軍政法と抵抗運動

ロバート・フィスク
2004年7月9日
CounterPunch原文


イラクでは、当局による戒厳令、外出禁止、デモの禁止、移動の制約、電話の盗聴、手紙の開封チェック、銀行口座凍結を認める法律が導入された。

米国大統領ブッシュがイラクに「民主主義」をもたらすと「約束」した米英の侵略から17カ月たって、米国が承認した「首相」、イヤド・アラウィが7月8日に発表したものである。

さらに悪いことに、イラクの地域を支配するために軍指導者たちが指名されることが可能となり、また、サダム時代の死刑が復活する可能性も出てきた。

つまり、イラクは他のアラブの国と同じ様な様相を呈しているのである。

けれども、これらの法律によって鎮圧しようとしているレジスタンスは、法律が発表されたちょうどそのときに、バグダッドのまさに中心で、銃撃戦を展開した。

驚いたことに、戦闘は、チグリス河に隣接する最も人通りの多い大通りの一つであるハイファ通りで起きた。銃を持った男たちがイラク警察と軍を攻撃したのである。

家々の屋根の高さを超低空飛行している米軍戦闘ヘリが道沿いのある建物にロケットを発射し、建物が火に包まれる光景が目撃された。

チグリス河両岸から銃弾が飛び交い、少なくとも3人の兵士---全員がイラク人兵士だとみられる---が川岸の近くで殺された。

首都バグダッドで8日に起きたこの暴力は不可避的なものだった。それはまず、米軍に守られ壁に囲まれた政府関係者が住む地区への、一連の迫撃砲による攻撃で始まった。迫撃砲の一発は、アラウィの自宅の側に着弾し、もう一発はアラウィの党本部近くの診療所の横で爆発した。

こうした爆発が町中で起きた。朝、榴散弾や砲弾で一杯のバンに積まれた爆弾が、政府本部近くで見つかり、信管をはずされた。

新たな法律を最初は歓迎するイラク人は多いかも知れない。昨年の米軍侵略後、米軍が何千人もの略奪者にバグダッドを略奪させるがままにしておいたため、安全---あるいは安全の不在---が人々の大きな恐れとなっているからである。

イラクの人々は、いずれにせよ、20年以上にわたり、サダム政権の過酷な「治安」法のもとで生活してきた。しかしながら、今度の新たな法律は、アラウィの「新」イラクを救うには遅すぎるかも知れない。

イラクのかなりの地域---4つの主要都市を含む---が今や反乱部隊の手中にある。

バグダッドの北にあるサマラは、数百人の武装勢力が制圧していると考えられている。

ファルージャとラマディ---6日に米軍海兵隊兵士4人が殺された---は、今や実質的な自治共和国となっている。

イラクに新たにできた「司法[正義]と人権大臣」(世界中のどこでも聞いたことのない役割の結合である)バフティヤル・アミンが、戒厳令法の発表役に選ばれた。

「イラクの人々の命が危険にさらされている---邪悪な勢力、ギャングとテロリストによって」と彼は語った。「この法律が自由をある程度制限することはわかっているが、一方で多くの保証もある。我々は、正義と人権を保証しようと尽力した」。

しかしながら、むろん障害もある。この戒厳令法は、選挙で選出されたのではない政府が、「民主主義」のためにと称して導入したものである。

そして、多くのイラク人が思っているように、大規模な米軍の駐留が暴力の背後にあるとするならば、今回の過酷な法律を米軍が支援することは、レジスタンスに火を付けるだけなのである。


ロバート・フィスクの記事ですが、少し論旨がはっきりしていないように思われるものです。

イラクからウェブログを発信しているパレスチナ系のライードさんがイラク側責任者を務めて、米国のNGOが行なった民間人犠牲者(死者・負傷者)の調査結果がウェブで公開されました。ご覧下さい。ライードさんのウェブログの日本語版はこちら

また、イラクについての書籍として、イラク人女性のブログ(ウェブ日記)を日本語化した、『バグダッド・バーニング』(リバーベンドプロジェクト訳、アートン刊、1500円)が書店に並んでいます。ブッシュ大統領や小泉首相、大手メディアがイラクの人々の声を押し潰して「民主主義」、「解放」、「復興支援」といったカラッポのスローガンの陰で侵害や資源略奪を進める中、イラク人の声とバグダッドの生活を伝える、貴重な内容。

大量破壊兵器はなかった、サダムとアルカーイダのリンクもなかった(バアス党とイスラム原理主義なので当然ですが)、「自由と民主主義」のかわりに導入されたのは弾圧と拷問、殺害、ファルージャで行われたような殺戮。『バグダッド・バーニング』には、女性への抑圧が強まっていること(米国や日本の一部での宣伝とは裏腹にイラクでは女性の大学進学者・専門職比率など、非常に高い社会でした)が書かれています。

その一方で、ベクテル社やハリバートン社をはじめとする関連米国(海外)企業は大儲け。『バグダッド・バーニング』は、バグダッド南東にある新ディヤーラ橋の再建費用が、イラク人専門家の見積もりでは約30万ドルであるのに、契約を取った米国の会社は5000万ドルと見積もっていたことを書いています。『ファルージャ2004年4月』には、病院の医薬品さえサダム政権時代の国際的経済制裁下よりも足りていないという報告があります。
益岡賢 2004年7月13日 

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