戦争犯罪と拷問:米国政府の見解

2004年6月12日


米国政府回りの、拷問を許容することおよび戦争犯罪を逃れることについての最近のメモは、いくつかある。

その一つは、司法省の法律家アルベルト・ゴンサレスの手による2002年1月のメモであり、もう一つは、ペンタゴンの法律家チームによる2003年3月の報告書草案(最終報告は4月)である。他に、バークレーのジョン・ヨー教授によるメモもある。

ゴンサレス・メモとペンタゴン法律家によるメモとの概要を、様々な新聞記事なども参考に、以下に整理しよう。


ゴンサレス・メモ(2002年1月25日付):

このメモは、米国政府職員が1996年の戦争犯罪法(この法律は政府職員を含むすべての米国市民に戦争犯罪を犯すことを禁ずるものである。戦争犯罪は、ジュネーブ条約に対する重大な違反および同共通第3条への違反と定義されている)のもとで罪を問われる可能性があると警告している。メモは、こうした告発を避ける最上の方法は、アルカーイダとタリバンの戦士たちはジュネーブ条約のもとでのPOW(戦争捕虜)の資格を有しないとするブッシュ大統領の決定(当時パウエルはこれに強く反対していた)を貫くことであるとしている。というのも、そうすれば、「(戦争犯罪法)が適用されないという法的に妥当な根拠を創生することができるからであり、それによって今後の訴追などから身を守る基盤ができることになる」と。

[注:米国政府は、その後、「アフガン戦争」(米国によるアフガニスタン空爆と侵略)での被拘束者を法的にPOWとして認めることは拒否したものの、被拘束者を扱う際にはジュネーブ条約の精神を遵守することに合意した。ただし、どうやら、2002年2月2日付の別の米国政府覚え書きによると、CIAの法律家達は、ジュネーブ条約の精神に従うという米国政府の公約はCIAの工作員には適用されないことはっきりと理解するよう求めたという]


ペンタゴン報告(2003年3月6日付):

(1) この報告は、米国の尋問者が用いている技術の評価の一部として準備された。

(2) ブッシュは拷問禁止条約(米国は1994年に批准)にも連邦拷問禁止法(拷問は刑事犯罪であると規定している)にも制約されない。というのも、ブッシュは総司令官として国家治安を守るために必要なあらゆる手段を認可する顕現を有するからである。また、行政府の職員は、軍に勤務するものも含め、これらの法律に基づく訴追を逃れることができる、と述べている。

(3) 拷問について極端に制限の強い定義を採用している:拷問は苦痛や苦しみが「深刻」でなくてはならない。拷問の罪を負うのは、実行者が「自分の統制下にある人物に対して深刻な苦痛や苦しみを加えるというはっきりした目的のもとで行動している」ときに限られる。実行者が「自分の行為の結果深刻な苦痛がもたらされると知っていた」としても、そうした苦痛を引き起こすことが実行者の目的でないならば、拷問の罪とはならない。

(4) 苦痛を引き起こす技術を使っている尋問者が、「そのときに自分の行為はより大きなダメージを避けるために必要でそのためのものであると考えていた」ならば、責任を問われないでよい。

(5) グアンタナモ湾の米軍基地で行われるあらゆる拷問は、連邦拷問禁止法違反にはならない。というのも、この法律は海外で犯された拷問だけに関するものであり、グアンタナモ湾は米国の司法管轄下にあるからである[これは異様に倒錯した議論である。というのも、米国最高裁において米国政府がグアンタナモ湾に拘束されている被拘束者を巡って行った議論は、グアンタナモ湾はキューバの主権下にあり米国司法管轄下にはないから、これらの被拘束者は米国憲法の保護を受ける資格がない、というものだったのだから。これに対して最高裁判事の一人は、それではカストロがグアンタナモ湾でコーヒーを飲みたければ自由に行けるというわけですね、と述べたらしい]。

(6) ペンタゴン報告には、もともと、尋問技術についての付録が添付されていたが、アッシュクロフト米国司法長官は、6月8日、その部分と他の文書を米国上院司法委員会に手渡すことを拒んだ。上院委員会の委員たちは、アッシュクロフトに、手渡すことを拒否したのは「行政特権」を発動していることかと訪ねたが、アッシュクロフトはそうではない、と答えた。これは、米国行政府・司法府が議会を蔑視していることを示している。

(7) 「憲法権利センター」のマイケル・ラトナーがこの報告について語った言葉(デモクラシー・ナウ!2003年6月9日より):「この報告は、米国大統領は、戦争を戦う総司令官としての権利を行使しているときは・・・・・・米国の刑法すべての適用対象外にされると述べているのです。・・・・・・ブッシュ大統領は、戦争のときに、自分は何をしてもよいと言っているのです。戦争さえしていれば、ジュネーブ条約もどうでも良く、戦争下では拷問禁止条約も無視してよく、戦争さえしていれば・・・・・・法律など全く存在しない、と。自分は何でもしたい放題できるのだと。自分はおまえを明日連れ出して、監禁室に突っ込み、拷問を加えて、やりたい放題のことをやって、それで、国家安全保障の名のもとで、それを正当化することができるのだ、と」。


2003年4月、ペンタゴンは、グアンタナモの留置場で、睡眠剥奪や体に熱をあてたり冷たくしたり「感覚を攻撃」したりするといった拷問を行うことを認めていました(ワシントン・ポスト紙2004年5月9日)。とはいえ、1963年のKUBARK対ゲリラマニュアルや1983年の人材開発訓練マニュアルなどから、こうした拷問技術が古くから研究され実用に供せられていたことがわかっています。

なお、イラクからウェブログを発信しているパレスチナ系のライードさんがイラク側責任者を務めて、米国のNGOが行なった民間人犠牲者(死者・負傷者)の調査結果がウェブで公開されました。ぜひご覧下さい。ライードさんのウェブログの日本語版はこちら

米英のイラク不法占領と日本の占領加担等については、イラクからの自衛隊の即時撤退を求め、憲法改悪に反対する意見広告運動第三期が進行中です。拷問推進派の米国政府とそれに追従し戦争推進派の小泉首相。とりわけ、この小泉首相に止めてもらうのは、日本国籍と投票権を持つ者の責任です。色々な情報がこちらにあります。
益岡賢 2004年6月12日 

一つ上へ] [トップ・ページ