プラン・コロンビア:虐殺のフィールド

ギャリー・M・リーチ
2002年9月9日
コロンビア・ジャーナル原文


コロンビア南部のコカ栽培地帯を訪問するならば、米国がスポンサ−となっている薬剤空中散布で根絶されているのが、コカだけではないことがはっきりとわかる。薬剤散布により、過去1年半の間に、何千エーカーものコカを根絶はしたが、同時に、標的となった地域に住む貧困に追いやられた農民たちが育てていた食料農作物や家畜も破壊したのである。非合法作物をもっと正確にねらおうとする最近の試みも、食料生産物を守ることに失敗した。さらに、薬剤散布キャンペーンと内戦が激化しつつ続くなかで、米国の訓練を受けたコロンビア軍対麻薬特殊旅団と、米国国務省の海外テロリスト組織にリストされている準軍組織死の部隊との共謀の証拠が挙がっている。

2000年1月、当時の米国大統領ビル・クリントンは、コロンビアへの対麻薬援助として16億ドルを提案した。その夏、米国議会は、プラン・コロンビアに対する米国の初期援助として13億ドルを認めた。プラン・コロンビアは、コロンビア経済を上昇させ、内戦に終止符を打ち、米国への不法麻薬流入を阻止するためと称して米国政府とコロンビア政府が案出した戦略である(プラン・コロンビア概説を参照)。プラン・コロンビアが実行に移されてから1年半以上経過した今、プラン・コロンビアが、それが掲げた目標のいずれをも達成していないことが明らかになっている。

ここ数年、コロンビア経済は停滞し、失業率は18パーセント近くにまで上昇している。IMFが、1999年12月に27億ドルの貸付−これもまたプラン・コロンビアの経済部門を構成している−を行う替わりに適用した、コロンビア経済の引き締め政策は、貧困生活を送る64パーセントのコロンビア人の状況をさらに悪化させるだけであった。

プラン・コロンビアは、コロンビアの経済状況を改善できなかったばかりか、パストラナ政権がコロンビア革命軍(FARC)と行っていた和平交渉は2002年2月に崩壊し、内戦もエスカレートした。ブッシュ政権は、今や、軍事的関与を、対麻薬から対ゲリラ作戦へと拡張し、「麻薬に対する戦争」や「対テロ戦争」という口実で、FARCを標的としている。

プラン・コロンビアは、また、麻薬生産を大規模に阻止することにも失敗した。過去20ヶ月の間に、薬剤空中散布を受けた地域は記録的な面積に達したが、米国ホワイトハウスの国家麻薬統制政策局が発表した数値によると、昨年、不法作物栽培は2.5%増加したのである。これに対し、国連は、同じ時期に11%コカ栽培が減少しているとしているが、同時に、精製技術の上昇により、コカイン生産は上昇していることを指摘している。いずれの数値がより正確であるかどうかにかかわらず、米国でのコカイン価格と入手可能性は変わっておらず、薬剤散布作戦が、米国へのコカイン流入を減ずることに失敗しているのは明らかである。

プラン・コロンビアの最初の薬剤散布キャンペーンは、プツマヨ州で、2000年12月から6週間にわたり行われた。これにより、62000エーカーのコカが破壊されたばかりでなく、食料農産物も破滅的な被害を受け、また、地域の子供たちの健康にも悪影響を与えた(空から降る死を参照)。1000ドル相当の支援物資・技術支援・空中散布対象とはならないという約束と引き替えにコカ作物を自発的に止めるという社会パクトに同意した農民すら、自分たちの新たな代替作物が薬剤散布で破壊されるのを絶望的に眺めている状況だったのである。

最初の薬剤散布キャンペーンで引き起こされた荒廃のため、何千人ものカンペシノと、薬剤散布で影響を受けた南部6州の州知事が、抗議を行った。これらの人々は、政府を説得して薬剤空中散布から手作業によるコカ根絶に切り替えさせることはできなかったが、政府は、代替作物プログラムを担当するコロンビア政府機関プランテ(PLANTE)が、こうした農民の畑に薬剤がまかれないよう、社会パクトに同意した農民の土地所在を国家対麻薬局に通告するようにすることには同意した。

けれども、最も最近、7月28日にプツマヨで実行された薬剤散布で、またもや代替作物が破壊されたという証拠がある。4ヶ月前に社会パクトに署名したプツマヨの農民ヴィクトリアノは、コカ栽培から、ジュースに使われる果物ルロの栽培に切り替えていた。8月に、彼が新たに植えたルロは、薬剤空中散布で根絶された。一方、近くのコカ畑2つは、薬剤によりほとんど影響を受けなかったのである。

米国議会が薬剤空中散布キャンペーンに課した条件は、ブッシュ政権が、「コロンビアでの空中コカ撲滅プログラムが米国内での使用に規定された環境保護局(EPA)規制に従っているかどうか、そして、化学薬品が、適用される方式により、人間や環境に不当な危険や悪影響を与えないか」議会に対して明確にすることを求めている。

米国国務省は、最近、国務省のために米国環境保護局(EPA)が、信じられないかもしれないが、国務省から提供された基準と情報に従って行った調査結果を公開した。報告結果は、決定的なものではなかった。その大きな理由は、EPAが、コロンビアの熱帯雨林地域で使われている特定の混合農薬(これは米国では使われていない)の効果を正確に特定できなかったためである。コロンビアのデータを利用できない状況で、EPAは、米国内でのグリフォサート利用の研究を利用した。今や、国務省は、この報告書が、農薬が害を与えるという明確な証明を提供しなかったという事実を、薬剤空中散布キャンペーンを強化するための正当化に用いようと意図している。

この報告は、空中散布によるコカ根絶を巡る多くの争点のいくつかに光を当てることに成功している。米国国務省は、繰り返し、コロンビアでグリフォサートを使用することを、それが米国で最もふつうに使われる農薬であることを指摘して正当化してきた。けれども、EPAの報告は、米国におけるグリフォサートの利用は、「グリフォサート耐性を持つよう開発された作物品種を栽培している」農業地域で利用されていることを述べており、国務省の主張がプロパガンダであることを示している。米国とは違い、プツマヨの農産物は、グリフォサート耐性を持つよう遺伝子操作されておらず、米国の作物よりもはるかにグリフォサートに対して脆弱なのである。

薬剤散布の人体の健康への影響について、EPA報告は、現在のグリフォサート濃度は、急性眼炎症を引き起こすとし、国務省に対し、「将来のコカやケシに対する薬剤空中散布プログラムでは、代替グリフォサート製品(毒性の弱いもの)を用いるべき」と勧告している。EPA勧告に対し、国務省は、より毒性の弱いグリフォサートを使って空中散布を行うと発表した。

けれども、よく調べてみると、より毒性の低いグリフォサートに切り替えるという国務省発表は、単なる宣伝戦略に過ぎないことがはっきりする。実際のところ、混合農薬の毒性には、これはほとんど影響しないのである。国務省が薬剤散布の報告を議会に提出したのと同じ日に、コロンビアにおける対麻薬担当官は、混合農薬に使われるグリフォサート濃度を25%強化する意図を表明した。つまり、国務省は、毒性の低いグリフォサートを農民と農産物にばらまく際、混合農薬に、25%余計にグリフォサートを加えることで、毒性の低さをカバーしようというのである。中央フロリダ大学のミクロ生物学教授ヘンリー・ダニエル博士によると、「毒性はグリフォサートの比率に直接比例しているので」、グリフォサート比率を高めることにより、毒性も高まるという。

現地の農民が育てる代替農作物が薬剤空中散布を生き延びたとしても、社会パクトは、一家族を維持するためには十分でない資源しか提供していないことが多い。ゲリラの殺害脅迫を恐れ匿名を希望したある地方職員は、「プラン・コロンビアは我々に起こりうることの中で最悪の事態である。ボゴタのNGOがプツマヨを侵略し、汚職が横行した。我々は、プツマヨの人々とどうやって働くか知っているが、プラン・コロンビアのために、プロジェクトを管理するという人々が大勢他の場所からやってきて、政府は、こうした組織にだけ資金を提供している」と述べる。

環境省のコルポアマソニア(南部アマゾン地域の持続可能な開発のためのコーポレーション)のハイル・ジョバニ・ルイスも、こうした汚職とムダを指摘する。彼は、カンペシノたちは、代替作物資金をほとんど手にしていないという。「恐らくは牛一頭か鶏3匹くらいは受けているだろうが、農民たちは、それでは生きていけない。恐らく、お金が途中でなくなるか、あるいは、政府が、牛を提供するために、[政府は]多くの専門家と契約したのだろう」。ルイスによると、「プラン・コロンビアの資金管理はひどいもの」だという。

社会経済開発プログラムに提供される20%の米国資金は、効果的な長期的代替作物計画を適用するにはまったく不十分な額であり、さらにひどく非効率的に配分されている。その一方で、プラン・コロンビアの援助の80%は、貧困に追いやられたコカ生産者の生活の糧だけでなく、社会パクトに署名した農民たちの生活の糧をも破壊するのに極めて効率的であることが明らかになっている。既に何度も人々を見捨てた政府に対し十分不信を抱いている消耗した人々は、今や、ボゴタとワシントンから発せられるレトリックに対して、かつてないほどに懐疑的になっている。

地方部のコロンビア人にとってさらに悪いことに、最近、ブッシュ政権が、「対テロ戦争」の名目で、米軍の関与を、大麻訳から対ゲリラ作戦に拡大したことにより、米国が訓練を行った、コロンビア軍の対麻薬旅団と戦闘ヘリコプターが、今や、国務省の海外テロリスト組織リストに記載されている2つのコロンビア左派ゲリラに対して、使われうることとなった。この軍事エスカレーションにより、米国は、コロンビアの汚い戦争にさらに深く関与することになるだろう。実際、米国が訓練した新しい対麻薬旅団と、国務省テロリスト組織にリストされている右派準軍組織死の部隊との共謀関係について、証拠が挙がっている。

米国議会がプラン・コロンビア計画を認めたとき、資金の一部が、コロンビア軍の対ゲリラ部隊とは独立した、3つの新たなコロンビア対麻薬部隊を創設し、訓練し、武装するために用いられることを理解していた。その意図は、米国の援助を、右派準軍組織と日常的な共謀関係にあるコロンビア軍部隊から引き離していくことにあった。右派準軍組織は、人権団体と米国国務省によると、大部分のコロンビアにおける虐殺事件を含む、コロンビアにおける人権侵害の70%以上を行っているのである。

けれども、この戦略が失敗したことは明らかになってきている。プエルト・アシス−今やコロンビアではムエルト・アシス(死のアシス)として知られる−郊外で最近起きたある事件では、米国が訓練を提供したコロンビア軍対麻薬旅団の兵士からなる、軍パトロール団が、AK−47とウォーキートーキーで武装した4名の準軍組織を通過させ、この右翼ガンマンたちが、プツマヨ川のカヌーに乗り込むときに、武器をこれ見よがしに見せているのをただ眺めていた。その同じ夜、プエルト・アシスで、準軍組織死の部隊が、3名の武器を持たない市民を殺害した。2名は頭を撃たれ、もう1名は、山刀で首から腹を切り裂かれたのである。

コロンビア法律家委員会(CCJ)という人権団体のカタリーナ・ディアスによると、「この[米国に訓練された対麻薬]旅団が、準軍組織を見過ごし受け入れているのは、非常に明白だ」という。ディアスは、プツマヨにおける、米国が訓練した大麻薬旅団と準軍組織の共謀について彼女が得た情報は、ボゴタの米国大使館に手渡されているという。私が米国大使館に対して提出した、プラン・コロンビアの適用について大使館職員とインタビューしたいという要請は、すべて却下された。

米国とコロンビアの当局筋は、プラン・コロンビアが、コロンビアに平和と経済繁栄をもたらし、同時に、麻薬生産を劇的に減らすと主張してきた。けれども、1年半たって、20億ドル近い資金が費やされたのち、それが貢献したのは、暴力のエスカレーションにであり、貧困の劇的な増大にであり、そして、軍事主義的な空中薬剤キャンペーンの被害を直接受けるコロンビア人たちの間の不満増大にであった。けれども、プラン・コロンビアに対する米国の巨大な支援は、今や、コロンビア内戦に対するワシントンの軍事介入のさらなるエスカレートを正当化する環境造りには成功した。プランテのマリオ・カバルが簡潔に述べているように、「我々は、戦争用の、ヘリコプターと武器のお金は持っているが、社会プログラムのお金は持っていない」。


コロンビアにおけるワシントンの代弁者も参照して下さい。
  益岡賢 2002年9月10日

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