ATTAC日本版2002年第22

Sand in the wheels

Weekly newsletter - n°131 – Wednesday 05 June 2002.

 

秘密会談

SECRETIVE MEETING

 

ATTACニュースレター「サンドインザホイール」(週刊)

200265日号(通巻131)号

 

首都圏:629「討論トービン税とATTAC運動」午後時、東京都・渋谷区勤労福祉会館階第洋室

関西:7月13日(土)「フランス農民連盟とラルザック農民の闘い」☆報告:上坂喜美さん+杉村昌昭さん☆午後2時スペースAK

 

目次

1−「大西洋横断社会サミット」(2002 5 13 19日、マドリード)の宣言(Conclusions of the Transatlantic Social Summit in Madrid from the13th to the 19th of May 2002

この全く非人間的な機構を止めるために、その内的論理を拒否し、実現するべき価値--民主主義と公正と平等--を擁護することによって、私たちは人間性を破壊する新自由主義的のプロジェクトに立ち向かう(607)

2−LA-EUブロックに向かうのか(Towards a Latin America-European Union block?

EU15カ国とラテンアメリカ・カリブ海地域30カ国による第2回サミットは2つの問題に焦点を当てた。通商の拡大とテロとの闘いである。ラテンアメリカはEUにとって主要な軸ではない。ラテンアメリカは米国の南に位置し、第3世界の中では最も西欧化した地域であり、比較的安定しており、自由主義的民主主義の体制に適合しているが、世界の通商と生産の中では比較的周辺的な位置にある(726)

3−コカコーラがインド農民の水を奪う(Coca Cola Parches Agricultural Lands in India

4月22日、パルガート地方(ケララ州)・プラチマダのヒンドゥスタン・コカコーラの工場の門前に、憤激した2000人余の人々が集まった。その大部分は先住民とダリット(下層カースト)の人々だった。工場周辺の住民たちによると、コカコーラ工場が見境なく地下水を掘ったため多くの井戸が干上がり、水が汚染された。この日以降、毎日50人以上の村民が工場門前でピケットを続けている(1894)

4−多国籍企業はニカラグアのバナナ栽培労働者に賠償を支払え(Let's force the multinationals to refund the workers of bananeras in Nicaragua

ニカラグアのバナナ農園労働者が、多国籍企業による農薬の大量使用によって腫瘍、不妊症、脱毛、身体の変形、運動機能の低下などの症状に苦しんでいる(840)

5−ブリュッセルでEU貿易担当者とサービス業界団体の秘密会談に抗議行動(Successful action at secretive Brussels meeting between EU trade officials and services lobby

529日、ATTAC、「企業のヨーロッパを監視する運動」(Corporate Europe Observatory)、地球の友・ヨーロッパ、オクスファム・ソリダリテ、「世界発展運動」(World Development Movement)、11.11.11運動などの団体が、ブルッセルで開かれたEU 貿易担当者とサービス業界団体の間の秘密会談を非難して記者会見と、ちょっとした行動を行った(548)

6−水問題をめぐって:南アフリカとガーナのレポート(On Water

南アフリカで約1,000万人の人々が、料金を払えないために水と電気の供給を絶たれ、200万人が同じ理由で家を追われた。ガーナで、国際通貨基金(IMF)の「貧困削減・成長促進(PRGF)」計画の下の次期融資交渉で、IMFは公共サービスの全面的な原価回収を要求するようだ(1307)

7−世界のATTACの会合(Meeting ATTAC worldwide

付録スイス、29にジュネーブでGATS反対のデモ


[要約版]

「大西洋横断社会サミット」(2002 5 13 19日、マドリード)の宣言

Conclusions of the Transatlantic Social Summit in Madrid from the13th to the 19th of May 2002

1.今世紀の初頭に、ラテンアメリカには不公正、貧困、不平等がはびこり、人々には民主主義と市民権は手が届かないものだった。新自由主義を掲げる政府がこれを助長し、絶望的な社会状態をもたらしている。

2.これらの政府は、多くの場合、軍事独裁のあとに確立された。これは変革と社会的公正、そして市民社会の確立を求める市民の要求に対する、支配階級からの唯一の回答だった。

3.このような回答は、米国の機関によって支えられ、あるいは指導されてきた。この介入は、現在ではブッシュ大統領によって「テロとの戦争」を口実にして行われており、ヨーロッパ諸国がこれを支持してきた。

4.コロンビア計画、ベネズエラにおけるクーデター、頻発する政治的誘拐は、その一環である。帝国の命令に反対する者はテロと見なされる(土地なき人々、スト参加者、先住民など)

5.腐敗した政権と独裁政権による不正な債務は、ラテンアメリカの多くの世代の未来を売り渡し、富の再分配と社会的公正の可能性を制限している。

6.今回のサミットで、EUはラテンアメリカとの経済・通商関係に関する適切な案を示さなかった。EECは2国間協定や特恵協定のような偽りの解決策を提案し、サービス供給市場(とくに公共サービス、水、電力)における優位を目指して米国と競争している。ヨーロッパの労働組合運動は、そのような不公正な秩序の確立を阻止しなければならない。

7.ラテンアメリカの人々は、知的財産権を盾に生物種を私物化することを通じた回復不可能な環境破壊から世界の環境資産を守っている。

8.伝統農法は、輸出指向の、アグリビジネスが支配する集約的農法によって放逐され、破壊されてきた。

9.市民のアイデンティティーは解体され、消費者・顧客の関係に取って代わられた。福祉国家、民主主義国家の持続的危機は、社会の崩壊、文化の衰退、共通の価値の喪失のプロセスを加速している。

10. 様々の抵抗運動がラテンアメリカ社会の再構築を目指している。

11.ラテンアメリカでは、資本主義の日々の暴虐を前にして、基本的な問題を解決するために新しい形態の社会関係が生まれている(とくに食糧の問題や、複雑な物々交換をめぐって)。この新しい社会関係は「反乱の権利」を表現している。

13. グローバリゼーションは避けられない現象ではない。それは世界市場の確立と、世界のすべての人々、すべてのニーズの商品化の過程である。

14 この全く非人間的な機構を止めるために、その内的論理を拒否し、実現するべき価値--民主主義と公正と平等--を擁護することによって、私たちは人間性を破壊する新自由主義的のプロジェクトに立ち向かう。

 

もう一つのアメリカは可能だ、もう1つの世界は可能だ!

 

LA-EUブロックに向かうのか

Towards a Latin America-European Union block?

By Isaac Bigio(アナリスト、ロンドン経済大学)

 

EU15カ国とラテンアメリカ・カリブ海地域30カ国による第2回サミットは2つの問題に焦点を当てた。通商の拡大とテロとの闘いである。ラテンアメリカはEUにとって主要な軸ではない。ラテンアメリカは米国の南に位置し、第3世界の中では最も西欧化した地域であり、比較的安定しており、自由主義的民主主義の体制に適合しているが、世界の通商と生産の中では比較的周辺的な位置にある

 

EUはラテンアメリカにとって不可欠の存在であり、より非軍事的な投資と援助を行っている。

ラテンアメリカ諸国は自らの輸出のために、また唯一の超大国による支配の強化を緩和するために新しい市場を探している。ラテンアメリカ・カリブ地域諸国は米州自由貿易地域(FTAA/ALCA)構想および米州機構に参加しているが、いくつかの点で米国政府とは異なる立場を取っている。ラテンアメリカ諸国とEUは、キューバとの新しい関係を支持し、また、米政府が同意していない京都議定書や国際法廷などに関する宣言をすることができる。

 

EUとラテンアメリカの統合の障害となるものは、EUの農産物に関する保護主義である。EUはラテンアメリカに市場開放を要求する一方で、ビザを制限し、農産物に高い関税をかけている。

EUとラテンアメリカの戦略的提携は、両地域の貿易を活発化させるとともに、共通の提携相手である米国に対する自立性を強化できる。このような提携では、スペインが要になる。スペインは旧スペイン植民地との関係では2番目の投資国である。

今回のサミットは、参加した諸国にとっては、貿易の促進とテロとの戦いにおいて、EULAの協力を強化したという点で成功だった。

 

コカコーラがインド農民の水を奪う

Coca Cola Parches Agricultural Lands in India

By Nityanand Jayaraman

 

4月22日、パルガート地方(ケララ州)・プラチマダのヒンドゥスタン・コカコーラの工場の門前に、憤激した2000人余の人々が集まった。その大部分は先住民とダリット(下層カースト)の人々だった。工場周辺の住民たちによると、コカコーラ工場が見境なく地下水を掘ったため多くの井戸が干上がり、水が汚染された。この日以降、毎日50人以上の村民が工場門前でピケットを続けている

村民たちは政府が大量の水を使用している設備の使用中止のための措置を取らなければ工場を破壊することも辞さない構えである。現時点で、政府は何の対応も取っていない。警察は抗議行動に参加した村民数人を逮捕した。

コカコーラは、最も被害の大きい2つの村にトラックで毎日水を届けたが、村民たちは心を動かされなかった。村民たちはコカコーラに、地下水層の再生と、被害地区への長期にわたる水の供給のための費用を支払うことを要求している。

コカコーラのスポークスマンは、「水がないわけではないし、水には何の問題も無い。政治的問題だ」として抗議を無視している。

 

干上がった井戸

コカコーラの工場は3年前、肥沃な土地の中心部に建設された。「農業以外の目的で農地を使うための許可証を持っていないから、工場は違法だ」と反対者の一人は言う。ケララ州の「土地利用に関する法」によると、農地として登録された土地を農業以外のために使用するには事前の許可が必要である。

コカコーラは、最近まで共有資源である地下水を一日当たり150万リットル使用していた。今年は、水不足が企業自身にもダメージを与えた。同社は掘った井戸から80万リットルの水を汲み出すことができたが、工場周辺1.2マイル以内に住む2000人以上の土地を干上がらせた。

周りの村人や農民たちは工場建設から6ヶ月経ったころ、井戸水の量と質が変わり、飲み水、料理に適さなくなったと気づいた。

「コカコーラは私たちを不幸にしている。女性たちは水を求めに1キロ歩かねばならない」。そうできない人々は、汚染した水に頼るしかないのだ。また最近では、100人近くに人が腹痛を起こしたことが報告された。

水危機は農民も直撃した。「以前は18-20時間も水を汲み上げることができたが、今では数時間井戸から水を汲むと、井戸は干上がり、水はすぐに悪くなる」と農民の一人が語った。

「コカコーラの連中は、どこの土地でも井戸を掘ると語っていた」と農民が語ったが、コカコーラの幹部はCorpWatchIndiaに「私たちは土地を購入しているので、水の使用に関する法的規制な何も受けない」と語った。

CorpWatchIndiaPlachimadaの井戸水とGounders農場の井戸水をChennaiにある政府認可の研究所に送り、化学分析を依頼した。Chernaik博士は、「村の井戸水と農場の井戸水は“高度に硬質の水”に分類されるので、入浴、洗濯で深刻な問題を起こすだろう。またカルシウムとマグネシウムの含有量が高いので、嫌な味がする」と述べた。

同博士のこの分析結果は、コカコーラによる地下水の過剰な吸い上げが水問題を引き起こしたとする農民たちの主張を確実に裏付けるものとなった。「地層から水を急速に吸い上げると、水が石灰岩や粘土の間を流れる速さが増す。それで、石灰岩や粘土が壊れその破片が水中に溶ける」と述べた。

 

コカコーラの経歴

共有資源である地下水をコカコーラが搾取していることは、Plachimada地方に限ったことではないと、住民たちは非難している。インドやその他の国における経歴は、同社が「責任ある企業市民」の名に値しないことを示している。

Cokes Kinleyブランドと契約しているM.V.R. Mineral Water S.R. Mineralは、Athur村の地下水を枯渇させたと非難された。「この2つの企業が深い井戸を枯渇させ、その結果農民たちが苦しんでいる」と、NGO Womens Collective。汚染管理地区委員会は、工場の水質浄化工場から排水される高い塩分を含む用水は次第に現地の地層を悪化させるとし、「ここは飲み水に使う地域であり、工場が塩分の高い水を排水するところではない」と、述べた。

999年、汚染管理委員会は多国籍企業に公的同意が保障されず新しい工場を操業しないよう警告を発しが、しかしこの企業は、汚水処理システムを施さず40日以上操業した。

 

背景

Plachimadaのコカコーラの問題は、孤立した問題ではない。コカコーラのために、コミュニティーの住民は飲み水と農業用水を失った。また、企業が共有財産である地下水資源を私物化し、汚染する問題はどこでも起きている」と、Janakarajan 博士は言う。

 

地下水くみ上げを規制する法律がないなら、資金力のある個人または企業はわずかの土地を所有することにより地層全体を私物化することができる。 同博士によると、「資金力のあるものが勝利する。貧しいものは敗者になる」。

「競争的井戸掘り」は博士がつくった言葉で、あるひとが井戸を掘ると、隣の井戸の水が減るので、その人はさらに井戸を掘り下げるという意味だ。水を使用する農業と企業が井戸をどんどん掘り下げ、インドの地下水のほとんどを使い果たした。そして、その他の水資源も農業用水、汚水、産業排水で汚染されてしまった。ところがきれいな飲み水が不足すると、今度は新たな水会社がその地の水を買い

消費者に売っている。

インドのボトル飲料市場は80Rs.17,000万ドル)規模であり、2004年には120Rs.25,000万ドル)に伸びると予測されている。

残念ながら、インドのあちこちで水不足が続いているが、政府は地下水保存のための法律を制定していない。ソフトドリンク、清涼水の企業は、ただ同然の費用で地下水を吸い上げている。詳しくは CorpWatch India

http://www.corpwatchindia.org/を参照。

 

多国籍企業はニカラグアのバナナ栽培労働者に賠償を支払え

Let's force the multinationals to refund the workers of bananeras in Nicaragua

イタリア・ニカラグア連帯委員会

 

ニカラグアのバナナ農園労働者が、多国籍企業による農薬の大量使用によって腫瘍、不妊症、脱毛、身体の変形、運動機能の低下などの症状に苦しんでいる。

 

DBCP(ネマゴン)の毒性

すでに1977年に、北アメリカの研究者が、ネマゴンという化学物質が不妊症を引き起こすことを発見している。カリフォルニアではすぐ使用禁止になり、2年後には米国全体で使用禁止になった。ネマゴンの使用と製造は禁止されたが、輸出は規制されなかった。それは、多国籍企業の倉庫で保管されていた在庫を処理するためであり、輸出しなければ数万ドルの損失となった。

ニカラグアのChinandega地方にはバナナ農場が広がり、Dole, Chiquita Standard fruitなどが所有していた。8000人の労働者が働いていた。この労働者たちの被害だけでなく、水質の汚染は今後120年にわたって影響を及ぼすと考えられている。多国籍企業が生産するバナナは、美しい外見の裏で、農薬と肥料を無計画に使用していた。

ネマゴンが使用された目的は、米国への輸出の障害になる小さな虫を駆除するためと、生産性をあげ、バナナの外見をよくするためだった。

2001年1月17日、3人の労働者による闘いの末に法律第364号「DBCPを使用する農薬の使用により被害を受けた人に対する裁判のための特別法」が制定された。これは大きな前進となり、大きな被害をもたらしたネマゴンとFumazoneを製造、散布、使用し、販売する多国籍企業に対し、損害を被ったバナナプランテーションの労働者に対する保障をさせるものだった。

 2001年2月28日、ネマゴンの被害者たちがASOTRAEXDANを組織し、損害賠償を求める訴訟を起こした。

 

現在までの3600の法的手段

現在ニカラグアでは、4000人近くのプランテーション労働者がChiquita Standard Fruitと契約している。これらの企業はバナナの生産を再開し、状況は以前と同じである。8時間労働で1ドル、危険な農薬使用の疑いがあるが、何の保障もない。

 

キャンペーン

私たちは「異なった世界は可能」であり、「もうひとつの世界は創られている」と確信しており、そのために、多国籍企業に責任を取らせる必要があると考えている。バナナの多国籍企業に焦点を当て、利益追求の戦略では世界は統治できないことを再確認したい。

キャンペーンの柱は:

1.バナナプランテーション労働者が早急に治療を受けられるよう基金を募る。

2.ネマゴン生産をし、それをプランテーションで使用しまた販売する多国籍企業に葉書カードを送り圧力をかける。

 

ブリュッセルでEU貿易担当者とサービス業界団体の秘密会談に抗議行動

Successful action at secretive Brussels meeting between EU trade officials and services lobby

 

529日、ATTAC、「企業のヨーロッパを監視する運動」(Corporate Europe Observatory)、地球の友・ヨーロッパ、オクスファム・ソリダリテ、「世界発展運動」(World Development Movement)、11.11.11運動などの団体が、ブルッセルで開かれたEU 貿易担当者とサービス業界団体の間の秘密会談を非難して記者会見と、ちょっとした行動を行った。

この秘密会談はヨーロッパ・サービス・フォーラム(ESF)によって準備された。ESFEU内のサービス産業の全関係者を代表していると称するロビー団体である。到着した20-30人のロビイストたちを迎えたのは、「EUは企業主導のGATS提案をやめよ」、「GATSは世界の基本的サービスを脅かしている」、「私たちの世界は売り物ではない」と書かれた横断幕だった。

1時間後にESFのメンバーたちが会議室から出てきて、EU加盟国と欧州委員会の代表を待った。やってきたのはごく少数の代表だけだった。彼らが会議室へと戻った時、受付デスクの残されていた名札から、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダなど多くの加盟国の代表が来ていないことが判明した。欧州委員会の代表のうち6人の名札も残っていた。遅れて来たかも知れないが、おそらくは活動家たちとの遭遇を避けたのだろう。

ヨーロッパ議会のHarlem Desir議員(フランスから選出)は、欧州委員会は透明性に関して、シアトルの教訓に学んでいないようであると指摘し、加盟国と委員会の代表がGATSについてESFと話し合っている一方で、欧州議会ではGATS交渉についてほとんど議論されていないことを批判した。

欧州委員会の委員は、「現在のシステムは透明性という点では不十分であり、改善されねばならない」ことを認めざるをえなかった。しかし、欧州委員会もEU加盟国も、GATS交渉における透明性を要求する90以上のグループによる公開質問状に答えていない。

 

公開質問状と署名者リスト:    :http://www.gatswatch.org/070502letter-en.html

5月28日、ブリュッセルで出された声明:http://www.gatswatch.org/280502action.html

 

水問題をめぐって:南アフリカとガーナのレポート

On Water

 

南アフリカ:10万人近くが飲み水を奪われた

By Anthony Stoppard

 

南アフリカで約1,000万人の人々が、料金を払えないために水と電気の供給を絶たれ、200万人が同じ理由で家を追われた。

「都市サービス・プロジェクト」(NGO団体)と政府の「ヒューマン・サイエンス研究評議会」 (HSRC)の調査レポートによると、南アフリカのほとんどの人は、貧困のため、基本的サービスの料金を支払うことはできない。

レポートの基礎となった調査は、20017月に南アフリカで水と電気の無料供給政策が導入された際に実施された。貧しい家庭に最低限の水と電気が無料で提供されたが、まだ国の多くの地域で実施されていない。

レポートによると、「サービス購買力と原価回収に関する考えが変化し、支払不能のために水と電気の供給を受けていない家庭もある。・・・無料サービス計画の実効性に対する批判があり、サービスの打ち切りや退去に関する多くの報告があることから、サービス購買力は依然として大きな問題である」。

 

支払い不可能の最大の理由は貧困

低所得家庭では請求書をきちんと保管し、いくら払うべきか、どうしたら支払えるか心配している。ケーススタディでは、家族がサービス請求を支払うべきか、食料、衣類を買うべきかの選択を強いられている深刻な状況を述べている。

ムベキ大統領は、貧困緩和をその年の政府優先課題にし、政府は貧困削減プログラムの援助を受けるに最もふさわしい人々を登録する国家キャンペーンをおこなっている。現在南アフリカで、年金や援助を受けている人は430万人、政府は今年度内に100万人増やしたいとしており、援助を受ける子供もさらに150万人登録したいとしている。

その中で、多くの住民が無料で電気を不法に家庭に引いているが、国営電力会社Eskomは、南アフリカ全土に電気を供給するためには費用がかかるためプログラムが経済的に実施困難となるため、その供給を停止している。

「ソウェト電力危機委員会」、「民営化反対フォーラム」などの戦闘的な活動家グループ は、電気料金の支払いができない人々への電気供給停止を行わないよう要求している。

 

ガーナ:IMFの新しい融資条件は水道料金を高騰させる

By Kanaga Raja

 

国際通貨基金(IMF)は、ガーナとの間での「貧困削減・成長促進(PRGF)」計画の下での融資交渉で、公共サービスの全面的な原価回収を要求するようだ。

3月5日に発表されたIMFの融資条件に関する文書で、IMFは次期融資の条件として、ガーナが公共サービスの完全な原価回収を行うことと、公共サービス管理委員会が電気および水道料金の自動的調整を行うための方法を確立することを要求している。

世銀の定義によると、「完全な原価回収」とは、水道事業に対する公的補助金をなくし、水道事業の運用および保守のための全コストを回収できるまで料金を引き上げるシステムを確立することである。これは通常、民営化に先立って、事業の採算性を確保するために行われる措置である。また、料金の自動的調整の方法の導入に伴って、セディー(ガーナ通貨)の国際為替レートの変動が料金に反映されることになるだろう。多国籍企業は途上国では通常、為替レートの変動の影響を避けるためにこの方式を要求している。

ガーナは重債務貧困国(HIPC)イニシアチブの下で、債務救済をうける26番目の国になり、次の20年間、世銀の国際開発協会 (IDA)への債務支払い67%削減と、8年間のIMFに対する債務返済の49%が軽減される。現在ガーナはGDP7.7%を債務返済に当てている。 IMFと世銀のガーナに対する融資条件は、2001年5月水道料金95%アップだったが、新しいIMF融資条件では、この数字はさらに上昇するだろう。

世銀とIMFの政策は、ガーナ政府に対し水道料金を上げ、多国籍水企業に水道システムをリースするよう要求するものだったが、ガーナ市民社会では、都市水道システム民営化と水道料金上昇に対する反対が起きている。

「パブリック・シチズン」によると、ガーナでは人口の35%が安全な水を利用できず、68%が下水サービスを利用でず、60%以上が1日1ドル以下の稼ぎで、40%が貧困ラインを下回っている。

 

■付録

GATS反対-629日、ジュネーブでデモをしよう! Attac スイス、Declaration de Berne、社会主義同盟、緑の党

[フランス語版ニュースレター 6月7日発行より、翻訳:林 昌宏]

 

現在スイス政府が秘密裏にWTO加盟国政府などとGATSについて交渉を再開したことはあまり知られていない。社会環境問題等の心配をよそに、多国籍企業の要求にこたえるかたちでこの協定は結ばれた。GATSを通じて自由化と民営化を進めることは巨大企業ないし企業集団に巨額の富をもたらす。このようにして公共部門を私有化することにより公共サービスを利潤追求の手段に変え、市場原理を当てはめ、競争原理の中に突き放すことにより、この国際協定は非常に大きな影響をもたらす。また、この協定は不当な競争排除に反対すると言う名目で、公共サービスの無償、一律の提供という政策を攻撃する。公共サービスの補助金を止めるか、さもなければ民間に同等の補助金を出せというのが彼等の論理だ。

 

GATSは公共サービスを脅かす

200111月にWTO閣僚会議がドーハで行われ、そこでGATSによるサービスの自由化に関して2つの重要な日時を設定した。2002630日までに加盟各国はWTOとその加盟国に他の加盟各国の開放してほしいサービス分野を連絡すること。そして2003331日までに自国のサービス開放分野を申し出ること。

この自由化の要求は特に「南」の諸国や東ヨーロッパの公共サービスを破壊する。なぜならば外国との競争に勝てるわけがないからである。貧困はますます顕在化する。「北」の諸国においても失敗の例は見られる。イギリスの鉄道、カリフォルニアの電力、郵便、医療、教育、社会保障制度の劣化、不平等拡大、物価上昇、公共部門での労働条件の悪化に伴う女性の職場の危機。

 

しかし公共サービス解体反対の機運はますます高まってきている!

郵便事業、医療、エネルギー供給、水道事業、大学、公共交通機関、学校などの解体の計画に対してこれらサービスのユーザーとそこで働く労働者たちの連帯により公共サービス解体の動きを断固阻止せねばならない。民衆の大きな団結運動こそが力である。

我々は現代の社会体制すなわち十分な利潤を得ることができないという口実の元に恐るべき生産能力を持ちながらも社会の基本的要求に応えることができない社会システムに支配されている社会体制を否定する。反対に我々は金融市場から影響を受けず、各個人、民衆の社会経済権利を発展させる為に民主的で平等で連帯感を持つ価値観に重点を置く。基本的社会サービスの制御は地球上の環境問題の未来をも保証する。言うなればこれは全く別の世界の創造である。

 

そこで我々は次の様に要求する。

・公共サービスに関して我々の政府による完全な情報開示と広い議論を経て民主的に政策を決定する。

GATSの交渉と採択をやめること

・公共サービスは水道、医療、教育、社会サービス、公共住宅、文化、環境、通信、運輸、エネルギー分野などで維持され発展せねばならない。

・民営化反対、自由化反対、利益追求反対

公共サービスのユーザーとそこで働く労働者による監視下のもと、すべての人々が使用でき地域に根ざした公共サービスを目指す。

 

GATSに関するWTO加盟国の政府間による現在の交渉過程は秘密裏に行われており、民衆の生活条件の根幹にかかわる問題である以上、民主的討論が必要である。

 

EU委員会はスイス政府に15ページにわたる分野別自由化要求に関する資料を送ったが、この委員会は透明性に欠く。

スイス政府に対するこの要求は、パスカル・クッシュパンの働きかけによる。この政治家は新自由主義者であり“国の機能は最低に抑え、民間、半民間の力を利用する”“一時的に失業や社会保障削減の困難に陥っても僻地に対する再分配を削減しなければならない。”政治的理由で民営化が難しい公共サービス分野でも民間企業が参入することにより活性化する“等の信条を持っている。そして彼は次のように発言している。経済の厳格な理屈を通せば現在ある3500の郵便局を800に削減できる。郵便局に対して補助金を削減し民間企業の参入障壁を崩し郵便事業の解体を強く彼は要望している。