ヨーロッパ旅行(報告編)


◆ 夜のサント・シャペル ◆





ルーブル美術館を堪能した後、近くのレストランで軽く食事をした。
その後もう一つ教会を訪ねるが、既に閉館されていた。残念!
この日の最後はサント・シャペル夜のコンサートに出かける。
思ったよりもお客が少なくて、驚いた。楽器が何かも知らずに行ったのだが、
ヴァイオリンのソロだった。私とほぼ同じ年のまだ若い演奏家。
前半がバッハで、後半は技巧的な作品だった。最初の1音がなった時、
本当に素晴らしい会堂の響きで身体の奥まで染み渡っていくよう。
よくCDでも「○○教会にて収録」とあるが、まさにあの響きだ。しかも目の前
でそれが繰り広げられている。ヨーロッパでのあらゆる体験は、私のこれまでの
平面的な知識を、ひどく立体的にしてくれた。空間としての会堂や、そこに
響き渡る楽器の音色は、今思い出してもぞくぞくするような体験だった。

前半の最後は、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタから
「シャコンヌ」だった! この曲には、個人的にとても想い出がある。
弘前でマイナーな映画を上映している映画館があるのだが
何年か前に「シャコンヌ」という映画を上映していて、
独りで観に行った。それは確かパリの地下でヴァイオリン弾きの
ストーリーだったのだが、俳優が素晴らしかった。
ヴァイオリンに触れたこともない人が、猛特訓の末に
ポーズはそれらしく出来るようになって、この映画が完成したとのこと。

その彼の演奏を録音したのが、ヴァイオリニストのギドン・クレーメル
当時私は恥ずかしながら、クレーメルのことを全く知らなかった。
しかしその映画が、彼との衝撃的な出会いになった。
「シャコンヌ」はバッハの名曲だが、難曲でもありテクニックの面
だけではなく、精神的な集中力・持続力がとても重要な曲だ。
あの映画でのクレーメルのシャコンヌは、今でも鮮やかに甦ってくる。
そしてこの日、パリの小さくも美しい教会で、また「シャコンヌ」と
私の間に、新たな想い出が一つ加えられたのだ。

コンサートの余韻を胸に、また軽く食事を。今度はフランスでの初ワインに挑戦。
安いものを頼んでみたが、やはり美味しかった! まろやかでエレガントな
味わい。セーヌ河を右手に見ながら、しばしパリの夜を堪能する。
コンサートへ行く途中に見かけたセーヌの風景も、また格別だった。
少し雨まじりで、遠くにエッフェル塔が見える! 「おお、エッフェル塔を見たねー。
ここで見たからいいよねー」と謎の会話で満足している二人。
パリはすごい。ちょっと癖はあるけれども、はまり込むと危険だ。魅力にとりつ
かれる・・。まるであのルーブル美術館へ迷い込んだ時のように。





〜 流れているMIDIは・・ 〜
♪ バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ <シャコンヌ>
この曲は、この日のコンサート前半最後に演奏されました。

全6曲からなる<無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ>
の中の1曲。

 1台のヴァイオリンのための作品なのに、和声的にも対位法的にも
とても高度な音楽表現を可能にしています。
「BACHの宇宙」を感じさせる1曲です。
 
 現在では傑作と称されているBACHの無伴奏作品群は、
死後50年以上を経て出版され、広く世の中に普及するのは
さらに年数がかかったそうです。

<シャコンヌ>
バロック時代の重要な器楽形式であった変奏曲の1種。
元はメキシコからスペインに伝わった舞曲が、ドイツ・イタリアで
器楽形式として発展した。3拍子の荘重なリズムが特徴。







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