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第5回西陣会議の開催レポート
〜後継者に伝えるためにできること〜
2002年 10月25日 元西陣小学校にて
西陣プロジェクト

「後継者に伝えるためにできること」

10月25日、第5回目の西陣での会議を開催しました。急なご案内だったにも関わらず、10数名もの方々が参加してくださいました。
今回のテーマは、「後継者に伝えるためにできること」です。前回の「めいど いん じゃぱんにこだわる!」の続編として設定しました。

今回の参加者は、前回にも参加して下った方が多くきてくださり、前回よりも深い議論へと進み、さらに興味深い話を聞くことができました。


黒板

会議室の入り口 「やりたいひと」と「受け皿」の問題

現在の西陣織の産業においては、後継者がいない職人さんのところがほとんどです。このままでは、西陣の地域に根付いた仕事がなくなってしまいます。デジタル技術を使って、博物館などに残すという手段も進められているようですが、「それでは本当に残したことにはならないでしょう」という意見にみな納得している様子でした。

一方、芸術大学の方などが卒業制作などで着物づくりに取り組まれることもあるのですが、なかなかそれをする場所がありません。また、それを仕事にしたいと言っても、生計を立てられるだけの収入がないので、継がせられるところもありません。まだまだ、新しい芽は出ようとしているのですが、それを伸ばす土壌がないんです。

助成金の現状

新しく職人になろうとする若者への行政の助成金制度があります。金沢では、毎月20万円を3年間支給しているそうなのですが、京都では、数年前からなくなってしまったそうです。どうしてなのでしょう?
そこで、ある織屋の方がおっしゃってました。
行政の保護を受けてまでやることではない。(助成を受ける人が)100人いても100人続かない。そのうち2〜3人しか続かないなら、(行政がやる)値打ちがない」
たしかにその通りですね。

また、新商品の試作などの研究開発をするための助成金もあるそうです。でもそういったものは大体、単年度で成果をださなければならないため、なかなか形にはならないようです。4月に募集を始めて、5月に応募、6月に決定、7月か8月ごろから翌年3月までに作ってしまわなければなりません。それでは、販路開拓のための時間が十分にとれないため、そのまま倒れてしまうというのが現状のようです。
会議の様子2

買い手の欲しいものを売る

最近、高校生がインターネットで儲けているらしいです。それは、「高校生が、高校生の欲しがる物を売っているから。」消費者のニーズを十分に汲み取っているんですよね。西陣の織物も、外国に行けば値打ちがあるとも言われています。従来の帯以外にも、もっと他に生かす方法を見つけ出すひとがいます。たとえば、組みひもをベルト代わりに使うというようなこと。そういったところから、「新しい需要を生み出せるのではないか」という意見が出ました。
本来それはどのような立場のひとの役割なのでしょうか?

会議の様子2 インドの伝統染色技術でTシャツを

インドの染色家の方がつくられるTシャツをフェアトレードという手法で販売している「シナジーグリーン」という学生NPOの方のお話をお伺いしました。

そのインドの染色家の方は、ある「染色技術が途絶えてしまうから」と、従来ならサリーなどを染めるのに使っていた伝統的な技術でTシャツを染めることにしたそうです。

インドのサリーも、日本の着物と同じような状態で、あまり着る人はいなくなっているらしいのです。そこで、これからも若い人が着るというTシャツにターゲットを変えたというわけです。さらに、売るためにはデザインがよくなければなりません。デザイナーの人が若い人にうけるデザインを考えて、伝統の技術でTシャツを作って残せているとのことでした。

ものづくりは「技術」と「デザイン」と「市場」の三位一体で

でも、西陣の職人の方は、作ることしかわかりません。デザインは別の問題です。デザインのセンスや市場のことを分かっているのは織屋さんのはずですが、それがうまくかみあっていない現状があります。

イタリア北中部では、分業体制が進められているのですが、その分業を統括する「オルガナイザ」という存在がいるそうです。その1000社にものぼる「オルガナイザ」は全て組合に加入していて、市場情報や作り手の情報を入り口から出口まですべて把握することができるシステムになっているそうです。作り手と市場のことをよく理解した立場の方が情報を管理すること、これからの時代には不可欠な要素となるに違いありません。

会議室の入り口

そこで、西陣ではそういったリーダーをどうやって育成していくでしょうか?「こういう場でみんなに触発されて持ち帰る」ことで、「新しい挑戦になる」のではないかという嬉しい意見も聞かれました。また、「織屋どうしではなく、実際に作っている人どうしで交流してみは」という意見もありました。

こうして、作り手どうし意識を高める中で、新しいものづくりをする力が生み出せるのではないかと思われます。
次回は、新しいものづくりの事例について紹介しつつ、これからの西陣におけるものづくりのあり方を探りたいと思います。


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