東アジア(日・韓・中)共通歴史副教材、
2005年完成めざして進捗中 No.1

坪川 宏子(アジアネット運営委員)

1.阻止運動を超えて積極的東アジア連帯の気運が

01年、つくる会の歴史教科書が検定合格し、その不採択運動が激しくたたかわれていたさなかの6月、アジア各国から40人を迎え「歴史歪曲教科書を許さない!アジア連帯緊急会議」が開催されました。会議後の「宣言・行動計画」の中では、歪曲教科書阻止に止まらず、アジアの未来を共に創る歴史認識を確立するために、教育・教科書の情報の共有、共通歴史副教材作成、教科書研究(特にジェンダー視点も強調)、共同行動などが提起され、この目的達成のため「歴史教育アジアネットワーク」結成が謳われました。これを受けて01年9月、日本での組織として「歴史教育アジアネットワークJAPAN」が発足し、アジアの共通歴史教材への機運が高まりました。

一方、中国の社会科学院に招請された東アジア各国の研究者たちが会議後「若い世代に平和と未来を共有できる歴史認識を育てるために、相互の歴史認識・教育を点検する学術討論会を継続的に開く」ことに合意し、02年3月、その第一回「歴史認識と東アジアの平和フォーラム〜日本の歴史教科書問題」が南京で盛大に開催されました。

この会議の中で、3カ国を中心とする歴史副教材編纂が正式に合意され、俵義文さん(教科書ネット)が3カ国のまとめ役と日本の連絡責任者に決定。日本の組織として、研究者・教員・市民から成る「東アジア共通歴史副教材委員会」(代表―大日方純夫さん(早稲田大))が立ち上げられ、初めての3カ国間での共通副教材作成の第一歩が踏み出されました。(今までも2カ国間では多くの同様な試みや授業実践交流があります。)

2.第1回「3カ国準備会」(ソウル)で決まったこと

02年8月の上記会議(日本から3人参加)での合意は、

《共通副教材の意義》

韓国の金聖甫さんが基調報告を行い、その中で各国の相違を尊重しながらも「帝国主義・覇権主義に反対し、平和主義・人道主義の立場に立ち、世界に開かれた(世界市民への道を開く)東アジア共通歴史認識を共有するため」と提案。中国も「その全人類的な意義」に同意し、日本も賛成し「国民国家はもとよりアジアにも捉われず世界市民・民衆の視点を」、「世界市民への道にジェンダー他の視点も」など意見を述べ、最終的に金報告を全員で確認しました。

 以下、羅列的に記しますと、
  • 《対象》は中学生。他に高校生・教師・一般人も(市販)
  • 《時期》は近・現代史。
  • 《編成》は通史でなく、テーマ主題構成。
  • 《主題》中国は「3カ国関係史と平和の問題を中心に」、韓国は「それ以外にも普遍的な主題も」、日本は「まず各国が3カ国の教科書を読み、何が問題点か検討した後で目的にあった主題を考える」と提案し、議論の結果、日本案で決定。
  • 《スタイル》はB5版、資料・写真を多く・カラー印刷で見やすいもの。
  • 《現場の教師・女性・台湾の参加問題》を日本が提案し、前二者は即賛成を得ましたが台湾参加については各々の国家的な微妙な立場から議論になり、結論として台湾・朝鮮人民民主主義共和国はオブザーバー参加とし、可能な時に招請して意見を聞くということで合意をみました。

なお、《副教材の名前》、《執筆方法》、《費用》等は議論の末、結論持ち越しとなりました。さて、この2日間のソウル会議で印象に残った事は、

  1. 共通副教材に対する韓国側の熱意。(リーダーシップ)
  2. 中国も韓国も日本を批判するだけでなく自国の歴史教科書にも率直な批判を述べていたこと。 ・中国「自国中心で大国主義・民族的色彩が強い」 ・韓国「被害者意識を持たせ、これを基に民族主義意識を作り出そうという傾向がある」等。
  3. 日本が過去を真に反省せず教育現場にじわじわと侵略してきた国家主義の状況から逆説的に生まれた、国民国家を超えた世界市民(人権)を目指す共通副教材共同編纂、その大枠を対話によって具体的に決めたソウル会議は何か歴史的な場に居合わせたような感動がありました。

3.第2回3カ国準備会議(東京)に向けて

ソウル会議を受けて、委員会はまず韓国146頁、中国535頁の膨大な近・現代史部分の教科書検討を全面的に行いました。しかし、10月の実務者会議での韓国・中国の提案により、「@開港と近代化、A帝国主義と植民地、B戦争と民間人の被害、C戦後の和解と反省という仮テーマにより各国教科書の検討を行う。また、教科書検討は日本の教科書を中心に分析し、中国・韓国の教科書は参考資料とする。(記述と歴史認識を見る)」という事になったため、二回目はその線に沿って行いました。

更に、テーマについて、人物や証言を@〜Cの中に含める。朝鮮戦争は重要ポイントなのでCを「冷戦下の東アジア」として独立させ元のCをDにする。ジェンダー視点をどこに入れるか。3カ国相互関連性という観点から抜本的な変更が必要、等々の意見が出され更に深めて12月に問題提議する予定です。

いよいよ実質的な議論が始まるとなると、難しい局面も出てくるでしょう。しかし、「始めれば半分進んだも同然」という韓国の諺もありますし、意見の違いを認め粘り強い対話の中から生まれる信頼こそが未来を創造する、という事もまた合意されているのです。

(※この報告は『アジアネットニュースno.3』(2003年1月25日)に掲載したものです。)


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