<米国の戦争に抗議し日本の戦争への荷担に反対する>

2001年10月 劣化ウラン研究会

 10月8日、米軍はついにアフガニスタン空爆を開始しました。
 9月11日に起きた米国での事件(いわゆる同時多発テロ)では、大勢の人々が犠牲となりました。このような行為は、人道に対する犯罪であり、どのような意味においても決して正当化されるものではありません。私たちは、この犯罪によって命を奪われた人々や、家族や愛する人を失った方たちの心情を察し、深く哀悼の意を表すと共に、このような悲劇がアフガニスタンをはじめ、イラク、ボスニアヘルツェゴビナ、コソボ、パレスチナなどで繰り返されてきたこと、そして国際社会はそのことを省みようとしなかったことを指摘しておきます。

 米国はこれに対する報復として、圧倒的な軍事力を投入し、犯人とされるオサマ・ビンラディンとアルカイダを「壊滅」するとしてますが、既に長年にわたり経済制裁下にあるアフガニスタンでは、数百万人の難民が飢えに苦しめられています。国連難民高等弁務官事務所は、戦争により食料支援が途絶えれば、この冬に650万人の難民が命を失う可能性があるとしています。
 テロへの国際的な反撃と言いつつ、数百万人の人々を死の淵に追いやる米国のやり方は、国家の名のもとに行われる大規模なテロ攻撃に他なりません。
 イラクでは、1991年の湾岸戦争で15万人から30万人の人々が犠牲になり、また戦後10年以上も続いている経済制裁により、150万人の子どもたちが死に追い込まれました。劣化ウラン弾の使用により子どもたちに白血病などが多発していますが、医薬品さえもほとんど届くことなく、命を奪われています。

 アフガニスタンでは空爆が開始されたことで、既に多くの市民が犠牲となっています。
 米国は「軍事目標だけを狙った」「アフガニスタン市民は敵ではない」などと主張していますが、実態は、地雷除去のためのNGO事務所に爆弾を投下し、スタッフ多数を死傷させました。タリバン側は民間人が多数巻き込まれて死んでいると非難しています。また、国際赤十字の食糧倉庫を爆撃し、貯蔵されていた支援食糧もろとも破壊しています。
 さらに、地雷原の真ん中であろうとおかまいなく支援食糧を投下しているため、場所によっては、子どもや一般市民が無防備に地雷原に足を踏み入れてしまう可能性を、NGOの地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)などが指摘し批判しています。

 湾岸戦争のイラクや、ボスニアヘルツェゴビナ紛争・コソボ紛争への武力介入による罪なき市民の犠牲者たちの数から考えても、今後どれほどのアフガニスタン市民が犠牲になるかははかりしれません。

 そして、懸念されることとして、米軍はパキスタン国境付近に展開しているアフガニスタンのタリバン軍戦車部隊など地上部隊を攻撃し始めていると報じられています。  過去の米軍あるいは米軍を機軸とする連合軍の戦闘では、繰り返し使われてきたのが劣化ウラン弾です。
 ウラン238を主成分とするこの劣化ウラン弾は、湾岸戦争で310トン、ボスニアヘルツェゴビナ紛争やコソボ紛争で11トンが使われたと推定されていますが、その結果として重大な健康被害、環境汚染が引き起こされ、現地住民、連合軍兵士に大きな犠牲が出ています。
 米軍の標準装備となっている劣化ウラン弾は、特に戦車や地下施設などへの攻撃に多用されています。
 湾岸戦争では、イラクの戦車に対する地上軍の砲撃に使われ、イラク軍の戦車の砲弾が届く前に破壊することが出来ることから「友軍を敵の攻撃から守る有効な武器」として広く使われました。また、コソボ紛争ではユーゴ連邦軍の戦車に対して、主に航空攻撃用として使われ、30ミリ機関砲弾で戦車を破壊できる「高性能兵器」として多用されました。
 いずれも、破壊された戦車は瞬時に炎上し、内部は摂氏3000度にも達する高温で焼き尽くされました。そのとき、劣化ウランの約70%は微粉末となって拡散したと見られています。
 周辺地域のみならず数十キロ離れた地点まで劣化ウランの塵が拡散していったのです。

 劣化ウランの不発弾は、それら地域にそのまま放置され、戦後住民の間に重大な放射線障害を引き起こしています。
 ウランそのものは危険な化学・放射性毒性をもっていますが、そのことが警告されないまま放置され、水、空気、食料を通じて被曝をしていきます。また、汚染された戦車の残骸などから、生計を立てるために屑鉄をあつめる人々、不発弾をおもちゃにして遊んでいる子ども、記念品として家に持ち帰る人も被曝しています。
 そのため、大変な被曝を引き起こしています。
 アフガニスタンでも空爆が繰り返される中で、劣化ウラン弾が使われていることは間違いないと思われます。また、今後地上戦闘が始まると地上軍により使われるだろうと思われます。

 国連人権小委員会において、劣化ウラン弾は核兵器、クラスター爆弾、気化爆弾などと並び、非人道的兵器として禁止決議が採択されています。
 今回の軍事作戦では、米軍は既にクラスター爆弾を使っています。また、核兵器さえも使用を否定しないと言う立場です。  劣化ウラン弾や核兵器を使っても実現しようとする「正義」とは何でしょうか。
 そのような「正義」は、20世紀、戦争と死の世紀で終わりにしなければなりません。
 劣化ウラン弾を使う米国に対して「強い支持」(小泉首相)を表明している日本も、非人道的兵器を使う「共犯」です。
 被爆国として、核の被害を拡大するようなことを断固拒否すべき日本が、一緒になってアフガニスタンへの「核の攻撃」を行おうとしているのです。
 日本は米軍への支援として、武器弾薬の輸送をも行えるような法改正を準備しています。武器弾薬の輸送が行われれば、劣化ウラン弾の輸送さえも日本が行うことになるでしょう。今回の武力行使への荷担は、まさしく戦争犯罪への「共犯」そのものです。

 私たちは要求します。

[以上]


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