平成七年(行ケ)第三号  職務執行命令請求事件

                                           原 告      内 閣 総 理 大 臣
                                                       橋 本 龍 太 郎
                                           被 告      沖 縄 県 知 事
                                                         大  田  昌  秀
 
     一九九六年三月八日

                                          右被告訴訟代理人
                                                       弁護士
                                        中  野  清  光
                                               外一五名


         意     見     書

                     記


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 被告は、一九九六年二月九日付証拠申立書において、二三人の証人申請をした ところで
あるが、そのうち、証人親泊康晴、同島袋善祐及び同新垣昇一の三人につき、その尋問が
特に必要不可欠であることについて、次のとおり意見を述べる。そして、右三証人を採用
し、次回公判後に、是非とも取調べられるよう、強く要求する。
一 親泊康晴氏の証人調べの必要性
 1 訴状別紙目録8那覇港湾施設記載の二三筆の土地のうち、一九筆は那覇市の所有地
  である。
   訴外親泊康晴氏(以下、訴外親泊という)は、那覇市長であるところ、右一九筆の
  土地については所有者としての立場で、それを含む右二三筆の土地については市町村
  長としての立場で、本件立会・署名に応じなかったものである。
 2 右目録8記載の二三筆の土地の土地調書に添付された実測平面図には、作成日が記
  載されていない。この点について、原告は、右実測平面図は一九九二年の使用裁決申
  請時に作成した古い実測平面図を流用したもので、本件使用認定時に現地を実測測量
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  して作成したものでないことを自認している。
   このように、本件土地調書添付の「実測平面図」は、実測により作成された図面で
  なく一九九二年の使用裁決時に作成した実測図面を基に作成された図面であり、且つ
  同図面には作成日の記載がなく土地調書に瑕疵が存するものであるから、訴外親泊が
  土地調書の作成につき暇庇が存し、又は、それが適式に作成されたか否かについての
  判断は不可能もしくは困難として、立会・署名に応じなかったことは理由があり、正
  当である。
 3 那覇港湾施設は、その返還が日米間において合意されており、現在、その早期返還
  が緊急課題となっている。現に、同施設は遊休化しており、提供施設としてほとんど
  機能していない。
   右施設は、沖縄県の海の玄関である那覇港内に存し、那覇港の狭隘さを解消し、海
  上交通体系整備のためにも、その早期返還が強く求められている。
  また、那覇市及び本施設の地主等で構成されている那覇軍用地等地主会において、
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  本施設の返還に備えて、跡利用計画がそれぞれ策定されているが、それに関する両者
  間の調整がなされ、基本的合意が成立しつつある。
   このように、沖縄県の振興開発及び県民福祉の向上のために、本施設の早期返還は
  不可欠である。
   従って、本施設の強制使用手続の一環である本件立会・署名に応じないことは、地
  方自治法一五一条の二でいう「著しく公益を害しないことが明らか」に該当しないも
  のである。
 4 以上のように、訴状別紙目録8記載の土地に係る土地調書作成の適法性、及び地方
  自治法一五一条の二の公益侵害性の有無を判断するにあたり、訴外親泊を証人として
  取調べることは不可欠である。
二 島袋善祐氏の証人調べの必要性
 ! 訴外島袋善祐氏(以下、訴外島袋という)の所有する訴状別紙目録6記載の土地
  (以下、目録6の土地という)は、原告も認めるとおり地籍未確定地域内に存する土地
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  である。
 2 原告は、目録6の土地は、地籍が確定していないものの、訴外島袋が編さん地図確
  認書に署名していること及び訴外島袋が目録6の土地を自己の所有地と認めているこ
  とを理由として、目録6の土地は、訴外島袋の所有地と特定しており、地番も特定さ
  れている旨主張している。
 3 しかし、右目録6の土地について、訴外島袋は編さん地図確認書に署名押印したこ
  とはない。
   那覇防衛施設局は、知花公民館に関係地主を呼んで公民館二階の床いっぱいに敷か
  れた一筆ごとの土地が表示された図面を見せたことがある。
  訴外島袋は、右公民館に出向き右図面を見たことはあるが、現状地籍照合図を見せ
  られて、編さん図確認書に署名押印をしたことはない。
   甲第五八号証添付の「編さん地図確認書」には、地番二二九一の欄の「調査後」の
  所有者欄に「島袋善裕」の記載とその名下に明らかに三文判による「島袋」の印影が
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  存するが、これは訴外島袋が署名したものでなければ、押印したものでもない。 さら
  に、訴外島袋の意思によって右署名及び押印がなされたものでもない。そもそも 「善
  祐」である自己の名を「善裕」と誤記することはありえないし、誤記された署名に押
  印することもありえないのである。
   原告は右確認が全て那覇防衛施設局の職員が代署したものであることを自認してい
  るが、所有者の土地を特定する確認書であるにもかかわらず、土地所有者に署名を求
  めず那覇防衛施設局職員が代署したとするのは、不可解である。
 4 又原告は、訴外島袋は、目録6の土地の位置境界について争っていない旨主張する
  が、これは事実に反する。
   訴外島袋が所有していた字知花曲茶原の土地は、戦前は松林の土地で、土地の周辺
  に境界を示す「アブシ」(境界に掘られたミゾのこと)があり、土地内の一部でお茶
  の栽培をしていた土地である。
   戦後右土地は、米軍基地内となったが一九五五年頃まで黙認耕作地として、地主が
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  利用していた土地である。
   訴外島袋は、右土地内の木を伐採して木を取ったり、戦前に植えた茶の葉を摘んだ
  りして、使用していたのである。
   訴外島袋は、地籍明確化作業の中で、現地立会いをしたが、那覇防衛施設局の職員
   から示された土地は戦後耕作した土地の位置と異なっていた。
   訴外島袋は、土地を米軍基地に提供することに反対の考えを持っていたため、現地
   立会のとき署名押印を行なわなかったのも一理由であるが、 そもそも目録6の土地の
   位置境界が異なっていたことが拒否した主な理由であった。
 5 以上のとおり原告の主張は事実に反するものであるので、訴外島袋を取調べる必要
  性が存するものである。
三 新垣昇一氏の証人調べの必要性
 1 訴外新垣昇一(以下、訴外新垣という)は、訴状別紙目録1瀬名波通信施設の一番
   目に記載された土地(以下、目録1の土地という)の所有者である。
   原告は、目録1の土地は事務所用地として使用されており、引き続きその使用目的
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  で本件強制使用をなしたのであるが(甲第二号証の二)、右土地は、施設の内外を仕
   切るフェンスに接した内側にあり、更地で建築物は存せず、実際は事務所用地として
   使用されていない。右土地から一〇メートルあまり離れて建っている事務所と称され
   ている建物は閉鎖されているようであり、現実に事務所として使用されているかは不
   明である。右建物の近くに存するテニスコートも、現在使用されている様子はない。
    原告は、 目録1の土地は施設全体と有機的に一体として機能しているというが、右
   土地が強制使用されずにその所有者に返還されたとしても、事務所の運用に支障をき
   たすことはまったくなく、まして瀬名波通信施設の基地としての機能を阻害すること
   はいささかも存しない。
  2 目録1の土地(地番八九六番一一)は、もともと地番八九六番一の土地と一体となっ
   た一筆の土地であった。分筆前の土地は、県道六号線の延長線上の道路に面した面積
   約三三〇坪のほぼ正方形の形をしていた。そのうち、約二五〇坪部分は、前回の強制
   使用期間の満了により訴外新垣に返還され分筆により八九六番一の土地となり、残地
   部分が目録1の土地として米軍用地に強制使用され、今日に至っている。右一部返還
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   の際、八九六番一の土地と目録1の土地はフェンスによって分断されることとなった
   のである。その結果、返還された八九六番一の土地は、道路に面した部分が約五メー
   トル、奥の底辺部分が約三〇メートルの歪な三角形状の地形となり、有効利用ができ
   ない状態にある。
    目録1の土地の地目は畑であり、それに隣接する二筆の土地は宅地へと地目変更さ
   れて二棟の住宅が建築されているが、右土地についても宅地へ地目変更することは容
   易である。訴外新垣は、二人の子のために、右土地上に住宅建築の強い希望をもって
   いる。その実現のためには、歪な三角形をした返還土地部分だけでは不可能であり、
   目録1の土地の返還が必要不可欠である。
  3 第三回公判において、証人佐伯恵通は、地主等から土地返還の要請がある場合、防
   衛施設庁は、返還に応じても施設の運用に支障をきたさない場合には、米軍当局と協
   議し、地主等に土地を返還することがありうるし、現に返還した実例もあると明確に
   証言している。
    前述したように、目録1の土地は、それが返還されたとしても、瀬名波通信施設の
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   運用にまっだく支障をきたすことはないのであるから、それは当然に地主の訴外新垣
   の意思を尊重して返還されるべきものであって、そもそも本件強制使用の対象とすべ
   き必要性は当初から存していないのである。
  4 以上から明らかのように、目録1の土地を強制使用する必要性は豪も存しないので
   あるから、右土地を米軍に提供しなくとも、安保条約上の基地(施設)提供義務が履
   行できなくなることはまったくない。従って、目録1の土地に関する本件立会・署名
   に応じないことは地方自治法一五一条の二の「著しく公益を害することが明らか」に
   該当しないといわざるをえない。
  5 よって、目録1の土地の強制使用に際し、地方自治法一五一条の二の公益侵害性の
   有無を判断するにあたり、訴外新垣を証人として取調べることは必要不可欠である。