ニュースレター第10号(2004/5)

<はじめに>

イラクに「人道復興支援」という名目で、陸上自衛隊が派遣されましたが、軍隊を送って「人道支援」などあり得ないし、派兵先のサマワもまた劣化ウランに汚染された地域であることが明らかになっています。
おりしも4月8日、今井紀明さん、高遠菜穂子さん、郡山総一郎さんの3名が米軍による虐殺のあったファルージャ近郊で現地抵抗勢力により身柄を拘束されました。直後に自衛隊の撤退を求める声明が発せられましたが、3名がイラクの人道支援やイラクの現状を伝えるために来ていたことを理解した抵抗勢力は3名を解放しました。
自衛隊派兵が本当の意味の人道支援を妨害していることが明白となった事件でした。

アサフ・ドラコビッチ氏講演会

(2004年4月12日・東京)
ウラニウム・メディカル・リサーチセンター

1.はじめに

私が日本に来るのは、これで2回目です。私はこの国を大変愛しています。この国に来て、一歩一歩歩くたびに1945年8月にこの国に何が起こったかを考えてとても悲しい気持ちになります。放射能兵器は核兵器の一部といっていいようです。ウランは核兵器の一部です。
しかし、私たちが今日話しているウランというのは核分裂を起こすウランではありません。というのは1945年広島で使われたウランは濃縮されたウラン235です。今日話すのは濃縮されていないウランと劣化ウランについてです。
これは近代の新しい兵器の戦争といえます。私は25年、ウランのリサーチにかかわっています。私は医者でありますけれど、同時に物理学者でもあります。
人類にとって最も有害な物質はプルトニウムです。これは超ウラン元素と呼ばれています。プルトニウムも劣化ウランもα線を出します。人間の体に入ったときに危険になります。
まず私が話を続ける前に、私を日本に呼んでくださった署名事務局に感謝しなければいけません。それから資金を送ってくださったキャンペーン事務局にも感謝いたします。
というのは、ウラニウム・メディカル・リサーチセンターは、ウラン兵器を使っている国々のブラックリストに載っております。たとえば、米国、カナダ、イギリスなどです。
皆さんにお見せしているUMRCのロゴですが、ラテン語で言葉が書いてあります。私はこのラテン語を自ら選びました。とても重要な意味があるからです。その意味するところは「一滴の水が岩をも砕く」という意味です。今、ここでもっているこのような集会が一滴の水です。
私たち人間の存在する環境には、放射能が存在しています。それはバックグランド放射能と呼ばれています。
チェルノブイリの事故では大変多量の放射能が放出され、白血病やガンや免疫不全症などを引き起こしました。これは全世界のカタストロフィーでした。私たちは、今でもこの影響を受けて苦しんでいるわけです。
でも、第一次湾岸戦争ではなんと350トン、350万kgのウランが使われてばらまかれました。このデータは政府から聞いていますので私自身は信じておりません。私のもっているデータでは100万kg、あるいは1000トンが使われたと思っております。
ボスニア、コソボ、バルカン戦争では少なく見積もっても、11トンが使われたと思っています。私たちが知っているのは、イタリアの兵士が大変重い病気になって戻り、少なくとも18人の人が白血病で死んでいるということです。

2.アフガニスタンとイラクの調査

アフガニスタンでは、私たちリサーチ・センターの推定で、ウランが1000トン使われました。去年の第二次湾岸戦争では1700トンが環境中に放出されました。
その意味は、このような有毒の放射能兵器が使われたところは人間の居住に適さないということです。しかしながら、何も起こらなかったかように無視されています。人々は、ガン、白血病、免疫不全症などの病気によって死んでいっています。
環境中の放射線量を測ると、ものすごく増大しています。
私たちUMRCは署名事務局(大阪に本拠を置く「アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局」のこと)の助けを得まして、アフガニスタン、イラクで調査をしてきました。私たちは、どの政府からも援助を受けておりません。
UMRCは専門家で構成されておりボランティアで活動をしております。
2002年の5月から6月にかけて調査隊をアフガニスタンに送りました。同じ年の9月にも、そして昨年(2003年)の6月にも送りました。アフガニスタンには計4回の調査団を派遣しています。しかし、WHO(世界保健機構)は何もこうした調査を行ないませんでした。国際原子力機関もこうした調査を行ないません。そして、アメリカ、イギリス、これらの兵器を使った政府もカナダ政府も、アフガニスタンに調査チームを送っておりません。
私たちがWHOに、彼らの調査チームを私たちと一緒にアフガニスタンに送ってくれと依頼しましたが、彼らは拒否しました。
どこでサンプルを採るか、という企画を寄せてくれれば行ってもいいと言っていましたが採取をする場所は爆弾が落ちた地点だと言うと、危険すぎるから行きたくないというのです。しかし、私たちのチームは行きました。そしてアフガニスタンの人々にとっても親切にされました。
次はイラクですが、昨年の9月と10月に二つのチームをイラクに送っています。まずやったのは、爆弾の落ちた場所の土と水の調査です。10都市で健康調査もいたしました。そして核種分析のためにスペクトル分析用のサンプルを100検体持って帰りました。

1.天然ウランとは

まず、天然ウランというのが何であるかを理解してもらいたいと思います。天然ウランは、ウラン238の割合が99.2%、ウラン235が0.7%そして、ウラン238とウラン235の比が137.88と決まっています。これが天然ウランです。これは物理化学的事実なので変わることはありません。
私たちの患者から出てきた劣化ウランの破片を見てみると、ウラン235がちょっと減っているのがわかりました。天然ウランでは0.7%のウラン235が、劣化ウランでは0.2%にまで減っています。核兵器あるいは原発の燃料をつくるために、ウラン235を濃縮した残りカスだからです。
帰還した兵士たちの尿サンプルの数値は、それが劣化ウランであることを示しています。
この結果を公表したときに、アメリカ、カナダとイギリス政府から攻撃を受けました。2000年にパリの核医学会で発表したときです。20のTV局と新聞記者がいました。そのプレゼンテーションをする直前に、私が発表するのを阻止しようとしましたが、それはできませんでした。
この結果に対して、アメリカ、カナダ、イギリス政府は、信憑性がないことを証明しようとしました。しかし、彼らは成功しませんでした。今になって彼らは、私の分析結果が正しかったことを認めています。もう一度言いますと、天然ウランのウラン238とウラン235の比率は137.88、劣化ウランが492.6、ほとんど500に近い。そして「非劣化ウラン」、これがアフガニスタンで発見されたんですが、137.88プラス、ウラン236という天然には(自然界には)存在しない同位体が発見されています。

2.二種類の放射能兵器

今日私は、二種類のウラン放射能兵器についてお話ししたいと思います。
一つは「非劣化ウラン」、もう一つは劣化ウランです。
最初のアフガニスタン調査チームはジャララバードに行きました。カブールの東側にあります。カブール、カンダハル、ヒンズークシ山脈でも調査しました。
爆弾によってあいたクレーターです。この爆弾には劣化ウランが含まれていたと信じています。
真ん中に写っている男の人ですが、レイマンといいますが、私たちのセンターのアシスタントです。ジャララバードに行ったときに、サンプルを集めてくれました。この名前を覚えておいてください。あとで出てきます。テッド・レイマンです。カンダハルの軍事基地にある、壊れてしまった戦車からサンプルを採っています。
アフガニスタンのある村で、水のサンプルを採っているところです。ちょっと黒っぽい服を着ているのが、テッド・レイマンです。
私たちは、土と尿と水のサンプルを英国の地質研究所に分析を依頼しました。
これがジャララバラードのデータですが、皆さんにちょっと驚いてほしいと思いますが、どう思いますか。
最初の比を見てほしいのですけれども、これが全て天然ウランの比なんですね。137.88です。とても驚きました。私たちはおそらく、劣化ウランを見つけるだろうと思っていたからです。
これは第一次湾岸戦争で使われた武器とは違う武器です。というのは、湾岸戦争では対戦車砲が使われ、それは劣化ウラン弾だったのです。
こちらのアフガニスタンの爆弾はただの大型の巨大な爆弾だと思うのですが、これは「非劣化ウラン」です。
この結果を見たとき、私たちはアフガニスタンの人たちは良かったなあ、劣化ウランには汚染されていないと思ったのです。しかしながら、この幸せはほんの短い間しか続きませんでした。
というのは、ウランの総量を分析したときに驚いてしまったからです。
ここにいる皆さんは、東京の方だと思いますけれども、皆さんの尿を採取してウランの量を調べたら、おそらく1リットルにつき5ないし10ナノグラムという量が出てくると思います。しかし、(この表の)一列目を見てください。
1リットルにつき28、153、477ナノグラムなどとか、これは余りにも高いウランの量です。このデータのなかには、(東京での平均的数値と同じ)10ナノグラムのものあります。
とても驚きましたので、アフガニスタンの地質学的な地図を入手して、調べました。しかしながら、アフガニスタンのどこを採ってもウランが検出されるような鉱山地帯とか、そういうものはなかった。ジャララバードにはありません。こういった記録は何も見つかりませんでした。
そして二つめの驚きは、最初のコラム(列)です。それはウラン236を示しているからです。一番右列です。
ウラン総量が桁違いに多いというだけでなくて、自然界にないウラン236が検出されたからです。これを、保険物理学者の会合で提出したところ、あなた方は間違っていると言われました。ある政府にはウラン236が自然界にも存在していると言われました。オーストラリアの海中には、貝のなかにウラン236が検出されているというふうに指摘されました。彼らは自然界の法則を変えようとしています。しかし、自然界の法則はこう言っています。ウラン236というのは、原子炉の中でウラン235に中性子が一つくっついて生まれたものです。しかし宇宙というのは原子炉ではありません。
加えて、私たちのデータに示されているウラン236の比率ですが、それはオーストラリアで発見された貝の1000倍以上高いものです。
おそらくこの貝は、太平洋で行われた核実験によって汚染されているのだと思います。
私が最初に標準のウランの量についてお話ししましたが、そしてこの表と比べてください。ジャララバードの市民の中には、天文学的なウランの蓄積が見られるのです。
それから、私たちのチームはカブールに行きました。この男の子は家が爆撃されて生き残った男の子です。この男の子たちは、孤児となった子どもたちです。ここの井戸から水を採っていますが、この水はウランに汚染されていました。
これは軍事基地のそばにあったモスクですが、巡航ミサイルによって破壊されました。そのなかには、やはりウランが含まれていました。そして、ここでも、ウラン235は「非劣化ウラン」の比率を示しました。しかし、恐ろしいのは一番左の数値です。尿の中のウラン総量ですが、正常値を示しているのは、たった二つだけです。それ以外は全て高いウランの総量を示しています。
6番目を見てください。正常値の200倍の値を示しています。これは男の子の尿ですが、この男の子は羊の世話をしているとき、ミサイルが落ちてきて18人の家族が殺されてしまいました。
彼は家に戻ってきて、泣きながらバラバラになった弟や妹の体を見たようです。引っ張り出そうとしました。彼は尿の中に1リットルあたり、2000ナノグラムのウランが検出されています。
アメリカの対照群のウラニウムは、7ナノグラムです。湾岸戦争に行った兵士は、1.3ナノグラム、英国は18ナノグラムです。病気になっていない正常なアフガニスタンの対照値は32ナノグラムです。
しかし、爆撃を受けた地域のアフガニスタンの人々の値は275ナノグラム、169ナノグラムです。この結果は何を意味しているのでしょうか。これはアフガニスタンでは、第一次湾岸戦争と違う放射能兵器が使われたということです。
私は、それを「非劣化ウラン兵器」といいます。ではそれをなぜ、「天然ウラン」と呼ばないのかと人々から問われます。
その理由は、ウラン236が入っているから天然ウランと呼べないのです。それは人工の同位体であり、天然にはないものです。バンカー・バスターのような大型の重量爆弾に使われました。

3.イラクでは

ではここから、日本の皆さんが心配しているサマワについてお話しします。
水と土と尿のサンプルを10都市で採取しました。バグダッド、ナシリア、クーファ、カルバラ、バスラ、グンカサなどの都市です。その最新のサンプルは、サマワから帰還した米兵のものです。
この写真は前にも見たことがあるでしょう。ウランの貫通体が秒速1.5kmで飛んでいるところの写真です。
目標に衝突した瞬間に高温で燃焼します。そしてそのときに、チリ状の放射性物質を環境中に放出します。
皆さん分かっているように、私たちが呼吸する空気には必ず埃が含まれています。呼吸によって、ウランの微粒子が取り込まれますと、例えば、ガンとか、様々な炎症とか、免疫不全などの症状を引き起こしていきます。
これはなんとバス停なんです。イラク南部にあるバス停で、戦車がバス停になっている。とても高い値の劣化ウランが検出された。そこで人々はバスを待っているんです。まるで何事もないかのように。
それにさわることによって、あるいは呼吸で取り込むことによって内部被曝が起こります。そのことに注意を払う人はいません。
劣化ウランが出てきたところです。ナシリアです。これは劣化ウラン弾によって破壊された製氷工場の写真です。ウランによって汚染されています。
劣化ウラン弾によって攻撃された道路と戦車です。バグダッドにつながる道です。
バグダッドの爆撃の様子です。この中には劣化ウランが含まれています。
これはバグダッドのマンスール地区ですが、住居が劣化ウラン弾で破壊されました。
ラシード空軍基地のレーダー・ステーションです。そこでもサンプルを採りましたが、全てから高い値のウランが検出されました。
子どもが遊んだり、人々がそこを歩き、座ったりしていて汚染を気にしている様子はありません。
バグダッドの中央市場です。そこにいる子どもの様子です。
バグダッドの破壊されたTV局です。劣化ウランが戦車とか家とかに命中したとき、何が起こるのでしょうか。空気中に微粒子となって飛散していくのです。そして嵐で何百キロも飛散していきます。
2年前、カタールのドーハで医学会議が開かれ、出席しました。そのとき、人々は私に聞きました。イラクの劣化ウランはカタールにやってくるでしょうか。私は答えました。ウランは国境を越えるためにビザやパスポートはいらないと。
私はサウジアラビアで2年間働いていたことがあります。アラール地区の人々は、湾岸戦争症候群に似たような病気にかかって非常に重い状況でした。そこの医師を私どものところに送りまして、ぜひここに来て、患者を診てくれるように言いました。しかしながら、クウェート政府、サウジアラビア、バーレンはこのような研究が行なわれることを許可しませんでした。というのは、これが意味することはアメリカやイギリスが使っている劣化ウランを禁止することになるからです。
これはイラクの砂嵐ですが、国境を越えて何百キロも飛散していきます。
この中の皆さんに、砂漠での嵐を経験したことのある人が何人いるか知りませんが、私はあります。それを防ぐようなマスクや防護服は存在しません。どんなにやっても呼吸中に入ってきます。何十万kg(数百トン)の劣化ウランの粒子が表土や空気中にばらまかれてしまって、住民の健康を脅かしています。
(サマワから帰還した)米兵の調査結果が、ニューヨーク・デイリー・ニュースに発表されましたが、米国政府は重要ではないと言いました。政府は、1000名の調査をしたというのです。
ペンタゴンの報道官が1000人のうち、たった3人からしか劣化ウランは発見されなかったと発表しました。どのような調査を政府はしたのでしょうか。それは、ウランの比率を測ることのできないやり方なのです。そして、彼らは劣化ウランによって傷を負った兵士だけを対照にした。それはある意味でおかしな調査だ。劣化ウランの破片で負傷した兵士の数は少ないのです。
ということは、政府は劣化ウランの内部被曝については調査をしなかった。もしそれをしたならば、おそらく10万人以上の兵士が汚染されたことが分かったでしょう。
この写真をお見せするのは、放射能の値が余りに高すぎて、針が振り切れて限界値を超えてしまったことを示しているからです。
戦車の表面では、放射能の値がとても高すぎてこの器具では測ることができませんでした。砂漠の中には、このような戦車が何百と放置されたままになっています。誰もそれを除去して、きれいにしようとしていません。
これは防護服ですね。余りにも放射能レベルが高くて、測定できませんでした。これは、衣服の表面や戦車の表面を測っている。体の表面ではそんなに危険はない。そんなに恐ろしくはないです。核廃棄物として、除染処理をすればよいのです。
しかし、体内ではどうでしょうか。放射能に敏感な細胞に到達したとき、何が起きるのでしょうか。体の中でこういうことが起こります。
これはたった一つのプルトニウム原子です。周りにある細胞の電子を全て引き寄せてしまいます。1ナノグラムの中には何十億の原子があるのです。
ドイツのフランクフルトのゲーテ大学で、私たちのサンプルが分析されています。これは世界の中でトップ100のレベルを誇る研究所です。ゲルベス博士が、私たちのために分析してくれています。
私の調査結果公表されたとき、米国政府がドイツの大学にコンタクトしました。その結果は間違っているに違いないと言い放って。しかし、大学のほうは間違っていない。私は結果を信じていますと答えました。
私たちのカナダの研究所は、政府によって閉鎖されました。そして、私たちのドイツの研究所も閉鎖しようとしています。
これは尿のサンプルを分析した結果です。バグダッドでは、重量爆弾が使われたのであって、戦車砲はそんなに使われなかった場所です。
左の列を見ますと、そんなにたくさん劣化ウランが使われていないことが分かります。No.142、一つだけですね。
しかし、その中にウラン236が発見されました。そのサンプルは劣化ウランがそんなに使われていない地域で採られたものです。そしてウラン濃度についてもそんなに高くはなく、3倍から4倍高いくらいです。
バスラに行くと、英国軍とイラク軍の間で戦車同士の戦いがありました。バスラとバグダッドでは全く違う兵器が使われたのです。
5個のサンプルがありますが、そのうち4個は劣化ウランです。バスラの市民の尿から検出されました。その中にもウラン236が入っていました。1リットルあたりのウラン量にも増加が見られます。
ナシリアのデータです。同じように劣化ウランは発見されず、ウラン236が発見されました。そして、ウラン総量もそれほど高くありません。
テッド・レイマンという名前を覚えていますね。アフガニスタンで多くのサンプルを採取してきた男性です。
私たち調査チームの3人のうち2人が劣化ウランに汚染されて戻ってきました。サラームは140倍、テッド・レイマンは142倍です。そして、テッド・レイマンはイラクから帰って以来、病気になり熱があって、起きている時間よりベッドにいる時間のほうが長くなっています。彼らは、イラクの南部でたった36日過ごしただけなんです。

4.サマワでは

サマワについて話します。日本の軍隊がサマワに行っておりますので、皆さんの関心が高いと思います。
この分析は、ニューヨーク・ディーリー・ニュースが資金を出してくれました。日本軍のいるところは街の中心部から2kmぐらい離れています。
サマワに行く途中で破壊されている戦車です。その中は劣化ウランに汚染されています。
去年の12月にアメリカの第422憲兵中隊に所属する9名の兵士を検査しました。そのうち3名は非常に重い症状で、多くの病気を抱えていました。頭痛、感染症、筋肉痛、呼吸器疾患、腎臓の機能障害、発熱、意識障害、そして倦怠感です。
9人の調査結果です。先週の日、月、火曜日(4月4日、5日、6日)にニューヨーク・ディリー・ニュースのトップになりました。この新聞は1日に100万部発行されています。この結果が公表されるや、ペンタゴンは強い反応を示しました。
彼らがうろたえたのはよく分かります。というのはペンタゴン自身は、この調査をしなかったからです。でも彼らは知っていた。オランダ軍の調査結果から、サマワが汚染されていたことをすでに知っていたのです。
二つめの表を見てください。ウラン235と238の比率ですが、No.3、No.5、No.8、No.9、これは劣化ウランが含まれています。それに加えて、3人がウラン236も高いレベルで検出されています。9人のうち、7人がウラン同位体で汚染されてしまったということです。
しかし、ウラン総量では異常値がなかった。これがペンタゴンがやった調査です。それでペンタゴンは、何も異常がないとなってしまった。しかし、彼らは同位体の比率の検査はしなかった。
アフガニスタンでは、ウランの総量がとても高かったのを覚えていますか。それはアフガニスタンで使われたウランの総量がとても多かったということです。
結論ですが、イラクは大変汚染されていまして、イラクにいる兵士、特にサマワにいる兵士は放射能の汚染の大変高い地域に駐留しています。今日、お見せした9人の兵士というのは、憲兵隊の兵士です。戦闘には参加していません。戦闘後に入ってそれほど汚染は高くないと思われます。それでも汚染されてしまった。
この調査結果が示すことは、第二次湾岸戦争における世界で初めて行なわれた調査ですけれども、この戦争は環境と人間に大変高い放射能汚染を引き起こした、ということです。
それからもう一つ、このことが証明したことは、大量破壊兵器と無差別兵器が第二次湾岸戦争で使われたということです。
どうやってこれに対処したらいいのでしょうか。国際司法裁判所に提訴することです。そしてヨーロッパのいくつかの国は、ウラン兵器と劣化ウラン弾の使用を禁止しています。
これほど高い放射能で汚染されている地域というのは、隔離されるべきであり、人の居住に適さないという処置がとられるべきである。これが、私が最後に訴えることです。しかしながら現在のところは、お金、石油、というものが人間の命より重要と見なされてしまっています。
いつか、人が「何も見えてない状態」から脱却して、武力ではなく話し合いで解決できる日が来ることを私は願っています。
どうもありがとうございました。

【講演記録の編集・掲載にあたって】

(要約:劣化ウラン研究会)

アサフ・ドラコビッチ氏の講演会は、昨年11月に引き続き東京、大阪で行われました。
今年は、特に自衛隊がサマワに派遣された後のことでもあり、大きな関心を引きました。
講演は多くの図表や写真を駆使して行われていましたが、残念ながら紙面の関係から割愛させていただきました。UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン事務局より、詳細な講演記録が発行されますのでそちらをご参照ください。
「非劣化ウラン」と「劣化ウラン」「天然ウラン」の関係については、現時点でもまだ詳細な事実関係は判明しているとは言い難い状況にあります。
多くの議論がなされている段階ですが、現実にアフガニスタン、イラクでの現地調査の結果をふまえての報告ですので、できるだけ忠実に採録したことを付記いたします。


ニュースクリップ

●「劣化ウラン弾・ウラン兵器禁止条約実現キャンペーン結成のつどい」が開かれる。●

2004年2月29日、労働スクエア東京において「劣化ウラン弾・ウラン兵器禁止条約実現キャンペーン結成のつどい」が開かれました。
戦争が終わっても「未来にわたり人体や環境に被害を及ぼす劣化ウラン・ウラン兵器が、現存する国際法やさまざまな警告にもかかわらず、現実に使われ続けていることを放置することは出来ない」として国際法・条約による規制をめざし、ウラニウム兵器の「製造、所有、売買を含むすべてを禁止する条約を実現」「すべての汚染地域からの汚染除去、被害者への補償」を目的に掲げています。

●外務省と交渉●

2004年3月2日、約50名が参加し、劣化ウラン研究会で呼びかけていた署名「イラクの子供たちを放射能被害から守ろう」の提出と、昨年の交渉の際に申し入れていた「イラク現地調査」のその後の情報、そして自衛隊が派兵されて以後の新しい状況に応じて、新たな申し入れと質問を出して外務省との交渉行いました。
イラク現地調査については、これまで何もしていなかったことが明らかになると共に、依然としてウラニウム兵器を「使ったかどうか米国は明らかにしていない」という立場から一歩も出ていないことがわかりました。
しかしながら、先行してオランダ議会では劣化ウラン汚染が問題となっており、米国からオランダに渡された報告書を日本も入手しており、そこには劣化ウランの使用についても書かれていることがわかりました。
外務省は、人道支援としての医療支援には前向きであることを強調していますが、その具体的な内容については、交渉の場では明らかになりませんでした。
今後も外務省など政府機関との話し合いは継続して行います。

●「劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク」結成●

2004年3月27日、劣化ウラン研究会も呼びかけ団体となっている「劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク結成の集い」が開かれ、450名の参加で熱気に包まれました。
当日は、豊田直巳さん(写真家)からのイラク現地の状況についてのメッセージ、広瀬隆さん(作家)による解説(イラクの危機的状況について)、山崎久隆さん(劣化ウラン研究会・たんぽぽ舎)の基調報告(8点にわたり詳述)、イラクの子どもたちに支援の手を=医療支援について西村陽子さん(アラブの子どもとなかよくする会)、鎌仲ひとみさん(映画ヒバクシャ等の監督)、佐藤真紀さん(JVC)からの報告がありました。また、森住卓さんの写真を上映し、山崎久隆さんが解説しました。具体的方針と年間計画が10点提案されました。医療支援カンパも22万余円寄せられました。
【劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワークを支えるためにぜひ会員になってください】
個人会員−1年2000円、団体会員−1年3000円

●3名の日本人がイラクで拘束される●

2004年4月8日、ニュースレター冒頭にも述べたとおり、日本人3名が現地の抵抗勢力により身柄を拘束され、自衛隊の撤退を要求する声明が出されるという事件が発生しました。
事件がアルジャジーラを通じて報道される直前、外務省や日本のメディアを通じて市民団体も情報を入手、全力を挙げて救出を行うために活動を開始しました。
一方、拘束された地点が米軍による民衆虐殺の続くファルージャ近郊であったことから、この事件の背景にはファルージャへの攻撃があると考え、米国に対する「攻撃中止を求める行動」も行われました。
自衛隊派兵がNGOの活動を危険に陥れると警告してきたことが、現実になった瞬間でしたが、3名がイラクに行った目的を、様々なチャンネルを通じて訴えたこともあり4月15日に解放されました。

<書籍紹介>

マンガ版劣化ウラン弾

2004年3月発行
定価:1300円+税
作画:漫画家・白六郎
監修:藤田祐幸+山崎久隆
協力:豊田直巳
B5判80ページ
発行:合同出版
〒101-0051東京都千代田区神田神保町1-28
TEL:03-3294-3506FAX:03-3294-3509
<もくじ>
第1章 何が起きているの
第2章 恐怖のウランの毒性
第3章 劣化ウラン弾ってどんなもの?
第4章 劣化ウラン弾を使う兵器
第5章 劣化ウランってなに
第6章 不幸なウラン鉱山の物語
第7章 核兵器から生まれた原子力発電
第8章 劣化ウラン弾の悲しい物語
第9章 ふえつづけるヒバクシャ
第10章 アメリカの「戦争中毒」
第11章 反対運動とこれから

放射能兵器・劣化ウラン−−核の戦場・ウラン汚染地帯

劣化ウラン研究会 編
技術と人間社 発行
〒162-0814東京都新宿区新小川町3−16
TEL:03-3260-9321 FAX:03-3260-9320
2003年3月発行
定価2500円
「ボクは死ぬんだ。死んでしまうのだ。」イラクの小児病棟では連日、血を吐きながら子どもたちが死んでゆく。劣化ウランは史上最悪の大量殺りく兵器である。この兵器を使用しているかぎり、人類だけでなく、地球上の生きとし生けるものに未来はない!
<主要目次>
第1章危険な劣化ウラン弾
第2章劣化ウランの軍事転用
第3章核燃料サイクルと劣化ウラン
第4章身近にあらわれる劣化ウラン
第5章劣化ウランおよび劣化ウラン兵器廃絶運動
<著者紹介>(50音順)
伊藤政子:アラブの子どもとなかよくする会代表
新倉修:青山学院大学法学部教授
野村修身:電磁波問題市民研究会代表
藤田祐幸:慶応義塾大学物理学教室助教授
森住卓:フォトジャーナリスト
矢ヶ崎克馬:琉球大学理学部教授
山崎久隆:劣化ウラン研究会代表


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