アフガニスタン、この1年の危機と援助・・・Q and A
2002.02 http://www.afgha.com/article.php?sid=16649

長年にわたって、アフガニスタンで人道活動を行ってきたNGO、クリスチャン・エイドによる、アフガニスタンの最新の食料事情と援助の実態をQ&A形式でまとめたレポート。
同組織の活動内容紹介の色彩も強いが、アフガニスタンの食料危機への対応と長期的な復興をどう考えるか、手際よくまとめられている

 

●今アフガニスタンでは人道的な状況はどうなっているのか?
アフガニスタンはいまだ世界で最も発展の遅れた国の一つである。平均寿命はおよそ45歳、新生児の4人に一人は生き延びて5歳の誕生日を迎えることができない。全人口の23%だけが清潔な水を手に入れることができ、子供らの三分の一のみが学校に通うが、このように通学する少女は3%にすぎない。食料確保については、アフガン全土の中で地方によって状況が大きく異なっている。西部地方ではクリスチャン・エイド(Christian Aid)が活動中だが、平地、渓谷、山地高原では状況は際立って対照的である。
平地の河川に隣接している地域では状況は昨年と比較して非常に良くなっている。3年にわたる深刻な旱魃の後で、この地域では作物を栽培してくることができて、この地域の主食となっている小麦が相当量収穫された。しかしこうした地域ですら平均収穫高の50%をわずかに下回る程度の収穫となったものと予測されている。農民達、そして政府職員はさらに3年以上のまともな降雨がなければ旱魃以前の収穫高に戻すことはできないだろうと予想している。
高地では状況ははるかに深刻である。冬の間に雪が降ってある程度の地下水が溜まるわけだが、地元の人々によると、その降雪量はまたもや平年の50%程度にしかならなかったという。この地域ではすでに深刻な食糧不足に直面しており、国際社会が救援活動による支援を行わなければ、冬を目前にして事態がさらに悪化する危険がある。
国連・WFPは緊急用の小麦備蓄の大半をアフガニスタンへ放出しており、同組織は今年はじめ誓約された援助の約束を援助国が守られなければ、主要な「食料パイプライン」が詰まってしまうだろうとで報告していた。WFPは12ヶ月前に「非常に深刻」な食糧不足に直面しているアフガン人の数を500万人強と述べていた。2002年8月、WFPは「非常に深刻」なアフガン人の数は700万人に達したと報告した。隣国から大量の難民が帰還したことが原因であると予測される。WFP曰く、現在不足している額は約束された基金のうち1億ドルにのぼり、来年6月までの1年間に必要な小麦が推定25万トン不足してるという。今後数週間、数ヶ間の対応がこの国にとって決定的なものとなるだろう。

 


●たくさんの支援が与えられてきたにもかかわらず、なぜ人道的状況はこのようにひどいのか?

むろん過去4年間アフガニスタンは旱魃に苦しめられてきたし、このような(天災にあった)地域では食料が常に不足がちになるということは事実である。しかし図表のグラフ上の線でみるよりも状況ははるか深刻であることは明白である。もっと広い文脈に置いて考えることが必要である。23年間の内戦によりこの国の実質的な発展は不可能となり、全土は無法状態にとどめられることになった。我々が話をした政府職員は継続的かつ緊急の食糧援助が必要だと訴えてきた。しかしまた彼らは優先順位をつけて長期的な復興 を行う必要性も語る。これは再び国際社会にその約束を果たすよう、求めるものとなる。今年3月、東京での協議で18億ドルが決議されたが、そのうち具体的に約束されたのは10億ドルのみである。しかし最近のアフガン政府の報告によると、このうち実際に支払われてきたのは5億6千万ドルだけで、さらにこのうちアフガン政府の事業支援のためにアフガン政府に直接供給されたのは9000万ドルのみであるという。「政府は政府予算支援のために東京での誓約が現金の形になることを切望している。(援助さえあれば:訳者注)内閣改造が焦点になるだろうし、資金集めよりも基本的な市民サービスに焦点が移るだろう。」とこの報告は述べる。
一例を挙げると、アメリカでは膨大な寄付が既に集められたにもかかわらわず、8月13日にブッシュ大統領はアフガニスタンのために議会が認可した基金を使用することを拒否した。この基金は復興用に1億3400万ドル、難民支援用に4000万ドルに達している。
ここには古典的な問題、卵が先か、ニワトリが先か、という状況が現れている。つまり国際社会は国土全体を十分にコントロールできないようなひ弱な、新しい政府・国家に対して資金を手渡すことに慎重となる。しかし国際社会が支え続けなければ、この国家は破産を宣告されたも同様なのである。なぜなら国家がその正統性を確保するためには、治安組織だけでなく、基本的な市民サービスを提供する能力やインフラや施設の再建を監督する能力を兼ね備えていることが必要だからだ。今や国際社会には新政権を通した資金を注意深く監視しつつも、信義ある行動をとることが求められている。

 


●現在の人道的状況のうち、クリスチャン・エイド(Chiristian AID)が懸念しているのは何か?
深刻な状態にある人々に食料を確保すること、このことが第一に優先される緊急の懸案である。この支援は前年から始まった地元農業を破壊しない形で行わなければならない。この観点からクリスチャン・エイドが懸念している二つの問題は下記である。
1)WFP、及びWFPのもとで援助を実施しているパートナーの団体、あるいは独立系の人道団体によって無料の食糧配給がなされてきたが、この結果としていくつかの問題が発生している。クリスチャン・エイドは実践経験から食料配給が援助依存や、地元経済の不況をもたらすことを知っていた。むろん開発を担う全ての機関はその目的から冗漫な組織になりがちだが、開発目的を達成するためには商業やコミュニティの繁栄を自分達の力で成し遂げる環境を整える必要がある。あらゆる開発機関の主要目的は、種子や家畜、小規模の資金提供、就労機会創出のために現金を提供するなどの施策を通して地元コミュニティの長期的なニーズを満たすことである。この目的は無料の食料支給を続けることで達成されるものではない。食糧援助は危機的な場合には重要だが、無料の食料を支給することは、人々が種をまいて、働くことをしなくなるような事態を招く危険がある。
2)上の1)の問題に関連するが、クリスチャン・エイドは国内避難民が全土に広がるUNHCRのキャンプから故郷へ帰還することを注視している。彼らが戻る先の地元コミュニティには帰還した避難民を支援するだけの十分な食料が無いはずだ。地元コミュニティが十分な食料を確保できなければ、さらに避難民が生まれるような結果になりかねない。このことは昨年我々が見聞きしたように、難民キャンプへの人々が大挙して戻ってくることを意味する。


●難民の状況はどうか?昨年聞いたようなひどい状態にあった難民キャンプから人々は故郷に戻ったのか?

多くの人々が帰還した。3月から8月にかけて180万人以上の難民が故郷に戻った。UNHCRの推定では夏の終わりまでに(総計380万のうち)200万人の難民が隣国からアフガニスタンへ帰還する。クリスチャン・エイドは難民が彼らの国の出身地にに戻ることを喜びたいが、同時にこうした難民の帰還によって食料事情は悪化する一方である。
支給されたいくらかの食料をもってにアフガニスタンへ自由に入国を許可される一方で、彼らは(故郷に)到着した時にほとんどあるいは全く何も受け取らない場合が大半である。クリスチャン・エイドはこうした多くの人々と話をしたが、彼らが言うには冬が来る前に支援を受けなければキャンプに戻ることになるだろう、という。
村民達が必要とする食料をを配給する気音がWFPお第一の役割であるが、WFPは食糧不足に戻ってしまうような状況に再び直面することになるだろう。なぜなら国際社会が約束した名誉ある誓約が実現していないからである。ただし推定の中には、およそ2億2100万ドル・・・ほぼ今年アフガニスタンで消費された全基金の半分に匹敵する・・・が難民の再定住支援のために割り当てられてきたとするものもある。
たとえそのとおりであったとしても、他国に避難した難民を担当するUNHCR自身がアフガニスタンの危機に対応するための予算として、4300万ドルの資金不足に直面している。イランからの難民帰還については強制的なアフガン人送還によって実現したという疑いがある。これは2002年4月に調印された三者協定(イラン、アフガニスタン、UNHCR)違反にあたる。三者協定ではアフガン人の帰還は自発的なものだけに限ると保障している。

 

●IDP(国内避難民)の状況はどうか?
UNHCRとIOMは、現在までに40万人の国内避難民が帰還したと言っているが、さらに80万人は避難中である。


●しかしクリスチャン・エイドは昨年に人々は地元の村に留まっているほうが良いと言っていた。この立場に変化はあるか?
我々の立場に変わりは無い。
地元のコミュニティが無事で、将来に向けて再建を始められるのなら、人々が村に留まる、あるいは村に戻る方がずっと望ましい。ここでの問題点は避難民の多くが種まきの季節が過ぎてから故郷に戻り、そのため彼らは自分と家族を支えるために作物を育てることが全くできないとうこと、結果として彼らは今では隣人達、既に食糧不足となっている村の隣人達を頼りにしているということである。彼らは支援が冬になる前に届かないのならキャンプに戻らざる得なくなるだろうと言っている。

●このような状況を改善するために、クリスチャンエイドはどのようなことを行ってきたのか?
我々の寛大な支援者から寄せられた基金によって、クリスチャン・エイドはアフガニスタンで緊急プログラムを立ち上げ、50万人以上の人々を支援することができた。支援は緊急援助用の食糧や着物、テント、安全な飲料水などなどを準備することから、春の種まきの季節に使う種まき用の種子や肥料の配給、家畜の再補充といったものに及んでいる。これらに加えて長期的な発展に向けた作業も、ともに作業に携わる提携団体とともにアフガニスタンの西部地域で続けてきた。そうした事業は地元経済を強化することを目的にし、職業訓練、ヘルスワーカーの育成、病院の建設、小規模のローン提供、種子銀行、果実が取れる木の植林、灌漑作業や野菜作りの計画などである。我々はこうした長期的発展をねらった支援こそが、毎年のようにおこる食糧不足を解決すると信じている。

 

●人々はアメリカが進めている「テロに対する戦争(War on Terror)」から恩恵を受けてきたか?
ことをはっきりさせるために、国際社会がアフガニスタンに介入した理由をオサマ・ビン・ラデインとアルカイダのメンバーを捕まえることとする。仮にアフガニスタンの人々が恩恵を受けてきたとするならば、それはテロに対する戦争の副産物である。テロに対する戦争はその目的を達成されてこなかった。達成されたことはタリバンを政権から除去し、暫定政権(きわめて脆弱だが)を作り上げたことである。アフガン人の間には本当の希望の感触とでもいうべきものが広がっている。彼らは長い間そうした希望を持つことができなかった。その希望とは20年以上の流血と治安の崩壊の後に、平和を維持して統一国家を建設する、人々の安全な生活を守り、生きることを保障できるような国家を建設するという希望だ。

 


●クリスチャン・エイドは現在どのような計画に取り組んでいるのか?

今現在、我々は食糧危機にとりくみ、どれだけの食料が不足することになるのか試算し、他の援助団体がどんな支援をし、我々はどのようなことを担当するべきなのか検討している。
昨年冬から春にかけておこなった緊急援助計画に続いて、クリスチャン・エイドは地元の提携団体とともに、ゴール州やバドギス州といった遠隔地の地方のコミュニティを支援するために「持続可能な地方の生計支援計画(Sustainable Rural Livelihoods programme)」を進め、初期段階に入っている。この計画は2年間続く予定で、ほとんどあらゆる領域でコミュニティの発展を支援する。この計画は道路の改善から農業や水源、保健ら教育といった範囲に及んでいる。この計画は2000年から2001年にかけてゴール州のいくつかの地方で行われた共同計画をモデルにしており、その時はクリスチャン・エイドが計画を主導して成果を上げることができた。今年末には同様の方法を用い、ファリャブ州の僻地の地方で農業生産を改善する新しい計画が始められる。こうした全ての事業はクリスチャン・エイドとアフガン人のNGO、地元コミュニティ、そしてEUやその他ドナー団体が提携して行われる。
加えてWFP、地元の団体と提携して資金作り計画のための食糧支援を行っている。この資金作り計画は状況が深刻なアフガン人が道路建設や灌漑用ダム、その他のコミュニティや彼ら自身にとって価値のある事業で働くことによって、冬が来る前に食料を手に入れるだけの稼ぎを得ることを主眼にしている。

 

●まもなく冬となるが、状況はどうなるか?
種や農耕用の家畜を手に入れることができた農民、つまり春に作付けできた農民達はこの収穫期にそれなりの恩恵をこうむることになるだろう。しかし食料備蓄や家畜の量は現在でもきわめて少ないものとなっている。多くの人々はまく種や、農作業用の家畜が不足していたために、この春に作付けができなかった。作付けができなかった彼ら農民と、何万という国外・国内から故郷に戻った難民は収穫するべき作物など無い。再びWFPは600万人が最低でも来年まで国際的な食糧援助に依存し続けると計算しなければならない。

 

●クリスチャン・エイドの持っている長期的計画としてはどのようなものがあるのか?
クリスチャン・エイドは地方のコミュニティが持続的に発展できるように、アフガン人のパートナー達と一緒になって支援活動を行ってきた。支援はアフガン西部の地方に焦点を絞って続けられることになる予定だ。クリスチャン・エイドはまた隣国のタジキスタンでも同様の被害を受けているコミュニティで活動を行うつもりだ。旱魃が続いたり、紛争が再発するといった、支援が必要となるような状況になれば、クリスチャン・エイドはパスタンやアフガニスタンといった国々で追加の緊急計画を支援する準備を行う。
クリスチャン・エイドはパートナー(地元の:訳者注)の力を強化する、特にや国家建設の広くて深い活動を行う中で彼ら地元パートナー団体の能力開発を手助けし、NGOを支援することも目的としている。もっと一般的に言えば、NGOを支援して、彼らが政策を引き受けたり、活動を主導できるようになることを促進するということだ。加えてクリスチャン・エイドは地元のコミュニティを強化し、貧しい人々の声やニーズが政策決定の過程を左右する重要な要素となるようにすることも目的と捉えている。

 

●クリスチャン・エイドはカブールの新政権をどのように評価しているのか?
我々は二つの活動を通して支援したいと考えている。一つは我々が国際社会の中で支援を呼びかけるということ、、もう一つはパートナーの活動、つまり平和の構築と復興という目的に向けた活動を支援する、という活動である。
しかし新政府はいまだに不安定である。カブールの権力をめぐって争う多くの人々がいて、全土に散らばるたくさんの権力者はまだ大統領、カルザイの暫定政権に完全に忠誠を誓っているわけではない。暫定政権が手にしている権力は、政権が他の全ての指導者達、全アフガン人に支援を命じることができるようになるまで、か弱いものであり続けるだろう。そのような権力を獲得するために政府は委任統治を果たさなければならず、国際社会と国際的な人道団体が行う継続的で全面的な支援はこうした面で(訳注:政権の統治能力を左右する)一つの要素となる。国際社会は二度と再びアフガニスタンに背を向けるようなことがあってはならない。
栄誉ある資金提供の約束が果たされれば、新政権はそれを資金源にして基礎的な公共サービス(保健、教育といった)の提供や、アフガン国軍や警察を通した治安の安定を確立し、崩壊しているインフラ(輸送網といった)を再建する基金に振り向けることができよう。このような安定した体制とさまざまな進歩が実現すれば、数十年にわたる戦争に疲れ切ったアフガニスタンの人々が政府の再建に忠誠を誓うことになる機会は増えよう。しかし、仮に、政府への支援が不足して、こうしたアフガン人の政府への忠誠が失われるようなことになったら、その時はアフガニスタンは、新しい暴力の渦中にらせんを描きながら落ち込んで行く危険が、ずっと高くなるであろう。


 

このページのトップへ  Top pageへ