちがバレーボールに熱中していた。代表団はシェークスピアの「ロメロとジュリエット」の講義が行われていた教室に入って、50人ほどの学生(ほとんどが女性)に戦争についての意見を尋ねた。学生たちはみな、政府を支持し、ブッシュを非難した。米国やその同盟国の期待に反して、彼らの言動はイラクの人々のフセインへの支持を強化させてしまったようだ。

 代表団は次に、情報省にあるプレスセンターでヨーロッパ、カナダ、中東各国の報道機関に対して、この重要な時期にバグダッドに来た目的を説明した。記者会見はその日の夜に、イラクおよび中東のテレビで放映された。これで代表団は目的の1つ、アジア人としての連帯を伝えることを実現できた。その後、代表団の一部はバグダッドの「自由広場」に行き、韓国の画家による反戦の巨大な壁画の除幕式を見た。夜には「アジア連帯の夕べ」を開催した。オーストラリア、ウクライナ、ロシア、イタリア、カナダ、スウェーデン、韓国、日本、英国、米国から来ている人たちも参加した。

 代表団の活動は、代表団が独自に計画し、討論したものであり、イラク政府によって準備あるいは指示されたものではない。代表団は一般市民とも話す機会があった。タクシー・ドライバー、ウェイター、公務員、店員、警察官などである。代表団は、17日夜または18日まで滞在する計画だったが、ダマスカスへの航空便がキャンセルされるという発表があったため、やむなく17日朝、バグダッドを発つことになった。イラク・シリア国境付近では、モロッコ、アルジェリア、パレスチナ、シリアからイラク防衛のために駆けつけた志願兵の一団に会った。
 代表団はイラクの人々のメッセージをそれぞれの国の人々に伝えることを約束してきた。それは「これはテロリストに対する戦争ではない。これはサダム・フセインに対する闘いではない。これはイラクの人々、とくに人口の半数を占める子供たちに対する戦争である」

 



単なる決議ではなく:組合内で反戦勢力が反対の声を上げる
Beyond Resolutions: Within Unions, Anti-War Forces Mobilize Opposition
By Chris Kutalik and William Johnson

2003 年3月までに、約 130 の組合支部、45 の地方評議会、26 の地域組織、11 の全国(国際)組織、そしてAFLCIO 執行評議会が、批判の程度に差はあるが、ブッシュ政権のイラクに対する政策を非難する決議を上げた。

戦争反対を訴える人たちは、労働者の生活、税金などの面での計り知れない犠牲と、ブッシュ政権が戦争を口実に労働者の権利を一層侵害することを懸念している。公務員労組は、戦争に伴う予算削減が組合員にとっても一般市民にとっても打撃になると警告している。
この決議の波は、労働者と組合が戦争反対を表明するための政治的スペースを作り出してはいるが、一般組合員の強力な動員にはつながっていない。

UAW(全米自動車労組)第600支部(ミシガン州ディアボーン)の元執行委員であるロン・レア氏は、支部で反戦決議が通った後でも、困難に直面したと語る。「私の支部も含めていくつかの支部では、執行部が提案した決議について組合内で議論がなされておらず、決議が採択される前どころか採択後でさえ、組合員に配布されていない、組合員が決議について知らないのに、支部が戦争に反対していると言えるだろうか?」

いくつかの支部では、決議が採択された後、反対意見が活発に出されるようになった。「組合の中で意見が対立するような問題に組合が立場を決めるのは適当でない」、「どちらにしても戦争は始まるのだし、そうなったら国民は軍を支持して団結しなければならない」、「ブッシュがサダム・フセインを追放すると言うのは正しいことだ」等の意見である。

一部の支部のリーダーは、支部内の退役者委員会に敬意を払って、戦争について議論するべきでないと言う。退役者委員会は必ずしも積極的に戦争を支持しているわけではないのだが。

国際的な反戦運動

イタリアでは港湾労働者がアメリカ軍の港の使用を反対しストライキを起こした。Livornoの近郊では港湾と鉄道労働者が組合のサポートを受けアメリカ軍の物資輸送と荷下ろしを拒否した。一方スコットランドでは、二人の鉄道技術者が西海岸にある基地への物資輸送の為の積み荷と機関車の運転を拒否した。

英国の機械工組合、機関士組合はこれらの労働者を支援することを約束し、同様の行動をとることを発表した。イギリスの5大労組は戦争の際には大規模なストライキをすると言っている。イタリアのCGILは戦争が布告されるとすぐにゼネストに入ると表明している。ドイツの最大産業組合IG メタル(金属労組)も同様の発表した。これはヨーロッパのAFL-CIOに当たるETUCに支持されている。

オーストラリアの建設・森林・鉱山・エネルギー労組は10,000人の労働者が開戦の際にストライキへ参加すると警告している。一方アメリカ主導の戦争を支持しているパキスタンでも、全パキスタン労働組合連盟(APTUF)が強く反対の声を上げている。APTUFのルビナ・ジャミルさんは米国大使館前でのハンガーストライキ等の行動を呼びかけている。

 ◆米国内では・・・

米国の労働者活動家は、決議を上げることにとどまらない行動を進めるために、非常に慎重に活動してきた。

USLAW312日に「平和のための労働デー」を呼びかけた。この日は地域に根ざした抗議行動と、職場での学習活動が計画された。これは315日にワシントンD.C.とサンフランシスコで行われる大規模デモに向けた跳躍台として位置付けられた。

312日の一週間前に、各州の労働評議会の代表が集まり、12日の計画について話し合った。郵便労組やUNITEなどの全国(国際)組合も、この行動への参加を呼びかけている。・・・

316日、USLAWはシカゴでの集会を支持し、「戦争反対」、「米国の労働者家族のための支出を増やせ」と要求した。次の週末には、「サウスベイ、平和と構成を求める労働者」が反戦のためのティーチインを計画した。労働者や一般の人々に戦争が米国の労働者に対してどのような影響を及ぼすかを知らせるためである。

ティーチン、リーフレットの配布、公開討論会などの教育的活動は、米国の労働者を効果的に動員するための一つの鍵となるだろう。レア氏が言うように、「役員は面倒な議論を避けたいと思っているかも知れない。一部では戦争支持の決議も上がっている。一部では役員が投票で敗北した。しかし、民主主義がなければ、決議が運動に転化されることはないし、戦争が始まったら忘れられてしまうだろう。」

 



G8反対の行動へAnti G8 Mobilisation

31-2日、ジュネーブで、G8に反対する運動のためのヨーロッパ連絡会議が開催され、約300人の活動家や代表者が参加した。各国の社会フォーラムやATTACのグループなどが参加した。会議では主にG8に対する運動について論議され、抗議運動の場所、日程等が検討された。

会議では、次のことが合意された。G8、つまり世界で最も金持ちの国家と政府を代表する8人の首脳が定期的に集まって地球上の問題について決定を行う会合は正当性がないこと、戦争に反対して闘争すること、北の諸国と南の諸国の関係を変える試みを支持すること(債務の帳消しなど)、不平等の拡大に反対すること、実質的で意味のある環境保護を実施すること。

フランス政府が、特にアフリカにおいて自らの新植民地主義政策によって引き起こされた問題から責任逃れしようとしており、また、新自由主義政策を推進していることについても取り上げられた。フランス政府は、反戦運動やオルタナティブ・グローバリゼーション運動、環境保護運動の活動家と関心を共有しているかのように自らを描き出そうとしており、その立場から、G8の前に南の諸国の首脳が参加するG28を開催することを計画している(ブラジルのルラ大統領も参加の予定)。

もう1つの重要な問題は、イラクにおける戦争だ。この問題は次の6月のG8サミットで重要な課題となるだろう。この問題はこの数週間の出来事が重要となる。反戦運動と国際社会の圧力が戦争を阻止できるかどうか、また、戦争が安保理決議のもとで行われるかどうかによってサミットの様相が大幅に左右されるだろう。

 ◆会議とオルタナティブ・サミット

複数のイニシアチブが、それぞれ自立的に、しかも相互に連携して進められるという一般的な合意の上で、さまざまな行動の提案が行われた。

ジュネーブとアネマスが中心地となる。特に、アネマスで開催される「もう1つの世界のためのサミット」(CRIDが主催する)と、ジュネーブで開催される「債務法廷」(CADTMが主催する)

ATTACのいくつかのグループが330日または31日にジュネーブで会議を行う。

 オルタナティブ・ビレッジ

抗議運動に参加する人たちの宿泊場所となるだけでなく、数日間にわたってさまざまな交流や、自主的組織化の経験のための政治的スペースとなる。

場所はまだ決まっていない。当局との交渉が必要となる。アネマス空港を使うという提案もある。ここは数千のテントを収容できる十分なスペースがある唯一の場所だ。

 非暴力の阻止行動プロジェクト

これらの行動計画はジュネーブ社会フォーラムによって提案され、スイスとフランスの活動家ネットワークの間で調整のために協議が行われた。

これは政府や国家の首脳が入ってくることを妨害することを目的とするのではない。レマン社会フォーラムの計画では、G8で必要とされている幾千人におよぶ協力者の到着を遅らせてその機能を麻痺させることが目標とされている。この混乱はデモによってもたらされるだろうし、ジュネーブやアネマスは、大量の人々の流入によって都市の機能を混乱させるにはすぐにそして容易にできるほど狭いところである。

長時間にわたる議論の結果、国境の開放とデモの権利の擁護、種々のイニシアチブの相互協力、とくに朝のデモの参加者と阻止行動参加者の分断を許さないための相互の連帯が確認された。

 ◆「湖を燃やす」

その他の行動計画として「湖を燃やす」計画等が発表された。これはVaudois の反G8 委員会の活動家によって計画され、530日にレマン湖の岸辺で火を起こす。火はピクニックやバーベキューのものである。すでに50都市と活動団体が参加を表明している。

 ◆6月1日朝、ジュネーブとアネマスでのデモ

大規模なデモは、この会議の重要議題の一つだった。これはこの会議で議題に上った唯一の共通の行動計画であり、すべての人々や団体がG8反対の運動に参加できる機会となる。

デモの日程、場所、組織化の方法が検討された。政治的で実現可能な思考が入り交じる議論となった。G8にできるだけ近づく必要があるのだけれども、同時に平和的行進でなければならず、また数十万にも及ぶデモ参加者を合理的に組織化する必要がある。大規模なデモはスイスのジュネーブとフランスのアネマスの二ヶ所を起点として行われることが決められた。ここで問題になるのが、両政府に交渉が必要となるフランスとスイスの国境である。

スイスとフランスの主催団体は別個に政府と掛け合う必要があり、しかもできれば次の二つの問題を議論する必要がある。一つはデモをする権利と国境の開放であり、また、一般的に考えて、フランス国境においてデモの参加者が拘束されることを防ぐことである。そしてもう一つは、5月30日デモの参加者が宿泊する場所の確保と対抗サミットの許可、そしてオルタナティブ・ビレッジについてである。

 組織的問題と宿泊体制の問題

現段階で未解決の問題も多いが、ジュネーブの会議で議論は進んだ。

−5月31日の宿泊先についてはデモの出発地となるジュネーブとアネマスの町に要望が集中した。しかし、必要であれば、それらの近郊の町で宿泊先を供給することも可能である。

−集合場所は国境の問題ではっきりしていないが、ジュネーブが対抗サミットとデモの集合および組織化の中心地となるだろう。また、ジュネーブはメディアの中心地にもなるだろう。また集合場所につて地域当局者との交渉も行われる予定である。

−交通等の問題はデモの起点が決まれば困難な問題とはならないだろう。

−オルタナティブ・ビレッジについては、候補地が提案され、衛生、輸送等の面で最低限の条件がそろえば議論の対象となるだろう。

 作業の枠組みと次の会議

各市町村、地域、国で組織が確立されつつある。国際的なレベルではジュネーブで3つの領域で協力が進んでいる。

−技術的な協力。ジュネーブで3月19日と4月23日に会議が開かれる。

−動員に関する情報交換と集団的論議のための会議が、4月26-27日にアンジェで開かれる。

−最後に、組織化の過程で必要とされる場合、510日と11日に会議が開催される可能性もある。