沖縄県求釈明書 二


平成七年(行ケ)第三号職務執行命令請求事件

                                原      告      内 閣 総 理 大 臣
                                                橋  本  龍  太  郎
                                被      告      沖   縄   県   知   事
                                                大  田   昌  秀
                一九九六年二月九日
                                右被告訴訟代理人
                                弁 護 士      中  野   清  光
                                                             外一五名
 福岡高等裁判所那覇支部  御中

               求 釈 明 書 (二)

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 被告は、原告の第一準備書面に対して次のとおり、釈明を求める。
一 機関委任事務について
 第一点 原告は、「機関委任事務の存否は、右別表の記載の有無だけによって
        判断されるべきものではない。」〈二頁)と主張するが、これは別表に
        記載されていても、機関委任事務でない事務が存することを認める見解
        と理解できるが、そのような趣旨と理解してよいのか。
 第二点 原告は、右主張に引き続いて、「もっとも、右各別表に当該事務に関
        連ないし類似する多くの事務が掲げられていることは、当該事務が国の
        機関委任事務と解する根拠の一つとなる。」〈二〜三頁)と主張するが、
        これは、別表に記載されていない事務は、国の機関委任事務ではないと
        解する棋拠の一つになることを自認していると解することができるが、
        そのように理解してよいのか。
         ここで、「根拠の一つになる」との趣旨は、他に積極的な根拠が示し
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        えない場合には、別表の記載の有無を基準にして機関委任事務であるか
        否かを判断すべきであるという趣旨と解されるが、そのように理解して
        よいのか。
 第三点 原告は、「右事業の認定の事務は、都道府県に委任されることにより、
        都道府県限りの責任において、その地方の実情に応じて決定されるベき
        事柄ではない。」(五頁)と主張するが、土地収用法二十条一項三号の
        「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものである」か否
        か、四号の「土地を収用し、又は使用する公益上の必要があるものであ
        る」か否か等の判断は、「その地方の実情に応じて決定される」ことだ
        と解するのが通常の理解であるが、原告は、そのように解すべきではな
        いという主張なのか。
         そうだとすると、原告は、土地収用法が一定の事業認定につき、都道
        府県知事に事業認定権限を付与した理由をどのように理解しているのか
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        見解を明らかにされたい。
 第四点 原告は、「統一的、一元的に処理されなけれぱならない」ことを、機
        関委任事務であるか否かを判別する基準の一つであると主張するが、そ
        れはむしろ機関委任事務としないことの理由になるのであって、機関委
        任事務とすることの理由とはならないと解されるが、原告は、その点に
        ついてどのように説明するのか、明らかにされたい。
 第五点 原告は、事業認定及ぴ裁決につき「建設大臣に審査講求をすることが
        できる」と定められていることを、機関委任事務であるか否かを判別す
        る基準の一つである(五〜六頁〉と主張するが、何故同規定が基準の一
        つになるのか理由を明らかにされたい。
         地方自治法二四四条の四は、知事がなした公の施設を利用する権利に
        関する処分について、不服がある者は、自治大臣に対して審査講求がで
        きることになっているが、原告の基準によると、公の施設を管理する事
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        務は、国の機関委任事務ということになるのか、明らかにされたい。
 第六点 原告は、知事の事業認定事務を機関委任事務と解しているのか否か、
        明らかにされたい。
         国の総務庁行政監察局の「国の関与現況表」によると、知事の事業認
        定事務は、団体委任事務と分類されているが、仮に、原告が機関委任事
        務だと主張するのであれぱ、その取扱が異なる理由を明らかにされたい。
 第七点 原告の主張によると、立会・署名を機関委任事務とする積極的根拠は、
        どこにあるのか、明らかにされたい。
 第八点 原告は、「他人土地等への立入の許可等の事務と三六条五項の署名押
        印等の事務とが実質的に異なる訳でもない」(七頁)と主張するが、他
        人の財産権を直接的に侵害、規制する「立入の許可等」と土地所有者等
        の財産権を保障しようとする立会・署名とは、明らかに性質を異にする
        と理解するが、原告は、どのような理虫で「実質的に異なる訳でもない」
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    と主張するのか、その理由を明らかにされたい。
二 主務大臣について
 第一点 土地収用法三六条四項、五項の事務についての主務大臣は、行政実務
        上、建設大臣と解されて取り扱われているが、そのとおり間違いないか
        どうか、明らかにされたい。
 第二点 駐留軍用地侍措法に基づく強制使用申請事務が防衛施設庁の所掌事務
        として取り扱われているということであるが、同法に基づく総理大臣の
        使用認定事務は、どの省庁部署で事務が取り扱われているのか、実情と
        法的根拠を明らかにされたい。
         これまでの事務の取扱をみると、強制使用認定事務も使用認定事務も
        防衛施設庁の同一の部署で担当している疑いがつよい。
 第三点 一九五五年一〇月二八日建設計形第九五号「山形県知事あて計画局長
        回答」によると、改正前の駐留軍用地特措法に基づく立会・署名につい
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        ての所管は建設省であると解されていたと思われるが、国においてこれ
        まで立会・署名をどの省の所管として取り扱っていたのか、明らかにさ
        れたい。
 第四点 原告の見解によると、駐留軍用地特措法に基づく立会・署名は、どの
        省庁のどの部局が取り扱うことになるのか、法的根拠を含めて明らかに
        されたい。
         原告の見解によると、強制使用中諸事務を扱う機関と立会・署名を担
        当する機関とは、同一機関になると推測されるが、如何に。第五点 本
        件知事への地方自治法一五一条の二の「勧告」、「職務執行命令」は、
        どの省庁のどの部署が但当していたのか、明らかにされたい。
 第六点 原告は、駐留軍用地特措法は、土地収用法の特別法であることを認め
        ているのであるから、駐留軍用地特措法に明記されてない事務について
        は一般原則に基づき、土地収用法の立会・署名についての主務大臣で
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        ある建設大臣の事務となると解するのが通常であるが、原告がそのよう
        に解しない理由は何故なのか、明らかにされたい。