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第1回歴史認識と東アジアの平和フォ−ラム in 南京
2002年3月27日から29日までの3日間、中国・南京市、南京国際コンベンションセンタ−において、第1回『歴史認識と東アジアの平和フォ−ラム』(南京フォ−ラム)が、中国侵華日本軍南京大屠殺犠牲者記念館、中国社会科学院中日歴史研究センタ−、韓国学術団体協会、韓国・「日本の教科書を正す運動本部」(以下、教科書運動本部)、日本の戦争責任資料センタ−(以下、戦争責任資料センター)、子どもと教科書全国ネット21(以下、教科書ネット21)の6団体の主催、中国江蘇省社会科学院、江蘇省人民政府新聞公室、南京市人民政府新聞公室、『抗日戦争研究』編集部の協力で開かれた。中国社会科学院学術委員会秘書長・郭永才団長はじめ中国代表団45名、韓国西原大学学長・金正起共同団長はじめ韓国代表団30名、戦争責任資料センタ−代表・荒井信一団長はじめ日本代表団41名、計116名と主催責任国の中国側から多くの通訳者、ボランティア、マスコミ関係者が参加した。日本代表団は、主催者の戦争責任資料センタ−と教科書ネット21のほか、ピ−スボ−ト、日教組本部、国民教育文化総合研究所、朝鮮大学校、日韓教育実践研究会、靖国参拝違憲アジア訴訟原告団、市民、教員などが参加した。歴史教育アジアネットワークJAPAN(以下、アジアネット)運営委員(日教組組合員・教科書ネット21運営委員)として参加した立場から、フォ−ラムの概要を報告し、今後の課題を提起したい。
フォ−ラムに先立って行われた開幕式では、朱成山・南京大屠殺犠牲者記念館館長の「大会準備委員会報告」、金正起・韓国共同団長、荒井信一・日本代表団長、簡兆平・香港抗日犠牲同胞紀念連合会主席、顧浩・江蘇省政治協商会議副主席の挨拶が行われた。金正起氏は、「政府間の解決には限界がある。市民団体レベルでの交流の活発化が進んでいる。第4回目の平壌開催に期待している。21世紀は、理念の違いと戦争の傷みを乗り越えて平和な世界を実現しなければならない。この会議から、それが始まることを期待したい。もっと頻繁に会って親交を深め、情けを掛け合える共同体が生まれることを期待したい」と挨拶。その後、参加者全員の記念撮影が行われた。
フォ−ラムは4つのテ−マで発表・討論が行われた。
(1)第1部のテ−マは、「日本歴史教科書問題の史的研究」。司会は、樋口浩氏(日教組副委員長)。発表者とテ−マは、以下の4本。1)歩平氏(黒竜江省社会科学院副院長)「日本教科書問題の深層思考」2)俵義文氏(教科書ネット21事務局長)「教科書攻撃と歴史認識−日本の右翼的潮流の動向を中心に」3)河棕文氏(韓国・韓神大学校副教授・教科書運動本部運営委員)「日本歴史教科書の歴史研究」4)王智新氏(宮崎公立大学教授)「日本教科書問題の根源について−『学習指導要領』の分析から」。4本の発表と討論の後、荒井信一氏、金漢宗氏(韓国教員大学校教授)、湯重南氏(中国日本史学会会長・社会科学院世界史研究所研究員)によるコメントと総合討論が行われた。
(2)第2部のテ−マは、「日本の右翼による教科書史実歪曲に関する研究」。前半の司会は、朱成山氏。発表1)笠原十九司氏(都留文科大学教授)「南京大虐殺と日本教科書問題」2)王衛星氏(江蘇省社会科学院歴史研究所副所長)「イギリス外交資料館所蔵南京大虐殺に関する資料価値とその意義について」3)張連紅氏(南京師範大学歴史学部副教授)「戦争の傷跡と都市の記憶−2001年12月13日のアンケ−ト調査を中心に」4)郭必強(中国第二档案館副教授)「首都淪陥留守金陵学校日記の資料的価値」5)経盛鴻氏(南京師範大学歴史学部教授)「墨による嘘は血でかかれた事実を覆い隠すことはできない−日本右翼の教科書」。5本の発表と討論の後、上杉聡氏(戦争責任資料センタ−事務局長)、全遇容氏(ソウル研究所研究員)、孟国祥氏(南京医科大学社会学部主任教授)のコメントと総合討論が行われた。
第2部(後半)の司会は、経盛鴻氏。発表は以下の5本。1)朱鎮五氏(韓国・祥明大学校歴史学部教授)「日本右翼の歴史教科書の事実歪曲問題についての研究」2)王選氏(細菌戦被害者訴訟原告団団長・日本在住)「細菌戦医学犯罪の戦後追跡」3)西野瑠美子氏(VAWW-NET Japan副代表・教科書ネット21代表委員)「日本軍『慰安婦』の記述後退と今後の課題」4)山内小夜子氏(小泉靖国参拝違憲アジア訴訟原告団)5)菅原龍憲氏(小泉靖国参拝違憲アジア訴訟原告団)「靖国参拝違憲訴訟について」。5本の発表と討論の後、蘇智良氏(上海師範大学教授・中国従軍慰安婦研究センタ−主任)、李チャンヒ氏(韓国教育丁学院教授)、俵義文氏のコメントと総合討論。
(3)第3部のテ−マは、「日本の右翼系教科書歴史観に関する研究」。前半の司会は、糀谷陽子氏(教科書ネット21常任運営委員・公立中学教員)。発表1)蘇智良氏「歴史はいかに歪曲されたか−『つくる会』歴史教科書批判」2)都勉会氏(韓国・大田大学教授)「日本の右翼の思想的根源について」3)楊夏鳴氏(江蘇省行政幹部管理学院助教授)「日本右翼的思潮のイデオロギ−の根源について」4)石渡延男氏(日韓教育実践研究会代表)「日韓歴史教育実践の交流と歴史認識の共有−教科書の右翼的史観を克服するために」5)簡兆平氏「第2次世界大戦の史実を歪曲する狙いについて」。5本の発表と討論の後、安秉佑氏(韓国・韓神大学校教授)、黒澤唯昭氏(都留文科大学教授・国民教育文化総合研究所代表)、ビャン修躍氏(中国社会科学院近代史研究所副編審)のコメントと総合討論。第3部(後半)の司会は、歩平氏。1)高嶋伸欣(琉球大学教授・アジアネット共同代表)「日本の軍国主義的政治勢力との対決を教科書問題から考える」2)史桂芳氏(中国首都師範大学政法学院助教授)「侵略者の当時の論調再び−『日本の利益線は中国東北にあり』について」3)梁美康氏(教科書運動本部常任共同運営委員長)「韓国の教科書運動・その成果と課題」4)李仲明(中国『抗日戦争史研究』編集員)「『三光政策』は戦争目的を失ったのか」。4本の発表と討論の後、王ウエイ星氏(江蘇省社会科学院歴史研究所副所長)、朴中鉉氏(韓国中京高等学校教師)、康成銀氏(在日朝鮮人・朝鮮大学校教授)のコメントと総合討論。
(4)第4部のテ−マは、「日本社会の政治のあり方と東アジアの平和問題に関する研究」。司会は、安秉旭氏(韓国カトリック大学校教授・韓国学術団体協会代表)。1)李信徹氏(教科書運動本部常任政策企画委員長)「日本の社会政治動向と東アジアの平和問題研究」2)王希亮氏(黒竜江省社会科学院歴史研究所研究員)「日本の『つくる会』教科書の出現について」3)林暁光氏(中国中央党学校国際戦略研究所研究員)「歴史の結論を覆す−日本国内にある軽視できぬ現象」。馬振賣氏(中国第2档案館副館長)、吉岡達也氏(ピ−スボ−ト共同代表)、姜昌一(韓国カトリック大学教授・教科書運動本部共同運営委員長)のコメントと総合討論。
(5)28日夜の学術サロン(交流討論)のテ−マは、「歴史教育副教材づくり」。司会は、凌星光氏、姜昌一氏、俵義文氏。東アジア(中国・韓国・日本)共通の歴史教育の副教材作りを始めようという方向性を確認。当面、インタ−ネットでの情報交換から始める。翌日の各国代表者会議で、共通副読本づくりの中・韓・日各国窓口責任者を確認。俵氏が三国の連絡・まとめ役と日本側の窓口を担当。
『南京フォ−ラム』閉会式は、安秉旭氏の司会。中国・韓国・日本から3名が総括発言を行った。1)湯重南氏は、「日中韓の初めての集まりとして、多様な人々が集まり中国全土に報道された。4つのテ−マについて、64人が深く切り込んだスピ−チとコメントを行い80人の自由な発言があった。具体的な共通課題についてかなり接近した見解が示された。日本と韓国の代表は、理性的な態度でレベルの高いスピ−チを行い、国内での闘争の経験を語った。中国にとっても大きな成果があった。もちろん意見の違いはあったが、それは、文化の背景、観点の違いによるものであり、むしろ交流の必要を示している。交流は、科学と真理を尊重し、共通の努力により行われなければならない。日本の右翼的教科書の問題は軽視してはならず、ゆゆしき事態である。第2回東京、第3回ソウルでのフォ−ラムの成功を祈っている」と、南京フォ−ラムを総括した。
2)柳在渉氏(韓国共同団長・『韓国労働組合総連盟』副委員長)は、「問題は、歴史の真実について、日本政府が本当に反省しているかどうかである。日本の若者の歴史認識の欠如は、ちゃんと教育しなかった40代・50代の大人の責任だ。中国・韓国・日本三国の学者・市民団体にとって重要なことは、関心を持続させ、軍国主義を阻止することだ。この会議がアジアの未来を切り拓くことを期待する」と総括した。
3)西野瑠美子氏は、「以下の課題の共有を確認。1)教科書に加害記述を復活させる。本当の言葉、本当の名前で語ることが大切。2)各国の教科書に加害事実を書く。韓国政府は教科書の『慰安婦』記述を改善し、インドネシア政府は小中学校教科書への『慰安婦』記述を決めた。3)真相究明を進める。各国の連携した努力が重要。4)『歴史教育アジアネットワ−クJAPAN』では、共通副読本の製作に取り組んでいる。共通副読本の製作は、歴史を共有する態度、証言者の生きた声を共有することだ。相互のアイデンティティを尊重しながら、相手の言い分を理解しようと耳を傾けたことが重要だ」との総括発言。
閉会の言葉で、栄維木氏(中国社会科学院近代史研究所『抗日戦争研究』副編集長)は、「率直に話し合い、次のように共通問題についての理解を深めた。1)歴史の真相について、『つくる会』の歴史歪曲について三国で共通の闘いがあり、歴史の真実を守る立場で一致した。2)日本の戦争責任について、被害者・犠牲者が加害者の責任を追及することは、当然の権利である。3)日本右翼勢力の復活の兆しが、教科書問題にあらわれた。それは、東アジアだけでなく、日本にも危害をもたらすことに意見の一致を見た。この闘いは長期にわたる闘いである。4)東アジアの平和の維持について、歴史経験の総括−歴史教育から出発して、未来を担う若い世代に正しい歴史認識を持たせること、歴史を繰り返してはならないことで意見の一致を見た」と総括し、今後の課題を確認した。荒井信一氏は、「以上(総括発言と閉会挨拶)が共通の認識である。もちろん見解の相違はあるが、歴史歪曲の克服、東アジアの平和のための連帯、言葉でなく、実践が課題である。資料を作り、116人が、10万人、20万人に対して共通の認識を広げていこう」と『南京フォ−ラム』を総括し、今後の実践を呼びかけている。
<東アジア地域での歴史認識の共有と平和>をテ−マに開催された第1回『歴史認識と東アジアの平和フォ−ラム』(南京フォ−ラム)は、日本の『つくる会』歴史・公民教科書出版と文部科学省検定合格・採択の歴史的意味、東アジアの市民連帯・民衆の共同の闘いと歴史研究者の共同研究の歴史的経験を、歴史的に総括し、中国・韓国・日本の歴史認識の共有と若い世代への歴史教育こそ、東アジア地域の平和の創造にとって重要であることを確認して閉幕した。同時に、フォ−ラムでの討論、食事中や会議後のさまざまな形での交流は、<歴史認識の共有>の前提となる、<人間的交流と相互信頼>にとって、かけがえのない市民・民衆連帯の財産になったと確信する。少なくとも、私にとって、連日の夜半までの(酒を酌み交わしながらの)中国・韓国の友人たちとの議論と熱い友情は(それぞれのナショナリズムを背負った葛藤を抱えつつ)、今後の共同研究・共同行動の大きな糧になった。今、ヴァルタ−・ベンヤミンの、「夜の中を歩みとおすとき/助けとなるものは/橋でも翼でもなく/友の足音だ」という言葉が生き生きと蘇えってくる。
最後に、次回『東京フォ−ラム』開催、及びアジア大の歴史教育ネットワ−ク結成に向けての私たちの課題を提起して報告を終わりたい。1)日中/日韓の共同研究・教育交流・教育実践交流・共通教材づくりなどを担ってきた研究者・現場教員の参加。2)広範な市民運動からの参加(韓国代表団の多彩な構成!)。3)関連する多くの学会・研究会の参加と、特に若手研究者の参加(中国韓国の若手研究者参加多数)。4)『女性・戦争・人権学会』(韓国挺対協と「韓日(日韓)女性共同歴史教材編纂プロジェクト」展開)など、共同連帯の可能な人々への参加呼びかけ。5)『南京フォ−ラム』の報告討論で弱かったジェンダ−視点からの共同研究。6)「国民国家」を問う(前提にしない)視点からの共同研究。7)それとの関連で、在日朝鮮人独自の代表団の編成(今回は、日本代表団に入っていた)。8)マイノリティ・先住民族の視点からの共同研究。9)日本代表団としての共通認識と共同連帯の重要性(準備・討論・連絡の重視)。10)各国の研究者・実践家・市民運動家の交流の重要性。11)アジアネットも、『2003東京フォ−ラム』の共同主催者になること。12)台湾・朝鮮民主主義人民共和国など参加拡大、さらに東アジア地域から、アジア全域の歴史認識の共有と研究者/市民の共同・連帯を深化させていくことなどが期待される。さらに、『2003東京フォ−ラム』と相前後して、ぜひ『歴史教育アジアネットワ−ク』(あるいは、せめて、その準備会)が創設されることが望ましいと思われる。それに関して、日本窓口はアジアネット、韓国窓口は、教科書運動本部になっているが、今回の南京フォ−ラムで、中国窓口について、歩平氏と相談し、蘇智良氏、栄維木氏、歩平氏(日本語Eメール等連絡先)の3氏が積極的に承諾され、アジアネット共同代表の俵氏も同席して確認したことも報告しておきたい。
「周辺事態法」・「有事法体制」・「集団的自衛権」行使・憲法改悪・教育基本法改悪と、急速に展開している象徴天皇制国民国家・日本の東アジア地域での政治的軍事的再編成の中で、今回の『歴史認識と東アジアの平和フォ−ラム』は、貴重な共同研究の成果と東アジア地域の市民連帯交流の経験を蓄積することが出来た。『南京フォ−ラム』での中国の方々の温かいご配慮に心から感謝しながら、拙い報告を終わりたい。「もともと地上には、道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」(魯迅『故郷』)
(小野政美・アジアネット運営委員)
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