「新しい歴史教科書をつくる会」教科書の
愛媛県での採択の企みに反対する

2002年8月9日

<積み重ねは大変でも、崩すのは一瞬>

去る6月30日、世界の人々が見守る中で韓日両国が長い時間をかけて取り組んだ2002年韓日ワールドカップが成功裏に幕を閉じた。その成果の中でも、反目と不信で一貫してきた両国の市民が、お互いをよい隣人・友人として理解するための切っ掛けになったという点は注目に値する。これまで韓日両国は、過去の歴史やそこから派生した問題により、居心地のいい関係とは言い難い状態にあった。しかも、忘れる頃に蒸し返されるように起こる、過去の歴史をめぐる日本の官僚の妄言や歴史教科書歪曲事件などは、韓国人にとって日本は信頼できない国だと思わせるものであった。しかし、日本政府や一部右翼による継続的な策動にもかかわらず、昨年、日本の市民は、中学歴史教科書の採択過程において「新しい歴史教科書をつくる会(以下、つくる会)」教科書の採択率0.039%という良識ある判断を下した。韓国において、この良識ある日本社会の判断が大きく評価されたことは言うまでもない。また、韓日市民団体の努力の成果としても喜びをもって受け止められた。

ところが、こうして積み重ねてきた「信頼の塔」が再び崩されようとしている。日本の愛媛県内の中高一貫校における歴史教科書の採択が、再び両国の関心事として浮上しているのである。対象は3校の学生約500人という少ない数とはいえ、その採択結果がもたらす影響は無視できないものといえる。昨年、つくる会の教科書採択が決まった学校は、東京と愛媛の養護学校・ろう学校と、私立学校のごく一部であった。つくる会は今回の採択を「愛媛決戦」と名づけ、全ての力量を動員して採択を実現させようとしている。しかも、愛媛県の加戸守行知事は「扶桑社版(「つくる会」教科書)がベストだろう」とその採択を露骨に後押ししており、昨年この教科書を採択した教育委員の態度も未だに微動ともしていない。愛媛県でのつくる会の教科書の採択が8月15日の形式的手続きを残しているだけだという状況だとすると、それはあまりにも不幸な事態である。


<耳を傾けてくれる、よき隣人を望む>

2002年韓日ワールドカップは、日本の総理の靖国神社参拝や『最新日本史』へと続いた歴史歪曲にもかかわらず、韓国人にとっては多くの忍耐を可能にさせた。しかし、つくる会の教科書とその支持者たちは、次のような過ちを犯しているため、私たちもこれ以上、助言の口を閉ざしているわけにはいかない。

つくる会の教科書は、日本の植民地支配によって韓国の人々が受けた苦しみを無視し、隠蔽・縮小した。植民地支配の被害者が現に生存しており、両国の学者による研究成果が植民地支配の過ちを立証している。また、この教科書は、日本の国民に軍国主義精神を植え付けるために、アジアへの侵略の歴史を歪曲した。日本の民族を優秀な民族として、朝鮮民族を劣等な民族として記述している。甚だしくは、過去の侵略戦争を擁護しているばかりでなく、国益のための手段として戦争を美化している。教科書における歴史歪曲や平和憲法の廃棄の企み、有事法制の推進などは、結局、朝鮮半島の戦争を念頭においている。韓国の私たちは、自らの意志に関係なく日本の侵略戦争に動員された歴史があり、その後、再び内戦の厳しい試練を経験した。しかも、韓国は分断国家である。戦争を画策し、連想させる一切の企みに、私たちは反対せずにはいられない。


<つくる会の教科書の採択は、必ず阻止されるべきだ>

実際、韓国の人々は愛媛県のことをよく知らない。栃木県についてもよく知らない。しかし、そういった中でも、人々の両地域に対する理解は大きく異なっている。栃木県の場合、昨年、つくる会の教科書を最終的に採択しなかったことによって、韓国人に対し善いイメージを与えた。反面、愛媛県は東京都と共につくる会の教科書を採択し、いま再びそのことを繰り返そうとしている。愛媛県は韓国と日本の観光交流が活発な地域である。万が一、愛媛県で今回もつくる会の教科書が採択されるとしたら、多くの人が行き来してきた愛媛と韓国の間の美しい道は「不信と侵略への道」と印象付けられ、韓国人にとっての愛媛は「右翼の本拠地」「隣国の友人を配慮しないところ」と記憶されてしまうであろう。愛媛県でのつくる会の教科書採択は、崖の淵に立った「つくる会」を助けることはあっても、日本を助けることはできない。むしろ、戦後50年間、国際社会の中で積み重ねてきた平和と民主主義国家のイメージを、一瞬に吹き飛ばしてしまう結果を招くであろう。故に、愛媛県民のいま一度の慎重な選択を強く望む。

これまで愛媛の市民と韓国の「日本の教科書を正す運動本部(以下、教科書運動本部)」は、緊密な連帯活動を繰り広げてきた。愛媛の良心的な市民グループは、つくる会とその支持者たちの理不尽な活動への問題提起として、様々な訴訟に取り組み、教科書採択をめぐって情報公開の原則をやぶった教育長を告発、また、11日からは身体を張った壮絶な訴えとしてリレーハンストも予定している。私たち教科書運動本部も、韓国内の市民社会団体や国会議員たちと共に、つくる会の教科書の不採択運動を展開している。

教科書運動本部は、つくる会の教科書が愛媛県で再び採択されることを、決して容認することはできない。日本の全国で展開されている良心的市民の闘いに、私たちの熱い連帯の気持ちを重ねたい。このような危ない教科書が教育現場から姿を消すまで、私たちもまた韓国の地で闘いの歩みを続けていく決意である。


2002年8月9日
日本の教科書を正す運動本部
常任共同代表 徐仲錫(ソ・ジュンソク)
李南淳(イ・ナムスン)
李秀浩(イ・スホ)


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