1998アジア太平洋民衆会議 報告

 

報告:山崎 精一

 

  • 開催時期 1998/11/10−15

    開催場所 クアラルンプール・マレーシア

    主催 アジア太平洋民衆会議(APPA)書記局

    参加者 30カ国・316組織・636人

    スローガン グローバル化と対決する 民衆の権利を再確立する

    対抗理念
     

  • 国際経済金融秩序の再編

    経済力・富・収入の公平な再分配

    環境と民衆への配慮

    民主的スペースと市民社会の尊重

  • 民営化と金融規制緩和・人権と民主主義・労働フォーラム

    学生青年フォーラム・日米軍事戦略 など13分科

  • 現状分析 新自由主義的グローバル化は世界危機に対する独占資本の反応である。

    −その目的は多国籍企業の事業拡大と超過利潤の拡大て゜ある。

    経済危機は政治危機を招いており、民衆の抵抗が強まっている。それに対

    抗して日米軍事同盟などのこの地域の軍事化が進行している。

    闘争目標 新自由主義的グローバル化を逆転し、自由化規制緩和民営化を阻止
     
     

  • APECを暴露・抵抗・拒否 IMF.世銀・GATT.WTO.MAIと共に解体

    多国籍企業の解体 国家の新自由主義的グローバル化政策の克服

    具体的課題 国連人権宣言・ILO諸条約などの基本的人権の実現

    啓蒙教育活動・地域国内政治活動の組織化・地域的オルタナティブ

    異部門間連帯・国際連帯

    結語 以上の目的の実現を政府・多国籍企業・国際組織に期待することはできな

    い。自らの力・団結・決意以外に頼るものない。
     

    行動 11/12 東チモール・ディリ虐殺8周年祈念集会

  • インドネシア大使館前で平和と自由を祈るキャンドル集会

    11/15 クアラルンプール・シティーセンターでの大衆集会
     

  • ● NZからの提起 APEC監視グループからの来年への問題提起

  • 大規模な国際集会は止め、小人数のゲストを招待。

    首脳会議だけではなく全ての関連会議に対して行動する。

    各国での取り組みを強化し、その調整をNZが引き受ける。

    理由

    国際会議での討論より各国での具体的行動が必要

    財政負担が過重・NZ政府による抱き込み攻勢

    2000年ブルネイ2001年中国での対抗活動の困難性

  • 日本参加者

  • 労働 山崎

    移住労働者 滞日から棚原恵子・マニーロサレス

    人権 佐野晶子(PETA)

    日米軍事 斎藤一雄代表以下アジア共同行動日本連絡会議の代表8人

    民営化 井上礼子・前田美穂
     

  • 費用 飛行機代 61,349円 日本委員会
     

  • 参加費用 50米$ APWSL

    ホテル代 4638円 APWSL

    カナダ政府 APPAに5万カナダ$(395万円)支出

    残りはヨーロツパ北米の基金団体か?
     

  • ホームペイジ http://www.geocities.com/CapitolHill/Senate/8340/index.htm

  • http://www.vcn.bc./summit/appindex.htm
     
     
     
  •   労働者フォーラム報告

     

    労働者フォーラムに参加したのはマーレシア・韓国・フイリピン・バキスタン・オーストラリア・ニュージーランド・シンガポール・タイ・メキシコ・インドネシア・香港・日本・カナダ・アメリカからの66名であった。

    AMRCのボン・エンジェラスが「アジア太平洋地域の労働運動の主な傾向」と題する基調提案を行ない、労働の『柔軟化・インフォーマル化・強化』の進行を指摘した。その直接の結果は、解雇・労働時間の調整・短期雇用と非正規雇用化・研修労働の増加・付加給付の切り下げ・年齢差別・安全衛生の劣悪化・社会保障の切り下げである。その影響を一番強く受けたのは女性労働者と移住労働者である。

    参加者は女性労働・労働組合・インフォーマル労働の三つの分科会に分かれて討議した。以下がその報告である。

     

    女性労働

    グローバル化の女性労働者への影響は次のとおり。(その中でも移住労働者が一番被害がひどい)

     

  • 下請け化、派遣、配置転換などによる雇用の柔軟化の進行
  • 賃金の引き下げ
  • 大量解雇・付加給付の廃止
  • 輸出加工地域での女性活動家への嫌がらせ・ブラックリスト化。
  • 採用と労働現場での差別
  • 職場と家庭での女性に対する暴力の増加
  • 女性と移住労働者に対する人種分断策
  • 団結権とストライキ権の制限
  • 子供の教育や医療などの社会サービスの低下
  • 経費削減による労働災害の増加
  •  

  • 経営者を裁判に訴えることは政府により許容されているが、ほとんどの判決が不利な内容である。雇用の柔軟化により組織化が困難になってきているが、政府はますます経営寄りになってきており力にならない。経済が多国籍企業やIMFや世界銀行などの金融機関によりますます支配されるようになっているため、政府が弱くなってきており、労働者とその組織はますます困難な状況に置かれている。経済のグローバル下の圧力の結果、労働者は贖罪の山羊を求めるようになり、移住労働者や女性に対する攻撃が増え、家族が否定されるようになってきている。

    女性労働者は、労働者階級がこれまでに勝ち取ってきたものを守り自分のものとすることを要求している。団結権、ストライキ権、交渉権を要求している。さらに要求しているのは、雇用保障・公正な賃金・労働時間の改善・安全衛生の向上・手ごろで質の高い保育を受ける権利・研修を受ける権利・女性労働者の昇進のための積極的是正措置・セクハラ防止の政策と実行・所得税市民権失業対策などにおける女性差別の撤廃などである。

    このような要求の実現のため、女性労働者の課題に関心を集める署名運動を展開する。

    また1999年3月8日には、経済のグローバル化により働く女性の利益が損なわれていることに抗議して赤いリボンとスカーフを身に付ける運動を組織する。さらに団結権・争議権・交渉権の回復をめざす運動も計画する。

  • 労働組合

  • 経済のグローバル化は労働組合に打撃を与えており、弾圧的な労働法により組合の力は殺がれてきている。民営化は雇用と組合を破壊しており、説明責任をあいまいにしてきている。国家主権も失われてきており、ホームレスや貧困といった社会的影響も生んでいる。さらに労働と環境の基準も引き下げられ、工場は閉鎖され、移住労働者はさらに弱い立場に追い込まれている。

    労働者の権利を守るためには、労働組合は各自の組織の力を強化し、ILO諸条約の履行のための運動を展開しなければならない。他の戦略としては、多国籍企業の製品の消費者ボイコットを組織すること、労働者交流を進めることなどがある。さらに民営化や学生の課題などをめぐって地域団体やNGOとの共闘を進め、多国籍企業との労働協約の締結を目指す。国際的な通商協定に労働者の要求を含めること、APECが開催されていない間も連絡を維持すること、多国籍企業に関するILOの行動規範を守らせること、多国間労使交渉を実現すること。

  • インフォーマル労働

  • インフォーマル・セクターとは小商人、自営手工業者、未組織の非正規労働者などからなっている。しかし、分科会ではこの分野全体ではなく、インフォーマルな労働者についてのみ検討した。フォーマルな労働者とインフォーマルな労働者との違いは働く場所ではなく、労働条件の違いである。経済のグローバル化の進行に伴いインフォーマル労働が増えており、それがさらにフォーマル労働の賃金を押し下げている。

    従って、インフォーマル労働者を生活上の問題や地域の問題を巡って組織化する共同した取り組みが重要であり、また正規の労働組合とのつながりを作ることも重要である。また雇用を守り公共サービスの切り捨てを阻止することにより、労働運動の獲得してきたもの守り、協同精神を復活させる必要がある。

    労働運動は現在の景気後退を機会に、開発と経済的成功を同一視するような価値観や開発のあり方を考え直すべきである。また国際的な労働者の共闘とともに、グローバル化が環境・人々・労働者に与える影響を評価することが問われている。

     

  • 労働者フォーラム決議

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    グローバル化と自由化は以下の結果を生み出している。労働者の権利の侵食、大量失業・下請化・雇用の非正規化・柔軟化による搾取の強化、民営化、社会サービスの低下と破壊。しかもその被害は特に女性と移住労働者に大きく掛ってきている。

    資本の自由化は労働者の権利を基本的に破壊するものであり、これに対し我々は、

    アジア太平洋地域内の資本の自由化を阻止する。

    この地域で弾圧を受けているディタ・サリを始めとする労働運動活動家の即時釈放を要求する。

    次の署名活動を展開する。

  • 結社の自由と団結権。最低基準として労働組合を組織する権利、ストライキ権、
  • 団体交渉権を含む。

  • 労働者の権利を否定し労働条件を切り下げるための工場閉鎖、解雇、操業時間短縮、
  • リストラなどの心配のない安定した雇用を確保する権利。

  • 健康・住宅・教育・保育・失業保障などの基本的な社会サービスを享受する絶対的

  • な権利。
  • これらの権利は差別なく全ての労働者に与えられなければならない。

  • APEC労働権監視グループALARMを引き続き支持し、
  • 情報を広め、
  • 組織化の経験を地域的・国内的に共有化する取組みを支える。

  • 新自由主義モデルに対抗する理念を発展させる。

    労働者の権利意識のため教育を若者と労働者の間に広める。

    各国で労働組合と全ての抑圧された人々の運動を活発化する。

    グローバル化の問題に焦点を当てるために国内的・地域的活動を5月1日と3月8

    日に行なう。

    このオルタナティブな戦略を既存の労働組織の間に広めるために国内から国際へと

    連携を広げよう。

     

    以上の内容を支持し、その実現に向け積極的に活動するよう全ての国内、地域、国際組織に呼びかける。
     
     
     

  • アオテアロア・ニュージーランドAPEC監視グループの声明

     

    マレーシアでのアジア太平洋民衆会議(APPA)は199511月大阪でのNGOフォーラムから始まったAPEC民衆会議の過程の曲がり角であり、新たな出発点でもなければならない。これまでの一連の会議は、APECの本質を暴露し、APECに対するこの地域の民衆の対応を生み出し対決をうち固める上で非常に有効であった。この地域の多くの国で金融市場が引き起こす大混乱が荒れ狂うのを見るにつけ、我々の立場が正しかったことが証明されている。一連の危機に直面したAPECの設計者たちは国際資本の抱える問題を解決しようとして我々の批判をとりこもうとしているようである。

    しかし、このように環境が変化した以上、APECの本質を暴露するというこれまでの戦略だけでは事足りない。各地域、各国の運動と組織を強化し、民衆の闘いの経験の中から生まれてくるオルタナティブを見出すような戦略が問われている。分析と行動を推し進めるのではなく、自己目的化した国際首脳会議対抗産業の一部に過ぎないような民衆会議を毎年繰り返す恐れもある。APECが継続するならば、3年か4年後に国際的な民衆会議を持つことも意味があるかも知れない。しかし、それまでの間は国際会議よりも行動することに集中しなければならない。このような考えは、環境の変化に対応して新たな戦略を生み出さなければならないという我々の観点から出たものであり、国際的な会議や交流の価値を否定するものではない。

    来年のAPECの開催国の人間として、1999年はAPECとグローバル化・新自由主義に対決する方針を作り変える年でなければならないと考えている。その理由は以下のとおりである。
     

    APECに関する国際民衆会議は先に述べたようにその役割を既に果たして来た。

    アオテアロア・ニュージーランドは遠い国であり、多くの国際参加者を集めるには旅

    費が掛りすぎる。

    ニュージーランド政府は、国内のNGOを買収して、APECを支持もしくは穏やか

    な批判をするように仕向け、1999年の民衆会議が安全なものになるように仕組ん

    でいる。

    2000年のAPECはブルネイ、2001年は中国で開催予定であり、どちらの場合も対

    抗活動を組織するのはほとんど不可能である。

    APECがクアラルンプールで行き詰まることがあれば、APEC首脳会議はこれで

    最後になるかも知れない。

     

    この数年の間に次のような活動を展開するよう提案する。
     

    全てのAPEC加盟国でAPECについての教育と反対活動を継続する。その事によ

    り地域社会で起こっていることとAPECのつながりを理解することができる。

    APECが存在する限り、首脳会議が開催される時には、全ての国で抗議活動を調整

    して展開する。

    APECに反対する非定型のアジア太平洋連帯行動を展開する。

    この連帯行動はこの地域の民衆の持続的でしかも増大する参加により成り立つ。

     

    とりわけ1999年にはアオテアロア・ニュージーランドで以下のような取組みを提案する。
     

    APECとその新自由主義政策に反対して一年を通して教育的取組みを組織する。高

    級事務会議、閣僚会議、経営者会議そして最後の9月の首脳会議に対して対抗会議と

    大衆行動を配置する。

    以上の多様な活動の際、小人数の海外ゲストを情報提供者として招待する。

    1999年中、もし必要なら2000年に入っても、APEC情報とアジア太平洋民衆連帯行動の調整役をニュージーランドが引き受ける。

    PP21のようなこの地域の民衆事業の成果を活動の中に生かすよう務める。

     

    APPAがこの提案を支持し、APEC反対行動と教育活動を調整する役割を一、二年間引き受けるという我々の申し出を受け入れてもらいたい
     

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