平成七年(行ケ)第三号
職務執行命令裁判請求事件

                 原告  内閣総理大臣

                 被告  沖縄県知事

      原告第一準備書面


平成八年一月一〇日
                   右原告指定代理人
                    川 勝 隆 之
                    松 谷 佳 樹
                    植 田 和 男
                    田 村 厚 夫
                    富 田 善 範
                    田 川 直 之
                    小 澤 正 義
                    崎 山 英 二
                    浦 田 重 男
                    原 田 勝 治
                    安 里 國 基
                    久 場 景 一
                    屋 長 朝 郎
                    小 澤   毅
                    林     督
                    地 引 良 幸
                    千 田   彰
                    内 山   孝
                    西 村 和 敏
                    里 吉   勝
                    芦 田 栄 司
                    小 竹 秀 雄
                    世 利 隆 司
                    高 岡 辰 榮
                    大 石   毅
                    佐 伯 惠 通
                    新 城 弘 康
                    古 波 一 男
                    宮 国 恵 守
                    野 島   皓
                    斉 藤   勝
                    野 村 庄 一
                    運 天 常 隆
                    田 名 弘 明

福岡高等裁判所那覇支部 御中


 略 語 例


日米安保条約   日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約

地位協定     日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六
        条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に
        関する協定

駐留軍用地特措法 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六
        条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に
        関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法

公用地暫定使用法 沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律


位置境界明確化法 沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置
        境界の明確化等に関する特別措置法


本件署名押印等の事務 防衛施設局長が駐留軍用地特措法一四条、土地収用法三六条
        に基づき土地調書及び物件調書を作成するにつき、都道府県知事が
        立会人を指名し、署名押印させる事務






 原告は、本準備書面において、答弁書の本案前の主張に対する反論を準備し、かつ、
被告第一準備書面の主張に対し認否をする。

第一 本案前の申立に対する反論
   被告は、本件署名押印等の事務は国の機関委任事務ではない、仮に本件署名押
  印等の事務が国の機関委任事務であるとしても、被告はその主務大臣ではないか
  ら、本件訴えは不適法である旨主張する。
 一、機関委任事務の判断基準について
   国の機関委任事務とは、国の事務の中で「法律又はこれに基づく政令」の定め
  るところにより、普通地方公共団体の長等が管理、執行する事務である(地方自
  治法一四八条)。
   したがって、具体的な事務が機関委任事務に該当するか否かは、法律又はこれ
  に基づく政令の定めによって決定されるが、その際、当該法令の趣旨、文言、当
  該事務の性質等を総合勘案することになる。
   確かに地方自治法一四八条二項、三項に基づく別表第三、第四は、都道府県知
  事又は市長村長が管理、執行しなければならない機関委任事務を具体的に掲げて
  いるが、右各別表は、事務処理の便宜に役立てるとともに行政の簡素化に備えて
  その現状を明らかにするために設けられた。したがって、地方公共団体の機関は、
  右各別表に基づいて初めて当該機関委任事務を処理する義務を負うものではなく、
  個々の法令に基づいて当該機関委任事務を処理する義務を負う。換言すると、機
  関委任事務の存否は、右別表の記載の有無だけによって判断されるべきものでは
  ない(長野士郎・逐条地方自治法第一一次改訂新版四五ページ)。もっとも、右
  各別表に当該事務に関連ないし類似する多くの事務が掲げられていることは、当
  該事務が国の機関委任事務と解する根拠の一つとなる。
 二 本件署名押印等の事務について
  1 公用収用について
    本件署名押印等の事務は駐留軍用地特措法一四条一項により適用される土地
   収用法三六条五項の事務であるところ、駐留軍用地特措法は土地収用法の規定
   の大部分を適用している。
    そして、土地収用法は、憲法上私有財産権が保障された反面として、公共の
   利益を増進するために特定の者の財産権を収用することが不可欠であることか
   ら制定された。このように、公共の利益を増進するために憲法上保障された財
   産権を収用する源は国の統治権にあるから、本来収用権は国家に専属する(憲
   法二九条三項)。
    もっとも、国の事務といえども、法令の規定により地方公共団体に包括的に
   委任したり(行政事務)、個別的に委任する(団体委任事務)こともあるから、
   具体的な事務が機関委任事務に該当するか否かは、当該法令(土地収用法)の
   解釈によって決まることになる。
  2 土地収用法について
  (一) 土地収用法により、土地を収用又は使用するには、おおむね、起業者が
     建設大臣等による事業の認定を受けた上で、収用委員会に収用又は使用の
     裁決を申請し、権利取得裁決及び明渡裁決を得ることとなっている。この
     うち、事業の認定は、国又は都道府県が起業者である事業等の場合には建
     設大臣が行い、それ以外の事業については起業地を管轄する都道府県知事
     が行う(一七条一項、二項)。
      事業の認定は、憲法二九条三項の規定の趣旨に基づき設けられた制度で
     あり、すべての国民に対し公平にされなければならないから、統一的、一
     元的に行われることが必要である。したがって、右事業の認定の事務は、
     都道府県に委任されることにより、都道府県限りの責任において、その地
     方の実情に応じて決定されるべき事柄ではない。このことは、地方自治法
     一四八条二項、別表第三、一、(百八)に明示されている。
      土地収用法上も都道府県知事がこれを拒否するか、一定期間内に行わな
     い場合には、建設大臣が直接事業の認定をすることができ(二七条)、ま
     た都道府県知事の処分については、建設大臣に審査請求をすることができ
     る(一三〇条一項、一三一条二項)と定められている。これらの規定は、
     都道府県知事の事業の認定も国が収用権の主体であることを前提としてい
     るということができる。
  (二) 裁決の最も重要な機能は「正当な補償」の決定である。裁決手続は、憲
     法二九条三項の規定の趣旨に基づき設けられた制度であり、すべての国民
     に対し公平にされなければならず、統一的、一元的に処理されなければな
     らないこと、裁決に対し建設大臣に審査請求をすることが認められている
     (土地収用法一二九条)こと等を総合すると、裁決事務もまた国の機関委
     任事務である。
  (三) 事業の認定以外の都道府県知事の収用事務は、いずれも事業の認定及び
     裁決に付随する手続であり、最終的に土地収用を適正に実現するための一
     連の手続である。しかし、土地収用法及びこれに関連する法令の規定を通
     覧しても、国の事務からこれらの事務を切り離して都道府県知事の事務と
     する趣旨の規定を見いだすことはできない。
      そして、地方自治法一四八条二項、別表第三、一、(百八)には「土地
     収用法・・の定めるところにより、・・・代執行をする等の事務を行なう
     こと」と定められているし、そこに例示された事業の準備のための他人の
     土地への立入の許可等の事務と三六条五項の署名押印等の事務とが実質的
     に異なる訳でもないから、右署名押印等の事務は右別表記載の「等」に含
     まれることが明らかである。したがって、これらの事務は、いずれも国の
     機関委任事務である。
  (四) 以上によれば、土地収用法に掲げられた都道府県知事の事務は、いずれ
     も国の機関委任事務である。
  3 駐留軍用地特措法について
     駐留軍用地特措法は、駐留軍の用に供する土地等の使用又は収用に関し規
     定することを目的とする(一条)から、基本的に土地収用法が適用される
     (一四条一項)が、起業者を防衛施設局長とし、事業の認定に相当する土
     地等の使用又は収用の認定を内閣総理大臣が行うなど特例措置が定められ
     ている。したがって、駐留軍用地特措法は、土地収用法の特別法である。
      したがって、駐留軍用地特措法についても土地収用法について前に述べ
     た趣旨が基本的に妥当するから、駐留軍用地特措法に基づく都道府県知事
     の事務は、国の機関委任事務であり、これを都道府県の事務とする趣旨の
     規定を見いだすことはできない。
      そして、地方自治法一四八条二項、別表三、一、(三の四)には、駐留
     軍用地特措法の「定めるところにより、・・・代執行をする等の事務を行
     うこと」と定められているし、そこに例示された形質の変更の許可等の事
     務と本件署名押印等の事務とが実質的に異なる訳でもないから、本件署名
     押印等の事務は右の「等」に含まれることが明らかである。したがって、
     本件署名押印等の事務は国の機関委任事務である。
  4 被告の主張について
  (一) 被告は、本件署名押印等の事務は「公共事務」であると主張する。
      しかし、「公共事務」とは、地方公共団体が本来目的とする事務であり、
     地方公共団体の長、議会の議員の選挙、条例等の制定、地方税の賦課・徴
     収等の地方公共団体の存立のためにする事務のほかに、住民の福祉を直接
     増進する水道・下水道、学校・公園等の設置管理、身分証明及び登録等の
     事務がこれに含まれるが、後者の事務はいずれも非権力的な給付行政である。
      したがって、本来国の統治権に由来し、権力的事務に属する土地収用事
     務が「公共事務」に含まれる余地は全くない。
  (二) 被告は、裁決事務が、地域の事務という性格をもつこと及び国が指揮監
     督権を有すると収用委員会を中立機関とした意味が失われることを挙げて、
     裁決事務は地方公共団体の事務であると主張する。
      確かに、国の指揮監督権は収用委員会に対しては及ばないが、これは正
     当な補償を実現するために、裁決事務を所掌する機関を独立の行政委員会
     としたことによるものであって、このことと裁決事務が国の機関委任事務
     であることとは別の問題である。
      このことは、都道府県知事の指揮監督権も収用委員会に対して及ばない
     ことに思いを致せば、容易に理解することができよう。
  (三) 被告は、土地収用法は、事業認定に関する事務を国と地方公共団体とに
     分けたと解するのが自然であり、都道府県知事の事業の認定に関する処分
     は、その事業の性質上、国の事務ではないと主張する。
      しかし、被告の右主張は、要するに、都道府県知事に事業の認定の権限
     が与えられたことのみを根拠にするものであって、右事務が国の機関委任
     事務でないとする根拠としては余りにも薄弱である。
  (四) 被告は、土地収用法が収用権を発動する者を国とし、起業者のし意的な
     土地調書・物件調書の作成を抑制することにより土地所有者等の財産権を
     保障する者を地方公共団体としたのは合理的であるから、同法三六条五項
     の署名押印等の事務は本来地方公共団体の事務であると主張する。
      被告は、起業者が国である場合のみを取り上げているが、法令上も実際
     上も起業者が当該地方公共団体である場合も多多ある。後者の場合には、
     起業者と右署名押印等の事務を行う都道府県知事とが実質的に同一となり、
     被告の主張に従えば土地所有者等の財産権は保障されないことになる。被
     告の主張が失当であることは、この一事をもって明らかである。
 三 主務大臣について
  1 防衛庁は、総理府の外局であり(国家行政組織法三条二項、四項、別表第一、
   防衛庁設置法二条)、防衛施設庁は防衛庁に置かれる(国家行政組織法三条三
   項ただし書、四項、別表第一備考、防衛庁設置法三九条)。
    そして、国家行政組織法によれば、総理府の長は、内閣総理大臣であり、主
   任の大臣として総理府の行政事務を分担管理すると定められている(五条一項)。
    また、防衛庁設置法によれば、防衛庁の所掌事務として、駐留軍の使用に供
   する施設及び区域の決定、取得及び提供に関することが掲げられ(五条二五
   号)、防衛庁の権限として、駐留軍に対して施設及び区域を提供することが掲
   げられ(六条一四号)、さらに防衛施設庁の所掌事務及び権限として同様の事
   務が掲げられている(四二条、四三条)。
    このように見てくると、結局、防衛庁ないし防衛施設庁の所掌事務は、総理
   府に分配された所掌事務であり、その主務大臣は内閣総理大臣であることが明
   らかである。
  2 被告は、原告が監督者としての立場で機関訴訟をおこすのではなく、起業者
   としての立場で当事者訴訟等を提起すべきであると主張する。
    しかし、本件署名押印等の事務は機関委任事務であるから、国ないし国の機
   関が国の機関としての被告を訴えることとなる。この訴訟は国という同一の権
   利主体の内部の争いであるから、このような訴訟は裁判所法三条にいう「法律
   上の争訟」に当たらず、当事者訴訟等の方法を選択することは不可能であり、
   機関訴訟以外に適法な訴訟はない。したがって、被告の主張は、理由がない。

第二 被告第一準備書面に対する認否
 一 「第一 はじめに」について
  1 「一 本件訴え提起の意味するもの」について
    本件訴えが、内閣総理大臣が沖縄県知事に対し駐留軍用地特措法一四条一項、
   土地収用法三六条五項に基づき立会・署名押印を求めるものであり、右立会・
   署名押印が裁決申請手続の一環であること、また、その目的が米軍用地として
   土地の使用権を取得することにあることは認め、その余は争う。
  2 「二 沖縄県知事の基本的立場」について
    大田昌秀氏が被告主張のような経歴で平成二年沖縄県知事に就任し、平成六
   年一二月に再選されたこと、国が策定した第三次沖縄振興開発計画の内容とし
   て被告主張のような記載のあること、戦後五〇年にわたり沖縄県に米軍基地が
   存在し、沖縄復帰後今日までに返還された米軍施設の土地の面積が沖縄県の復
   帰時の土地の面積の一五パーセントであり、沖縄県に米軍専用施設の土地の面
   積の約七五パーセントが存在していること、米兵による暴行事件、米軍基地に
   関連する事故や騒音、山火事があったことは認め、その余は不知ないし争う。
 二 「第二 本件訴訟の審理の範囲」について
  1「一 総理大臣と県知事との法的関係」について
   争う。
  2 「二 砂川町長職務執行命令事件最高裁判決」について
    被告主張の最高裁判決の存在及びその内容、平成三年の地方自治法改正によ
   り地方公共団体の長が命令を拒否した場合の罷免制度が廃止されたことは認める。
  3 「三 本件審理の範囲」について
  (一) 「1 駐留軍用地特措法の違憲性について」について
    駐留軍用地特措法が本件手続全体の基本となる法律であること、被告主張の
   砂川事件の差戻審判決の存在及びその内容は認める。
  (二) 「2 使用認定の違法性について」について
    砂川事件差戻審判決が、土地の収用認定など手続的に先行した行為はそれぞ
   れの機関が判断権を持っており、町長はそれについて判断する権限をもたない
   として収用認定の適法・違法などの論点は審理の範囲外であると判示したこと
   は認め、その余は争う。
  (三) 「3 地方自治法一五一条の二、一項の要件について」について
    地方自治法一五一条の二第一項の規定する内容は認め、その余は争う。
 三 「第三 沖縄の苦難の歴史」について
    日米両政府が昭和四四年一一月の日米首脳会談で沖縄の昭和四七年返還に合
   意したこと、沖縄返還によって、沖縄にも日米安保条約、地位協定及びその実
   施に伴う特別措置法が適用されることになったこと、日本政府が公用地暫定使
   用法によって米軍用地の公用使用手続を採ったことは認める。その余の事実に
   ついては、本件訴訟の争点と関係がないので特に認否はしないが、明治政府が
   琉球王国を琉球藩とした上、廃藩置県により沖縄県としたこと、沖縄戦が沖縄
   県に多大な人的・物的犠牲をもたらしたことなど客観的な歴史的事実について
   特に争うものではない。
 四 「第四 沖縄の米軍基地の形成過程」について
   昭和二六年九月八日「日本国との平和条約」が締結され、日本は独立したが、
  同条約三条によって沖縄は日本から分断され、米国の施政下に置かれたこと、米
  国施政下の米軍が被告主張に関わる布告・布令等を公布したこと、沖縄返還に伴
  い、施政権を失った米軍に対し、我が国が、沖縄における米軍基地を引き続き提
  供するため、公用地暫定使用法(位置境界明確化法附則六項により、使用期間が
  五年から一〇年に改められた。)により土地の使用権原を取得し、同法による使
  用期間満了の後、駐留軍用地特措法に基づき土地の使用権原を取得したことは認
  める。その余の事実については本件訴訟の争点と関係がないので認否しない。
 五 「第五 米軍基地の実態と被害」について
  1 「一 米軍基地の概況」について
  (一) 冒頭部分について
    被告主張の米軍基地の施設数、面積、県土面積に対する割合、返還面積、沖
   縄県が日本政府に対して基地の整理縮小を要請してきたことは認め、その余は
   不知ないし争う。
    ただし、米軍専用施設の返還状況(施設面積)は
     昭和四七年五月一五日(本土は、昭和四七年三月末)
     本土 一万九六九九ヘクタール
     沖縄 二万七八五〇ヘクタール
   が正しい。
  (二) 「1 在沖米軍施設の全国比率」について
    被告主張の沖縄における米軍基地及び専用施設の対全国比、沖縄県の県土面
   積の対全国比、他の都道府県の面積にしめる米軍基地の割合、国土面積に占め
   る米軍基地の割合、沖縄県及び他の都道府県において米軍が何らかの形で使用
   している基地総面積に対して米軍専用施設が占める割合は認める。
  (三) 「2 所有形態」について
    認める。
  (四) 「3 用途別使用状況」について
    認める。
    ただし、平成六年三月末現在の演習場の面積は一万六八五四ヘクタール、全
   基地面積に対する演習場の面積の比率は六八・七パーセント、倉庫施設面積に
   対する嘉手納弾薬庫地区の面積の比率は八七・九パーセント、事務所(工兵隊
   事務所)の面積は四ヘクタールが正しい。
  (五) 「4 米軍訓練水域及び空域」について
    平成七年一一月末現在、沖縄周辺に米軍の訓練のための空域が一五か所設定
   されていること、訓練水域について被告主張の制限・禁止が行われていること、
   那覇空港について被告主張のとおり管制空域が制限されていることは認め、そ
   の余は不知ないし争う。
    平成七年一一月末現在の沖縄周辺の米軍の訓練及び保安のための水域の数は
   二九か所が正しい。
  (六) 「5 軍別状況」について
    海兵隊は、キャンプ・コートニーにある第三海兵機動展開部隊の下に、キャ
   ンプ・コートニーに第三海兵師団、キャンプ端慶覧に第一海兵航空団、牧港補
   給地区に第三海兵役務支援群が配置されていること、空軍は、横田基地に司令
   部を置く第五空軍司令部の指揮監督下に、第一八航空団が嘉手納飛行場に配置
   され、同航空団の指揮下に第一八支援群等が配置されていること、海軍は、嘉
   手納飛行場内に在沖縄艦隊活動司令部及び嘉手納海軍航空施設隊があり、その
   他沖縄航空哨戒群等が配置されていること、陸軍は、トリイ通信施設に第一〇
   地域支援群を置くほか、第一特殊部隊群(空挺)第一大隊等が配置されている
   ことは認め、その余は不知。
  2 「二 米軍の演習・訓練及び事件・事故の状況」について
  (一) 「1 演習・訓練の概要」について
    認める。
  (二) 「2 県道一〇四号線越え実弾砲撃演習実施状況」について
     キャンプ・ハンセン演習場における第三海兵師団第一二海兵連隊による県
    道一〇四号線越え実弾演習が多数回実施されていること、最近の演習におい
    ては三日間で約六〇〇発の一五五ミリりゅう弾砲が発射されたことは認め、
    その余は争う。
  (三) 「3 パラシュート降下訓練実施状況」について
    読谷補助飛行場においてパラシュート降下訓練が多数回実施され、これに関
   連して事故が発生し、被告主張の具体的事故が発生していることは認め、その
   余は不知。
  (四) 「4 原子力軍艦寄港状況」について
    勝連半島の最先端に位置するホワイト・ビーチ地区に原子力軍艦が寄港した
   ことがあること、沖縄県における復帰後の原子力軍艦の寄港状況は認め、その
   余は不知ないし争う。
    ただし、一九七六年六月、原潜フラッシャーの寄港以来、一九九五年一一月
   末までの寄港回数は、一〇八回が正しい。
  (五) 「5 事件・事故」について
    昭和四七年五月の復帰以後、米軍航空機事故が発生し、平成六年四月四日の
   F−一五機墜落炎上事故以下被告主張の六件の具体的事故が発生していること
   (ただし、その態様は除く。)、平成七年一〇月一八日のF−一五C戦闘機
   墜落事故についておおむね被告主張のような決議、要請などがあったこと、同
   年九月三日付けの地元紙に被告主張の内容の社説が掲載されたこと、沖縄県警
   察本部の犯罪検挙状況に関する資料が被告主張のとおりであること、同年一一
   月末現在、米兵による民間人殺害事件が一二件発生し、被告主張の具体的事件
   が発生していることは認め、その余は不知。
  3 「三 環境破壊」について
    嘉手納飛行場内において昭和六一年にPCB漏出事故が発生していたという
   報道が平成四年二月にされたこと、キャンプ・ハンセン内の実弾演習の着弾地
   周辺に山肌をむき出した部分があり、また射撃演習により原野火災が発生した
   ことがあること、キャンプ・ハンセン内を流れる河川から赤土の流出が認めら
   れること、嘉手納飛行場及び普天間飛行場の周辺で航空機による騒音が発生し、
   付近住民の生活環境に影響を及ぼしていること、沖縄県が被告主張のように騒
   音測定を行っていること及び沖縄県の発表した騒音測定結果の数値の中に環境
   基準を上回るものがあったことは認め、その余は不知ないし争う。
  4 「四 振興開発の阻害」について
  (一) 「1 振興開発と米軍基地」について
    第三次沖縄振興開発計画の内容として被告主張のような記載があることは認
   める。
  (二) 「2 市町村の振興開発の阻害」について
    被告主張の軍用地の概略(各市・村に関する各イに記載の事実)、那覇港湾
   施設の立地、沖縄市の位置関係、同市に存在する基地等の軍事施設とその位置
   関係、同市における土地所有の内訳、読谷村において読谷補助飛行場の返還の
   めどがつきつつあること、その主張のような道路を建設する計画があること、
   米軍基地が地域の振興開発の制約要因になっていることは認めるが、その余は
   不知ないし争う。
   5 「五 行政事務の加重負担」について
    沖縄県において米軍に関連する事件・事故が起こった場合に沖縄県が那覇防
   衛施設局などに対して抗議の申し入れをし、あるいは同県議会を開催して抗議
   の決議を行ってきたこと、周辺市町村においても米軍基地問題を議題とした臨
   時議会を開催したことがあり、このような問題について周辺市町村が要請活動
   を行ったことがあることは認め、その余は不知。
 六 「第六 米軍基地等に対する沖縄県民の世論」について
  被告主張の世論調査の結果は不知。
 七 「第七 米軍基地に起因する憲法問題」以下について
  原告第二準備書面における原告の主張に反する点は争う。