【声明文】
声明および警告文

 防衛施設庁外関係行政当局 宛

(仮称)「辺野古の座り込みを守る弁護士の会」
 別紙のとおり

■声明および警告の趣旨

 本件ボーリング調査には、辺野古海域の豊かな自然を破壊し、未
来世代に引き継ぐべき世界の財産を破壊する上、後述するような違
法事由が存在し、これを強行することは違法無効な公務執行となる
ので、実施してはならない。
 防衛施設庁のボーリング調査を強行を我々は許さず、あらゆる法
的手段をもって対抗することを警告する。防衛施設庁がボーリング
調査強行に伴い、座り込みを続ける人々の生命や身体、自由を侵害
し、あるいは脅かす行動に出るならば刑事告訴なども含めてあらゆ
る対抗手段を講じるであろうことを警告する。

■声明および警告の理由

 防衛施設庁は、沖縄国際大学へのヘリ墜落事故を奇貨とし、普天
間代替施設(以下「代替施設」という)の護岸構造を検討すると称
し、その現地技術調査の一環として、本件ボーリング調査を強行し
ようとしている。ボーリング調査は、代替施設を建設しなければ不
要であるし、逆に、ボーリング調査を実施しなければ護岸工事に着
工できず、埋立工法となる代替施設の建設にも着工できないのであ
って、代替施設建設と不可分一体の関係にある。すなわち、ボーリ
ング調査も、護岸工事と同じく、代替施設建設の一部にほかならな
い。このことは、ボーリング調査が、護岸の建設される部分のみな
らず、代替施設の滑走路予定地でも実施されることからも明白であ
る。のみならず、ボーリング調査は、もろいサンゴの岩床に63カ
所ものボーリングを行うものであり、まさに「調査」の名を借りた
事実上の代替施設建設工事の強行でしかない。
 そもそも辺野古に新たな基地建設を作ることは沖縄ジュゴンの生
息に象徴される豊かな自然環境を破壊することであり未来世代に伝
える大切な国際的財産を失うことになり許されない。また、沖縄の
人々の願いは基地のたらい回しではなく、即時の縮小、撤退である。
普天間基地の即時閉鎖、無条件返還こそが平和を求め、沖縄の豊か
な環境を求める人々の願いである。我々、「辺野古の座り込みを守
る弁護士の会」は辺野古に座り込む勇気ある人々を心より応援する。
防衛施設庁のボーリング調査を強行を我々は許さず、あらゆる法的
手段をもって対抗する決意である。また、防衛施設庁がボーリング
調査強行に伴い、座り込みを続ける人々の生命や身体、自由を脅か
す行動に出るならば刑事告訴なども含めてあらゆる対抗手段を講じ
るであろうことを警告する。

■法的観点からみても、本件ボーリング調査には、以下のような明
白かつ重大な違法事由が多々存在する。すなわち、

1.権限違法

  代替施設は、米軍供用部分と民間供用部分から成る軍民共用空
港であるが、この民間供用部分も防衛庁設置法5条19号に基づき、
防衛施設庁が建設するものとされており、本件ボーリング調査及び
護岸工事についても、防衛施設庁は同号に基づき実施しようとして
いる。しかし、同号は、防衛施設庁の所掌事務の範囲を定めた組織
規範にすぎず、防衛施設庁が本件基地を建設する法的根拠にはなり
えず、同号を根拠として本件基地を建設することは、防衛施設庁の
権限外行為として、違法無効であることは明らかである。それゆえ、
代替施設建設のためのボーリング調査及び護岸工事についても、防
衛施設庁は同号を根拠に実施しようとしているが、これも違法無効
というほかはない。

 2.空港整備法違反

 本件基地のうちの民間供用部分すなわち民間空港は、空港整備法
に基づき同法の定める要件及び手続に従って建設される必要がある。
しかるに、上記のように、民間供用部分も空港整備法によらずに、
防衛庁設置法によって建設されようとしている。これは空港整備法、
特に、その1条、2条3号、5条及び9条などに違反するものであ
る。それゆえ、ボーリング調査及び護岸工事についても、民間供用
部分の建設のためにもなされる以上、空港整備法所定の要件及び手
続に従ってなされる必要があるのに、上記のように、防衛庁設置法
に基づき実施されようとしており、空港整備法に違反するものとし
て違法無効というほかはない。

 3.環境影響評価法及び県環境影響評価条例違反

 本件ボーリング調査は、代替施設建設の本体工事の一部あるにも
拘わらず、その環境影響評価手続の終了前に、フライング的に見切
り着工されようとしている。これは、環境影響評価手続終了前の事
業の先行実施を禁止する31条違反に違反する。環境影響評価法は
強行法規であり、その手続違反は違法無効事由になる。のみならず、
ボーリング調査は同法の対象事業の一部である以上、ボーリング調
査を方法書の手続終了以前に実施することは、同法5条違反となる。
同法3条は、国に対し、「事業の実施前における環境影響評価の重
要性を深く認識して、この法律の規定による環境影響評価その他の
手続が適切かつ円滑に行われ、事業の実施による環境への負荷をで
きる限り回避し、又は低減することその他の環境の保全についての
配慮が適正になされるように努めなければならない」と定めている。
国による環境影響評価終了前のボーリング調査の実施は同条にも反
する。更に、ボーリング調査に基づく護岸工事は、15ヘクタール
以上の面積を埋め立てる事業であって、それ自体だけでも沖縄県環
境影響評価条例の対象事業であることは明白である。しかしながら、
これに関する手続きは全く履践されておらず、護岸工事の前段階と
して、護岸工事のためにも実施されるボーリング調査は、明確な同
条例違反である。

 4.文化財保護法違反

 同法91条1項1号は、「天然記念物の現状を変更し、又はその
保存に影響を及ぼす行為をしようとするとき」は、「関係各省各庁
の長は、あらかじめ、文部科学大臣を通じ文化庁長官の同意を求め
なければならない」と規定している。沖縄ジュゴンは天然記念物で
あるが、ボーリング調査及び護岸工事が天然記念物であるジュゴン
の現状を変更し、その保存に影響を及ぼす行為であること明らかで
ある。しかるに、ボーリング調査及び護岸工事について、文化庁長
官の同意は得られておらず、同号に違反するものとして違法無効と
いうほかはない。

 以上のように、本件ボーリング調査の実施が違法無効なものであ
る以上、その強行実施は違法無効な公務執行であるから、これを実
施してはならいことは明々白々である。
 それゆえ、本件ボーリング調査を強行実施した場合には、関係当
局および関係個人の責任を生ぜしめるのみならず、強行実施によっ
て生じた混乱についても全責任を免れないことを、ここに声明とし
て公表し、重大なる懸念をもって警告を発する。


 【日本環境法律家連盟の活動】
 沖縄県は日本の国土の0.6%を占めるにすぎませんが在日米軍専
用施設面積の約75%に及ぶ広大な面積の米軍基地が存在していま
す。
 1995年9月4日の米兵による少女暴行事件をきっかけに沖縄県民の
基地への批判が強くなる中、日米両政府はその年11月に「沖縄に関
する特別行動委員会」、通称SACO(the Special Action Committee
on Okinawa)を発足させ、1995年12月に最終報告(以後SACO合意と
いう)を発表しました。米政府は代替施設の提供を条件に普天間基
地の返還を約束しました。この代替施設が辺野古沖米軍基地です。
このような案に対して沖縄県の人々は基地問題を県内のでのたらい
回しによる解決を拒否して今日まで戦っています。また、辺野古沖
はジュゴンに象徴される豊かな自然環境が残っていることから多く
の自然保護団体がジュゴンの保護を求めて基地建設に反対していま
す。
 日本環境法律家連盟では沖縄の平和と文化と自然を守るとの立場
から基地建設に反対 し、日米の自然保護団体及び米国環境派弁護
士と共同して国防総省を被告に訴訟を展開しています。

 連盟の活動については以下のHPをご覧ください

 日本環境法律家連盟 http://www.jelf-justice.org/
 自然の権利 http://homepage3.nifty.com/sizennokenri/


出典:nomorewar-ML