「個人情報保護法案」の廃案を求める声明
私たちユニオン出版ネットワーク(略称:出版ネッツ)は、出版界ではたらくフリーランスの労働組合です。出版界でのフリーランスの諸権利擁護や言論・表現の自由を守る運動をつづけています。
今般、国会に上程された「個人情報保護法案」は、メディア規制や市民活動の規制を企図するものとして、出版に働くフリーランスとしてはもとより、主権者としても看過できない内容を含んでいることから、私たちは重大な危機感を抱いています。
法案は民間のすべての個人情報取扱業者に「適正取得」などの基本5原則の履行を求め、一定規模の事業者は個人情報の取得時に「本人通知」などの義務規定を課され、かつ「主務大臣」は事業者に報告の徴収、助言を行うことができ、違反があれば勧告・命令を行い、これに従わなければ6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処することができるという内容になっています。しかしながら、私たちフリーランスは取材活動時において個人情報を取り扱うのはごく日常のことであり、その取得方法などが規制されることになれば、取材活動において重大な支障が生じることになります。さらには取材源・情報源の秘匿が蔑ろにされ、公人や行政機関の不正を訴えた「内部告発者」までが罪に問われることになってしまいかねません。この法案によって、報道の重要な役目である公権力の監視が制限されるであろうことは火を見るよりも明らかです。
それ以上に問題なのは、「主務官庁」をもたない報道機関にあっては「報道の用に供する目的」であるか否かに疑念があれば内閣府国民生活局、最終的には内閣府の長である内閣総理大臣が判断すると法案立案者が明言していることです。報道目的ではないと国が判断すれば、新聞社、出版社、フリーランスの別なく、義務規定を適用され、国からの「情報開示」請求などを拒めば懲役・罰金を科されることになり、まさに国家による言論・報道介入法とも言うべき法案であることが露わになりました。この法律のもとでは言論・表現の自由は奪われてしまい、批判的意見の封殺が行われかねません。
さらに、法案立案者は「この法律は広く薄くを願っている」「ザルといってもいい」(内閣官房内政審議室個人情報保護担当室・藤井昭夫室長)と説明しています。私たちはこのような不自然な説明をせざるを得ない法律をつくろうとする意図をいぶかしく思わざるを得ません。そもそも最大の個人情報の取扱者は公的機関であるにもかかわらず、現行「行政機関個人情報保護法」の見直しがないまま、公的機関の持っている情報の規制を後回しにしていることこそが大問題です。
私たちは不純な動機を隠して大義名分を掲げる個人情報保護法案への断固とした反対を表明し、廃案を求めるものです。
2001年5月15日
ユニオン出版ネットワーク執行委員会