ユニオン出版ネットワーク
《出版ネッツ》
第23回定期大会 議案
2006年7月1日 出版労連会議室
はじめに
・世の中の動き
小泉構造改革のもとで、弱者が切り捨てられる社会になっています。新自由主義的な考えによって、弱肉強食的世相、格差拡大が強まるなか、職場では成果主義賃金、裁量労働により人間関係の希薄化が進み、メンタルヘルスの問題も深刻になっています。
この一年は押してくる巨大な圧力に対して、精一杯押し返す運動をしていたといえます。日本国憲法と、その精神にもとづき制定された教育基本法を改悪する動きがありました。愛国心を教育基本法に入れて、国家に忠実な人づくりをめざす法案が国会にかけられました。平和と民主主義が守られなければ、言論・表現・出版の自由は危うくなるのは明らかです。平和憲法の精神を守ろうと、出版ネッツは出版労連、MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)などと運動に参加してきました。
・言論・表現の自由抑圧とそれにたいするたたかい
大手消費者金融から、1億1千万円という高額な名誉毀損訴訟を起こされたライターが不当な提訴への謝罪と償いを求めた反撃訴訟で係争中です。スキャンダル告発を続けてきた小出版の社長が名誉毀損で逮捕・拘留されるという異常な事態も起きています。
また、国際組織犯罪取り締まりを口実に、市民団体、労働組合の活動を監視・弾圧することが可能な共謀罪の三回目の上程がされました。これは言論・表現活動にも大きな支障となるものです。ネッツ組合員をはじめとするフリーランスの多彩な活動がさまざまな市民運動と呼応して、反対運動がひろがりました。
・出版界の動向
出版業界の動きではひきつづき、売上減がつづき、ことに週刊誌の低迷がきわだっています。
デジタル化の流れはとどまるところをしらず、コストダウンと時間短縮が求められ、労働強化につながっています。また、そうした環境の悪化による出版物の質の低下の懸念もあります。
新書、文庫本の新規参入など出版点数は多く、少数品生産の傾向は続き、印税率も抑えられています。フリーランスの原稿料・料金・単価は上がるどころか下がる一方であり、大変きびしい実態です。
・増える非正規、業務請負
企業のリストラや労働分野の規制緩和が進む中で正社員の割合が少なくなり、契約、派遣といった非正規労働者が3分の1を占めるまでになっています。それを背景にいわゆる「ワーキングプア」と呼ばれる、働いても生活保護水準の所得に及ばない低所得層が賃金労働者の18パーセントに達するという状況です。コストのかからない、労災、労働基準法の適用もない業務請負、個人請負も問題化しています。
・働く条件・生活・社会的地位の向上を めざして
戦後民主主義の担い手であり、人権、労働条件改善のたたかいの推進役を担ってきた労働組合は、組織率低下、高齢化という課題はあるものの、その役割は大きくなっています。
なかでも個人加盟の組合の動きはこれからの労働組合の将来を明るく照らすものです。出版労連の個人加盟組合、出版情報関連ユニオンが組織的にも伸びていること、出版ネッツもこの間約200名の組合員数を有し、出版界で唯一のフリーランスの労働組合として、その影響力を強めてきました。
料金、条件の改善の課題を広く社会に喚起させ、フリーランスや非正規労働者を含めた働く者の社会的保障の仕組みをつくっていく運動が、今求められています。
出版労連が今春闘で掲げた「均等待遇」の要求を実質的なものにしていくことに努めるとともに、メディアの現状、フリーランスの役割と地位向上を勘案して、広くメディア全体のフリーランスの組織を展望することも求められています。その核になるネッツの運動と組織拡大が期待されるところです。
第一章 2006年度の活動報告
1.運営
(1)執行委員会・事務局
●フリーランスの地位と条件向上、職能アップを応援
●出版ネッツの仲間を増やそう。当面300名を突破しよう
●組織の簡素化・効率化でいきいき活動
をテーマに掲げて活動しました。
組織の実態に合わせた組織再編と規約改正の議論を進めてきました。来年度からの執行委員会と運営委員会(支部)の関係への過渡的試みとして執行委員会の開催を減らし、関東運営委員会との合同会議も行いました。また執行委員会の前に三役の話し合いの場を随時設けました。
日常的なルーティンワークでは、専従者がいないなか、複数の委員で事務を行いました。そのようななかで、組合員管理の面でデータ管理に関し、行き違いが起きたこともありました。また、住所、電話などデータの更新にあたり組合員からの申告システムの周知徹底を行いました。今後の組織拡大を展望すると、書記局としての機能強化が求められています。
(2)職能部会
一昨年、好評だった編集部会、校正部会共催のDTP講座にひきつづき、校正部会企画で「編集者、校正者のためのDTP講座パートU」をテーマに寄り合いを開きました(11月)。校正者クラブからも多数参加して、期待の大きさも感じられます。校正部会レポートも4月から発行されはじめ、職能部会活動らしい取り組みが進んでいます。
また、寄り合いの企画から始まった「リサーチ講座」は9月、10月、11月、3月の4回開かれ、ライター、執筆関係の参加者に好評で、継続的な講座として定着しつつあります。執筆部会主催ではなく、有志による企画ですが、職能アップの取り組みとして、執筆部会の核となることが期待されます。
料金問題の検討や職能ごとの課題、スキルアップ、懇談、トラブルを前段階で回避するための相談のほか、本づくりや印刷物制作の流れが変化しているなか、従来の職能を超えて、情報交換し、問題点など検討し合う場をつくる必要があります。職能部会の新たな形、取り組みを考える時期にきているといえます。
(3)運営委員会
関東運営委員会は月一回のミーティングと「寄り合い」を定例的に開催しました。もともと職能部会世話人が運営委員として関東運営委員会を構成していましたが、2006年度は、関東運営委員会の事務局が主体となり、一般組合員はだれでも参加できるミーティングという形で運営しました。新入組合員が組合になじむのに格好の場で、ミニ寄り合いで互いの仕事を知り合える場として活性化してきました。しかし、ミーティングに運営委員の参加が少なく、執行委員が支えている面もあり、メンバーが固定化している中で、これからの運営を模索している状況です。
寄り合いは、組合外にも広く呼びかけ、20から30名の参加者を集めて成功しています。特に大塚英志さんの「憲法力をつける」は時宜にあった企画で、出版労連の他の組合からも参加があり、その後、大塚さんを講師として呼びたい、という問い合わせもありました。
年末納会、新年会、花見を開くなど交流の場を設けました。また中央メーデーに参加しました。これだけは必ず参加するという“固定客”がいます。
関西運営委員会は、定例の運営委員会と関西フェスタ、新年名刺交換会、出版技術講座を開催しました。新年会は組合員外の参加も多く、人脈づくりに一役買っています。3月の出版技術講座「DTPをスマートに続編」(大阪地協と共催)には補講も含め40人が参加。また、5月の関西フェスタは恒例の組合員の仕事展示、コラボレーション制作品展示のほか、工場見学・講座と多彩になっています。同時開催の出版研究集会関西版にも他単組や業界から多数の参加がありました。関西のメディア業界での存在感は抜群で、仕事起こしのみならず、職能向上にも力を入れています。
(4)自主活動
関東では有志による式根島キャンプ、校正部会カメラ散歩、和紙の里小川町ウオーク、出版フットサル大会出場。関西では、「出版フリーランス九条の会」の活動が進み、関東の組合員もハガキ作成で参加したほか、職能向上の講座「インデザイン講習会」を毎月継続しています。
2.運動
(1)取り組んだ課題
料金プロジェクトの活動を引き継ぎ、料金・労働環境委員会に名称を改め、引き続き料金問題などに取り組みました。05年度版元アンケート調査の結果集計を「forum」に連載する、労連の春闘決起集会で資料として配布するなど普及に努め、労連の春闘方針の柱に「均等待遇」が掲げられるという形で反映されるなど一定の成果がありました。フリーランスの声も添えて冊子化する取り組みをしました。ホームページでも一般に向け、料金アンケートをしています。
料金調査・報告に加えて、広く一般組合員の料金問題への関心を喚起する取り組みが求められます。また、新たな労働法制の動きにも関心を払い、ILO学習会にも参加しました。
言論、表現の自由に対する圧力が強まるなか、市民運動・労働組合の活動を制限し、自由な言論活動を封殺する懸念がある共謀罪、つまり組織的犯罪処罰法の改正が三度国会に上程されました。ネッツとして市民団体の署名に賛同する、共謀罪に反対する表現者たちの会の運動を支援する、そして、委員会での強行採決の危険が強まった5月18日には執行委員会として反対声明を発表するなど積極的に反対の取り組みを行いました。
平和と民主主義を守る運動では、労連が力を入れてきた平和憲法と教育基本法を守る集会・デモに参加したほか、沿線別駅頭宣伝に多くの組合員が参加しました。
(2)広報活動
1)組合内への情報提供・情報交換
おもに、機関紙「forum」とメーリングリストです。
「forum」は、「forum」編集部メーリングリスト、編集会議で、企画、台割を吟味し、定期発行を維持できました。
編集部員は関東と関西から募り、年3回は関西でデスク、組版を担当しました。内容もさらに充実しました。担当デスク、組版は若干の手当てを支払っています。関西への発送は、個別封入はせず一括して送り、作業の分担をはかりました。
メーリングリストには約70%の組合員が参加しています。参加者は増え、活発な情報交換が行われ、東西の交流にも役立っています。
2)組合外に向けた広報活動
ネッツの存在を広くアピールし、フリーランスの問題を知ってもらい、組合員を増やすため、広報活動を行ないました。
「フリーランサーズガイド2006」全国版を4000部制作しました。組合員相互の交流、仕事確保の重要なツールとして定着してきたものの、担当者の負担、出稿者確保の困難など問題も出ており、次年度は、これまでの蓄積を踏まえて新たな形で制作することが求められています。外部に向けた広報紙「Let’s Nets」制作はできませんでした。編集にかける時間と労力を考えて、今後「forum」の記事を組合外向けに編集することも検討するといいでしょう。
ホームページに、ネッツの活動を紹介しています。寄り合いの案内をアップし、広く一般参加者を募ったり、料金アンケートを載せるなど活用しました。またホームページから加入申し込みができるようになっています。
(3)組織拡大
出版界に働く非典型労働者が増えている状況のなか、フリーランスの組織拡大は重要です。
11月に護国寺、5月に本郷三丁目で労連の組織争議対策部、地協と一緒に個人加盟組合員拡大のため、フラワービラ配りに参加しました。単組への直接要請として小学館労組に協力要請、岩波労組に資料を手渡ししたほか、北部地協総会にはじめて参加し、協力を要請するなど地協への取り組みも始まっています。
組合員はトータル 名、関東 名、関西 名で、前年比 増です。
加入のきっかけは、フェスタ、寄り合いなどイベントに参加して、メンバー紹介、トラブル相談、他単組から、インターネットを通してです。300名をめざそうという目標にはまだ遠いのですが、200名の過去最高突破は目前です。
(4)組合員の教育
基本的な組合員教育は、東西の運営委員会を基礎にガイダンスという形で行ないました。
参加の呼びかけをしましたが、月1回の時間に合わせるのが難しい組合員もいます。昼間のガイダンスも考えることが必要でしょう。
(5)職能向上
関西では、確定申告講座、出版技術講座(大阪地協と共催)を開きました。
関東ではおもに寄り合いで学習会を開きました。確定申告相談会、ライターのためのリサーチ講座、編集者・校正者のためのDTP講座のほか、出版界、とくに自主出版の事情を「ミニ寄り合い」で聞きました。
情報成果物として出版物の作成委託が新たに対象となった改正下請法は、一定浸透していますが、運用、周知は十分ではありません。トラブル回避、公正なルール確立のうえからも教育、普及が必要です。
(6)トラブル対策など
トラブル対策は出版労連本部の組織・争議対策部が担当する形、ネッツ担当者と労連本部で協力して担当する形、またネッツ内部で担当する形で継続しています。トラブルは発生すると1回の相談では終わらず時間もかかるので、トラブル担当者の負担も大きいものです。
トラブルにあってからの相談を受けるよりも予防第一と、まず、「forum」で対策の連載「あなたのリスクマネジメントは大丈夫?」を継続しています。連載終了後は対策集にまとめて配布予定です。
相談件数・内容は別紙の通り。
(7)仕事おこし
東京合同労組労働者供給事業部に専門部員を送り、請負事業、派遣事業のほか、企画事業(企画ネット)を検討中ですが、実際はあまり動いていません。
関西フェスタでは、作品を展示するなど従来のスタイルに加えて映像を使った紹介、コラボレーションによる大型本制作・展示など、視覚に訴える工夫もありました。
また、MLを通して仕事紹介もあったほか、フリーランサーズガイドを通した仕事紹介や共同もありましたが、実態は把握できていません。今後の課題です。
(8)出版労連・対外活動
多くの専門部、懇談会に対するメンバー、スタッフの派遣要請には全面的に応えています。
出版研究集会での企画、出版レポート編集、など出版対策部での組合員の活躍は特記すべきものでした。
出版研究集会(東京)でフリーランスの分科会を共催しました。関西で初めての出版研究集会では大阪・京都地協と協力し、企画・宣伝に力を発揮しました。教宣部に人を派遣し、ネッツ発の原稿を「労連新聞」に提供しています。また「出版レポート」に定期的に寄稿しています。
憲法、教育基本法を守る課題ではMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)や出版労連の諸活動に参加しました。また、共謀罪反対でMIC、出版労連に働きかけて運動を推進しました。
出版労連の提起する争議支援についてはML上の「労連だより」で情報を発信し、カンパや有志による行動への参加を行ないました。
第二章 2007年度の活動方針
規約改正に伴って、新しい組織編成のもと、次の活動を行ないます。この一年かけて組織再編にかかわる規約の検証をおこなっていきます。表記は改正後のもので統一しました。
1.運営
組合員
基本的に組合員は、東西の支部に所属して活動します。新入組合員は、加入申込書の受領、諸費納入をもって加入とします。加入時のガイダンスを必須とします。
本部
(1)執行委員会
執行委員会は改正された規約に則って大会で採択された方針を執行します。
東西の支部は組合員の要求に応えた活動を推進し、執行委員会に活動を報告し、執行委員会は東西支部の活動を掌握します。また執行委員会は労連との意見交換や調整を行ないます。
規約改正にともなう組織のあり方について見直しも含め、組合員に提起します。
(2)専門部
料金・労働環境委員会(料金プロジェクト)などのネッツ全体に関わる課題、また、20周年記念行事のための実行委員会など必要に応じて設置します。20周年を記念してネッツとして知的資産を運用できるよう、商業出版の道も模索します。
(3)書記局
書記長と書記次長を中心に担当執行委員で書記局を設け、組合業務を行ないます。
(4)日常業務の強化
組合員や組合費管理、事務作業を行なう書記局体制を整えます。事務の簡素化をはかるとともに、引き続き手当てをつけて要員を置くようにします。
支部
(1)支部
支部は支部委員会を中心に東西の実情に即して、組合員のボトムアップを重視して活動します。支部総会は組合員の総意を集める場として開きます。新入組合員のガイダンスは支部で行ないます。
(2)職能部会・小委員会
職能を基礎にした職能部会のほか、各種イベントや料金問題などの課題ごとに実行委員会や小委員会で、広く人材と英知を結集して取り組みます。
2.運動
(1)課題への取り組み
東西の支部を基礎に次の活動を行ないます。
・フリーランスの地位向上、職能向上の活動を積極的に行ないます。
・フリーランスの料金の底上げと相場形成、労働条件改善のための料金・労働環境委員会を継続し、組合内外へ料金の問題をはたらきかけ、労働法制の学習会を行います。
・フリーランスの仕事上のトラブルの回避や、公正な取引関係のために改正下請法の周知や関連した活動を継続します。
・言論・制作・著作物に関する権利を守る運動を進めます。
・憲法の精神に反する動きに抗し、平和と民主主義と言論・表現の自由、出版文化を守り育てるための行動を適宜実行します。
(2)広報活動
組合員および出版労連加盟組合に配布している機関誌「forum」を軸として、外部へ向けた広報紙、リーフレットなど紙媒体でのネッツの知名度アップを引き続き追求します。ホームページやメーリングリストなど、電子媒体も活用します。「フリーランサーズガイド」は発行に向けてよりよい方法を検討します。
広報媒体を積極的に企画・立案し、実行します。
(3)組織拡大
組合員の拡大については、07年1月が20周年という節目であり。300名以上の規模に到達することを目標にします。出版労連をはじめ、外に向けた広報活動を展開して、フリーランスの地位の向上を訴え、ネッツの知名度を高めます。組合員の周りでのネッツへの加入促進活動を積極的に呼びかけます。
(4)組合員教育
引き続きガイダンスで、新組合員の基礎的教育を行うとともに、「forum」の連載などをもとに「ネッツの基礎知識」(仮題)を冊子にまとめます。
(5)職能向上、調査、研究
学習活動を強化します。出版労連とも連携して職能アップのための講座を開くことも検討します。フリーランスに役立つ法律など学習します。
料金問題、契約・著作権問題については、料金・労働環境委員会を中心に議論を進め、アンケート調査、情報の発信・受信を行います。
(6)トラブル対策など
トラブルについては本部・組織争議対策部の対応を基礎に、協力して取り組みます。トラブル解決のための加入者は、トラブル解決後も加入継続と積極的な活動参加を働きかけます。「forum」連載の「リスクマネジメント」の記事をまとめ、トラブル予防の冊子をつくります。
(7)仕事おこし
互いが仕事を知り合う場づくりなどを通して仕事起こしに取り組みます。「フリーランサーズガイド」、MLを通した仕事紹介、仕事おこしについて、成果を集め、広報します。また、労働者供給事業部の紹介をし、仕事の機会を増やします。
(8)出版労連・対外活動
・各専門部、地協などの要請に応じて、検討の上、組合員を派遣します。
・本部役員とネッツ役員との懇談を行ないます。
・同じ個人加盟ユニオンとして、出版情報関連ユニオンとの協力・協同関係を追求します。また、MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)加盟の他産業の個人加盟ユニオンとの友誼関係構築を模索します。出版関係の職能団体との意見交換を図ります。
・出版労連の提起する争議支援については応えていき、情報を発信します。
・労働者供給事業部に委員を派遣し、供給事業部を活性化させます。
以上