「日・韓歴史共同研究機構」についての
       日・韓市民団体の共同見解

2002年2月28日

2001年10月15日、小泉純一郎首相と金大中大統領は、両国間で「日・韓歴史共同研究機構」を設置することで合意しました。この研究機構は、現在、日韓政府の事務レベルで設置に向けた協議が続けられ、両国の歴史学者による民間組織の研究会と、研究会の運営を支える政府関係者による支援委員会をつくる、ということで合意し、2月末か3月はじめに設置されると伝えられています。また、研究成果を歴史教科書に反映させる問題については、韓国政府がそれを要求し、日本政府がこの要求を拒否しているために協議が難航しているとも伝えられています。

日本と韓国の間では、過去に何度か政府が支援する歴史共同研究機構がつくられたことがありますが、それらの試みが成果を得られなかった反省と教訓が、今回の共同研究機構では活かされなければなりません。そうでなければ、今回の試みも前者の轍を踏むことになると危惧されます。

日本の「歴史教育アジアネットワークJAPAN」と韓国の「日本の教科書正す運動本部」は、日本の教科書問題に関わってきた日韓の市民組織を代表して、この共同研究機構が実質的な成果を上げ、日韓両国が過去の歴史から多くの教訓を得て、21世紀の日韓の平和と友好、アジアの平和と友好の新たな関係をつくりだすための、共通の歴史認識の形成に貢献することを願うものです。その立場から、歴史共同研究機構のあり方について、以下のような共同の見解を表明します。

  1. 委員の人選は、両国の専門的な歴史研究団体、歴史学界、歴史教育団体を代表する人々によって構成されるべきです。その際、女性の研究者の参加、侵略戦争と植民地支配によって被害を受けた人々の代表、またはその人々に代わることができる研究者が含まれるべきです。さらに、この間、日韓の友好促進に寄与し、教科書問題に取り組んできた市民組織の意見を反映する研究者が選ばれることが考慮されるべきです。
  2. 研究会の運営は公開を原則とすべきです。何が研究され、どうような議論が行なわれ、どのようなことが合意され、引き続き議論や研究を続ける必要があるのはどんな問題なのかなど、すべてを両国国民に公開することが必要です。
  3. 研究の成果は歴史教科書・歴史教育に反映されるべきです。この共同研究機構は、小泉首相が、歴史教科書問題を解決するために提案し、「歴史教科書問題の解決」という前提を了解して、金大統領が賛同して設置が決まったものです。したがって、共同研究の成果は歴史教科書・歴史教育の改善に反映されなければならないことは当然だといえます。日本政府は、日本の検定制度を理由に教科書への反映を拒否していると伝えられていますが、もし、最初から研究成果の教科書への反映を除外すれば、この共同研究機構そのものが意味をなさないものになります。検定制度を前提にしても、学習指導要領に盛り込むことや、政府と教科書会社に「勧告」を出すことなどによって反映させる方法は十分あると思います。

私たちは、日・韓両国政府が、歴史教科書問題を解決し、教科書の改善のために、この共同研究機構の設置と運営に努力することを望みます。わたしたちは、平和と友好によるアジアの共生をめざすために、子どもたちが歴史認識を共有できるよう、この共同研究機構が成果をあげるために、私たちの見解を真摯に検討、反映されることを望みます。そのことによって、日韓の官民の共同した努力が可能になり、歴史教科書問題の真の解決が見えてくるものと考えます。

私たちはこの見解を両国政府への要請とするとともに、これを広く両国の市民や研究者に知らせ、設置される共同研究機構について注視されるよう呼びかけるものです。


2002年2月28日
日本 歴史教育アジアネットワークJAPAN
    共同代表
小河 義伸(平和を求めるキリスト者ネット代表)
高嶋 伸欣(琉球大学教授・高嶋教科書訴訟を支援する会原告)
俵 義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)
野平 晋作(ピースボート・パートナー)
松井 やより(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク代表)

韓国 日本の教科書を正す運動本部
    共同代表
金 允 玉(挺身隊問題対策協議会共同代表)
徐 仲 錫(歴史問題研究所所長)
李 南 淳(韓国労働組合総連盟委員長)
李 秀 浩(全国教職員労働組合委員長)


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