イラク人女性3人の処刑:緊急の要請と背景

Falluja, April 2004との同時掲載です。

米国の国際行動センターから、3月3日(日本では既に今日です)イラクで処刑されることになっている3名のイラク人女性について、緊急の要請メールが来ましたので、ご案内いたします。英語も添えます。時差を考えると日本時間では本日の夕刻くらいまでが最初の行動期限かと思いますが、3月3日から処刑が開始される見込みとのことなので、その後も有効なのではないかと思います。

*緊急*

米国が指名した占領政府は、31歳のワッサン・タリブ、25歳のザイナブ・ファディル、26歳のリカ・ムハンマドを明日(3月3日:日本ではすでに今日)処刑しようとしています。末尾にリストした連絡先にメールや電話を入れて下さい。

*URGENT!*

The U.S.-appointed occupation is planning to execute 31-year-old Wassan Talib, 25-year-old Zainab Fadhil and 26-year-old Liqa Muhammad tomorrow. Please email and call the contacts below.

*メール例*

私たちは、米国が据えたイラク最高刑事裁判所が3名のイラク人女性----31歳のワッサン・タリブ、25歳のザイナブ・ファディル、26歳のリカ・ムハンマド----に絞首刑を宣言したことに憤りを感じています。

ムハンマドは、最近、刑務所で生んだ子どもを育てているところです。タリブは刑務所で3歳の娘と一緒にいます。

3名の女性は、自分たちに向けられた罪状を否認していますが、彼女たちは弁護士と面会することもできず、ジュネーブ条約に違反した中で裁判を受けました。有罪判決に対して上訴する弁護士も付きませんでした。

アメリカ合衆国は、死刑制度をイラクに輸出し、2004年8月にイラクの傀儡政権は死刑を復活させました。その後、2006年には少なくとも65人が処刑されています(amnesty.org)。

今回のケースでさらに事態を深刻なものにしているのは、米国の占領軍兵士たちとその傀儡のイラク軍兵士たちがイラク人民間人を何千人・何万人と殺している中で、3名の女性が武装闘争に関与したという罪状で処刑されようとしていることです。

イラク弁護士組合の弁護士ワリッド・ハヤリによると、31歳のワッサン・タリブは警察を攻撃して5名の警官を殺した罪で、25歳のザイナブ・ファディルはバグダードで共同パトロールを行っていたイラク軍と米軍を攻撃した罪で、26歳のリカ・ムハンマドは誘拐を企てた中でグリーンゾーンの職員一人を殺した罪で訴えられています。

国際法では、国連総会の1982年決議に基づき、「独立、領土保全、民族団結、植民地支配や外国による支配、外国の占領に対する、武装闘争を含むあらゆる手段による人々の闘いは合法的である」ことを確認しています。ですから、イラク政府は、3名の女性を含む誰に対しても、レジスタンスに参加したことで罪を問うことはできません。

私たちは、この不道徳かつ不法な処刑を取りやめ、女性たちとその子どもたちを解放するよう求めます。

*SAMPLE EMAIL*

We the undersigned are outraged that three Iraqi women--31-year-old Wassan Talib, 25-year-old Zainab Fadhil and 26-year-old Liqa Muhammad--have been sentenced to death by hanging by the U.S.-installed Supreme Iraqi Criminal Court. The executions are set for March 3 in Baghdad.

Muhammad is still nursing a child she recently gave birth to in prison. Talib has a 3-year-old daughter with her in the prison.

The three women, who denied the charges against them, were prevented from seeing a lawyer and tried in violation of the Geneva Convention. There was no lawyer present to appeal the convictions.

The United States has exported its criminal death penalty to Iraq, with the reinstatement of the death penalty by the Iraqi puppet government in Aug. 2004. At least 65 people were executed in 2006 following the ruling. (amnesty.org)

What is even more alarming in this particular case is that the women are being executed for their alleged role in the armed resistance, at a time when U.S. occupation troops and puppet Iraqi troops have committed hundreds of thousands of murders of Iraqi civilians.

According to attorney Walid Hayali of the Iraqi Lawyers Union, 31-year-old Wassan Talib has been charged with the killing of five police officers in an attack on the police; 25-year-old Zainab Fadhil was charged for an attack on a joint patrol of the Iraqi and U.S. armies in Baghdad; and 26-year-old Liqa Muhammad was charged with the killing of an official in the Green Zone in the course of a kidnapping.

International law, through a 1982 resolution of the U.N. General Assembly, affirms "the legitimacy of the struggle of peoples for independence, territorial integrity, national unity and liberation from colonial and foreign domination and foreign occupation by all available means, including armed struggle." Therefore, the Iraqi government shouldn't be able to charge anyone, including these women, for taking part in the resistance.

We demand that these immoral and illegal executions be halted and the women and their children be released.

*送り先*

President Bush(ブッシュ米大統領)
comments@whitehouse.gov +1-202-456-1111

Prime Minister Nuri Kamil al-Maliki(イラク首相ヌーリ・アル=マリキ)
iraqigov@yahoo.com

Minister of Justice Hashim al-Shibli(イラク法相ハシム・アル=シビ)
minister@iraqi-justice.org deputy@iraqi-justice.org

Minister of Foreign Affairs Hoshyar Zebari(イラク外相ホシャル・ゼバリ)
press@iraqmofa.net

Ambassador to the United States His Excellency Samir Sumaida'ie
(駐米イラク大使 サミル・スマイダイエ)
amboffice@iraqiembassy.org +1-202 462 5066

Int'l Committee of the Red Cross(国際赤十字)
press.gva@icrc.org

UN High Commissioner for Human Rights(国連人権高等弁務官)
tb-petitions@ohchr.org

UN Representant in Iraq Said Arikat(イラク国連大使サイド・アリカト)
arikat@un.org

Amnesty International(アムネスティ・インターナショナル)
cjurgens@amnesty.org

Al-Jazeera(アルジャジーラ)
press.int@aljazeera.net

Reuters(ロイター通信)
Eileen.wise@reuters.com

BBC(英国BBC放送)
Michael.grade@bbc.co.uk



背景をより詳しく説明する記事がありましたので、紹介します。

イラク人女性に対して差し迫った処刑への怒り
ダール・ジャマイル&アリ・アル=ファディリー
2007年3月2日
Electronic Iraq 原文

バグダード発・IPS。イラクのゲリラ活動に参加して「テロリズム」に関与したとして告発された3人の若い女性が死刑を宣告された。これに対して様々な人権団体から抗議の声が挙がっている。この処刑はサダム・フセイン後のイラクにおける女性の処刑増加のきっかけになることも心配されている。

「ブリュッセル法廷」によると、3人の女性ワッサン・タリブとザイネブ・ファディル、リカ・オマール・ムハンマド、そして4人目の女性サマル・サード・アブドゥラー----彼女は家族の5人を殺したとされ有罪になった----に対する処刑は、3月3日に開始される予定である。

4人は全員、バグダード北部のカダミヤ女性刑務所に拘留されている。

アムネスティ・インターナショナルによると、「テロリスト」とされた3人のうちの一人、ムハンマド(25歳)は、逮捕されたのちに娘を出産し、監獄の中で娘を育てている。二人目のタリブ(31歳)も、3歳の子どもをつれて投獄されている。

タリブとファディル(25歳)は、イラク中央刑事裁判所(CCCI)により2006年8月31日に死刑判決を受けた。バグダードのハイ・アル=フラト地区で2005年、イラク治安部隊のメンバー数人を殺したというのが罪状である。二人とも、関与を全面否定している。アムネスティ・インターナショナルによると、ファディルは、その殺害があったとされる時期に、自分は国外にいたと述べている。

ムハンマドは2006年2月6日CCCIにより死刑宣告された。イラク法律家組合筋によると、2005年にグリーンゾーンから官僚を誘拐した罪だという。彼女の夫も拘留され、同じ罪で告発されている。

「テロリズム」に関与したとされたこの3人が控訴したかどうかはわかっていない。そうだとしても、弁護士がついていないので認められることはありそうにないと関係者筋は語る。

アブドゥラーの控訴は却下され、彼女は今、まさに処刑の危機にあるとアムネスティ・インターナショナルは言う。

イラクにいる弁護士の多くは、この3人を「テロリスト」の容疑で死刑にするのは、ゲリラを脅迫しようとするイラク政府の企ての一環であると解釈している。死刑判決を受けたうちの二人、ファディルとムハンマドは、夫と家族のメンバー二人とともに、犯罪を犯したとされていると、イラク法律家組合は述べる。

イラク人の中には、この3人がどんなかたちであれゲリラ活動に関与するはずはないと驚きを表明し、この非難に対して不信感を表明している人々もいる。

イラク人男性にとって、どんなかたちの暴力にも女性を巻き込まないことは名誉の問題なのだと、彼らはIPSに説明する。

独立系の弁護士たちは、裁判を強く批判し、裁判は「不正」で国際条約を侵害していると述べる。

彼女たちは法的保護を受ける権利を否定されたと、弁護士のワリド・ハヤリは言う。彼は法廷で3人の弁護をしようとしたが妨害されたと述べる。

タリブの親しい友人は「弁護士がつく機会は一切与えられませんでした」とIPSに語った。

けれども、国際法は、中立の弁護士をつける権利を保証していると弁護士たちは語る。

生まれたばかりの子どもを持つ母親に死刑宣告することもまた、国連がそれについて特に取り決めた保護規定に違反していると弁護士たちは言う。

質問に答えてくれたイラク人たちは、この処刑が実行されるならば、イラク全土で暴力が激化することになるだろうと述べた。

「こんなことをして罰せられないわけはありません」とバグダードのアミリヤ地区に住むファディル・アジズ(40歳)は言う。

「米国とイラクの共謀者たちは、イラクの人々の名誉に対して加えている犯罪の代価を支払わねばなりません」と彼は警告した。

処刑が今にも実行されそうな状況は、イラクを逃れる人々の数をさらに増やすだろう。

「ここにいてこんな事態を目にするくらいなら、世界のどこでもいいから、家族を連れ出したい」とバグダードのカダミヤ地区に住むイラク人教師アビ・ムハンアドはIPSに言う。

国連の推定では、約200万人のイラク人が既にイラクから出国している。毎月約5万人がイラクを離れており、中東諸国とりわけシリアとヨルダン、レバノンを埋め尽くしかねない状況にある。

約100万人が今日シリアに暮らしており、75万人近くがヨルダンにいると国連難民高等弁務官事務所は発表している。

国連によると、イラク人中流階級の約40%が、2003年に米軍がイラクを侵略して以降、イラクを離れたという。

サダム・フセイン政権を転覆して以来、米軍占領当局は死刑を中断した。けれども、2004年8月、新たに成立したイラク暫定政権は、殺人や誘拐、国家安全保障への脅威の罪に対して死刑を復活させた。2005年10月には、強硬な「対テロ」法が新たに成立し、テロリズムを「醸成し、計画し、資金を提供し、可能にした」罪に死刑を導入した。

昨年、イラク法廷は235人に死刑を宣告し、6000人に終身刑を宣告したと、ロンドンの日刊紙アル=シャルク・アル=アウサトは報じている。

同紙が引用しているムハメド・コルシドの言葉によると、2000人以上の女性が「治安拘束」に分類されているという。

2004年8月以来、どれだけの人々が処刑されたか確実な数値はわかっていないが、50人から100人が処刑されたと考えられている。2006年には、イラク政府は少なくとも65人のイラク人男女を処刑した。元大統領サダム・フセインもその一人である。

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ブッシュはテキサス州知事時代、でたらめな死刑執行で悪名を馳せていました。

2005年10月にイラク政府が導入した「対テロ」法を公正に適用したら、イラク占領米軍のかなりがテロリズムの罪で死刑判決を受けることでしょう。

益岡賢 2007年3月3日 

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