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教育基本法改悪を強行する布陣をしいた小泉第2次改造内閣
俵 義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)
改憲・超タカ派の小泉改造内閣
9月20日の自民党総裁選挙で小泉純一郎首相が勝利し、22日、小泉第2次改造内閣が発足しました。この超タカ派内閣の性格は、教育基本法改悪実行内閣、憲法改悪準備内閣、戦争遂行内閣です。それと共に、2005年の新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)教科書の採択を支援する内閣でもあります。さらにこの内閣は、小泉首相をはじめ、日本の侵略・加害を否定する歴史認識の持ち主が多数を占めています。過去の清算・反省の上に立って、韓国・中国をはじめアジア諸国民との友好や平和な関係を発展させることより、日本の過去の戦争は正しかったという歴史認識でアジアに敵対する内閣だといえます。この内閣の最大のねらいは、「北朝鮮」に対する脅威・排外主義を煽り、国家主義的な世論を高めて、教育基本法・憲法を改悪し、アメリカ帝国の戦争に集団的自衛権を発動して参戦する、「戦争をする国」に日本を変えることです。こうした内閣の性格は、大臣・副大臣や自民党役員などの顔ぶれによく現れています(別表参照)。
(1)麻生太郎総務相・中川昭一経済産業相の正体
小泉首相と福田康夫官房長官コンビのタカ派ぶりはこの2年間の「業績」がよく示している通りです。つい最近、「創始改名は朝鮮人が望んだ」「強制連行はなかった」などと歴史を歪曲する発言を行った麻生太郎総務大臣は「日本会議国会議員懇談会」(「日本会議議連」)の会長です。「日本会議議連」はその名前のとおり、国定道徳副教材『心のノート』を連携する議員連盟の議員に要求させて文部科学省に作成させた、改憲・翼賛の右翼組織―日本会議の国会議員でつくる超党派の議員連盟です。また、教育基本法改悪を推進する自民党の「教育基本法検討特命委員会」(「特命委」)の会長でもあります。2001年には「つくる会」教科書の採択活動を支援して活躍しました。
中川昭一経済産業大臣は、前に農水大臣の時に「従軍慰安婦には強制性はがなかった」「反日的な教科書で学ぶ子どもたちが担う次世代は大丈夫か」などと発言して、内外から強い批判を浴びた人物です。中川氏は、「日本会議議連」会長代理として、麻生氏と共にコンビを組んできた人物ですが、麻生氏とは歴史教科書攻撃でも共同しています。自民党の「歴史・検討委員会」(「歴史検討委」)の委員でもあった中川氏は、「つくる会」と連動するために、「つくる会」結成1月後の97年2月に発足し、歴史教科書を偏向だと攻撃した「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(「若手議員の会」)の代表であり、2001年に発足した超党派議員連盟「歴史教科書問題を考えるの会」(「超党派の会」)の会長も努めています。
(2)あぶない政治家・安部晋三自民党幹事長
その中川氏と強いスクラムを組んで教科書問題などに取り組んできたのが安部晋三自民党幹事長です。安部氏は、中川氏と共に自民党の「歴史・検討委」委員でしたが、「若手議員の会」では事務局長を努め、「超党派の会」にも所属しています。また、森喜朗首相(当時)の「神の国」発言でも名前を知られた「神道政治連盟国会議員懇談会」の事務局長であり、1995年の敗戦50周年国会決議に反対して、侵略戦争反省の決議を骨抜きにした「終戦50周年国会議員連盟」(会長・奥野誠亮元文相)の事務局長代理でした。安部氏は、かいらい国家「満州国」の産業部次長として植民地支配の中核を担い、アジア太平洋戦争をはじめた東条英機内閣の商工大臣として侵略戦争を推進し、戦後、A級戦犯容疑者として投獄された岸信介元首相の孫として知られています。安部氏は岸元首相の思想を受け継ぎ、侵略・加害と植民地支配の時代を「栄光の時代」と賛美し、平和憲法を「私たちが最高法規として抱いているというこが、日本人にとって心理に大きな、精神に悪い影響を及ぼしている」「戦後の呪縛」であると憎悪して、集団的自衛権の行使や核武装ができるように改憲を主張しています。「若手議員の会」は、文部省の教科書課長などの幹部や教科書会社社長、教科書執筆者などを呼んで、侵略戦争や「慰安婦」問題の教科書記述について激しい詰問・追及を行いました。さらに、「慰安婦」問題で旧日本軍と日本政府の関与を認めた93年の河野洋平官房長官(当時)談話に対して、「確たる証拠もなく『強制性』を先方に求められるままに認めた」と非難し、河野氏を会に呼びつけて撤回を迫りました。「若手議員の会」は、「通産10回にわたる勉強会によって、いかにわが国の歴史教育には深刻な問題が存在しているか、あるいはいわゆる慰安婦問題がいかに歪曲(わいきょく)されて伝えられているか、そして日本外交のこれまでのあり方(いわゆる謝罪的体質)がいかに今日の問題を招く端緒となったか…等々の事実が明らかになった」とし、それを改める「国民運動を精力的かつダイナミックに展開していく」と主張していました(安部氏のホームページ)。この「国民運動」が「つくる会」と連携した教科書攻撃であり、「つくる会」教科書の採択活動支援でした。この「若手議員の会」を中川氏とのコンビでリードしてきた安部氏は「ナチスドイツがやったことの意図、中身と規模と我が国の戦争は全く別もの」(『大東亜戦争の総括』)と主張し、日本のアジア侵略とナチスドイツの侵略は別だといい、日本政府の侵略戦争開始の「判断」を擁護しています(共著『「保守革命」宣言』)。こうした立場や主張、昨年の核武装合憲論でも明らかなように、熱烈な改憲論者であるだけでなく、根っからの超タカ派・極右政治家です。
(3)小泉第2次改造内閣がねらうもの
小泉改造内閣の大臣・副大臣などには、彼ら以外にも同様の立場のタカ派議員がうようよいます。総裁選に勝利した直後に小泉首相が「2005年の自民党結党50周年までに憲法改正の原案をつくる」と言明し、自民党長老で日本遺族会顧問の板垣正元参議院議員(歴史検討委員会事務局長)が「最大の構造改革は憲法改正。ついに成就できる内閣の誕生だ」(「東京新聞」03・9・25)と歓迎しています。小泉改造内閣は改憲準備内閣といえます。日本会議副会長で「日本の教育改革」有識者懇談会(民間教育臨調)副会長、「つくる会」賛同者、歴史歪曲教科書『最新日本史』発行者の明成社社長、石原慎太郎都知事のブレーンという肩書きを持つ石井公一郎元ブリヂストンサイクル会長は「河村氏をはじめ麻生氏、中川氏、小池氏、小野氏いずれも教育基本法の改正に熱心なひとたち。この欠陥商品(現行教育基本法のことー俵)を歴史と伝統や家庭教育を重んじる内容に変革する絶好の内閣」(「東京新聞」03・9・25)と期待しています。これ以外にも教育基本法改悪論者が多数いますし、自民党・衆議院文部科学委員長の古屋圭司氏は「若手議員の会」の副幹事長で、参議院文部科学委員長の北岡秀二氏も「若手議員の会」の事務局次長です。国会対策委員長は衆議院の中川秀直議員、参議院の西田吉宏議員ともに、教育基本法改悪に最も熱心な森派です。この内閣は、教育基本法改悪実行内閣といえます。それだけでなく、「つくる会」と連携して教科書問題で「活躍」する議員が多数参加するこの内閣は、2005年の「つくる会」教科書採択問題でも「つくる会」に支援・連携体制を整えたといえます。これ以外にも拉致議連のメンバーが多く大臣などになっていますが、安部・中川(会長)の他には、石破茂防衛庁長官、小池百合子環境大臣(副会長)などです。
その他の大臣・副大臣についても、「歴史・検討委」(1993〜95年)、「若手議員の会」(1997年2月〜)、「日本会議議連」、「超党派の会」、「特命委」、「拉致議連」などの関係者を「別表」にあげておきます。「歴史・検討委」は、日本の戦争を侵略戦争ではない正しい戦争だったなどと総括し、教科書の侵略・加害記述の削除を要求し、国民の歴史認識を変えるために学者を中心とした国民運動を提起し、それを受けて「つくる会」が結成されたのです。なお、「日本会議議連」は名簿を公開していないので、中心の役員しか判明していません。2002年3月現在242名の議員が所属していますので、小泉内閣の大臣などの中には、この議連のメンバーがもっといるものと推測されます。
(4)教育基本法改悪の任務で大臣になった河村建夫文科相
前述の石井日本会議副会長が教育基本法改悪の布陣として期待する大臣の中でも、中心になって改悪を推進・実行する役割を担って大臣に任命されたのが河村建夫文部科学大臣です。河村文科相は、「歴史・検討委」「若手議員の会」に所属してきたタカ派の政治家です。河村氏は、小渕内閣の文部政務次官、森内閣の総括文部政務次官、昨年10月からは文科副大臣を歴任してきました。90年の初当選以来、自民党文教族として子どもや教育・教科書問題に深く関わってきました。98年には自民党法務部会小委員長として、少年への刑事罰適用を「14歳以下」に引き下げる案を取りまとめて少年法改悪を推進した「実績」があります。
河村氏は、この間、政府・自民党の中で教育基本法改悪を推進する中心の役割を一貫して担ってきました。「日の丸」「君が代」を国旗国歌とする法律が成立した翌日の99年8月10日、自民党の教育改革実施本部の教育基本法研究グループは、教育基本法の本格的な見直しに着手すると決めました。このグループの主査(責任者)の河村氏は、「平成の教育勅語を念頭に議論する」と語りましたが、見直しの中身は97年10月に自民党がまとめた「教育改革推進の提言」の「国を愛する心、日本の歴史・伝統の尊重、国民としての義務、道徳など」です。河村氏は、自民党が2002年1月に設置した「教育基本法検討特命委員会」の事務局長として自民党の議論をまとめ、ついで、2002年9月に文科副大臣に任命されましたが、「首相官邸より教育基本法改正の特命を受け」て「文部科学大臣を拝命」した、「特命委員会」の「事務局長として、議論を深めて」きたが、「今後は、中央教育審議会でのとりまとめを推進する役割を担うことになる」と、自分が教育基本法改悪のために副大臣に就任したという「所信」をあからさまに語っていました。
河村氏は、教育基本法には「人間が生きていく中で大事なことが落ちている。そのことがはっきりこれからの教育基本法の論議の中でやられませんと…」(00年11月17日、衆議院文教委員会)「教育基本法を読んでみると、確かに品格の陶冶(とうや)とか、世界のどこへ持っていっても適用するようなことが書いてあるけれど、日本のにおいがしないんですよ。これからの教育に、どう国家観念というものをとり入れていくかというのが、今回の教育改革の課題」(河村著『この時代の教育の心』)などと強調しています。
河村文科省は、「首相からは与党間の協議を精力的に推進するよう指示された」「中教審が改正は必要と答申したからには、行政として法律を作らなければ不作為になる」などと教育基本法改悪法案を来年の通常国会に提出することをめざすと強調しています。自分のホームページで「我々一人ひとりの祖先の歴史は日本という国家の歴史でもある。ところが、現行教育基本法には『平和的な国家』の形成こそうたわれているものの明確な国家像が欠落している」「次の通常国会には法案が出せるはずです。『21世紀を心豊かにたくましく生き抜く日本人』の育成のために、制度疲労の見られる政府の教育のあり方を根本から見直すことは必要不可欠である」と述べています。
(5)改憲・戦争への道―教育基本法改悪を許さない活動を!
小泉首相は、9月26日の所信表明演説で「教育基本法見直しについては、国民的な議論を踏まえ、精力的に取り組んでまいります」と語っています。大臣や副大臣を教育基本法・憲法改悪に熱心な歴史歪曲論者の政治家で固めただけでなく、自民党の体制も安部幹事長をはじめ、額賀福志郎政調会長、町村信孝総務局長も同様の超タカ派であり、古屋圭司衆議院文科委員長、北岡秀二参議院文科委員長は「若手議員の会」のメンバーです。安部・町村・古屋・北岡氏は、教育基本法改悪に最も熱心な森派の議員です。まさに、小泉内閣は教育基本法改悪実行、憲法改悪準備の超タカ派・極右内閣だといえます。
私たちは、この内閣がねらう教育基本法・憲法改悪、戦争推進、「つくる会」教科書支援を許さない世論を、草の根から拡げていく運動にいまこそ全力をあげなければなりません。情勢は急を要しています。小泉極右内閣の本当の姿を一人でも多くの方に知らせ、反対の声を上げていきましょう。そのためにも、教育基本法・『心のノート』・教科書問題などを結びつけた、学習会・講演会などを全国各地で無数に開催していきましょう。
【資料】 小泉第2次改造内閣の超タカ派の大臣たち
俵 義文(子どもと教科書全国ネット21)作成
| ※ |
歴=自民党歴史・検討委員会
若=日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会
特命委=自民党教育基本法検討特命委員会
日=日本会議国会議員懇談会
拉致=北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟(「拉致議連」)
神道=神道政治連盟国会議員懇談会
50年=終戦50周年国会議員連盟
超=超党派議員連盟・歴史教科書問題を考える会 |
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| 大臣 |
氏 名 |
所属の議員連盟など |
| 総 務 |
麻生 太郎 |
特命委・委員長、日・会長 |
| 法 務 |
野沢 太三 |
歴、参院憲法調査会会長 |
| 財 務 |
谷垣 禎一 |
歴 |
| 文部科学 |
河村 建夫 |
歴、若、特命委・前事務局長 |
| 農林水産 |
亀井 善之 |
歴 |
| 経済産業 |
中川 昭一 |
歴、若・代表、日・会長代理、拉致・会長、超・会長 |
| 環 境 |
小池百合子 |
拉致・副会長、超 |
| 国家公安 |
小野 清子 |
若・副代表、特命委・幹事 |
| 防 衛 |
石破 茂 |
拉致 |
| 副大臣 |
氏 名 |
所属の議員連盟など |
| 内 閣 |
佐藤 剛男 |
歴、若 |
| 外 務 |
逢沢 一郎 |
歴、超 |
| 文部科学 |
原田 義昭 |
若 |
| 厚生労働 |
谷畑 啓一 |
若 |
| 厚生労働 |
森 英介 |
若・副幹事長 |
| 国土交通 |
林 幹雄 |
若 |
| 防 衛 |
浜田 靖一 |
若・副幹事長 |
| 副官房長官 |
細田 博之 |
若 |
| 副官房長官 |
山崎 正昭 |
若 |
| 大臣政務官 |
氏 名 |
所属の議員連盟など |
| 総 務 |
平沢 勝栄 |
若、拉致・事務局長 |
| 外 務 |
田中 和徳 |
若 |
| 文部科学 |
馳 浩 |
若、特命委・幹事、超 |
| 厚生労働 |
佐々木知子 |
超 |
| 経済産業 |
菅 義偉 |
若 |
| 環 境 |
砂田 圭佑 |
若 |
| 防 衛 |
嘉数 知覧 |
若 |
| 自民党 |
氏 名 |
所属の議員連盟など |
| 幹事長 |
安部 晋三 |
歴、若・事務局長、拉致、神道・事務局長、50年・事務局長代理、
日「防衛・外交・領土問題」PJ座長、超 |
| 政調会長 |
額賀福志郎 |
歴 |
| 衆・文科委員長 |
古屋 圭司 |
若・副幹事長 |
| 参・文科委員長 |
北岡 秀二 |
若・事務局次長 |
| 衆・国対委員長 |
中川 秀直 |
森派 |
| 参・国対委員長 |
西田 吉宏 |
森派 |
| 総務局長 |
町村 信孝 |
森派 |
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