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東洋医学研修

マリクリスさん 皮内鍼研修を終えて帰国

「貧しい人々の健康は伝統療法と西洋医学の組み合わせで」



村つくりのツボを、鍼(はり)でしっかりと教えますーー。村つくりのリーダーを養成するAHIが、針でツボを刺激す鍼治療を通して、住民主体の保健活動の大切さを研修生に伝えて26年になります。この21日に「皮内鍼(ひないしん)」研修を終えたマリクリスさん(35歳)は75人目の東洋医学研修生です。「母国では研修で得た鍼の技術を生かして地域の保健活動、地域つくりに努めたい」。力強い言葉を残してこのほどフイリピンに帰国しました。

AHIは地域つくりに勤しむ人たちのリーダーシップ養成に努めています。村つくりの新しい指導者は、その土地の人たちの心をしっかりとつなぎとめることが求められています。その有効な手段の一つが医療、保健活動です。

AHIは1980年の設立当時から、貧しい地域の事情に沿った保健・治療活動に東洋の伝統的な医療施術である鍼治療を採り入れ、この皮内鍼を研修生に伝えてきました。研修を受けた者は11カ国75人に及びます。うちフィリピン、インドネシア、インドの研修生が8割を占めます。これらの国はいずれも中国鍼が普及していて、鍼治療に比較的抵抗感がないため、皮内鍼研修を受ける希望者が多いようです。 慢性病を主な対象にした中国鍼は理論研修に長い時間を取られます。皮内鍼は主として痛みを取り去ることに限られているため、簡単で習得時間が比較的短く、即戦力につながる。日進市内の研修所にアジア各国から招かれた研修生は帰国後、皮内鍼の技術を生かして、新しい村つくりに取り組んでいます。

AHIの東洋医学研修は、かがみ外科・整形外科病院(名古屋市天白区)で鏡味六郎医師の指導のもとに行っています。皮内鍼療法を核に、温熱や押圧刺激による療法を複合的に組み合わせた、痛みを和らげる研修です。

マリクリスさんはその皮内鍼の研修を受けるために来日しました。 マニラ近郊に住む主婦。2歳と5歳の男児の母親で、一家は夫と両親の6人家族です。目のくりくりした丸顔で、笑顔が絶えない。ヨガ教室の先生でもあります。AHIが10月9日に開催したオープンハウスでは即席ヨガ教室を開き、指導役を買って出ました。明るい肝っ玉母さんです。 現地ではNGO「Integrative alternative MedicinePhilippines (伝統療法の統合した医学)」の職員です。

 この団体は主に「医療」と「鍼研修」活動を繰り広げています。
初めての患者には、最初に西洋医学の医者が診察し、鍼治療の必要の有無を決めます。鍼の研修は、他団体の依頼に応じて行います。これまでに8つの団体の地域保健ワーカーに中国鍼の技術を教え、その後も支援協力の関係を続けています。

 ここでマリクリスさんは13年間働いています。「一般的な西洋医学と鍼も含めた伝統療法を組み合わせて、それぞれの地域の貧しい人たちの健康を守る仕組みを打ち立てたいです」

マリクリスさんは10月10日から鏡味医師の指導を受けました。これまで主として中国鍼の治療に携わってきたマリクリスさんですが、皮内鍼は今回の研修で初めて習得しました。
中国鍼を日頃使っていて針に慣れているので、治療方法の取得にはそれほど苦労しなかったようです。

「鏡味皮内鍼療法」は技術習得、伝達が簡単で、よく効く、と三拍子がそろっているのです。が、現地で針を安価にそろえることが難しいという課題が残っています。皮内鍼の針製作機を試作した元研修生もいます。

「AHIの元研修生が作ったという針製造機で自分の針を作ることもできるようにもなりました」

 現地の人たちに中国鍼を教えていますが、習得してもらうには約半年はかかります。「中国鍼に比べて皮内鍼の技術は、短期間でも地元の保健ワーカーに教えることが出来て、効果的です。患者にとっても数日間は痛みが和らぐので、治療を受ける時間も経済的な負担も少ない。地域保健活動をおこなっている団体に積極的に講習を開いて伝えていこうと考えています」

「鏡味先生にも、目の周り以外は針を指す危険性がないので、どんどんあなたなりに試したり、他の人たちに教えて使う中で効果のあるやり方を見つけなさいと言われています。こうした簡単で危険性がなく、すぐに実践でき、広く伝えることが出来る技術というのが、皮内鍼を私がいいと思う一番の理由です」

帰国して、より多くの保健ワーカーに鍼の技術を伝えることで、草の根の人たちへの支援につながることでしょう。
マリクリスさんによると、フィリピンでは鍼というと、マルコス時代の反政府勢力ゲリラの人たちのものだったともいわれるほど、アンダーグラウンドの人たちや、通常の医療を受けることができない人々の間のものでした。しかし、今では鍼をも含めた伝統療法の良さが見直され、徐々に広がりを見せています。

「中流階級のひとたちの間でも、開業医が伝統療法もとりいれて、患者を増やそうという動きがあるようです。商業的になりつつあると言えるかもしれません。皮内鍼もダイエットにも効果があるようですから、それを使って資金を獲得できるかも」と笑う。

 伝統療法と西洋医学を組み合わせて、地域の貧しい人々を支援する道筋をつける。これがマリクリスさんの願いです。


注 「皮内針(ひないしん)」 針(直径0・12ミリ長さ約3ミリ)を皮膚の表皮と真皮の間に境界面に沿って刺入し、痛点を刺激することで症状を和らげる。主として痛みをとる目的で用いる。正しい位置に刺入すれば1週間程度は効果が持続する。



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