タリバン捕虜の大量虐殺の報道相次ぐ・・米軍関与の疑いも
2002.08.26

 2002年8月28日号のNEWSWEEKは、昨年2001年11月末に投降した多数のタリバン兵が北部同盟によって虐殺されたことを報道した。同誌は複数の情報源から1000人〜数百人のアフガン投降兵が、クンドォズからシベルガンへコンテナに積み込まれて移送され、この移送途中で数百人から千人以上の多数が死亡したことを報じた。同誌は黙認を含めてこの虐殺に米軍が関与した可能性は低いと結論付けている。
Newsweek誌は報道していないが、この報道に2ヶ月以上前に遡る6月に この捕虜大量虐殺を扱ったドキュメンタリー映画がヨーロッパで公開されている。この映画では、虐殺に米軍が関与したというアフガン人数人の証言が収められている。あるトラックドライバーは「衛星写真が写されてしまう前にシベルガン市内からコンテナを運び出せ」と直接米軍から命じられたと証言しているという。ここではこの映画監督のインタビューのWEB記事を通して、Newsweek誌が報道しなかった米軍の関与についても報告する

 

2002年8月28日号のNEWSWEEKは、昨年2001年11月末に投降した多数のタリバン兵が北部同盟によって虐殺されたことを報道した。同誌は複数の情報源から1000人以上のアフガン投降兵が、クンドォズからシベルガンへコンテナに積み込まれて移送され、この移送途中で数百人から千人以上の多数が死亡したことを報じた。捕虜は荷物輸送用の一つのコンテナに100人から200人近くもの人数がすしずめにされ、移送途中の丸一日近く換気も水の補給も行われず、コンテナ内部で窒息死させられたという。アフガニスタンでは過去にタリバン、反タリバン派の双方がコンテナを戦争捕虜の虐殺に使用してきた経緯がある。今回の捕虜の窒息死も意図的な虐殺であることは明白である。Newsweekはこの虐殺に対するアメリカ軍の関与について次のように結論付けている。「本誌が取材したかぎりではコンテナ内での虐殺について米軍が事前に知っていたり、現場を目撃したという事実は浮かんでこない。コンテナが運ばれていたとき、米兵は収容所の周辺にいたが、コンテナが開いたときは現場にいなかったとみられる。当時、米特殊部隊のメンバーは収容所の安全確保を優先課題としていたからだ。」しかしNewsweek自身のレポートの中でもこの推論に反するような証言が出てくる。マザリシャリフで米軍の通訳をしていたアフガン人の証言である。
 「当時、アメリカ人は手いっぱいだった」・・中略・・・それでもコンテナの秘密がばれなかったとは思えない、とバシクラは言う。「すぐにアメリカ人も気づいたはずだ。シェベルガンには最初からいたのだから」
Newsweekのレポートの焦点はこの事件を意図的な北部同盟による虐殺・・・・単なる事故ではなく・・として米軍が当時把握していたのか、という点に集中している。したがってNewsweekが提起するアメリカの責任とは次のようなものになる。「捕虜の人権を守る気などはじめからなさそうな同盟軍のやったことに対して、アメリカは何の責任も無いのか、という疑問も生じる」Newsweekの報道に先立つこと2ヶ月以上前、すでにアイルランドのドキュメンタリー監督によってこの虐殺事件が報じられ、ヨーロッパを中心に一大スキャンダルとして取り上げられつつあった。監督はジェミー・ドラン(Jamie Doran)、BBCに在籍したこともあるこの監督は世界中の人権侵害事件を中心にドキュメンタリー番組・映画を作ってきた。6月12日、ジェミー・ドランはまだ製作途中の「マザリシャリフの虐殺」を、集団墓地の現状保存を訴えることを目的に急遽ドイツ、ベルギーで上映した。(監督によればアフガニスタンから集団墓地の隠蔽工作が行われる危険が通報されてきたため、急遽公開したとのこと)映画は北部同盟兵士を含む複数のアフガン人からのインタビューを含む。内容はNewsweekの報道に反して、アメリカ軍が虐殺に直接関与したことを疑わせるものとなっている。映画の内容を報道した各種のWEB記事よりアフガン人へのインタビューの内容を抜粋する。

  • タリバン捕虜の輸送車両に随行したアフガン兵(北部同盟)の一人は、アメリカ軍兵士に命じられて、中にいる捕虜に命中してしまうことを承知のうえで空気を通すためにコンテナに向けて射撃するよう命じられたと語った。一人のアフガン人タクシードライバーは床から血を垂らしたたくさんのコンテナを見た、と語った。
  • 一人のアフガン人は戦闘に疲れた様子でシベルガン収容所での捕虜の扱いについて語った。「私はアメリカ軍兵士が一人の囚人の首の骨を折り、他の囚人に酸をかけているのを見た。アメリカ人たちはやりたい放題だった。我々には彼らを止める力が無かった。」
  • 二人の目撃者の証言では、彼らは数百人のタリバン捕虜が詰め込まれたコンテナをを砂漠の中へ運ぶよう強制された。彼ら二人はこの命令が米軍から出たのではないかと疑っている。ドライバーの一人はまだ窒息死していない囚人達が銃殺されるところを目撃した。そのかたわらで30人から40人の米軍兵士が立って見物していたという。
     ・あるアフガン人ドライバーの証言によると、彼はアメリカ軍兵士から、問題のコンテナが衛星写真に撮られる前に、市街地からコンテナを砂漠に運び出すように、と命じられた。

この監督に「World Socialist Web Site」がインタビュー、映画の内容、特にアメリカ軍の関与について尋ねている。監督はアメリカ軍の関与について証言以外の絶対的な証拠はないとしながらも、証言と状況からアメリカがそれを知らなかったとは考えにくい、としている。以下はこのWorld Socialist Web Siteのインタビュー全文訳である。

 
ジェミ・ドランはドキュメンタリ映画の受賞経験があり、22年にわたり映画を作ってきた映画監督である。彼は自分自身の独立系のテレビ番組制作会社を立ち上げる前にBBCで7年間働いていた。この8ヵ月間、彼はアフガニスタンで映画制作プロジェクトに携わってきた。WSWSは7月14日にドランに対してこのインタビューを行った。(以下「WSWS」は質問者、「JD」はジェミ・ドラン監督)

WSWS:カライジャンギ収容所での出来事について手短に取り上げてますが、映画の中心となる部分はクンドォズでアメリカ軍に降伏した8000人の兵士の運命に集中していますね。

JD:そのとおりです。8000人が降伏交渉にあたったアミル・ジャン(Amir Jahn)に投降しました。映画の中で彼は兵士を一人一人数え、彼ら投降兵が8000人であったと語っています。470人はカライジャンギへ向かいました。これは推定ですが7500人ほどがカライジャンギからシベルガンに向かいました。そして移動の後には彼の言葉を借りると「たった3015人だけが残った」のです。後の残りの兵士はどこにいるのでしょうか?

WSWS:生き残った3015人はどうしたんですか?彼らは解放されたのですか?

JD:いいえ。彼らの大半はまだあそこの収容所にいます。いくらかは解放されましたが、大多数は拘留されたままです

WSWS:この件に対する米国の関与に関してですが、映画に登場した証人について教えていただけますか?

JD:3人のアフガン人兵士が映画に登場します。そのうち2人は通常(訳注:下位の)兵士で、一人は将校です。それと血があふれ出た3つのコンテナを目撃したタクシードライバーがいます。彼は恐ろしさのあまり髪の毛が総毛立ったと語りました。そしてコンテナを砂漠の中に運ぶよう強制されたトラック運転手が二人証言しています。証言の内容に基づき計算すると移送された総数は最低でも1500人になりますが、多分全体で3000人にのぼるでしょう。

WSWS:
これら人々の証言を別にすれば、3000人の囚人達の死に関してアメリカ軍が関与したという証拠が他に何かありますか?

JD:厳密にはありません。この映画を早めに公開したのは、砂漠の中の集団墓地に不正がなされようとしている、という警告を私がマザリシャリフから受けたからです。全ての証拠は墓地の中にあります。そしてこの墓地に手をつけてはいけない(訳注:隠ぺい工作などの)、ということが重要なのです!
WSWS:だれがこの墓地に介入しようとしているか、あなたは知ってますか?

JD:ええ、知っています。しかし申し上げません。私が言えることは誰であれ有罪が証明されるまでは無実であって、本当に潔白なのであれば外部の独立した調査に対して何の恐れも持たない、ということです。この件にかかわったアフガン人、アメリカ人が無実なのであれば、彼らは独立した調査に何の恐れも持たないはずです。私はそのような調査に彼らが反対できないと確信しています。

WSWS:あなたの意見では3000人にも及ぶ人々を移送し、殺したこのような作戦を、アメリカ軍が知らなかったとか、同意しなかったなどということがありうると思いますか?

JD:私の意見がお望みなのですか?私の答えはノーです。150人のアメリカ軍兵士がシベルガン収容所にいたのです。これは私の意見ですが、このように大掛かりなことがおきているのに何も気がつかないままでいる、ということはかなりありえそうも無いことだと思います。

WSWS:あなたの意見ではアメリカ軍の指揮系統の中でどのくらい高位の人間がこの事件に共謀していると思いますか?

JD:繰り返しましょう。シベルガン収容所の近辺に150人の兵士とCIAメンバーがいるのに、このような虐殺がおきていることを彼らが知らないとすれば、それは全く奇妙なことです。

WSWS:映画の中で証言者がアメリカ軍兵士がアフガン人捕虜の拷問と射殺(shooting)にかかわっていた(involved)と言っています。

JD:映画の中でアメリカ人兵士が拷問を行ったと告発するくだりがありますが、アメリカ軍の関与に関する重要な告発はアメリカ軍将校(American officer)が一人の証人に向かって言ったことです。また運転手の一人は砂漠の中で生き残り(訳注:コンテナ移送で生き残ったタリバン捕虜)を殺して埋めた現場に30人から40人のアメリカ軍兵士が立ち会っていたと語りました。

WSWS:砂漠でアメリカ軍兵士が犠牲者の射殺に加わっていたことを指摘する証拠は何かありますか?

JD:砂漠で行われた射殺にアメリカ軍兵士が関与していたという絶対的な証拠を私は持っていません。同時に砂漠の集団埋葬地を目撃した証人は他にもいます。私よりも先に集団墓地を発見した人権活動家すらいます。彼らは今では私の映画のことを「ミッシングリンク」と呼んでいます。彼らは墓を見つけ、国連の援助の下でその墓地の小さい一画を掘り起こし、15体がみつけました。彼らはその砂漠の一区画に1000体近くが埋められていると予測しています。現時点では誰からもこの墓は守られていないので、彼らも墓を保存するべきだと要求しています。証拠はいとも簡単に隠蔽されてしまうのです。

WSWS:あなたの映画での証拠を元に、あなたは何を要求しているのですか?

JD:私はジャーナリストです。私は要求はしません。私が言っているのは証拠が保存されなければならないということです。国際的な調査が実施されるまで墓が保存されなければならない、ということが大切なのです。
 
WSWS:あなたの映画にどういった反響がありましたか?

JD:これまでのところ信用されてきませんでした。私は世界中から問い合わせを受けました。アメリカに関する質問もありました。驚くべきものでした。ヨーロッパ各国と同様に南アフリカ、オーストラリアなどからも問い合わせがありました。
 
WSWS:もっと多くの視聴者に映画をみせるプランを何かお持ちですか?

JD:ご存知のとおり今回は墓地がダメージを受けることを防止するために公開した短い映画となっています。メインとなる映画はあと5,6週間で完成する予定で、(この件に)関与した人々に対してより重大な意味を持つことになるでしょう。

WSWS:映画を撮ることに関連した危険が何かありましたか?

JD:私はアフガニスタンでジャーナリストとして働いてきました。それが全てです。私は自分自身の立場について危険を指摘するつもりはありませんが、アフガニスタンのジャーナリスト達について憂慮しています。とりわけ私の映画の中に出演して全てを危険にさらした証人達についてです。彼らにはこうしたインタビューを受けねばならない理由などありませんでした。彼らのうち誰一人として1セントの金品も受け取った人はいませんでした。繰り返し言いますが、彼らは映画に出るにあたってどのような支払いも全く受け取っていません。実際、この証言で彼らは非常に危険な立場におかれるだけなのです。墓を保存し、証拠を守るようただちに対応することが急務となっています。無実の者に恐れるものなど何も無いはずです。
  原文:http://www.wsws.org/articles/2002/jun2002/dora-j17.shtml

 

ドランの調査を裏付ける取材がドイツのツァイト誌によっても行われている。これもWSWSからの孫引きとなるが一部分を全訳する

最新のツァイト誌上で、同誌は次のように述べている。「シベルガンでダシュテレイリの砂漠で何が起きたのか知っている人々を探し出すのは困難ではない。たいした驚きも見せずに彼らは処刑とコンテナで窒息させられたタリバンのことを話してくれる。」
報告は村の近郊のある住人が次のように語ったと述べている「私は最低でも13台のコンテナを数えた。それらのコンテナはトラックに引かれて移動してきた。到着したのは昼間だった。」それらの男達がどのように死んでいたのかを尋ねると村人はこう答えた。「私達は彼らがコンテナの中で窒息死してしまったと聞かされた。しかしコンテナのうちいくつかは血まみれだった。」

ツァイト誌のレポートによれば地元住民はその作戦がアメリカ軍兵士の立会いのもとで行われたことを確信しているという。「私達はさらにもっと突っ込んで尋ねた。アメリカ人らが参加していることを疑う者は誰もいなかった。この件についてはもっと高い地位にある人間ですら何の疑いも持っていない。」http://www.wsws.org/articles/2002/jun2002/afgh-j29.shtmlアメリカ軍の関与について完全な結論を出すことは難しいかもしれない。しかしあるトラックドライバーの証言「衛星写真が写されてしまう前にシベルガン市内からコンテナを運び出せ、と命じ」られた、という言葉からは米軍がこの虐殺事件について「黙認」以上の関与をしたことがうかがえる。

 今回事件の報道で最も不可解なのは、Newsweekがこのドランの映画について全く触れていないことである。Newsweekの報道の多くはドランのそれと一致しており、しかもNewsweekが長文を引用している「人権のための医師団(PHR)」もドランとこの事件の調査で関連している。ドランの調査と映画をどのように評価するにせよ、Newsweekがこれを黙殺したことはきわめて不自然と言える。
Newsweek誌の報道以後、この事件に関する報道が一気に広がったが、ドランの映画上映とヨーロッパでの報道から実に2ヶ月以上もの間、アメリカの主要メディアはこの件についてほとんど報道をしてこなかった。日本での報道もNewsweek以後である。そしてもちろんこの2ヶ月間、アメリカの主要メディアが沈黙していたことについてもNewsweekは何も語っていない。


 

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