ATTACニュースレター日本版2002年第27

Sand in the wheels

Weekly newsletter - n°136 – Wednesday 17 July 2002.

 

遺伝子貯蔵庫は目を覆う混乱

A MESS IN THE GENE POOL

 

「サンドインザホイール」(週刊)

2002717日号(通巻136)号

ジョゼ・ボベさん歓迎イベント(10/23~31)を全国で成功させよう

 

関西:810()午後2時「NTT大リストラと労働者の人権」山崎秀樹さん(大阪電通合同労組)

関西:8月19日()午後6時:「フランスの学生は今・・・」ニコラ・デュボアさんを招いて交流会

京都:824()午後7時「日本のODAとアジア」

 

目次

1- セビリアのEC−憂鬱なるサミットとヨーロッパの要塞The European Council of Seville - The Melancholy Summit and the European Fortress )

ポルトガル、オランダ、フランスにおける右翼の勝利によってEU域内で形成されてきた新たな政治的環境に照らして考えると、セビリアで開催されたEC(ヨーロッパ評議会)は、保守派の「積極的な提案」に応えることができなかった。制度改革、「安定と成長のための協定」の強力な擁護が合意されなかっただけでなく、スペインのアスナール首相が提案した違法な移民の送出国への制裁という提案も合意されなかった。加盟国の間のコンセンサスがなかったためである(2150)

2- 精肉工場の移住労働者を労働組合・教会が支援Immigrant Meatpackers Join Forces With the Union and the Church) 

食肉処理の労働は、個人の熟練労働から早いスピードで進む工場の解体ラインに変わり、その結果、労働者は一本の骨を一日数百回と切断するようになった。ラインのスピードは大幅に引上げられ、労働者は同じ動作を無限に繰り返し、事故の発生件数は天をついた[このレポートは「レーバーノーツ」誌の協力によって掲載されている](2254)

3-言論の封殺(Killing the Messenger)

ある研究チームの報告書の内容をめぐるアカデミックな論争が、バイオテクノロジーの恩恵をめぐる代理戦争へと拡大した。発端は、7ヶ月前に科学誌『ネーチャー』が、カリフォルニア大学バークレイ校の微生物学者であるイグナシオ・チャペラ(Ignacio Chapela)氏と彼の門下生による論文を掲載したことだった(1129)

4- IMFと世界銀行の秋の総会は9月28−29日(IMF and World Bank Group To Hold Fall Meetings On September 28-29,2002)

合同の年次総会では、通常通り理事会、国際通貨金融委員会、開発委員会などが開かれる(563)

 

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[要約版]


セビリアのEC−憂鬱なるサミットとヨーロッパの要塞

The European Council of Seville - The Melancholy Summit and the European Fortress

By G Buster

 

ポルトガル、オランダ、フランスにおける右翼の勝利によってEU域内で形成されてきた新たな政治的環境に照らして考えると、セビリアで開催されたEC(ヨーロッパ評議会)は、保守派の「積極的な提案」に応えることができなかった。制度改革、「安定と成長のための協定」の強力な擁護が合意されなかっただけでなく、スペインのアスナール首相が提案した違法な移民の送出国への制裁という提案も合意されなかった。加盟国の間のコンセンサスがなかったためである

スペインが議長国を務める最後の2ヵ月間に、スペイン政府の当初の計画--「リスボンの精神」[2000年にリスボンで開かれた特別欧州理事会で合意された戦略]に基づく新自由主義経済と社会改革の第2波の攻撃--に代って、「ヨーロッパ要塞」を具体化し、安全と移住をめぐる論議を極右の方向へ押し流そうとする執念が前面に出た。この状況の中で、おなじみの「テロに対する戦争」が再解釈され、「不法移民」に対する排外主義的な戦争へと作り変えられ、移民排除のプログラムが導入される危険が高まっている。

 

新自由主義戦略の動揺

 

今回の経済・財務大臣の会議--マドリードでは同じ日に、労働組合のゼネストがこの会議を「祝福」した--は、ヨーロッパ評議会が計画している新自由主義的再編の第2波の実施が経済的・社会的に困難であることを証明しただけだった。「安定と成長のための協定」を原理主義的に解釈し厳格に適用しようとする提案には、フランスのシラクやドイツの2人の次期首相候補が反対しており、今回の会議でも退けられた。新しいコンセンサスは、予定されている平衡という目標は維持されているものの、フランスが一方的に次の2年間に3%成長に調整することを宣言したことに対してドイツ等が当惑している。現実を和らげるような策はほとんど出されなかった。

バルセロナで開催されたヨーロッパ評議会では労働市場改革について基本的合意が成されたが、その後のイタリアCGILやスペインCCOOUGTのゼネストに直面して、議題から外された。同様に、「シングル・スカイ・ヨーロッパ」プロジェクトの下での民営化計画に対しても、EU加盟国の半数で航空管制労働者が6月19日にストを行った。労働運動の側の抵抗(最近のドイツの金属および建設労働者のストライキも付け加えなければならない)が強まっており、とくに公共サービスと年金の問題をめぐって新自由主義的改革と対決している。(イタリア)ベルルスコーニおよび(スペイン)アスナールと労働組合の最初の力の試し合いの後、社会的対話が崩壊し、社会的緊張が危険なレベルまで高まっている。フランスや他の国の右派政権は、伝統的な組合官僚との協調と労働者間の分断を通じて、その政策を進めようとしている。

 

EU拡張をめぐって

 

EU拡張についての交渉は、拡張されたEUにおける農業改革の問題と、将来のEU予算の問題をめぐるコンセンサスが得られなかったため、進展しなかった。また、中欧のEU加盟候補国では、その前提としての新自由主義的再編の社会的影響がすでに明らかになっている。たとえばポーランドは深刻な農業危機と、鉄鋼産業の解体の危機に直面している。・・・

 

「ヨーロッパ要塞」

 

EUの新自由主義的政治経済は、すでにEU域内に流入している1100万人の移住労働者(労働者階級の約10%)と、新規に流入する年間6090万人の移住労働者の搾取の上に成立している。「不法な移民」という議論は、市民権や労働者としての権利を持たず、人種によって規定され、「社会的ヨーロッパ」のモデルとかけ離れた過酷な搾取を受け、従順に振舞わなければ本国に送還されるという恐怖に常にさらされている下層労働者階級が計画的に作り出されているという現実を覆い隠している。

メアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官は亡命・難民に関する現行法を1951年のジュネーブ規約に抵触するレベルまで厳格化してきた。同弁務官は今秋から、在留許可書を持たない移住者の追放のための集団的・協調的措置を導入しようとしている。

 

進むべき道

 

「緑-社会-民主」連合によって進められた「人間の顔をした新自由主義」のプロジェクトは、自己矛盾に陥っている。ジョスパンとシュレーダーの敗北が何よりもそれを語っている。

ヨーロッパの政治の右傾化は、公共サービスへの攻撃や賃金抑制として現れている。これに対して「反グローバリゼーション」運動による抵抗が強まっている。政府の対応は、ブレア-ベルルスコーニ-アスナールのような直接対決の路線か、社会的対話と階級の分断による社会的緊張の回避の路線かに分かれる。

福祉国家の大義を捨てたことで極右が伸び、彼らは政治的にもこの機会に便乗しようとしている。

同時にEUは多大な矛盾と欠陥を抱えている:民主的な法治の原則、EUのガバナンスの未来像、米国への政治的経済的依存、経済後退への対応の相違、共通市場への統合の困難などがいずれも壁に当たっている。

EUが問題解決に明確な方向性を打ち出せない限り、これらの矛盾は深刻な危機をもたらす可能性がある。

 一方、資本主義に異議申し立てをする者やもう一つ世界をめざす人たちに取って、今後半年間、三本の柱が重要となる:移住労働者との連帯、EC拡張策への抵抗と批判、偽りのECに対して労働者と人民の民主的で統合したヨーロッパのモデルを構築すること。



食肉処理工場の移住労働者を労働組合・教会が支援Immigrant Meatpackers Join Forces With the Union and the Church

by David Bacon

 

コンアグラ社の食肉処理工場(ネブラスカ州オハマ)の労働者が組合結成投票

 

メキシコ、グアテマラ、エルサルバドルなど数百人の移住労働者がミサに集まるネブラスカ州・オマハのアグネス教会で四月の最終日曜日、牧師のDamian Zuerlein氏は参加者が勤めるコンアグラ社の精肉工場で計画されている組合設立に関する投票について説明し、「コミュニティは、貧困に対する不平等を知っており決断すべき時が来た」と述べた。また食肉処理工場で働くOlga Espinozaは8年間に目撃した事故を証言し「私たちは一歩も後に引かない。全員が組合のために立ち上がって欲しい」と述べた。

当初尻込みしていた参加者も最終的には牧師の下に集まり、 Zuerlein氏は「日曜に教会で立ち上がれれば、月曜に同じことを工場できることを私たちは知っていた」と後に述べている。

翌週、工場で副社長は組合結成をあきらめるよう昨年に続くスピーチを行ったが今年は労働者から非難の声が出るなど雰囲気は全く違った。金曜日の投票結果は、反対126票に対して251人が組合結成に賛成票を投じた。

 

移住労働者の組合

 

60〜70年代はもとより数百年を通じて米国精肉業界は、圧倒的多数の雇用を移住労働者に頼り、今ではメキシコを中心に、ほかの中南米、ボスニア、ベトナム、スーダンなどからの人々に押し付けている。

食肉処理の労働は、個人の熟練労働から早いスピードで進む工場の解体ラインに変わり、その結果、労働者は一本の骨を一日数百回と切断するようになった。ラインのスピードは大幅に引上げられ、労働者は同じ動作を無限に繰り返し、事故の発生件数は天をついた。

 

知恵と勇気

 

牧師のDamian Zuerleinがオマハ南部にあるGuadalupe教会の司祭となった‘90年当時には、スペイン語のミサは一箇所のみで行われていた。ほとんどのラテン系移住者は2〜3世代にわたって住み着いていた。現在ではオマハのカトリックの63%は米国に来て5年以内の者たちである。

当初は世代間のギャップもあったが教会が精肉工場の組織化を進めるともに解消に向かった。Zuerlein氏は96年からグレーターオマハパッキングの組織化を推進した。

Zuerlein牧師などが中心となって設立したオマハ・トゥギャザー・ワン・コミュニティ(OTOC)は、サッカーのリーグをはじめるなど工場の外でネットワークをつくることからはじめた。

また母国のグアテマラ時代からの活動家であるSosaは、労働者と一対一のミーティングを持ち「人間関係をつくり、彼らの関心を見つけ、才能を見出し、リーダーをつきとめ、そのリーダーを組織していった」という。・・・


 

言論の封殺

Killing the Messenger

By Justin Gerdes. Mother Jones

 

ある研究チームの報告書の内容をめぐるアカデミックな論争が、バイオテクノロジーの恩恵をめぐる代理戦争へと拡大した。発端は、7ヶ月前に科学誌『ネーチャー』が、カリフォルニア大学バークレイ校の微生物学者であるイグナシオ・チャペラ(Ignacio Chapela)氏と彼の門下生による論文を掲載したことだった

 

論文では驚嘆する内容が公表された。チャペラ氏によると、バイオ技術により操作された遺伝子によって、メキシコ政府が原産地と認めるOaxacaのトーモロコシが汚染されているというのだ。1998年に遺伝子を組換えられたトーモロコシの生産を停止したメキシコ政府に警鐘を鳴らす内容となった。

 

チャペラ氏とデビッド・クィスト氏が発見したのは(1)地場のトーモロコシが遺伝子を組み替えられたトーモロコシの遺伝子に汚染されている(2)したがって雑種化は、汚染した遺伝子を拡散する――ということ。一方、ワシントン大学のMatthew Metz研究員は、同論文が「科学ではなく神秘主義」であると批判した。両氏を「遺伝子組み替え反対の熱心な活動家」と決めつけ「既定の結論を導くための実験を行った」と述べた。

 

バークリーのMiguel Altieri助教授は、「チャペラ氏への攻撃は、バイオテクノロジーへの批判を退けようとするキャンペーンの一つである」と指摘。「若い科学者に対して、今後、同様の発表した時同じ目に合わせるとの警告のメッセージでもある」と述べた。

 

チャペラ氏は98年に、世界第3の商業種子メーカーであるノバルティスと学会による産学協同のプロジェクト(5年間に2500万ドル)反対するバークリーの学術団体の代表を務めた。

 

博士号を同校より取得したMetz 教授を含めチャペラ氏の主要な論敵は、バークレイ校と関係を持っている。

 

実際、チャペラ氏は、「ネーチャー誌への寄稿者は、全員がノバルティス−バークレイ校の取引と直接のリンクを持っている」と述べた。

 

Metz, Kaplinsky氏は「農業バイオテクを支持する科学者」オンライン請願運動に署名した一人であり、そのサイトはバイオテクが「生物体の改良に強力で安全な手段を持ち、生活の質を高めることに貢献する」と主張している。

 

一方、批評家のジョナサン・マヒューズ氏やジャーナリストのアンディ・ロウウェル氏は、問題の論文が『ネーチャー』誌に掲載された直後から、モンサント社の広告代理店関係者がバイオオテクを擁護するサイトで論陣を張るようになったことを明らかにしている。

 

またメキシコ・バイオテク委員会のJorge Soberon長官は4月18日、政府科学者が収集したデータが「遺伝子組替による世界最悪の汚染」を認めていると公表した。Oaxaca及び Puebla州で調査された地元農民が育てた95%のトウモロコシのうち35%が外国からの操作された遺伝子によって汚染されていたことが明らかとなった。

 

☆関連するレポートが下記のwebにあります

遺伝子組換え情報室

http://www2.odn.ne.jp/~cdu37690/mexcogensyusaiakuosen.htm(日本語)

 

☆遺伝子組換えを擁護する観点から、チャペラ氏と「ネイチャー」誌を攻撃するレポートが下記のwebにあります。

植物バイテク・インフォメーション・センター

http://www.bio-info.ab.psiweb.com/abroad/study/020305_03.html(日本語)

 


 

IMFと世界銀行の秋の総会は9月28−29日

IMF and World Bank Group To Hold Fall Meetings On September 28-29, 2002

By 50 Years is Enough

 

 IMFと世界銀行の本日の発表によると、今年の総会は昨年11月のオタワでの会議をモデルとするという。すなわち同市最大のホテルでカクテルパーティーや展示会などは開かず、2万人の参加者が殺到して交通麻痺が起こるのを避けるということだ。

 

これはフォーラムに陳情行動を予定していた者や、ホテル・飲食業者にとっては悪いニュースである一方、自論の正当化を目的とするセミナーや、貧困一掃を語りながら過剰な消費に走る会合を嫌気する向きには朗報であろう。

 

ワシントン以外の年次総会で恒久的にこのモデルが適用されるかは不明。2003年秋の開催都市であるドバイでは、新設備の建設に向けて起債するなど大掛かりの準備をしている。

 

これは、この会議に合わせて抗議運動を計画してきた人たちにも影響を及ぼす。しかし、(世銀・IMFに対して)米国で最大のデモが行われたのは2000年4月の準年次総会だった。新しいモデルは、通常の準年次総会と同じである。秋の会議から取り除かれたのは、中心的な政策決定者の集まりではなく、パーティーと二国間協議だけである。

 

9月の会議に向けて「50年でもうたくさんだ」ネットワークでは9月いっぱいをかけてスピーキング・ツアーを本格的に行う。

 

9月28−29日の合同年次総会では、「持続的な経済成長と貧困削減」のため国際的な経済・金融及び政策的課題が議論される。

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