アフガニスタン未亡人の現状
IRIN News
2002.10.21 http://www.irinnews.org/report.asp?ReportID=30522&SelectRegion=Central_Asia

アフガニスタン国内では、23年の内戦の結果、およそ150〜200万人の女性が夫を亡くし、いわゆる未亡人となって生活している。女性の人権を抑圧してきたタリバン政権が崩壊した後も、彼女たちの生活は数々の困難に直面しているという。
ここでは、1996年からアフガニスタンの未亡人たちを中心に支援してきたアメリカのNGO、CAREの動き等を紹介しながら、女性たちの置かれた厳しい現状を報告している。

カブール、2002年10月21日、IRIN
彼女の家はアフガンの首都、カブールの西部地区に位置する。ビビ(Bibi)には不潔な家のむき出しの床以外に座るところがない。彼女は37歳、未亡人である。隣家の着物の洗濯などをしているが、5人の家族を養って十分な食事を与えることなどほとんどできない。ひどい下水のにおいが部屋に立ち込めている。娘達は絶えず空腹にさらされているが今は眠っており、彼女はハエの群れが娘達の目を覚ましてしまわないように格闘している。
これ以上ひどい状態を想像することは難しい。しかし信じられないだろうが、ビビの世界は、まさしくこうしたありさまなのだ。かつてビビが住んでいた家の持ち主が何年かぶりにパキスタンから戻ってきて、その結果彼女は追い出されてしまった。「私はどうすればいいのか?どこへ行けばいいというのか?」彼女はIRINに尋ねた。

カブールだけで、推定で3万から5万人の未亡人が住んでいる。彼女らの大半はこの23年間の内戦で夫を失っている。一方で国全体では150万から200万人の人々が殺され、未亡人は全体で数十万人になると推定される。20歳から40歳までの未亡人のうち約90%が子供を抱えている。
しかしタリバンが消滅したとはいえ、未亡人達はいまだ非常な困難に直面している。彼女達は今日アフガニスタンで最も犠牲となりやすい弱者のグループである。
「アフガンの未亡人の状態は心理的には改善をみたが、その一方で住む家を見つける、食料、収入を得るといった主要な問題がいまだに残っています。」とCAREインターナショナルのアフガン女性のコーディネータであるアワディア・モハムド(Awadia Mohamed)は語った。「それどころか、いくつかのケースでは彼女達の状況は悪化してきたのです」
タリバン支配下の5年間に未亡人達とその家族はタリバン運動の最悪の原理主義的な布告を押し付けられていた。女性達は働くことができず、学校へ行くことができず、男性の親類縁者がいない状態で家に取り残された。こうした未亡人達はあらゆる面で最も孤立したタリバンの犠牲者であった。多くが通りで物乞いをして暮らせざるを得なくなり、中には売春に身を投じる者もいた。
 しかし昨年のタリバン崩壊後にアフガニスタンの政治的、社会的な流れが未亡人達にとって良い方向に変わった。しかしこの女性達のグループの基本的なニーズはいまだ満たされてはいない。
 
 モハムドによると9月11日以後、CAREは未亡人の女性達が直面している問題について再調査を始め、女性たちの大半が住宅や法的な財産権に欠けている事実を指摘した。多くの未亡人達が所有者がずっと以前にパキスタンやイランに逃げ去って、放棄した建物に住んでいる。しかし難民の帰還が進めば進むほどビビのような未亡人達は今度はさらに新たな厳しい難問にぶつかる。それはどこで生活するのか、という問題である。
 「新しい場所を探さねばならず、かつ(その新しい場所では)一つの家の中でもっと多くの人と同居しなければならないのです。住居の中はひどく過密になってしまっています。」ムハマドは言った。女性の法的権利は地域とその文化から影響を受けており、多くの未亡人達は財産や所有権の面で最低限の権利しか持っていない、と彼女は付け加えた。
 
 1996年からCAREはこの女性達の集団を最前線で支援してきており、1万人以上の未亡人世帯に対して、CIDA・カナダ国際開発機構(Canadian International Development Agency)が基金提供した大規模な食糧援助計画を進めるとともに、健康や栄養の面での教育機会を提供してきた。
 CAREは理屈の上では未亡人達が以前よりもアフガン社会の中で、より多くの機会に恵まれており、国の開発プロセスに参加しているとしている一方で、犠牲をこうむりやすい女性達の生活環境はいまだ改善していない。CAREは未亡人を世帯主とする世帯が直面している主な制約の中でも、貧困や文化的理由による識字率が低いこと、女子は長距離移動を家族から制限されていること、女子が兄弟姉妹の世話をしたり、家内労働をしなければならないこと、などを強調している。
 CAREによると調査は6月に行われ、その結果、52%の未亡人達が家内労働や農場での労働、洋服の仕立てやカーペット作りといった自営業から主な収入を得ていることが判明した。しかし彼女らの賃金は低く、月収は平均で10ドルから15ドルだという。例えばビビの一日あたりの収入は平均するとかろうじて50セントにすぎない。さらに報告では調査対象となった未亡人の73%以上は、収入が不規則なため借金をしているという。
 
 報告では彼女達が直面しているもう一つの困難、彼女達の家族が夫や身内を失っているにもかかわらず、親類から最低限の支援しか得ていないという問題について触れている。その結果、多くの未亡人は社会的なつながりをほとんど持っていないカブールにとどまり続けている。「地方の未亡人達はこうした都市の地域の未亡人達より状況がましです。」とモハメドは言った。「地方では通常、血縁関係にある者達や離れた親類を通してこうした未亡人の面倒を見るシステムがあるのですが、カブールでは未亡人の大半はこうした血縁関係やコミュニティから支援を得ることができません。」と彼女は説明した。
 
 未亡人やその家族は保健、栄養面でモハメドが「非常に、非常に貧しい」と述べているようにとても危険な状態にある。食料や健康の公共サービスを受けることが制約されているため、CAREが調査した未亡人たちの51%が病気を患っていることがわかった。こうした病気をわずらう未亡人の57.6%には発熱の症状が、13.6%に下痢の症状、10%にライシュマニア病(訳注:皮膚病の一種)で受けた傷がある。
 加えて彼女達自身、そして彼女達の子供の大半がパンとお茶程度の食事で生活していおり、摂取カロリーが不十分なものとなっており、結果として栄養不良の問題を抱えている。さらに彼女らの大半はビタミンAが不足しており、鳥目を患い、同様に栄養不良からくる他のさまざまな兆候が現れている。
 昨年、女性を世帯主とする家族の調査が行われた。カブールの一般家庭の子供達が栄養失調である比率は4%であるが、これに対して彼女らの子供達は20%が栄養失調であることがこの調査で判明した。
 トラウマと精神的打撃が問題をさらに深刻なものにしている。国連のユニセフが最近行った調査によると、アフガニスタンの子供達の60%が紛争の期間中にトラウマになるような出来事を経験しているという。
 
 CIDAでは現在の支援活動として1万人以上の未亡人達とその家族、およそ6万人の人々を、カナダ政府のカブールの未亡人支援プロジェクトを通して過去5年にわたり継続的に支援してきている。計画の中には一人一人の未亡人に32キロの小麦、食用油、9キロの豆の配給を行う支援も含まれている。この配給量は5人家族の半月の消費量に該当する。
 この問題についてカブールWFPのAlejandro Lopez-Chicheriは未亡人達の状況は厳しいものだと語った。「多くの努力がなされてきたにもかかわらず、カブール市内の社会的に弱い世帯の状況が厳しいままであることは明らかだ。これはアフガン全土でも同じことが言える」と彼はIRINに語った。
 
 1996年からWFPはアフガン全土でパン屋計画を進め、最も犠牲となりやすい世帯、とりわけ世帯主となっている未亡人や障害者を(対象として)指名してきた。現在首都では11の地区に24のパン屋が創業しており、WFPは357名の女性達を雇用している。この女性達の大半は未亡人である。女性達は日に42650個のパンを作り、8530戸の貧しい家族を支えている。こうした貧しい家族の大半も未亡人が戸主となっている。
 現在WFPはカブールのいくつかの区域でさらに5000から5500戸の困窮している世帯を追加登録している。
「我々はこの新たな登録によって、カブール市内の犠牲になりやすい人々の70%、つまり現在の40%を改善して70%までをカバーするようになると期待している。」とLopez-Chicheri は説明した。この計画によって10〜15ケ所の女性が運営するパン屋が開設され、500人以上の未亡人達に働く場が提供される、と彼は加えた。
 パン屋の数は1地区につき2軒となるが、女性達はこうしたパン屋で忙しく働き、一日にほぼ2000個のパンを作る一方で、自立と誇りといった新しい感覚を味わっている。22歳のファザナ(Fazana)は2年前に夫を亡くした。仕事は家計の助けになるが、それでももっと多くの収入が必要だ。彼女には月50ドルの収入があるが、彼女はなお月25ドルの家賃を払わなければならない、とIRINに語った。
彼女のこの言葉から、所得をもたらす活動は、未亡人達が家族を養い、家を借り、子供を教育するために所得を得るいう面で重要なだけではなく、価値のある新しい技術を身につけさせるという点でも重要であることがわかる。
 CAREは一つのプロジェクトで未亡人達とその子供達に裁縫や農業、小売業といった新しい収入源を得るよう支援している。こうした職業は女性にとってだけではなくその家族にとっても同様にきわめて有益なものだ。
 CAREはもう一つのプロジェクトで6つの裁縫センターを支援している。このセンターでは160人の未亡人がCAREの支援する学校の制服を生産している。菜園作りのプロジェクトもある。そこでは女性達が小規模の土地活用の企画を立てて働いている。「彼らは自分達が必要としているもの以上のものを作っています。つまりあまったものを売っているのです」とモハメドは説明した。
 現在はCAREが主導権をとっているが、CAREの目的は毎年異なる地域で2000人の女性を訓練し、ある程度の経済活動が可能となるようなゆとりを彼女達が得られるようにすることである。それはマイクロクレジット、集団的な貯蓄やその活用、食肉用の鶏や乳牛の飼育、裁縫、絨毯の編み方といった技術研修などの方法も用いて行われる。「これは非常に野心的な目標だと思います」と彼女は言い切った。 


 

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