地球温暖化


 ●マーシャル諸島

日本の南東約4000qに位置し、29の環礁からなるマーシャル諸島共和国。平均海抜はわずか2m。地球温暖化で進む海面上昇で、深刻な被害が出始めている。

地球温暖化の進行で、南極・グリーンランドなどの氷床が溶けたり、暖められた海水が膨張して海面が上昇。「海面が1m上昇した場合、マーシャル諸島マジュロ環礁の80%が失われる」という。

日系2世の水谷福男さん。「このブタ小屋を建てた8年前には、もっとも高い潮位でもここまでだった。それが今では小屋の中まで海水が入るようになったんだ」と語る。
温室効果ガスの96年時点での国別排出比率は、米国22・2%、EU12・9%、日本4・9%だが、マーシャル諸島はわずか0・004%。先進国によって小さな島国が海に沈められようとしている
マーシャル諸島のいたる所で、たくさんのヤシの木が倒れている。この場所は、わずか半年間で5mの砂浜が侵食で失われた。海面上昇は加速度をつけて進行している。
温暖化防止のための「京都議定書」で、90年を基準に先進国全体で5・2%の温室効果ガス削減を決めた。だが、最大の排出国・米国は自国経済を優先させて離脱。6%削減の日本は90年からの10年間で8・4%も増加させている。日本の政府・産業界・民間での、真剣で速やかな取り組みが必要だ。



 ●フィジー
フィジーでもっとも大きなビチレブ島南部にあるヤドゥア村。コンクリート製の小さな堤防は、広範囲にわたって崩れ落ちてしまった。「大波で堤防が壊れてしまったんです。政府に修理を依頼したところ、予算がないと断られた。2軒の民家が流されたこともあるよ。堤防を早く直さないと被害は大きくなり、そのうち死者が出る事態になる」と村長は語る。
ヤドゥア村では侵食の激しい海岸に、マングローブの植林が日本のNGOによって行われた。成長したマングローブ林は、波によって破壊されてしまうコンクリート堤防よりも有効で安価だ。海面上昇は進んでいるが、太平洋の島々にマングローブを根気よく植え続けたならば、海岸侵食を少しでも減らすことができるだろう。



 ●ツバル

九つの島から成り総面積がわずか26平方キロメートルのツバル。世界の国々の中で4番目に小さなこの国に約9000人が暮らす。環礁のもっとも広い場所に滑走路がある。離着陸のない時は住民たちが自由に使う。
小さな島嶼国家のツバルの平均海抜は2メートル以下。地球温暖化によるわずかな海面上昇でも大きな被害を受け、海へ沈む最初の国になろうとしている。ツバル政府は、オーストラリアやニュージーランドへ国民を移住させることを望んでいる。
自給自足の暮らしを続けているフナファーラ島。その海際に建てられていた伝統的家屋は、海面上昇によって放棄された。今は柱だけが砂浜に残る。
首都・フナフチでも海岸侵食が進む。海面上昇の速度は徐々ではあるが、それによる海岸侵食は急速に進んでいる。地球温暖化は気候変動も引き起こしており、大規模な洪水・旱魃(かんばつ)といった被害が出るようになった。
ハリケーンで陸地が浸食され、内海(右側)と外海がつながってしまった。復旧工事が行われ、道路はコンクリートで舗装された。
首都では、海水による浸水が起きるようになった。そのため、高床にした新築家屋が増えた。たとえ米国などが「京都議定書」に復帰し、すべての「先進国」での温室効果ガス削減が実現したとしても地球温暖化は確実に進行する。温室効果ガスの濃度を現状で止めるには、二酸化炭素の排出をただちに60〜80パーセントも削減する必要があるという。
テプカ島では、ヤシだけでなくパンダナスなどさまざまな樹木が絡み合って倒れていた。砂浜と樹木が鬱蒼と生えている陸地との間には、1メートルほどのはっきりとした段差がついている。樹木が倒れたのは海岸が侵食されたからである。この島での海岸侵食は1970年頃から始まり、1年間で10メートルも削られているのだ。
フナファーラ島では、昔ながらの穏やかな暮らしが続いている。だが、海面は確実に上昇しており、子どもたちのはしゃぎ声がいつまで聞こえるかはわからない。だが、地球温暖化を少しでも食い止めるために、人類は努力を続けていく必要がある。

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